― レビュー ―
オーバークロック仕様のGeForce 7800 GTX搭載グラフィックスカード
Extreme N7800GTX TOP/2DHTV
Text by 石井英男
2005年8月22日

 

■リファレンスカードにNV Silencer 5を装着

Extreme N7800GTX TOP/2DTHV
問い合わせ先:ユニティ コーポレーション news@unitycorp.co.jp

 NVIDIAGeForce 7800 GTXは,2005年8月点で最速のグラフィックスチップであり,ゲーマー垂涎の製品であることに疑いの余地はないだろう。現在,市場に流通しているGeForce 7800 GTX搭載グラフィックスカードはすべてNVIDIAのリファレンスカードそのもので,基本的に性能差はなく,各社差別化に苦労しているようだ。そんななか,ASUSTeK Computer(以下ASUSTeK)は,リファレンスカードよりもオーバークロックした製品「Extreme N7800GTX TOP/2DTHV」(以下EN7800GTX TOP)を投入してきた。

 

 EN7800GTX TOPの動作クロックはコア486MHz,メモリ1.35GHz(675MHz DDR)。コア430MHz,メモリ1.2GHz(600MHz DDR)のリファレンスカードと比べると,コアで56MHz,メモリで150MHzと,いずれも約13%ほど高速に設定されている。
 そんなEN7800GTX TOPを冷却するために搭載しているのが,Arctic Cooling製の「NV Silencer 5」である。NV Silencer 5はGeForce 6800シリーズ用として実績のあるチップクーラーなので,GeForce 6800シリーズより発熱量の少ないGeForce 7800シリーズで利用したいと考えている人も少なくないと思うが,グラフィックスカードはチップクーラーを交換すると動作保証がなくなってしまう。その点,EN7800GTX TOPなら,ASUSTeKの保証付きでNV Silencer 5を利用できるというわけだ。

 

左:Extreme N7800GTX TOP/2DTHVの実機裏面。市販品であるNV Silencer 5を利用しているだけあって,ネジ留めは4か所のみ。メンテナンスは容易だ
右:NV Silencer 5を取り外してみた。グラフィックスチップとの接触部分にはシリコングリスが塗られ,メモリチップとの接触部分には熱伝導性ゴムが貼られているのが分かる

 

搭載するメモリチップ。動作に当たっては,グラフィックスBIOSから定格以上の電圧供給を行っているものと考えられる

 メモリクロックを聞いて,疑問に思う読者もいると思うので説明しておこう。搭載するグラフィックスメモリチップはSamsung ElectronicsのGDDR3 SDRAMで,型番は「K4J55323QF-GC16」。つまり,リファレンスカードに搭載しているものと同じである。K4J55323QF-GC16の動作保証は1.2GHzまでで,スペック上も1.25GHz動作が限界のはずだから,ASUSTeKが定格を超えて動作させていることになる。もちろん,ASUSTeKの動作保証が付くので,基本的にはこのオーバークロックに対して読者が気をもむ必要はない。

 出力端子はDVI-I×2,ビデオ×1(ビデオ入力としても利用可能)。付属のアダプタケーブルを利用すれば,HDTV出力やSビデオ出力,コンポジットビデオ出力も可能だ。  付属のゲームタイトルは「Second Sight」「Chaos League」「Xpand Rally」,SF FPS「Project:SnowBlind」,レースゲーム「Power Drome」の5本。すべて英語版フルバージョンとなっている。どれもここ1年以内のタイトルで,新しめではあるのだが,いかんせん地味なのが玉に瑕か。

 

■DOOM 3のフレームレートが最大約13%向上

 さて,ここからはその実力検証を行っていきたい。GeForce 7800 GTXのオーバークロック版だから,クロック分だけ順当な性能向上が期待できる。そこで,以下のに挙げるテスト環境で,GeForce 7800 GTXリファレンスカードと比較してみることにした。以下,垂直同期と解像度以外の設定を変更しない状態を「標準設定」,8倍(8x)のアンチエイリアシングと16倍(16x)の異方性フィルタリングを適用した状態を「8x AA&16x Anisotropic」と呼ぶことにして話を進める。

 

 

 まず「3DMark05 Build1.2.0」(以下3DMark05)の総合スコア(グラフ1,2)から見てみよう。GeForce 7800 GTXリファレンスカードの場合,標準設定における1024×768ドットのスコアが7640なのに対し,EN7800GTX TOPでは8584と,約12%向上している。他の条件でも,1割前後はスコアが向上しており,期待通りの性能を出しているといえるだろう。

