― レビュー ―
神社やガソリンスタンドも併設できるコンビニ経営シム新作
ザ・コンビニIV〜市場制覇〜
Text by 村上幸治
2005年6月21日

 

■原点に返りつつも規模とやり込み要素はアップ

 

今までのシリーズ作品をほぼ踏襲したメイン画面。お店の画面部分は大と小の2段階に切り替え表示可能だ
 日々いろいろな社会的機能を吸収して,言葉どおり便利になっていくコンビニエンスストア。そんなコンビニチェーンにスポットを当てたゲームが「ザ・コンビニ」シリーズであるが,このシリーズも初代が世に出てから今年で10周年を迎え,本物のコンビニ同様進化を遂げている。その最新作「ザ・コンビニVI〜市場制覇〜」を紹介しよう。
 改めて確認しておくと,同シリーズはプレイヤーがコンビニチェーンのオーナーとなってとある町に進出し,自分のコンビニチェーンを育てつつ,その町も一緒に育てていくといった内容のゲームだ。オーナーといってもお金の管理だけしていればよいわけではなく,コンビニ1店舗ずつに目を配って店舗内のレイアウトや取り扱い商品を決めたり,周囲にマンションや警察署などを誘致することでさらなる売り上げ増を狙ったりと,多岐にわたる仕事をこなす。パッと見簡単そうに見える画面ながら,奥の深い点がこのシリーズの人気の所以(ゆえん)といえるだろう。

 先に前作からの変更点についてまとめておきたい。まず,ザ・コンビニIIIで導入された,ランキング機能などのインターネット対応はなくなった。一つ一つのマップがすべてシナリオ選択形式になったのに加え,シナリオをクリアしないと次のシナリオが出現しない「コンクエスト方式」の進行が採用された。序盤は漠然とプレイしていてもクリアできる難度だが,プレイが進むにつれてクリア条件が厳しくなっていくので,初心者からシリーズを遊び尽くしている上級者まで楽しめる仕組みとなっている。
 次にゲーム中の変更点だが,まず目に留まるのは店員の雇用というルールがなくなった点だろう。シリーズ従来作品では,店員は履歴書でパラメータを見て雇っていたわけだが,今作では店舗を開店したときに,店長1人と店員2人が初期パラメータで配置される。人事異動システムもなくなっているので,例えば新店舗を開店したときに,すでに育っている店員をその店に配置換えする,といったことはできない。さらに困ったお客さんを「つまみ出す」コマンドもなくなったので,プレイヤーは今いる店員達がすべてを処理できるよう,より計画的に行動する必要が出たといえよう。
 計画性という観点でいえば,人事権を失った代わりにプレイヤーは経営支援機能たる「グラフ」「POS」を手に入れた。本作では売り上げや利益の額に加えて来店客数や客単価など,多岐にわたる項目をグラフ表示できる。自店舗だけでなくライバル店のデータも並列に表示できるほか,総店舗合計や平均での表示も可能だ。
 一方POSは最近の店舗経営に欠かせない管理機能だが,今作では棚単位での売り上げ数が表示でき,売れ筋の補強や品揃えの変更といった作業をサポートしてくれる。
 POS機能が追加され商品管理がしやすくなった半面,商品については新たにプレイヤーの頭を悩ませる要素も追加されている。「商品期限」がそれで,食品や雑誌など実社会で販売期間が決まっているものに対して,店頭に並べておける期限が設定されているのだ。期限が過ぎた商品は品切れ扱いとなり,そのぶん店員の補充作業が増える。食品の陳列に関しては,新アイテムとして「低温冷蔵庫」が登場しており,これを使えば期限を2倍に延ばすことも可能になっているが,維持費は割高だ。なかなか考えさせる要素となっている。

 

プレイするシナリオは表示されているものから選ぶ。シナリオを選んだ時点でそのシナリオのクリア条件と,クリア時のご褒美があらかじめ表示されるので,できるだけ高いランクでクリアできるようにがんばろう 誘致コマンドでは警察署や消防署を呼べるほか,遊園地や大学で来客を増やすことも可能

 

前作までと違って店員達に名前はなく,皆同じ扱いとなっている。店内での作業により個々のパラメータが上がっていくのを辛抱強く待つしかない。また,来店客についてもプレイヤーが直接つまみ出すことができなくなった 賞味期限を2倍に延ばす「低温冷蔵庫」。補充頻度を軽減し,スキルの低い店員が受けるクレームを減らせる

 

