| 第八回 出張
わいわいと徒党を組んで,あまり遠くないところで狩りをするのも楽しいが,そろそろ夜盗,草の者,間諜,こそ泥を狩り続ける生活から抜け出したいと本気で考えている。
甲斐をなかなか離れられない理由はいくつかある。一つは生産活動のしやすさだ。NPCベンダーからものを買う場合,まったく同じ品物でも他国で買うより自国で買ったほうが安い。"魅力"の低い筆者の侍の場合,足りない材料を買いそろえるのにかかるお金がこれまで以上に高くなる,どうしても立ちゆかなくなってしまう危険がある。
人口の多さも理由の一つだ。甲斐は,周辺諸国に比べるとダントツで人口密度が高い。徒党を組むのにも,アイテムを売り買いするのにも,この国は非常に便利なのである。"出奔"して"浪人"となったあとに他国であらためて"仕官"する,という選択もあるようだが,今は甲斐での身分も上がってきて,給料である"俸禄"も大切な収入源になってきている。いたずらに浪人になってしまうメリットがよく分からないので,二の足を踏んでしまうのだ。
でも周りの国も見てみたい。考えた末,とりあえず甲斐を本拠地にして,これまでよりも積極的に他国で活動することにした。
甲斐から道沿いに行ける国は,信濃,駿河,そして武蔵だ。まずは南の駿河に向かってみることにした。とくに深い理由はない。以前に一度買い物のために足を伸ばしたことがあるからというだけだ。
大きな門をくぐって駿河に入る。早速"検索"機能を使ってプレイヤー状況を調べると,うーん,やはり近いレベルのPCは甲斐に比べて少ない。しかし今日はここでやると決めたので"勧誘希望"状態にして徒党を探していると……対話がきた! 「廻し者やりませんか〜?」といった内容。廻し者! よし,聞いたことがない敵だ。仲間に入れてほしい旨を返信し,飛脚モード(飛脚,逃走術といった移動に有利な技能を実装すること。筆者が勝手に作った言葉なので使わないほうがいいです)にして,指定された場所へと向かう。
しかし,ホントにすぐに声をかけてもらえるゲームだ。"徒党が見つからなくてソロプレイ"なんてことは,これまでにほとんど記憶にない。まあこれは,侍という職業がいいのかもしれない。ちょっと足は遅いけど侍を選んで良かったなぁ。
廻し者ポイントは,相模との国境のそばだった。行ってみるとかなりの数のプレイヤーキャラクターがそこらじゅうにいる。聞けばここは人気スポットらしく,だいたいいつもこんな感じだそうだ。
獲物の取り合いになるのは避けたいなぁと思いつつ狩りを始めると,そんな心配は無用だということが分かった。敵の出現タイミングがかなり早く,またその数も多いのだ。体感としては,プレイヤーの数が増えれば増えるほど敵の数も増しているように見える。
そんなわけで,速いペースで狩りは進む。戦闘が終わった直後にそのまま次の戦闘に移ることも少なくない。生命力や気合を回復させる暇もないくらいだ。そんなとき党員の一人から「密智さん,"釣り野伏せ"ありますか?」と声をかけられた。
"釣り野伏せ"とは侍専用技能の一つで,敵に襲われる形で戦闘に入ったとき,党員全員の戦闘中における気合回復速度が上昇するというもの。このケースの場合,生命力は回復担当職の術で回復できるが,気合は常に不足気味になるため,釣り野伏せがあるととても助かるのだ。
で,このときの筆者の侍がこれを持っていたかというと,持っていなかった……。
信Onでは敵を倒して修得度を溜め,技能目録を"皆伝"に近づけていくことで技能を得る。目録にはいくつか系統があり,どの系統を伸ばしていくかで技能の修得順序は変わってくる。侍の場合,挑発や守護といった味方を守る技能がまとまった"侍之心得"系,連撃や二刀流など多様な攻撃方法が覚えられる"武芸書"系,火攻めや水攻めといった特殊な技能を得るための"軍学"系,大雑把に分けるとこの三つの系統の目録が存在する。
筆者の場合,優秀な「徒党の盾」になりたいという気持ちが強かったので,侍之心得系技能の修得は進んでいたが,軍学系技能の修得は遅れていた。釣り野伏せは軍学系技能だ。そんなわけで,このときは釣り野伏せがなかったのだ。
しかし! うっかり熊にかまれて死んだり,不良在庫を抱えて泣いたりとこのところパッとしなかった我が侍だが,このときは違った! どうも釣り野伏せが重要そうだということには少し前から気がついていたので,ちょっとずつ修業を進めていたのだ。あと数十分も戦えば覚えそうなところまできている。
そのことを伝えて20分ほど狩りを続けると,うまいこと釣り野伏せを覚えた。実装すると連続戦闘も続けやすくなって良い感じ。この技能は今後も頻繁に使うことになりそうである。
さらに狩りを続けたところで,党員の武器防具が消耗してきた。党内に修理のできる鍛冶屋がいなかったので,折を見てそれぞれが修理に走っていく。一度残留党員が数人になったときがあり,ちょっと戦闘はつらそうだということで,狩り場から離れ,休憩を取ることになった。
チャットしながらの休憩。しばらくしゃべっていると,修理に向かった党員から
「レベル36:1体山伏発見〜」
との連絡が。おお,山伏だ。野外活動目録をくれる例の人である。苦い思い出(「こちら」)が頭をよぎる。聞いてみれば,山伏に苦労させられたのは筆者だけではないようだ。
筆者の侍は二つある野外目録のうち一つめは皆伝し,二つめもすでに入手しているので,もう自分から山伏に会いにいく必要はない。しかし,このとき修理に出ていたもう一人の党員は,ちょうど二つめを欲しいと思っていたところらしい。発見した党員に「山伏のとこにいてー!!」と伝え,自身もそこに向かったようだ。無事に目録を得られれば何よりだと待っていたら,なにやら不穏なチャットが聞こえてきた。……どうも手に負えない敵に途中で襲われてしまったようだ。
「あああにげられない!」
と悲痛な声が聞こえるが,離れた場所で待機中のこちらは何もできない。声援は送るのだが,やはりそれではどうしようもないらしく,表示されている当人の生命力バーはみるみるうちに減っていく。
結局この党員はその場で死亡してしまった……。本当に山伏周辺には被害が絶えないようだ。侮りがたい男である。
事件はあったが,なんとか党員全員が元の場所に戻り,プレイは再開した。初めての敵である廻し者は,実際は夜盗などとそれほど変わったところはなかった。しかし訪れたことのない場所はやはり新鮮で楽しい。こんな具合に今後は行動範囲を甲斐の外にまで広げていこうと思う。
続きは,「こちら」
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