「土屋氏インタビュー」

土屋氏
■土屋 哲夫(つちや てつお)氏プロフィール
株式会社ナムコ 事業開発グループ LANエンターテインメント プロジェクトマネージャー。CS-NEOの仕掛け人で,元々は,大型のテーマパークやアトラクションの企画運営を行っていた。
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客単価

4G:
 とはいえ,ロケーションを抱えたサービスという意味では,お客さんからそれなりの金額を取らないと成り立たないですよね。そのへんは大丈夫なのでしょうか?

土屋氏:
 ここはもっとも懸念されていた部分で,私たちとしても内心ドキドキしていたのですが,現在のところはかなり高い客単価を実現できています。

4G:
 高単価というと,どのくらい?

土屋氏:
 現在,1時間900円という値段でも躊躇なくユーザーさんが遊んでくれている状況です。ヘビーユーザーともなると,一か月で6万円くらい使う人だっていますよ。

4G:
 6万円! でも,それは確かにあり得る話ですね,アーケードを考えても……

土屋氏:
 そうなんですよ。ゲームって,熱中してしまうと,いくらでもお金を使ってしまうパワーがあると思います。自分も昔はそういったプレイヤーの1人だったし,ゲームってそういうモノだったじゃないですか。
 今のオンラインゲーム……とくにMMORPGの多くは,何か"暇潰し"的な位置づけが強くなってしまっているような気がします。結果として,非常に安い金額じゃないとユーザーが付いてこない。でもゲームって,積極的に「遊びたい!」と思うようなエンターテインメントであるべきだと思うんです。LEDZONEが目指すのは,お客さんが「遊びたい!行きたい!」と思う空間ですね。

4G:
 いやいや,よく分かります。自分も「6万円じゃ済まない」くらいの人間でしたし(苦笑)。ところで話は変わるんですが,そんな現在の日本のオンラインゲーム市場についてはどう思われます?

土屋氏:
 怖いのは,定額制により時間をすべてMMORPGに吸い取られているところで,結果としてゲーム市場のパイを小さくしてしまっている点です。韓国のタイトルのビジネスモデルをそのまま真似るのではなくて,客単価を高める工夫,いろいろなゲーム/ジャンルの遊ばせ方の工夫をしていく必要があるのではないでしょうか。

4G:
 同感です。
 例えば「ウルティマオンライン」の初期の頃などは,ダイヤルアップ接続で通信コストが非常に高く,一か月遊ぶのに電話代が5万円を超えるようなコトだってざらでした。けどそんな状況でも,当時は数万人のプレイヤーを集めていたワケですからね。

土屋氏:
 そう。そうなんですよね。仮に月5万円払うユーザーが5万人いたとして,それらが半年遊んだとしたら,50000×50000×6か月 = 150億円ですよ。プレーステーション2のタイトルで換算すれば,約200万本級の経済効果。少なくともコアなゲームファンには,そういったパワーがあるわけです。もっとも,当時はそのお金のほとんどはゲーム会社以外に流れてしまったんですけど(苦笑)。

4G:
 月額1000円のユーザーを100万人集めることと,月に2万円払うユーザーを5万人集めること。どちらも同じ価値だぞ,ということですか。

土屋氏:
 そういうことです。そして我々の目指す方向性は後者ということなります。

4G:
 なるほど。では,最後にナムコがSteamの代理店になったことについて聞かせて下さい。

土屋氏:
 これはCS-NEOの絡みもあったので,ナムコがやることになりました。今はまだ詳しいことは言えないのですが,もちろん「Counter-Strike:Source」には興味があります。Sourceエンジンの利用も視野に入れながら,グラフィック周りの強化を検討していますよ。

4G:
 それは楽しみですね。今日はありがとうございました。



消費型

 今回のインタビューで印象的だったのは,土屋氏がCS-NEOを「消費され飽きられていくビデオゲーム」ではなく,ビリヤードやダーツ,将棋などと同じような「普遍的な遊び」として捉えている点だろう。つまり,LEDZONEは"CS-NEOという遊び"を提供しているのであって,「ゲームセンター」でも「ネットカフェ」でもないのである。
 「30秒で面白さが分からなければ」……そういった"過去の神話"にアンチテーゼを投げかけるナムコの取り組み。筆者には,ナムコがゲーム(CS-NEO)を"摩耗しない普遍的な遊び"と捉えることで,ゲームの新たなありようを模索しているように感じられる。新しい商品を投入し続ける消費型から,普遍的な面白さを追求し,またユーザーにその面白さを理解させていく"熟成型"へ,CS-NEOの目指す方向性とは,過去,日本の格闘ゲームが成し得なかった形なのかもしれない。

 日本でも急激に成長しつつあるオンラインゲーム市場。しかし,今後より大きな市場として成長をしていくにあたり,オンラインゲームは,今一度"ビジネスとしてのあり方"が問われる時期に差し掛かっているように見える。
 そういう意味では,このCS-NEOの試みはユニークかつチャレンジャブルなものであり,非常に興味深い。というのも,Counter-Strike自体すでにフリーに近い状態で遊べるバージョンが存在しながらも,アレンジして見せ方を変え,ターゲットユーザーを変え,そして"ゲームを楽しむために必要なサービス"を提供するなど,マーケティング/サービスの妙を駆使することで,ユーザーから一定の料金を徴収することに成功しているからである。実験店舗という特殊な例ではあるが,筆者は,これが示す意味は非常に大きなものなのではないかと感じている。スムースに設置数を増やしていけるのか,そしてCS-NEOを陳腐化しない遊びとして定着させていけるのか,LEDZONEの取り組みはこれからがむしろ正念場になるかと思われるが,今後もその動向に注目していきたいところだ。
 4Gamerの読者ならご存じのように,「MMORPG = オンラインゲーム」というワケではない。ほかのジャンル,ほかのスタイル,そしてほかのビジネスのあり方を,メーカーはもっと模索しなければならないだろう。いろいろなタイプ(ジャンル)の作品が登場し,多くの人のニーズを吸収できてこそ,オンラインゲームは「市場」として大きな成長が見込めるハズなのだ。



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→「Counter-Strike:Source」の当サイト内の記事一覧は,「こちら」
→「カウンターストライク」の当サイト内の記事一覧は,「こちら」
→「CS:コンディションゼロ 」の当サイト内の記事一覧は,「こちら」

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