■特別アイテムや併設型店舗でバラエティある展開に


シナリオ3クリアのご褒美になっている「神社」。クリアランクにより出店の数やお札が追加され,売り上げに貢献するようになる
 コンクエスト方式となった今作では,最初に選べるマップは二つに限定されており,これをクリアしないと次のマップが選択できない。端的に言ってシナリオ1,2は基本を学ぶためのもの。明示的なチュートリアルステージは用意されないが,進めていくうちに学んでいけるのが本シリーズの良いところだ。
 シナリオを選択し,本店の場所を決めるところから始まるのはシリーズ歴代作品と同様ながら,優れた店員を選ぶといった要素のない今作では,防犯が初期の大きな課題になる。防犯の値が低い店舗では万引きが多発するだけでなく,ときに強盗や放火といった犯罪による被害が発生する。警察署や消防署の近くに出店するのも手だが,出店位置は発展の可能性をにらんで決め,自店の周りに警察署や消防署を誘致するのがオーソドックスだろう。誘致は3件まで同時に行えるので,優先度を考えながら進めていきたい。
 初期の来店客は近隣の人がメインとなる。この客層と売れ筋商品に密接な関係があるのも,本シリーズ通有のコンセプトだ。会社の近くであればお弁当類がよく売れるし,学校の付近であれば駄菓子が,民家に囲まれていれば野菜や肉類など生鮮食料品がよく売れるといった具合だ。道路に面した場所に店があれば,車を利用して来店する客も出てくるので売り上げが上がりやすい。
 シナリオクリアのご褒美としては,次のシナリオが出てくるのに加えて,特殊アイテムの追加も大きな要素となっている。シナリオ1ではごくごく普通のアイテムしか店頭に並べられないが(とはいっても今や音楽CDやらチケット販売機などは最初からある),クリアしたときのランクによって,次のプレイ時から使える特殊アイテムが開放されていく。例えばシナリオ1をクリアすると,肉まんやおにぎりのアップグレード版が,シナリオ2ではお店の防犯値を上げるアイテムが追加されるといった具合だ。ゲームを有利に進められるアイテムなので,積極的に活用していくのが吉だろう。

 シナリオを進めるにつれて「複合店舗」が登場するのが,今作のプレイ上最大の特徴といえるかもしれない。一番早い「神社」で,シナリオ3クリア後になるが,なかなか不思議な感じで興味深い。ちなみに神社のお賽銭やおみくじ,縁日の出店の売り上げなどコンビニ外での収入も,すべてお店の売り上げに加わるというのが複合店舗の特徴だ。なんとなくうさんくさい気もするが,必ずしもコンビニらしいコンビニに拘泥しないのは本シリーズの隠れた伝統だったりもする。

 シナリオにはそれぞれ,クリア時の成績によるランクが3段階用意され,もらえるアイテム数が異なる。低ランクで一旦クリアしても,同じシナリオに何度でもチャレンジできるし,シナリオをいくつかクリアしてアイテムを入手した状態から,前のシナリオをプレイすることも可能となっている。より高いランクでのクリア,より良いアイテムの獲得を目指してがんばるのがよいだろう。
 クリア条件を満たした後,そのままそのマップでのプレイを継続しても構わない。例えば街の人口がどこまで増えるか試してみたりといった,やや脇道気味のプレイも可能となっている。
 率直なところやや新機軸が足りない気もする今作だが,やり込み要素の多さや奥の深さは健在であり,すごい勢いで出入りするお客の波を見ているだけでちょっと楽しいところなど,全体の雰囲気ははきっちり引き継がれている。各種データがオープンになったぶん,より高度な"最適化"が求められるザ・コンビニを,ひさびさに楽しむのもよいだろう。

 

売り上げや利益の金額,来客数など多彩な情報の表示が可能なグラフ機能。自店舗だけでなくライバル店舗の情報も一緒に表示できるようになったのが,従来作品と大きく異なるポイントだ POSでは棚別売り上げ情報も表示可能。店舗情報ではほかに,日別・月別・年別での収支や来客数も見られる

 

店舗の防犯が低いと発生するのが火災や強盗,万引きだ。とくに火災や強盗では多額の損害を受けることになるので,できるだけ早く防犯の値を安心できるレベルにするのが当初の課題となる。また,これらが発生すると来客数にも大きな影響が出る

 

シナリオのクリア条件を満たすとひとまずクリア画面が表示され,入手したアイテムは次のプレイ時からすぐに使えるようになる。単価が高く設定されているなど有利なものが多いのでうまく活用したい 初心者向けの細かな解説も掲載されたオンラインマニュアル。初めてプレイする人は一読してから挑もう

 

タイトル ザ・コンビニIV〜市場制覇〜
開発元 マスターピース 発売元 サイバーフロント
発売日 2005/06/17 価格 6090円(税込)
 
動作環境 Windows Me/2000/XP,PentiumIII/700MHz以上(Pentium 4/1GHz以上推奨),メモリ 128MB以上(Windows XP環境では256MB以上推奨),HDD空き容量 約200MB以上(さらにインストール後OSが安定動作するための十分な空き容量があること)1024×768ドット・16ビットカラー以上が表示可能なビデオカード,上記OSに対応するすべてのサウンドカード

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