プロデューサー & リードデザイナーインタビュー

Text by Iwahama
Photo by kiki

  大学時代の友人達とゲーム会社を立ち上げ,ゲーム業界に入る。のちにほかのゲームクリエイターからの刺激も必要だと考え,Origin社に入社。「Wing Commander III」「Wing Commander IV」「Crusader」などの開発に携わる。
 最初はゲームデザイナーだったが,リードデザイナー,そして現在はプロデューサーとしてウルティマ オンラインの開発を進めている。
 氏はたびたび来日するが,いつも仕事だけで終わってしまうので,次回こそもっとゆっくりしたいと語っていた。なお好きな日本食はみそ汁と枝豆。
 2000年にOriginに入社。それ以来ずっとウルティマ オンラインの開発にゲームデザイナーとして携わっている。
 具体的には,3作めの「ルネッサンス・エディション」から「第3の夜明け」「ブラックソンの復讐」「正邪の大陸」と携わり,今回の武刀の天地ではリードデザイナーを担当。
 実は彼は自他共に認める日本好きで,今回もらった名刺には,手書きで「ジョナサン・ルクラフト」とカタカナが書いてあったほど。
 自宅には本物の日本刀を飾っているそうだ。好きな日本食はお寿司,お菓子ならポッキー。

 実に7年もの間,MMORPG業界を引っ張り続けてきた「ウルティマ オンライン」(Ultima Online)。MMORPGに限らず,一つのPCゲームがこれほど長期に渡って遊ばれ続けるのはマレで,"大御所"という言葉では物足りないほどの本作だが,2004年11月3日にはさらなるエキスパンション「ウルティマ オンライン 武刀の天地」(Ultima Online:Samurai Empire)が発売されるなど,今なおどん欲なまでに進化を続けている。
 さて,先日「こちら」でお伝えしたように,10月13日,東京都にある増上寺で武刀の天地の発表会が行われた。この発表会のために来日した,本作のプロデューサーであるアンソニー・カストロ氏と,同リードデザイナーのジョナサン・ルクラフト氏に時間をいただいて,インタビューを行った。
 しかしインタビュー時点ですでに武刀の天地はゴールド(製品バージョン)になっており,拡張パックの情報も,あらかた出尽くした感があった。また今から本作の特徴を聞いたところで,2週間ほどで製品版が発売されてしまう。そこで今回は,武刀の天地を中心にしつつも,もっと長いスパンで見た,シリーズ全体の未来について聞いてきた。

 ところで,Origin Systemsのあるテキサス州オースチンの開発スタジオが2004年4月末に閉鎖されたことに伴い,彼らはカリフォルニア州のレッドウッドに引っ越したばかり。引っ越し前にカストロ氏は筆者に対して「バーベキューの回数が減って,その分寿司を食べるだろうから,健康になるかもね」なんて話していたが,見た感じ,さらにお腹が出ている模様。まずはそんなところから話を切り出してみた。


新天地で開発が続けられる超ロングヒットシリーズ

4Gamer:
 こんにちは。ルクラフトさんは初めましてですね。カストロさんは,もう何度めでしょうか? お久しぶりです。カルフォルニアはどうですか? あんまり痩せてはいないようですね?(笑)

カストロ氏:
 お寿司を食べ過ぎちゃったよ(笑)。あと,子供もいるから,ストレスで痩せられないなぁ。
 しかし引っ越し自体は,個人的には非常にエンジョイした。実はキャンピングカーを借りて,家族全員で,車でオースチンからレッドウッドまで行ったんだ。

4Gamer:
 え? かなりの距離ですよね。

カストロ氏:
 8日間かけてね(笑)。距離だと2000マイル以上になるかな。武刀の天地で新しいマップを追加したけど,この8日間の"冒険"での経験が生かされてるかもしれないね。
 プライベートはそんな感じで,大満足。そしてプロジェクトチームという意味でも凄くうまく行っていて,実際にレッドウッドに移ってから,スタッフは倍の人数になったよ。それにレッドウッドにはElectronic Artsのヘッドクォーターがあるから,何かと決定も早いし,横のつながりもあって,非常にいい感じだ。

4Gamer:
 なるほど,安心しました。それではウルティマ オンラインシリーズ(以下,UO)の話を聞いていきます。とはいえまずは,シリーズ7周年,および武刀の天地のマスターアップおめでとうございます。お二人は,なぜこれほど長い間,人気を継続できたと考えていますか?

カストロ氏:
 一つは,ゲームプレイ自体の奥の深さ。もう一つは,"permanent"(「不変の」「永続的な」という意味)だろう。プレイヤー達は,永久に本作に関わる感覚を味わえることだね。
 UOの場合は,ほかのゲームと違って,"そこにいる"という感覚が強く,それがコミュニティにつながっていく。ほかの多くのゲームは,画面上にほかのキャラクターがいても,それはただ単に"ほかのキャラクター"に過ぎない。しかしUOだと,そこにいるキャラクターのパーソナリティが,分かる。これは見え方の問題ではなく,UOの場合だけ,にじみ出るように分かるんだ。

ルクラフト氏:
 あと,やはりコミュニティがもの凄く重要だね。もちろんソロプレイもできるんだけど,実際にいろんな人のプレイの様子を見ていると,多くのプレイヤーがほかのプレイヤーと交流することに熱中している。こういったことができることが,UOの最大の魅力だろう。

4Gamer:
 それでは,UOがとくに日本でヒットしている理由はどう考えていますか? 全世界25万プレイヤーのうち,日本人が10万人というのはかなり高い比率ですよね。これはなぜでしょうか?

カストロ氏:
 一つは,ウルティマの世界観が日本人に受け入れられたからだろう。アート自体も,日本でもアメリカでも受け入れられるものだと思う。
 それに,本格的なMMORPGとしては,最初に楽しめるものだったという点は大きいだろう。しかもゲーム自体が,プレイヤーを逃がさない。そこにいざるを得ない,はまってしまうという要素を持っているからね。
 あと忘れてはいけないのが,EA Japan(エレクトロニック・アーツ)による良いサポートだ。彼らはプレイヤーをサポートするだけでなく,我々開発チームとも良いコミュニケーションを取っている。今回の武刀の天地という作品も,そういう形で出てきたものだよ。

  次のページへ

▲上に戻る

(C)2004 Electronic Arts Inc. Electronic Arts, EA, EA GAMES, the EA GAMES logo, Ultima and the UO logo are trademarks or registered trademarks of Electronic Arts Inc. in the U.S. and/or other countries. All rights reserved. EA GAME(TM) is an Electronic Arts(TM) brand.