Kim Hakkyu氏インタビュー

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 先日のCEDECを機に来日した,ラグナロクオンラインの制作者にして韓国オンラインゲーム業界に君臨するKim, Hakkyu氏。後発組にも関わらずその功績はもはや"偉業"として認識されており,若くして韓国ゲーム業界の重鎮の一人となった人物だ。
 来日するという情報をキャッチしてからコンタクトを取り続けていたのだが,CEDEC開催前の日曜日を丸々一日空けてもらうことに成功,ロングインタビューを行うチャンスを得ることができた。
 とはいえ,氏の新作「Granado Espada」に関しては,すでに独占インタビュー(「こちら」)を通じて"いま明かせる部分"はすべて明らかになっているし,あれから日が経っていないこともあり,新情報に関してはほぼ皆無といってもいいだろう。では,というので,せっかく長い時間をもらえたのを機に「Hakkyu氏の考えるオンラインゲーム制作の思想」についてとことんまで聞いてみた。
 以下に続く,クリエイターや代理店など業界人必読のインタビューは,時間に比例して相当長いものになってしまった。7ページにも及ぶ記事ではあるが,ぜひじっくりと読んでもらいたい。

  →Granado Espadaに関するHakkyu氏独占インタビューは「こちら」
  →Granado Espadaに関する情報一覧は「こちら」




     〜念入りに調査してから決めた絵柄なんですよ,あれ

4Gamer編集部(以下,4G):
【Granado Espada】

 前回の韓国での「Granado Espada」のインタビュー,ありがとうございました(「こちら」参照)。最近もコーラガブ飲み中ですか?(笑)

Kim HakKyu氏(以下,Hakkyu):
 いえいえ。さすがに飲みすぎでちょっと肌が……(笑)。タンクまで買ったんですけど,最近はポカリスエットに変えました。

4G:
 ところで,さすがにあれから時間もそんなに経ってないし新情報ってないと思うんですけど,"8月中の正式発表"ってどうなっちゃったんですか?

Hakkyu:
 う,すいません。やっぱり発表時点ではよりいいものを見せたいので遅れちゃってます。

4G:
 コンシューマゲーム雑誌的に質問すると,開発進行度って何%くらいなんですか?

Hakkyu:
 そういう質問には,いつも「50%」と答えることにしてます(笑)。自分でもよく分からないし。早く発表しなきゃ,とは思うんですけど,次々次々やりたいことが出てくるんですよね,困ったことに……。

4G:
 一つだけ改めて聞いておきたいんですけど,どんなプレイヤー層を目指して作ってるんですか? すごく斬新なゲームなので,そのへん,ちょっと興味あるんですよ。

Hakkyu:
 ターゲットは20歳代ですね。いわゆるコア層がターゲットです。なにせMMORPGというものは,核となるコアプレイヤーさえ付いてきてくれれば,必ずあとからライトユーザーもついてきてくれるものなのです。

4G:
 コアを中心にしてどんどん伝わっていく,ということですね。

Hakkyu:
 そうです,そうです。紙に水を垂らしたときのように,じわりじわりと広がっていきます。いきなりライトユーザーをターゲットにしても,まぁたいがいの場合は成功しないと思います。そういう層に,我々クリエイターの"想い"というものは直接伝わりませんから,彼らを対象にマーケティングをしてもダメだと思うんです。

4G:
 でもよくそうやって失敗してるメーカーもありますよ。

Hakkyu:
 ええ,知ってます。韓国にも日本にも多いですね,そういう失敗例。なので明日の講演(編注:CEDEC記事「こちら」)では,そういう話もしようかなぁ,とかちょっと思ってます(笑)。

4G:
【ラグナロクオンライン】

 しかしあれですね。過去の作品で申し訳ないんですけど,Hakkyuさんの作った「ラグナロクオンライン」なんかは一見するとライトユーザー向けなので,そういう考えを聞くのはちょっと意外ですね。

Hakkyu:
 そうでしょうね,見かけだけなら非常にライトユーザー向けですから。韓国だろうが日本だろうが,国に限った話じゃないんでしょうけど,コアユーザーが面白いと思って引っ張っていってくれそうな部分と,ライトユーザーが共感できる面白さの部分と,その兼ね合いの部分はどこなのか,ROはそれを最初に具現化した作品なんです。

4G:
 なるほど,そういう思想だったんですね。

Hakkyu:

 ええ。分かりやすい部分でいえば,当時としては画期的だったチャットシステムなんかがそれです。グラフィックが可愛らしいしライト向け,と見られがちですけど,それは早計というものです。十数年もの間ゲームに慣れ親しんだ人達が好きなのはどんなグラフィックなのか,念入りに調査してから決めた絵柄なんですよ,あれ。

4G:
 すいません,私もてっきり「ライト向けに可愛くした」のかと思ってました……。

Hakkyu:
 (笑)。でも4Gamerさんなんかは裏に潜んだ価値を分かってくれてて,いち早く目をつけてくれたじゃないですか。1ドット1ドットに込めたクリエイターの魂は,コアなユーザーさんならきっと分かってくれると思ってました。

4G:
 なるほど……可愛い見かけとは裏腹に,考え尽くされて設計されたゲームだったんですね。で,それが日本でも一定のプレイヤーにヒットして,どんどん大きくなっていった,と。

Hakkyu:
 でしょうね。正直なところ,ここまで日本市場で大きくなるとは思っていなかったんですけど。

4G:
 ところでHakkyuさんは,いつも自国のプレイヤーを念頭において開発するんですか?

Hakkyu:
 いえ。実は私は,海外のプレイヤー(編注:氏は韓国の人なので,当然日本も"外国")のマニア層というものに相当重きをおいているつもりです。

4G:
 海外っていうのは,日本はもちろん,北米やヨーロッパなども含めての話ですか?

Hakkyu:
 うーん,なんて言うか,北米とかヨーロッパとか,そういう地域的な特徴での区分とかで考えて分けるようなことはしたくないですね。むしろ,世界のゲーマーの共通の好みとか嗜好とか,そういう部分を重要視して考えたいです。

4G:
 普通だと「日本のプレイヤー向き」とか「欧米のプレイヤーは」とかいう方向で考えがちなんですけど,そういう視点ではものを見ていないんですね。

Hakkyu:
 それダメだと思うんですよ。昔ね,Gravityにいたころ,ROのファンアートブックを企画したことがあったんです。ユーザーのみなさんからファンアートを募って本にする,っていう。そしたらね,韓国や北米はおろか,スペインやらシンガポールやら,ありとあらゆる国から応募があったんですよ。

4G:
 あぁ,なるほど……そこである程度の確信に至ったわけですね。

Hakkyu:
 ええ。なんていうか「面白い」と思う要素は,ある程度共通化できるんじゃないかなぁ,と。

4G:
 ってことは,Granado Espadaもそういった思想に基づいて作ってあるんですよね?

Hakkyu:
 そうです。世界のコアユーザーを見据えて作ってある作品だと思ってほしいです。


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