 

グラフ1
グラフ2

 次に「DOOM 3」のTimedemoを利用し,グラフ3,4で平均フレームレートを比較してみると,標準設定の1024×768ドットや1280×1024ドットといった,グラフィックスチップに対する負荷の低い場合,EN7800GTX TOPとGeForce 7800 GTXリファレンスカードの差はそれほどないが,グラフィックスチップへの負荷が高くなる1600×1200ドットでは,7%の差が付いた。8x AA&16x Anisotropicを適用すると,解像度にかかわらずフレームレートが一律で約13%向上している。これは先ほど指摘したクロックの上昇率と同じ値であり,グラフィックスチップへの負荷が高くなると,上昇したクロックに見合ったパフォーマンス向上を得られているといえる。

 

グラフ3
グラフ4

 続いて,「TrackMania Sunrise」を利用したベンチマーク結果をグラフ5,6にまとめた。53秒程度で1周する「Paradise Island」というマップのリプレイを3周繰り返して実行し,その間の平均フレームレートを「Fraps 2.60」から得てスコアとしているが,同タイトルの場合,標準設定で4〜6%,8x AA&16x Anisotropic適用時で8〜10%ほど。こちらでは,標準設定でも一定の効果が得られたのが興味深い。ハイエンドのグラフィックスカードというと,高負荷&高解像度専用といったふうに捉えられがちだが,ゲームタイトルによっては,標準設定の通常解像度でも,GeForce 7800 GTXオーバークロックの効果は得られるというわけだ。

 

グラフ5
グラフ6

 

■リファレンスカードに比べて14℃の冷却効果

 性能向上は分かったが,せっかく隣接スロットをふさぐクーラーを搭載する以上は,冷却能力にも期待したいところ。そこで,ForceWareの温度モニター機能を利用して,温度変化をチェックしてみることにしよう。
 今回はPCを起動してから30分間放置した状態を「アイドル時」とし,3DMark05を30分間連続実行させた直後を「高負荷時」とした。計測時の室温は27℃で,テスト用システムはケースに入れず,バラックで計測している。
 結果はグラフ7に示したとおり。アイドル時で比較すると,GeForce 7800 GTXリファレンスカードが51℃なのに対し,EN7800GTX TOPでは42℃と,9℃低くなっている。また高負荷時には,リファレンスカードが76℃まで上昇しているのに対し,EN7800GTX TOPでは62℃までしか上昇していない。その差は実に14℃。NV Silencer 5が持つ冷却能力の高さがうかがい知れる。

 

グラフ7

 最後に,システム全体の消費電力を,ワットチェッカーで計測した結果を示す(グラフ8)。ここで計測しているのはあくまでシステム全体の消費電力だが,グラフィックスカード以外のパーツ構成は同じなので,その差はグラフィックスカードの消費電力の差と等しくなる。
 それを踏まえて見てみると,アイドル状態の消費電力はリファレンスカードとほぼ同じだが,3DMark05実行中のピーク消費電力はリファレンスカードよりも6Wながら大きい。これは,EN7800GTX TOPのコアクロックとメモリクロックが高いためだが,6Wであれば許容範囲といえるのではなかろうか。

 

グラフ8

 

■性能重視のヘビーゲーマーにお勧め

 EN7800GTX TOPは,ベンチマークテスト結果からわかるように,一般的なGeForce 7800 GTX搭載グラフィックスカードよりも,1割以上高い描画性能を実現している。現時点で最速のグラフィックスカードといって過言ではない。
 拡張スロットを2スロット占有するのが難点といえば難点だが,その分,クーラーの冷却性能は高いため,安心して利用できる。今回,厳密な騒音測定は行っていないが,実際にテストしながら聞いた印象では,騒音レベルはリファレンスカード付属のものと同程度かそれ以下といったところで,特別うるさくは感じなかった。
 実勢価格は6万8000円前後であり,通常のGeForce 7800 GTX搭載グラフィックスカードとの価格差がそれほどないから,コストパフォーマンスは悪くない。すでにGeForce 7800 GTX搭載グラフィックスカードを所有しているなら買い換える必要はないが,GeForce 6シリーズからの買い換えであれば,有力な選択肢となるだろう。