アクション 4Gamer.net Review
 
セクシーな女吸血鬼がすべてを吸い尽くす
痛快無比のホラーアクションゲーム
ブラッドレイン
Text by 山口伸一
16th Sep. 2004


人間と吸血鬼の血が混ざり合い,
一人の官能的な暗殺者が誕生する

レインは人間では成し得ないさまざまな攻撃方法を持つ。誰でもこれらのアクションを存分に満喫できるのだ

 今回紹介する「ブラッドレイン」(原題「BloodRayne」)は,三人称視点のホラーアクションゲームだ。女性主人公の"レイン"は,ヴァンパイアの父親と人間の母親の間に生まれたハーフ(ダンピール)という設定である。すなわちヴァンパイアの超人的な身体能力と,人間の知能の両方を併せ持つ強力なキャラクターだ。
 同じダンピールという設定の小説「吸血鬼ハンター"D"」と同様,レインは人間では到底不可能なアクションをいとも簡単に行え,それが本作の最大の魅力となっている

 まずは,本作のストーリーを簡単に紹介しておこう。
 ゲームの舞台となるのは1933年,第二次世界大戦が勃発する前のヨーロッパ。世界征服を目論むナチスドイツは,兵器に用いる超自然物質の研究を進めていた。一方,ナチスドイツに対抗する秘密組織「ブリムストーン・ソサエティ」は,ダンピールであるレインの能力に注目する。暗殺者の特殊訓練を受け「ブラッドレイン」として生まれ変わった彼女は,組織のエージェントとしてナチスドイツの要員を殺戮する任務を遂行してゆく……。
 このようにストーリーは少々シリアスだが,プレイした感触や雰囲気はそれほどでもなく,どちらかというと"B級ホラーアクション"と表現したほうが近いだろう。本作はPC用のみならずPlayStation 2用にも開発されており,そのため難度も比較的押さえられた作りとなっている。ヒロインであるレインの派手なアクションシーンを,誰でも手軽に楽しめるタイトルだ。

群をなして襲いかかってくるモンスターを次々に薙ぎ倒す。さまざまな特殊能力を使い分けるのが面白い 時には画面に収まりきらない巨大なボスも登場。足を切断してから本体を攻撃,といったような戦術性も 吸血鬼だけに,その攻撃方法は無慈悲そのもの。しかしそれをセクシーな女性が行うというギャップがたまらない
主人公のレインは,吸血鬼にふさわしい傲慢さともいえる誇り高さを持つ。チュートリアル時点で,すでにこの態度 これがターゲットとなるナチスドイツの要員リスト。レインの牙によって一人ずつ仕留めてゆくのだ 謎解きの要素はあるものの,各ステージの構成はシンプルな作り。あくまでもアクションに重点が置かれている


妖しく官能的な吸血アクションに代表される,
さまざまなレインの特殊能力

これが本作の最大の特徴である吸血。血を吸って満足そうにため息をつくレインは,いかにも女吸血鬼らしい

 本作の魅力は,なんといっても,ヒロインであるレインの人間離れしたアクションシーンにある。彼女の具体的な操作方法について紹介しておこう。ゲームの基本操作は,W/A/S/Dキーによる移動とSpaceバーでのジャンプ,それとマウスで方向転換及び武器の使用である。ほぼノーマルなFPSの仕様といえる。
 レインが主に用いる武器は,トンファーに巨大な刃物を据え付けた独特な形状もの。これを大きく振り回すようにして戦うのだ。また,それとは別に銃器類をサブウェポンとして使用可能。これらはショットガンやマシンガン,そしてダイナマイトといったものを中心に,30種近くが登場する。

 そして,ここからが本作ならではの醍醐味なのだが,レインは人間やゾンビといった二足歩行の敵に対しては「吸血」を行える。敵の首筋に牙を突き立て,生き血を吸い取り即死させてしまうのだ。これは通常の雑魚相手にはレジストの判定を行わず,同時にレインのヒットポイントを3割程度回復させるという一石二鳥の効果がある。今まで銃器を用いて敵を撃ちまくるタイトルは数多くあったが,嫌がる敵に飛びかかり有無を言わさず血を吸い取るのは,プレイしていて実に新鮮だ。

 次に特徴的なのは,レインが一時的に周囲の敵よりも素早く行動できるようになる,"ブラッドレイジ"という能力。これは,過去に映画「マトリックス」を発端としてPCゲーム「MAX PAYNE」などでも一躍有名になった"Bullet Time"システムに近いが,本作ではその最中に特別なコンボ技が可能になっている。
 両腕の刃物だけでなく,回し蹴りやサマーソルトキックなどを絡めながら,まるで空中を舞うように攻撃を繰り出すレインの姿は思わず見とれてしまう。普通の人間では到底不可能なアクションを,セクシーな女性がいとも簡単に行ってしまうギャップがとても面白い

