ストラテジー 4Gamer.net Review
 
4本の新キャンペーンがRoNの真の魅力を教えてくれる

マイクロソフト ライズ オブ ネイション
〜民族の興亡〜 拡張パック:皇帝と革命軍

Text by Sluta
9th Jun. 2004


共和制,君主制,社会主義……「政体」がRoNを変える

登場民族は六つ増えて,計24種類になった

 「マイクロソフト ライズ オブ ネイション 〜民族の興亡〜 拡張パック:皇帝と革命軍」は,2003年7月に発売された「マイクロソフト ライズ オブ ネイション 〜民族の興亡〜」(以下,RoN)の公式拡張パックにあたる作品だ。
 まず本体について軽くおさらいしておこう。RoNは,太古の時代から現代まで,数千年に渡る人類の歴史を世界規模で描いたリアルタイムストラテジー(以下,RTS)。歴史RTSの代表作「エイジ オブ エンパイア」シリーズと,ターンベースストラテジーの傑作として名高い「シヴィライゼーション」シリーズの要素をうまく融合した作品と評されることが多く,RTS本来の魅力を損なわずにRTSでは実現困難だった「戦略性」にフォーカスしたゲームデザインが特徴だ

 そのRoNの拡張パックにあたる本作。数々の新要素が追加されるが,まずは新しく加わった民族から見ていこう。
 新しい民族は,アメリカ,オランダ,インド,ペルシャ,イロコイ(アメリカ先住民),ラコタ(アメリカ先住民)の6種類。それぞれの民族に与えられた特権は,"一つめの偉大な建造物を瞬時に建設できる"(アメリカ),"2個の首都を持つ"(ペルシャ),"畑が不要"(ラコタ)など,大胆な内容が目立つ。
 また各民族は,それぞれ数種類のユニークユニットを持っている。とくにインドとペルシャの象兵は,待ってましたという人も多いだろう。静止していると自動で塹壕を掘るアメリカの海兵隊や,オランダの武装した補給車など,従来のRoNの枠を超えた個性的なユニットも魅力的だ。
 これで本体の既存の18民族と合わせて合計24民族となり,アジアから南北アメリカまで,ほぼ全世界の主な民族を網羅したといえる。

 本作から加わった新要素の中でも,とりわけ「政体」システムは非常に重要だ。これは"議事堂"という新たな建物で研究するテクノロジーのようなもので,三つの時代の節目に,それぞれ2種の政治体制のどちらかを選んでいく。具体的には,古代に独裁制か共和制,ルネサンスに君主制か民主主義,産業革命時代に資本主義か社会主義を,それぞれどちらか選ぶことになる。
 各政体は,さまざまなボーナスをもたらす。"独裁制"は軍事テクノロジーの研究や軍事ユニットの生産がコストダウンし,もう一方の"共和制"は経済の規模がアップするといった具合だ。これらを順に選んでいくわけだが,政体が移行しても,前政体の特徴を引き継いでいくのがポイント。長期戦の場合,先を見据えた選択が必要になる。
 また政体を選択すると,「愛国者」(リーダー)というユニットが議事堂から1体限定で出現する。愛国者は各政体のユニークユニットで,将軍の強化版のようなものだ。このユニットの能力も,政体の特色によって異なる。

象兵は古代では接近戦のみだが,時代が進むにつれて弓や銃も使う アメリカの海兵隊。輸送船での移動速度にもボーナスがある オランダは,商人,隊商,補給車がなんと武装している

ラコタは畑を作ることができない。食料は兵士や市民が自動で生産する 政体を選ぶ場所である議事堂は,建てた都市が首都になる。これにより遷都が可能になった 愛国者ユニットの存在は,ゲームプレイにかなりの影響を及ぼすだろう


これぞ歴史RTSの真骨頂。四つの新キャンペーンが面白い

ボードゲーム風のキャンペーンの戦略マップ。単純でありながら,なかなか奥が深い

 かつて筆者がRoNをプレイしながら思っていたのは,「せっかく歴史を題材にしたゲームなんだから,史実をモチーフにしたシナリオをプレイしたい」ということだった。RoN本体のシングルプレイは,一般的なクイックバトル以外には,世界地図を利用した,ただの"世界征服キャンペーン"しか存在しなかったのだ。
 拡張パックである本作では,史実をベースにした4本のキャンペーンが収録されている。それぞれを簡単に紹介しよう。

