アクション 4Gamer.net Review
 
闇にまぎれて潜入せよ!
トム・クランシーシリーズ
スプリンターセル パンドラトゥモロー
日本語マニュアル版
Text by 松本隆一
30th Apr. 2004


過酷な国際諜報戦の最前線に再びあの男が立つ

東シナ海(だと思う)に沈む夕日。凪いだ海。潮風まで感じられそうだ。さあ,夜はサム・フィッシャーの時間だ

 彼が帰ってきた。ぴっちりしたスーツに身を包み,暗いところが大好きで,体脂肪率5%以下(当社推定)の,あの中年男が帰ってきたのだ。男の名前はサム・フィッシャー。秘密が多いことで有名なアメリカ国家安全保障局(NSA)に極秘に組織された,秘密機関サードエシェロンの秘密工作員だ。彼の任務は,単独で敵組織の内部深くに潜入し,情報の収集,暗殺,誘拐など,大きな声ではいえないような仕事をこっそり行なうことである。今回の敵は,東チモールで反米武装勢力を率いるカリスマ指導者を排除し,秘密計画"パンドラ・トゥモロー"を阻止することだ!
 2003年2月に発売され,その硬派な設定と最先端のグラフィックス,そして異色のスニーキングアクションが話題になった前作「スプリンターセル」(日本語マニュアル版と完全日本語版が発売中)に,約1年の時を経て,続編「スプリンターセル パンドラトゥモロー 日本語マニュアル版」が登場した。トム・クランシーシリーズといえば,彼の小説を基にした「レインボーシックス」が有名だが,スプリンターセルは設定,キャラクター共にゲームだけのオリジナル。制作と発売は前作同様,Ubi Soft(日本語マニュアル版はユービーアイソフト)だ。
 前作は「スニークものなんて,面白いの?」という前評判をスカッと覆し,世界中で大ヒットした。オリジナルのXbox,PCだけでなく,PS2,ゲームキューブ,はてはゲームボーイアドバンス(さすがにゲーム性は全然違うけど)にまで移植されるほどの人気を獲得し,一躍サムは同社のドル箱スターに躍進したのである。
 かくいう私もハマった一人で,ほぼ全マップ「殺さず,殴り倒しのみ」でフィニッシュできるようになった。中ボスまで殴り倒しちゃうんだぜ。というわけで,全世界の羽交い締めマニア,殴り倒しマニア期待の新作,箱を開ける手ももどかしく,起動してみよう。

ぶら下がりは基本中の基本。思いがけないルートを使い,敵の背後にこっそり忍び寄ることができる ラペリングを使って潜入するサム。ジャンプを併用してすばやく降下することもできるし,降下中に銃も撃てる スプリットジャンプで獲物を待つ。敵の真上から飛び降りればノックアウトできるが,タイミングが難しい

背後からの羽交い締めはスプリンターセルの醍醐味。接近の緊張感とうまくいったときの快感は病みつきになる 敵の士官をグラブして,網膜スキャナをパスすることも可能。撃ったり気絶させてはいけないので面倒だ パイプから逆さにぶら下がりながら発砲できる。普通,頭に血が上るが,サムは訓練しているので大丈夫だ


さらに多彩に,さらに華麗に,進化したサム・フィッシャー

相手の眉間に照準を合わせ,プシュ! 何が起こったかも分からず崩れ落ちる敵。スパイの戦いは非情である

 画面写真を見てすぐお分かりのように,シングルプレイは三人称スタイル。これだと自分の位置が暗いかどうか確認しやすく,またカメラの位置を頻繁に変えることによって,サムを動かすことなく背後や曲り角の先を確認できるのでスニークに便利だ。移動のときにちょっと混乱するかもしれないが,すぐに慣れる。
 三人称視点の欠点は銃撃の難しさだが,ここでは銃を構えることによって視点が固定され,いくらか撃ちやすくなっている。また,前作で難しいと評判だったスナイプだが,今回は呼吸を止めることでスコープがやや固定され,狙撃精度を上げることができる。とはいえ,ミッションの基本は銃撃ではなく,闇にまぎれてコッソリと倒すことだ。
 それを可能にするお楽しみのサムのアクションだが,今回は若干変更されている。まず,どこに飛んでいくか分からない二段ジャンプができなくなり,その代わりハーフスプリットジャンプからもう一回ジャンプして,より高い場所に飛びつけるようになった。また,パイプにしがみついた状態から武器を選択すると,逆さにぶら下がった状態になって銃を撃つ。ただ,パイプ移動に関してはキーアサインが変更されているので,前作のつもりで操作すると,サム墜落。ぺっちゃんこ。なんてことも起きるから要注意。
 極めつけはSWATターンだ。これは壁に張り付いた状態でドアの前をすり抜けるテクニックで,かっこいいったらありゃしない。SWATターンやりたさに,用もないのに同じ場所を行ったり来たりしたのは,たぶん私だけか。また,口笛を吹いて敵の注意を引き付けることもできるようになり,これも効果大。
 ほかの動きはほぼ前作に準ずるが,「あれ,おっかしいな。こんなの見つかっちゃうよ」というときは,たぶん新規のアクションを使って切り抜ける局面なのだ。マニュアルを見ると,いろいろな動作があって難しそうだが,ゲームにおけるサムの実操作は非常に簡単で,このへんはコンシューマ出身だけのことはある。
 火器類に変化はないが,それぞれに命中度が高まった印象があり,サムの撃ち合いでの強さはかなり向上している。というか,前が弱すぎた気も。

