ストラテジー 4Gamer.net Review
 
アメリカの西部開拓史を題材とした異色作
ノーマンズランド
Text by Sluta
29th Jul. 2004


北米大陸の派遣を争う王道システムのRTS

フル3Dグラフィックスはシームレスにズーム/回転が可能

 最近の「RTS」というジャンルの進化には,目を見張るものがある。さまざまな新機軸を打ち出してきたり,他ジャンルとの融合をしてみたりと進化の方向性は尽きないが,それをよそに「これぞRTSだ」といえるスタンダードな作品がズーから発売される。これから紹介する「ノーマンズランド」(以下,NML)も,そういった王道RTSの一つだ。
 NMLは,アメリカの西部開拓時代を舞台とするRTS。登場勢力はスペイン,イギリス,パトリオット(アメリカ),開拓者(アメリカ西部への移民たち),森林インディアン,平原インディアンの六つ。プレイヤーはこのうちの一つを担当し,アメリカ大陸の覇権をかけて戦うことになる。

 シングルプレイモードは,キャンペーン3本とフリープレイの2種類。キャンペーンは実際の歴史をモチーフにしているものの,かなり脚色が加わったドラマ仕立てのストーリー展開で,当時の「雰囲気」の再現に力点が置かれている。フリープレイは,プレイヤーが好きな勢力/マップ/設定でプレイできるゲームモード。既存のマップが20種程度用意されているほか,ランダムマップ生成機能も備えている。
 フリープレイでは,六つの特徴的なゲームモード(勝利条件)が用意されている。どちらかが滅びるまで戦う「デスマッチ」,特定のヒーローユニットが倒されたら負ける「エリミネートヒーロー」,マップ上の旗の占領数を競う「ドミネーション」,マップ中央部の1地点を奪い合う「キング・オブ・ザ・ヒル」,鉄道を建設する側,それを妨害する側に分かれて戦う「レイルロード・トラック」,最初に鉄道を完成させたプレイヤーが勝利する「鉄道建設レース」だ。
 とくに最後の二つは,今までになかったタイプ。線路の上を走る蒸気機関車は,ユニットを載せて輸送することができるほか,マップ外に走らせると援軍を連れて帰ってくるなど面白い趣向があり,プレイに斬新さを加味してくれる。
 マルチプレイでは,フリープレイと同じ六つのゲームモードを楽しめる。8人までの対戦ができ,LANかGameSpyArcadeによる接続に対応している。

カウボーイを操れば,気分は西部開拓時代。雰囲気はよく出ている グラフィックスは,コミカルな雰囲気を漂わせる。内容も結構コミカル 既存のマップのほか,ランダムマップ生成機能も備えているので長く楽しめそう

キャンペーンに時折挿入されるムービーは,演出もなかなか凝っている 「レイルロード・トラック」からの一コマ。列車が援軍を乗せて帰ってきた 「鉄道建設レース」では,もちろんお互いの妨害もアリ。防御は怠りなきよう


