HalenのRTS講座 入門編

第一回 「RTSとは」

 「あれあれ,あっちの鉱山が攻撃されてる! こっちの街にも火の手が! もうこりごりだー」。リアルタイムストラテジー(RTS)は,なんであんなに難しいのだろう。広いマップで,分散した多くの作業を,大量のユニットを使って同時に行うなんて。1台のモニターと1個のマウスだけで,ましてや1個の脳だけで処理し切れるわけないじゃないか。負けるとやたら悔しいし。だからRTSなんて嫌い! もうやらない! という人はforGamer編集部にも結構いる。
 だが,本当にそれでいいのか。面白そうなRTSが続々登場しているというのに,すべてに背を向けていいのか。RTS名人は実際,1台のモニターと1個の脳だけで,まるでマウスを何個も操っているかのように複数の処理を同時にこなしている。きっと何か秘密があるに違いないのだ。というわけで,編集部でヒィヒィいいながら毎日Newsを書いているけど,実は「エイジ オブ ミソロジー」のアジアチャンプであらせられるHalenに,RTSのイロハを教えてもらうことにした。
 「RTSなんてもう顔も見たくない!」という苦いを思いをした人も,ここで名人にRTSを一から教えてもらい,苦手ジャンルを克服していこう。

 

 RTSは,大まかに言うと"リアルタイム"で資源などを獲得し,ユニットをコントロールして敵国の制圧を目指す,戦略性に富んだジャンルだ。有名な"エイジ オブ エンパイアシリーズ"あたりを想像してもらうと分かりやすいだろうか。
 ただタイトルごとに,戦闘に特化したものや国家構築に注力しているものなど,ひとえにRTSといっても千差万別。事実,手が付けにくいジャンルともいえる。ここではRTSの基本部分の紹介を主に,勝つためのポイントを紹介したいと思う。少しでもプレイの参考にしてもらえれば幸いだ。

マイクロソフト ライズ オブ ネイション 〜民族の興亡〜 拡張パック:皇帝と革命軍 ウォークラフトIII:フローズン・スローン マイクロソフト エイジ オブ ミソロジー 拡張パック:アトランティスの巨神たち
本作の特筆すべき要素,国境付近での戦い(手前に移っている赤い線)。国境を越えることで,さまざまなペナルティを負う。ちなみにオーラをまとっているのは,ボーナスをもたらすユニット"愛国者"だ オークのヒーロー「ブレードマスター」の究極技"ブレードストーム"を使用中のワンシーン。敵のユニットやクリープを倒していくことで,ヒーローはレベルが上昇し,高レベルの技を取得していく 必殺技的なゴッドパワーの存在が斬新な作品。画像はアトランティスの従神「アトラス」のゴッドパワーの内破と呼ばれるもの。派手なエフェクトで,ユニットと建物に強力なダメージを与える

RTSの根本は

北欧の主神は,資源の回収場として自由に移動させられる牛車を用いる。また建物を建設するのも労働ユニットではなく歩兵ユニット(AoM)

 ゲーム開始後にプレイヤーに委ねられる行動は,領地を開拓して自国を発展させていくこと。とりわけ大事なのが,この自国の発展作業だ。あらゆる工程で必須となる"資源"をどれだけ効率的に収集できるか,この自国の内政(いわば基盤)にかかっている。
 多くの人は,できる限り早期に軍事ユニットを生産し,敵国を攻めることこそRTSの本質だと考えているのではないだろうか? 例外もあるので一概にNoとは言えないが,ほとんどの場合は"内政基盤"の完成こそが勝利の鍵を握る。
 上記のことを踏まえると,つまり最初から軍事を広げる必要はないということになる。もっとも,この"内政第一"が通用しない「ウォークラフトIII」のようなタイトルも存在するのだが,基本的に大概のRTSは上記の概念が当てはまるのだ。
 ちなみに内政に関しては,次回「第2回 内政編」で詳しく掘り下げていきたい。

