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"お馴染み"の拡張キットが天下創世にも登場!

信長の野望・天下創世 パワーアップキット
Text by キーオ林
11th May. 2004

気になるパワーアップの内容は……?

天下PUKは,プレイヤーの意見や要望をもとにゲームバランスの調整が行われており,軍事コマンド"決戦"も「あり」「拒否可能」「なし」の三つから選んでプレイできるようになった

 コーエーの25周年(2003年のことだが)を飾った"信長の野望シリーズ"第11作の「信長の野望・天下創世」は,RTS風の合戦と,一見箱庭ゲーム「トロピコ」風(?)の城下町育て(内政)が中心の戦国ストラテジーだ(天下創世のレビュー記事は「こちら」)。
 コーエーの歴史ゲームといえば,拡張パック"パワーアップキット"が発売されるのがもはやお約束となっているが,今作でもそのパターンはしっかりと継承され,「信長の野望・天下創世 パワーアップキット」(以下,天下PUK)が2004年4月に発売された。

 天下PUKでは,新たなシナリオ3本と歴史イベント約50種類,武将100人が追加され,さらにはルールやプレイ設定の追加と改変,合戦や領地,武将などのエディタ機能の追加,そして天下PUKでのみ遊べる「合戦トライアル」の追加と,天下創世を遊び倒したという人でも新たな気分で遊べる内容となっている。
 では,パワーアップの個々の内容を見ていこう。
 天下PUKで新たに追加されたシナリオは,「1584年 小牧長久手合戦」「1590年 正宗反攻」「1600年 関ヶ原合戦」の3本だ。年代を見れば分かる通り,すべて本能寺の変以降……すなわち織田信長の死後のものとなっており,当たり前だが信長が武将として登場することはない。「信長の野望なのに信長出てこないじゃん!」とツッコミの一つも入れたくなるところではあるが,それはこの3シナリオに限ったことではないし,戦国ゲームとして面白ければそれでOKだ。
 しかしせっかく前作「信長の野望・蒼天録」のパワーアップキットでは北条早雲や細川政元など,信長誕生以前に活躍した武将が登場するシナリオがあっただけに,天下PUKにそれがないのはちょっと残念に思える。

新シナリオは史実2本,仮想1本。武将エディタで作成したオリジナルの武将でのプレイももちろん可能 家宝エディタにより,珍妙な家宝を作り出すことも可能。ただ所有者を決められないのはちょっと不便かも

オリジナルの武将を作成するときは,誕生年と寿命に注意。シナリオにきちんと合わせて設定すべし カメラの位置にも変更が加えられ,城下町をより高い位置から見下ろせるようになっている


新施設によって内政がガラリと変わる

施設を任意に建設できるのはやはり嬉しい。投資よりお金がかかるが,見返りも大きいのである

 オリジナル版では"初級"と"上級"の二つしかなかった難易度は,天下PUKを導入することによって"入門"(初級より簡単)と"超級"(上級より難しい)で遊ぶことも可能となる。
 だが個人的には,雨鉄砲や長槍などの「上級兵種」や「決戦コマンド」「城郭の自動発展」「遠い城からの出陣」の使用選択が可能になった点や,普請コマンド(内政コマンド内の"開発・投資"が独立して変更されたもの),新施設の追加などのほうが,より重要に感じられる。これらによって内政も合戦も,オリジナル版からかなりの変化が出る。とくに内政に関しては,新施設を利用するのとしないのとではプレイの仕方がずいぶん変わってくるのだ。

 例えば"公家町・大社"という町並みには学問所という新施設を建てられる。この施設の特殊効果は「未行動武将の政治・教養の経験値が1時節1軒につき1ずつ上がる」というもので,城下町内に学問所を大量に作れば,合戦に使うにも内政に使うにも中途半端な能力の武将を,しばらく放置するだけで内政のエキスパートに育てられるわけだ。
 オリジナル版では,施設は元からある町並みに投資するとランダムに建ったのだが,天下PUKでは普請コマンド内にある"建設"を実行すれば,自由に施設を建てられるのだから,なおさらである。

