アクション 4Gamer.net Review
 
最先端技術で蘇った歴史的傑作FPS
DOOM 3 日本語マニュアル版
Text by 松本隆一
10th Aug. 2004


すべての始まりはDOOMにあり(中国の古い諺)

世界中が待っていた「DOOM 3」が,ついに我々の前に! 最先端のグラフィックス技術を駆使し,10年前の革新的ゲームを現代に蘇らせたのだ。前評判は大きいが,果たして内容は? ファンならずとも気にせずにはいられない

 1973年のオイルショックに続き,1993年と翌1994年に日本を襲ったのがDOOMショックである。と,個人的に思っている。「ウルフェンシュタイン3D」で,そこそこのヒットを出したテキサスの小さなデベロッパid Softwareが,同じようなシステムを使って開発した「DOOM」「DOOMU」が,たちまち世界中で大ヒットしたのだ。かくいう私も連日連夜プレイし,しまいにゃ気持ちが悪くなったものである。世界はこれを「DOOM酔い」と呼んだ。当時「FPS」なんて小粋な言葉もなかったから,原稿には「DOOM式のゲーム」と書いたものだが,上の人から「DOOMの新作が出たら,DOOM式のDOOMかい?」と励まされたりもした。個人的感慨で恐縮だが,懐かしい。

 そんなDOOMが,10年の沈黙を経て帰ってきたのだ。
 2001年にid Softwareから制作発表があって以来,実に4年間もじりじり待たされたあげく,ついに2004年8月,「DOOM 3」がリリースされたのである。現在,世界中で私と同じ感慨を持つ人は多いだろう。いわく「PCゲームやってて良かった!」。

 DOOM 3はDOOM IIの続編というより,現在の最先端グラフィックスおよびサウンド技術を全力投入してIIをリファインした作品だ。主人公は名無しで無口な宇宙海兵隊員で,火星の基地に赴任した途端,モンスターの大軍に襲われ,ほとんどの人間がゾンビ化。主人公は,ただ生き残るため孤立無援の戦いを強いられる。という,厄年以上にツイてない設定はほとんど同じ。
 ただ,3ではストーリー展開にもそれなりに力が入れられており,前作の「うっかり者の科学者がうっかり地獄の扉を開いてしまったのでモンスターが襲ってきた……んじゃないかな?」という弱めの設定(というか想像)も,今回は火星の古代文明に関係する面白いものになっている。10年めにして知る,「なんと,そういうことだったのか!」という驚きは,かなり新鮮。そのためムービーシーンもけっこう挿入されるのだが,当然字幕はないし,ログも取れないので,ちょっとばかり英語力が要求される
 また,主人公はPDAという情報端末を持ち,マップに落ちている別のPDAやビデオディスクを拾うことによって,さまざまな情報を追加できる。読んでみると,謎めいた実験結果だの思わせぶりな報告だのが書いてあって,かなりいい感じなのだが,やはり全面的に英語。中には「このウェブサイトにアクセスすれば,ロッカーのキーナンバーが分かる」などという報告もあり,ゲームを中断してアクセスしてみたら本当にナンバーが書いてあった,などというやや凝りすぎの情報もあったりするから困る。

序盤の戦闘シーンをいくつか紹介しよう。あ,オレこれに似たの知っている,というモンスターも多いかも。ちなみに使用PCスペックはAthronXP 2600+&GeForce5700 Ultra
光と影の雰囲気に注目。ライトを使わなければ何も見えない場所も多く,慣れるまで,やられまくりは必至。まさに光影がゲームの面白さを左右する時代ですな

この3点は無修正画像(ほかの画像はコントラスト補正済み)。基本的に,この暗さの中で戦わなきゃならない。しかもライトと銃を同時に使用することはできないから,怖いのなんの


地球を遠く離れ,たった一人で戦う男! またかい?

前作では金髪だったような気もするが,うしろに立っているのが主人公。なにしろ,ついてないヤツだ

 だが,「ストーリーなんてムード作りだぜ。DOOMは撃ちまくってなんぼ!」という男らしい人も多いだろう。私もそれ派。というわけで戦闘開始。
 火星基地のムードは抜群だが,細い廊下が複雑に入り組み,そのうえ所狭しと荷物が置いてあるので,撃ち合いになると逃げる余地がなく,正面切ってガンガン行くしかない。また,リーン(傾き撃ち)がなく,しかもモンスターの動きが実に素速く,あっという間に間合いを詰めてくるので,戦闘は非常に過酷なものになる
 おう,そうとも,10年前だってそんな風にして戦ったさ。なにしろ当時は「しゃがみ」も「ジャンプ」もなかったもん。という向きもあるだろうが,今回,敵の強さは前作の比ではない。敵の攻撃の当たり判定がデカく,遮蔽物の背後に隠れても結構ダメージを食う。ベレッタ1発で「むごー」と倒れてくれる前作ゾンビのような親切なやつはおらず,モンスターはどこからともなくテレポートしてくるから,気を付けていても挟み撃ちにされる。落ちている武器,弾薬類も少なく,調子に乗って撃っていると大物相手に懐中電灯で殴り掛からねばいけなくなる。このやろこのやろ!