 ほかにもレインならではの攻撃方法はある。その超人的な身体能力を用い,ジャンプ中にまるでドリルのように回転しながら突撃を行えるのだ。少々言葉では説明しづらいが,"ストリートファイター2"のダルシムが使っていたドリルアタックといえば分かるだろうか。
 これは移動や攻撃以外にも,もろくなった壁や鍵のかかったドアの破壊などさまざまな用途に使用できる。これを活用しないと先に進めないような仕掛けも多数用意されており,つまり本作は単純なアクションだけでなく,パズル的な要素も含んでいるのだ。

 「ハープーン」という遠隔武器もユニークである。これはチェーンの付いた投げナイフのような形状をしており,銃器類を持っていない状態でも遠隔攻撃が可能。しかも,このハープーンで狙った敵を手元に引き寄せて,先述の吸血アクションへと結びつけることもできるのだ。
 このように本作には数多くの攻撃方法が用意されている。そして,これらの中から状況に応じて選んでゆくのが面白い。例え同じステージでも,攻撃方法を変えればまた違った遊び方も見えてくるだろう。

「あぁ,神様……!」断末魔の声をあげる将校の首筋へ,牙を突き立てる。一方レインは,体力が全快してご満悦 ブラッドレイジ時は画面に赤い霧がかかり,全体がスローモーションに。いかにも血に飢えたレインらしい演出 自分だけが素早く動けるブラッドレイジは,対ボス戦にこそ真価を発揮する。使いどころを誤らないように
ドリルアタックは攻撃/移動だけでなく,壁に穴を開けることも可能。これを利用しないと先へ進めない場面も 2階まで垂直に飛び上がり,ドリルアタックで窓から侵入。本作にはパズル的要素もあるのだ ハープーンで敵を捕獲したあとに,吸血へつなげるコンボがとても強力。ぜひともマスターしたい
両腕に巨大なナイフをくくり付け,しかも両手にライフルまで持ってしまう。レインは吸血鬼ならではの怪力の持ち主 ステージの合間では,武器庫から銃器を強奪できる。強力な遠隔攻撃を行えるので,欠かさずに見つけておきたい それなりの数の銃器類が登場するが,使い分けは神経質にならなくてよい。本作の神髄はレインの肉弾戦能力だ



派手なアクションを手軽に味わえる,
コンシューマ的な作りのタイトル

 先述したように,本作はコンシューマ向けにも制作されている。そのため,あらゆる面においてハードルが低く作られていると,筆者は感じた。操作システムがジョイパッドによるプレイを前提としてあるし,また照準がアバウトでも自動的に補正してくれるシステムをも搭載しているのだ。
 ほかにも,高いところに張られた電線に飛び乗るといった,本来は微妙な操作が必要なアクションも,補正のために非常に簡単に行える。難度も低めで,攻撃ボタンを適当に押していくだけで案外さくさくと進めてしまうだろう。この理由としては,吸血アクションが攻撃と回復の両面において,あまりにも強力すぎるというのが大きい。

 つまり本作の醍醐味は,レインのグラフィックスと派手なアクションシーンにある。複雑なキー入力を必要とせずに,ブラッドレイジに代表されるレインの人間離れした身体能力を満喫できるのはとても面白い。例えるならば,対戦格闘ゲームで高難度のコンボ技を出す快感を,誰でも簡単に味わえるのだ。
 ただしその半面,緻密なキー操作によるアクション性を求める傾向のプレイヤーには,本作はあまり向かないだろう。

 グラフィックス面を重視したタイトルの割に,必要スペックがそれほど高くない点も注目すべきポイント。ちなみに同時発売のPlay Station2版は,当然解像度やテクスチャ面で制限があり,またグロテスクな描写にも規制がかかっているため,同タイトルといえどもレインの魅力が存分に発揮されているとは言い難いようだ。もし両方の検討している場合は,参考にしてほしい。

 本作は,良い意味でコンシューマ的な作りのホラーアクションゲームだ。ゲーム内の雰囲気も統一されており,例えばイベントシーンから垣間見えるレインのセリフ回し一つを取っても,まるで世の中を達観しているかのようなクールさがある。
 これらの点を踏まえたうえで,レインのきわどいグラフィックスに抵抗を感じなければ,きっと本作をプレイして損はないだろう。

三人称視点のアクションゲームにも関わらず,ジョイパッドでもプレイできるのは,PCゲーマーにさえもありがたい 電線の上を渡るような,慎重さを必要とするアクションは多い。だが移動時の自動補正があるため,ストレスは感じない 人間を超える能力を持つレインは,セリフ回しもクール。翻訳のセンスも良く,ゲームの世界観にどっぷりと浸れるだろう

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