個性豊かなユニークユニット達がゲームを盛り上げる

開拓者のエリートユニットの一つ,「保安官」

 NMLのゲームシステムは,メジャーなRTSのシステムをそのまま踏襲している。労働者にあたるユニットを生産して資源を収集させ,その資源を使って建物を建て,軍事ユニットを生産し,戦うといったおなじみのものだ。マイクロソフトの"エイジシリーズ"や「ウォークラフトIII」,「コマンド&コンカー:ジェネラルズ」といった有名なRTSのシステムを思い浮かべてもらえれば良いだろう。中でも,とくに「ウォークラフト」を強烈に意識して作っていると見られる節が,各所に見られる。
 その一つといえるのが,ヒーローユニットの存在だ。NMLでは,実在の人物をモデルとしたヒーローユニットと,各勢力の特徴を色濃く反映したエリートユニットがそれぞれ存在する。例えばスペインのキャンペーンなら,カルビネスという船長がヒーローユニットで,エリートユニットには統治官,ガンマン,宣教師の3種類がある。エリートユニットとヒーローユニットは特性としてはほぼ同じもので,特殊技能を持ち,各々1体しか生産できないが,非常に高性能なユニットである。
 ちなみにエリートユニットは,アップグレードを施すことで特殊技能を増やしていける。ゲームは彼らを中心に展開することになるが,面白いのは,「賞金稼ぎ」という高価な暗殺者ユニットを雇うことによって,エリートユニットを簡単に倒すことができることだ。これにより,ゲームに独特の緊張感を生み出すことに成功している。
 NMLにおける特徴的なポイントを,ほかにも列挙しておこう。まず,騎兵は馬を降りることができる。馬と人間ユニットは別個のものとして存在しており,人間ユニットは馬に乗っているときと乗っていないときでは別々の個性を発揮する。例えばスペインの主力軍事ユニットであるコンキスタドールは,歩兵として存在しているときには射撃ユニットだが,馬に乗って騎兵となったら接近戦ユニットになる,といった具合である。敵が乗っていた馬を奪って乗るといったこともできる。
 ほかにも,市場での取引はちょっとずつ,しかも時間をかけてしか行えないので急な資源交換は出来ない点や,労働者ユニットには男と女があり男のみ戦闘に参加できる点,歩兵ユニットは種類によっては泳ぐことができ,川や海を渡ることが出来る点などは,ほかのRTSには珍しいユニークな特徴といえるだろう。

開拓者の「葬儀屋」は,死体から金を奪える イギリスの「ハンター」。隣にいるのは軍用犬 森林インディアンの「アニマルシャーマン」。動物を召還する

スペインの「宣教師」。悪魔祓いができる 平原インディアンの「酋長」。馬に乗れば高速移動が可能 馬に乗るのも降りるのも自由。敵の馬も奪える


「初めてのRTS」にふさわしい安心のクオリティ

横列,縦列,方陣,散開などの基本的な陣形をサポートしている

 NMLは,同社から一足先に発売されている「アメリカンコンクエスト」(AC)とジャンルも舞台もかぶるので,両者の違いについて少し述べておこう。まずACがアメリカ大陸全般を舞台とするのに対し,NMLは北アメリカ限定であり,アメリカ合衆国東海岸への植民や西部開拓の歴史にフォーカスした内容になっている。しかし,かといって史実的正確性に重点を置いているかというとそうでもなく,ACの硬派な作りに比べるとNMLはファンタジー要素もあり(魔術も登場する),コミカルな感じだ。
 そして肝心のゲームプレイは,ACは大量のユニットによる集団戦が中心なのに対し,NMLは個々のユニットの存在感や個性を際立たせる方向性だ。両者の作品としてのベクトルは全然異なるといっていいと思う。実際,NMLのプレイ感は上に述べたメジャーなRTS作品のものに近い。

 よって,RTSを何作もプレイしている熟練プレイヤーにとっては,本作は少々マンネリに感じられるかもしれない。NMLはこれまでのRTSの「いいとこどり」をして作られており,全体的な完成度は高いが,同時に,完全に従来の作品の延長線上にあり,安心してプレイできるものの,作品としての真新しさには欠けるのだ。
 見方を変えて書くならば,NMLは,RTS初心者にこそぜひお勧めしたい作品になっている。インターフェースなど操作性はしっかりしているし,グラフィックやサウンドも現行作品の中で遜色ない。全体的な難度も低めなので,これまでRTSになじみの薄かった人も,「入門編」として本作にチャレンジしてみてはいかがだろうか。

マップは地形も昼夜も天候もさまざま。ただしグラフィック上の変化のみで,実際のプレイに影響がないのは残念。例えば,昼夜で視界が異なるなどの変化があったら面白かったのだが

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■メーカー:ズー
■問い合わせ先:TEL 0268-38-1561
■価格:9240円(税込)
■動作環境:Windows 98/Me/2000/XP,PentiumIII/667MHz以上(PentiumIII/1.2GHz以上推奨),メモリ 128MB以上(256MB以上推奨),空きHDD容量 1GB以上,VRAM16MB以上搭載したビデオカード(32MB以上推奨),DirectX 9.0以降
■スクリーンショット集 #1#2
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