 だが,最大の敵は暗闇だ。突然,暗くて見えない壁の奥が開いて中から敵が出てくることがしばしばあり,激しく心臓に悪い。フラッシュライトで照らさないと見えない場所も多いのに,ライトを持ちながらでは銃を撃てないという融通の利かない海兵隊員である。真っ暗闇に向かって乱射していては,弾がいくらあっても足りない。宇宙海兵隊員はしんどいなあ。
 そう,2の「痛快,撃ちまくり男」とはうって変わって,3の内容はホラー映画だ。
 突然電気が切れる,何かが壁を這い上がっていく,遠くで悲鳴が聞こえるなどなど,プレイヤーを怖がらせる演出が随所に施されていて,序盤から中盤にかけては本当に怖い。私もモニターの前で何度か「わ!」と声を出してしまったのだ。なんで? DOOMなのに。ハイテクグラフィックス技術である「リアルな光と影」を最も効果的に応用するために,宇宙ホラーを持ってきたのだ。しかもサウンドもかなりおどろおどろしく使われていて効果満点,うーん,やるなあ。トイレ行けなくなっちゃう。

 というわけで,戦いぶりはかなり変わったが,後半,武器類が揃い出すと,それなりに爽快な一斉射撃も出来るし,良さそうなアイテムを拾うと四方から敵が飛び出してくるといった,おなじみのトラップも残っているし,グロいし,武器もモンスターのデザインも基本的に前作を継承しているし(ああ,あんたら,たった10年でこんなにカッコ良くなっちゃって……)で,DOOMの血脈は確実に引き継いでいると思う。
 マップはゴチャゴチャしているが,基本的にはリニアな一本道。ゲーム内に出てくるPC画面の選択による分岐が数か所あり,リプレイ性を高めている。選んだコースによっては難度が割と変化する雰囲気。パズルもいくつかあるが,少数の例外を除いて,悩むようなものではない。でもクレーンのは,分かんなかったなあ。

 
孤立無援の戦いとはいえ,味方や生存者はいる。とくに歩哨ロボットはかなり心強い味方。持ち歩ければなぁ


必携! マスト! 買わない,という選択はあり得ない……はず

中盤から後半にかけて,意外な展開が待っている。とはいえ,DOOMプレイヤーには予想の範囲かも知れないが

 グラフィックスは,現在市場にあるゲームの中では間違いなく最高峰で,今後しばらくは,このゲームを基準にして語られることが多いだろう。技術的なことは良く分からないが,今のPCのグラフィックスって,その気になりゃこんなことまで出来るんだ,という驚きさえある。これはもう,月並みだが,自分の目で確かめてほしい。ただし,それだけにPCに対する要求は高め。快適にプレイしたかったら,それなりのCPUとビデオカードが必要だ。買い換えるなら,この機しかない!
 最後にマルチプレイについて少し。id Softwareは最初,DOOM 3はシングルプレイに特化したFPSになる,と明言していたが,やはり市場の要求に応えたのだろう,製品版にはマルチプレイモードも実装されている。最大4人まで参加可能で(中にはそれ以上の人数がいるサーバーもあるんだけど),本編に出てきた武器を使って戦うスポーツ系のマルチ,という感じで,シングルの雰囲気とはかなり違う。モードはデスマッチ,トーナメントなど,おなじみのものが4種類用意されている。
 というわけで,ちくしょう,出やがったぜ,DOOM 3。FPSというジャンルが完全に確立した現在,10年前のような「DOOMショック」までは望めないが,それでもグラフィックスの向上におけるインパクトは,やはり大きい。前作未プレイの人も,技術と資金と時間をふんだんに投入したら,こんなゲームになるのか,ということを確認する意味で,ぜひ遊んでほしい。もちろん,かつてDOOMにのめり込んだおじさんたちは,さっさと買ってこい! である。面白いよ。じゃ,火星で会おう。

PDAやヘルスを与えてくれるターミナルなど,新企画も多い。すべてのロッカーを開けずにはいられない私

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