驚くほどのディテールで描かれたジャングルを進むサム。とはいえ,通常画面ではさすがに動きが重くなる 空港内のテロリストの全員抹殺を命じられたサム。さる理由で体温がやや高めになっているのが奴らだ ご覧のように,濃いジャングルの前に立たれると敵が視認しにくい。サーマルと併用か,殴り倒すしかない

ダイナミックに生成される光と影がリアル感を高める。ゲーム中は,ほとんどナイトビジョン画面だろうけど 地上でサムを支援するコーエンと。ネオンサインの感じにご注目。サムのセリフはたまに非常にユーモラスだ 国際紛争の影に静かに立つスーパースパイ,サム・フィッシャー。年頃の娘のこともちょっと心配なお父さん


マルチプレイはゲーム性も操作法も画面も大きく違い,別のゲームといっていいほどだ。一粒で二度おいしい

驚くべき最先端のグラフィックスは,迫真のリアリティ

 評判のグラフィックスにはさらに磨きがかかっており,今回の売りである野外シーンのディテールはすごい。ジャングルの鬱蒼とした質感や,草むらをサムがかき分けて歩き,それにつれて草がなびいていく様子などというのは,ほかのゲームではなかなか見られない。前作同様,自分の影が自分に落ちるセルフシャドウ,光源の移動で影がダイナミックに変化するところなど,いま市場にある最新のFPSでも実現されていないテクニックが,惜しみなく投入されている。また,ゲーム中の8割はこの画面を見て過ごすことになるであろうナイドビジョンは,前作に比べザラメ感が増し,やや見にくくなった。とくに,ジャングルなどの複雑なオブジェクトの前に距離をおいて敵が立つと,背景にまぎれて視認しづらい。さらに,明るい光源を見るとゴーグルが対応し切れず,画面がしばらく真っ白になるというエフェクトが加えられた。サムの命に関わるほど面倒ではあるが,リアル感は抜群だ。
 とはいえ全体的にゲームの難度はやや下がった感じがある。前作ユーザーの意見や,ビギナーへの対応を図ったものだろう。スニーク状態が崩れても,最大3回までなら大丈夫(マップによって違うが)だったり,一定時間発見されなければ警戒レベルが下がったりと,システム上の変化もサムの作戦遂行に優しくなっている。

シングルでナイトビジョンに映る赤外線がマルチではサーマルビジョンに。統一してほしかった気も…… そこか! だが敵は逃げたあと。すばしっこい奴め。現段階では傭兵側のほうがかなり有利なような印象がある シングルに登場したND133を,中和したり奪ったりすることがスパイの目的。シングルに比べ,動作は速い

スプリンターセルならではのマルチプレイが楽しめる

 今回の最大の目玉は,マルチプレイが加えられたことだ。前作が完全にシングルに特化したゲームだったため,マルチプレイ追加の発表とともにさまざまな憶測が飛び交った。なにしろ,参加者全員がサムになれるのなら,どんなんなっちゃうのって感じ。結果としては最大4人までが参加でき,二人一組でスパイと傭兵に分かれ,目的を果たすか(スパイ側),その行動を阻止する(傭兵側)というシステムになっている。
 スパイにはガスやチャフグレネードなど非致死性の武器が多く,視点は三人称。対する傭兵の武器はアサルトライフルや地雷など致死性のものが多いが,視点は一人称で,複雑な動きはできないという,なかなかユニークな設定になっている。
 もともとXboxLiveのボイスチャットを前提に作られているし,なにしろ参加者がたったの4人なだけに,協調した行動が難しい。私自身は,いつも足手まといですいません,という感じである。また,キーアサインがシングルプレイとかなり変えられており,スパイでプレイすると「ありゃ,ありゃりゃ」となることもしばしばである。
 とはいえ,試みとしてはかなり斬新なので,プレイする価値は絶対にあるだろう。

 このように「パンドラトゥモロー」はスニークものが初めてというビギナーから,前作の熱烈ファンまで期待に違わない仕上がりになっている。映画音楽の名匠,ラロ・シフリンによるテーマ曲もめちゃくちゃかっこいいので,ぜひプレイしてほしい。さあ,今夜も国際諜報戦の最前線に立ち,暗いところをコソコソコソコソしよう。

このページを印刷する

▲上に戻る

■メーカー:ユービーアイソフト
■問い合わせ先:ユーザーサポート TEL 0570-040-401(祝祭日を除く月〜金 10〜18時)
■価格:7140円
■動作環境:ユービーアイソフトカスタマーサポート TEL 052-760-3691  (問い合わせ時間は,土日/祝祭日を除く11:00〜17:00) ■動作環境:Windows 98/Me/2000/XP,PentiumIII/1GHz以上(1.8GHz以上推奨),メモリ 128MB以上(512MB以上推奨),空きHDD容量 3GB以上,64MB以上のメモリを搭載したビデオカード(128MB以上推奨),DirectX 8.1以降
Screenshots集
体験版
forGamer内記事一覧

c 2004 Ubisoft Entertainment. All Rights Reserved.

http://www.4gamer.net/