  • アレクサンドロス大王
    時は紀元前4世紀,マケドニアの王アレクサンドロス大王となって,西はローマ帝国,東はペルシャ,インドを征服する。ギリシャ傭兵というユニークユニットが使える。

  • ナポレオン
    18世紀末,フランスの一将軍であったナポレオンとなり,皇帝になってヨーロッパを征服するキャンペーン。皇宮警備隊というユニークユニットが使える。

  • 新世界(アメリカ開拓史)
    大航海時代の南北アメリカを舞台に,アメリカ先住民,ヨーロッパ諸国およびアメリカ合衆国として大陸の覇権をめぐり争う。なお,途中までネイティブアメリカンは騎兵に制限があり,ヨーロッパは人口に制限がある。

  • 冷戦
    アメリカかソビエトのどちらかを選び,20世紀後半の超大国として覇権を争う。朝鮮戦争やキューバ危機,フォークランド紛争といったものも再現されている。アメリカはハンビー,ソビエトは核弾頭潜水艦というユニークユニットが使える。

 どのキャンペーンも,侵攻ルートや外交面でプレイヤーに選択権がある一方,ときにはうまく組み込まれたスクリプト処理によってシナリオが展開していく。個々の戦いも,制限時間内に与えられた軍勢だけで目標を攻め落とすものや,逆に守り抜くもの,外交を駆使してクリアするものなど,バラエティがあって飽きさせない。
 史実上の有名な戦いも多く再現されている。史実に従うも良し,反するも良しで,自由度が高いためリプレイ性も高い。

アレクサンドロス大王のキャンペーンでは,大王自身のユニットが登場する キェンペーンは,史実に基づくストーリーが随所に散りばめられている ネイティブアメリカン同士で同盟を結んで,ヨーロッパ勢力をアメリカ大陸から駆逐しよう

有名な会戦がいくつもフィーチャーされている。仮想のものもある 朝鮮戦争さながらといった趣のワンシーン。ちなみにこれはあくまでも「治安維持活動」である 冷戦キャンペーンには,「諜報活動」という,スパイや特殊部隊が主役のミッションもある


期待を裏切らない完成度はさすがの一言

グラフィックス的なインパクトはイマイチなのが,本作の弱点といえば弱点だ

 ところで,「RoNはルールが複雑すぎる」という批評を各所で耳にする。実際に,複雑な進化過程,膨大なテクノロジー数,民族/ユニットの細かい特性など,覚えることがたくさんあって互いに入り組んでいるのは確かだ。
 だが本作の,とくにキャンペーンでの多様なゲームプレイを体験してみると,個々の細かい要素はRoNの面白さに不可欠のものであることに気づかされた。ただやみくもにいろいろなシステムを詰め込んでいるわけではなく,トータルで完成されたゲームシステムとして成立しているのだ。このゲームデザインのセンスはさすがの一言。やり込んでプレイして,本作の全体像をはっきりと把握してプレイできれば,より楽しめることは間違いないだろう。

 しかし欲をいえば,"いい意味で"裏切られる拡張パックであってほしかった。筆者としては,もっと大胆なゲームシステムの改良を期待していたのだが……。数々の新要素も,劇的にゲームプレイが革新されるとまではいえない。とくにRTSでは,新勢力,ユニット,シナリオ等を追加した拡張パックをリリースするというパターンは定着してしまっているだけに,なおさらである。
 とはいえ,本作によってRoNの面白さが増したのは間違いない。新キャンペーンによって,シングルプレイ重視の人にも広くアピールできる作品になっていると思う。元からRoNをプレイしている人はもちろん,まだプレイしたことがないという人にも,ぜひプレイしてほしい作品だ。

プレイヤーのやれることはすごく多いから,プレイヤーの数だけプレイスタイルがある。楽しみ方を限定されないところが,RoNの一番の魅力ではないかと思う

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■発売元:マイクロソフト
■価格:6090円(税込)
■問い合わせ先:マイクロソフト TEL 03-5454-2300
■動作環境:Windows 98/Me/2000/XP,PentiumIII/500MHz以上(PentiumIII/800MHz以上推奨),メモリ 128MB以上(256MB以上推奨),セットアップ時に必要な空きHDD容量 1GB以上,実行時に必要な空き容量 350MB以上,DirectX 9.0以降
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ムービー(5分28秒:58MB)
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