戦闘に臨む前に

ナイトエルフ陣営は,建物が意思を持っている。根上げをすることで根を地面からひきあげ,攻撃ユニットになるのだ。これがまた強力(WC3)

 まずは「内政に注力する」ということを説明した。内政基盤が完成したら,いよいよ次は戦闘だ。大大大前提として,取扱説明書またはユニットツリーに目を通すのを怠らないこと。軍事ユニットのスペックは,MMORPGでいうならばスキルの詳細と同じようなもので,「何も分からないが,なんとなく」の気持ちでユニットを作るのは非常にまずい。これこそ,初心者が勝てない原因と断言してしまってもいい。
 RTSは経験した時間が多いほど上達するといわれているが,これは情報を十分に理解しているからである。もちろんゲームに慣れてくるということもあるだろうが,ユニットやテクノロジーなど,もろもろを把握しているかどうかは重要なポイントだ。これから始めるゲームの説明書は,必ず読むべし,だ。
 ちなみに戦闘の極意に関しては,「第3回 戦闘編」をお楽しみに。

RTSの傾向

ヒーローはクリープ(モンスター)や敵ユニットを倒すことでのレベルが上がり,能力が上昇するほか強力なスキルを取得できる(WC3)

 こうしている間にも,多くのタイトルがリリースされているRTS。だがほかのジャンルと同様,人気が集まるタイトルはやはり限られている。現在,名実共に3大RTSタイトルとして君臨しているのが,「エイジ オブ ミソロジー」「ライズ オブ ネイション」「ウォークラフトIII」シリーズだろう。これらのタイトルのどこが目を惹くのか……もちろんブランド力もあるだろうが,個人的にはRTSにプラスアルファを加えているからではないかと思う。成長要素(RPG要素)を加えているものや,ターン制概念を盛り込んでいるもの,遊び方は一般的なRTSと同じだが,受ける印象はまったく異なる。それぞれのタイトルの詳細はここでは割愛させていただくが,目を通してみたい人は,それぞれのリンク先からどうぞ。
 ユーザー数が多い(=コミュニティも活発になる)ことをみても,これらのタイトルは新規ユーザーにもオススメといえる。

マルチプレイを遊ばずしてRTSの新の姿は見えない

本作は時代を進化させることで核兵器が登場する。強力だが,あまり使用しすぎると全員がゲームオーバーになるという禁断の兵器(RoN)

 さて,そんなRTSの醍醐味は,やはりマルチプレイにある。同じ行動ばかりを行うコンピュータを相手に戦うよりは,さまざまな考え方,戦略を持った生身の人間と遊ぶほうが面白い。それは開発側の意図でもあり,事実どのタイトルにせよ,行き着くところはマルチプレイだ。
 ……と,このように"戦略の宝庫"といっても過言ではないRTSは,プレイヤーの数だけ戦略が存在する,非常に奥深いジャンルである。今後の攻略記事では,RTSを内政編,戦闘編,戦略編の3つのパートに分けて,"何が重要で,何をするべきか"ということについて追求していきたいと思う。

 


「ウォークラフトIII:フローズン・スローン」のゲームサーバー"Battle.net"。常に多くのプレイヤーが遊んでいる 「エイジ オブ ミソロジー」のゲームサーバー"ESO"は,シンプルなインタフェースで,初心者でもとっつきやすい構造をしている 「ウォークラフトIII」で登場する資源は,金と木のみ。内政概念を簡略化し,どちらかといえば戦闘に特化した作品といえる

 

■■Halen(4Gamer編集部)■■
バンドマンを経て,「マイクロソフト エイジ オブ エンパイア II 拡張パック:覇者たちの光陰」の世界チャンピオン(2002年),「マイクロソフト エイジ オブ ミソロジー」のアジアチャンピオン(2003年)というタイトルを獲得。そして現在はforGamer編集部のライティングスタッフという,なんというか,頂点から転げ落ちている若者。

▲上に戻る

連載記事一覧

4Gamer.net