 だが,実はだからといってそう簡単に自分の領地を好みの施設だらけにすることはできない。オリジナル版では土地への適正と町並み同士の相性だけで町並みの発展のしやすさが決定されていたが,天下PUKでは,さらに領地と町並みの相性(適性)という要素が追加されている。
 内政にすこぶる役に立つ施設は,この適性が良くないと建設できないのだ。そのため,自分が建てたい施設の適性が合う土地を最優先で落としに行く,などの戦略も場合によっては必要となってくる。なんだかこれはこれでちょっと本末転倒っぽい気もするが,領地を奪い合うストラテジーゲームとしての面白さは格段に増しているように感じられる
 そのほかにも合戦に役立つ練兵所などの施設や,治水を1時節1軒につき1上げられる水車など,役立つ新施設は山盛りである。町造りの楽しさはオリジナル版よりかなり上といっていいだろう。

町の開発は慎重に適性を見て決めていきたい。無茶な都市計画を立てたところで,頓挫するのがオチだ 領地エディタを使えば,適性に関係なく施設が建設できるが,やりすぎるとゲームとしての楽しみは薄れる

新しいプレイ設定は,プレイ内容にかなり影響する。試しに「遠い城からの出陣」を不可能にするなどしてみよう 欲をいえば,兵士の輸送の可能/不可能も設定できるようにしてほしかったが,このあたりは天下創世から変更ナシ 武将の政治能力が低いと,施設の建築に時間がかかる。理想の町造りには,とにかく根気が必要なのである

合戦トライアルで厳しい戦いを追体験

それぞれの武将の合戦の遍歴を追っていく合戦トライアル。短時間しかプレイできないときなどに最適かも

 新たに加えられた「合戦トライアル」は,内政は一切ナシで,ひたすら合戦のみを戦い抜くモードだ。「織田信長編」「豊臣秀吉編」「徳川家康編」「武田信玄編」「日本史編」の五つに分かれており,それぞれ合戦を順番に突破していくというものになっている(ちなみに「日本史編」は,平安後期から室町中期までの日本の代表的な合戦が取り上げられている。まさか信長の野望シリーズで源平合戦が遊べるとは思わなかった)。

 天下創世は内政に比べると合戦が物足りない感があるのだが(要は簡単すぎるのだ),この合戦トライアルモードでは,例えば「織田信長編」の「本能寺の変」など,かなりシビアな条件で戦わなければならない合戦がいくつもあり,結構な歯ごたえがある。合戦に勝利すると銅から金までのランクが表示されるのだが,全部の合戦を金で勝ち抜くのはかなり困難だろう。……というか実際問題,家康編の「大阪の陣」を金でクリアできるんですか,これ?

 合戦トライアルは,自分で合戦エディタで作ったデータを登録してオリジナルのものを作成できるので,シビアな合戦を大量に作り,友達などにプレイさせてみるのも一興かもしれない。

 と,駆け足で天下PUKの新要素を紹介してきたが,天下創世の2大要素といえる内政と合戦は,内政は本編で,合戦はトライアルモードで,それぞれに新たな楽しみを見い出すことができた。
 残念ながら天下創世のレビュー「こちら」で著者(Iwahama氏)が希望したマルチプレイモードは天下PUKでは追加されなかったが,とりあえず天下PUKにより,天下創世がより楽しくプレイできるのは事実である。
 本編と拡張パックが同梱された「信長の野望 天下創世 with パワーアップキット」の価格は税込みで1万4490円。お世辞にも「安い」とはいえない価格ではあるが,シナリオ7本と合戦トライアル全編をクリアしようとすれば,膨大な時間がかかるわけで,コストパフォーマンスでいえばそこそこなのではないだろうか。ただしスムースにゲームを楽しむにはそこそこのマシンスペックが必要となる(できればギガバイトクラスのCPUがほしいところ)ので,その点は各自で注意していただきたい。

ただクリアするだけならさほどではない合戦も,金ランクを狙うとなると結構難しくなったりする 本能寺の変など,史実では敗北した合戦の難度はやはり高いものとなる。歴史を変えることができるか? 戦国時代以前の合戦はかなり新鮮。合戦トライアルだけでなく本編であっても良かったかも……

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■メーカー:コーエー
■問い合わせ先:コーエー TEL 045-561-6861
■価格:5800円(with パワーアップキットは1万3800円)
■動作環境:Windows 98/Me/2000/XP,PentiumIII/700MHz以上(PentiumIII/866MHz以上推奨),メモリ 192MB以上(256MB以上推奨),空きHDD容量 天下創世本体とは別に400MB以上(計1.9GB以上),メモリ16MB以上搭載したビデオカード,DirectX 8.1b以降
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