Dark Age of Camelot マーケティングディレクター 直撃インタビュー

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3年の歳月を経て日本語化される
通好みのMMORPG「Dark Age of Camelot」
制作元Mythicが日本市場にかける意気込みとは

聞き手/文・Murayama&Kazuhisa

インターナショナル
ラインプロデューサー
Yvette Nash氏

インターナショナルラインプロデューサー。北米以外のすべての海外展開においてのテクニカルサポートの責任者であり,各国のローカライズ作業のコーディネートも行う。フランス,ドイツ,イタリア,韓国ときて,今は日本。「熱い人だな」と思ってよくよく聞くと,半分イタリア人。なんとなく納得。

マーケティング
ディレクター
Eugene Evans氏

マーケティングディレクター。北米でのマーケティングと販売の責任者で,現在は日本でのDAoC立ち上げの広報活動責任者でもある。ミーティング後の会食で「何食べたい?」と聞いたら「アマエビ」と答えたのには驚かされた。その後エビの頭までムシャムシャ食べだしたのには,さらに驚かされたけど。

 Mythic Entertainmentの3D MMORPG「Dark Age of Camelot」(以下,DAoC)の日本語版の開発がアナウンスされたのが2004年5月のこと(Newsは「こちら」)。発表と同時に公式サイトでβテスターの募集がスタートしたまではよかったが,オフィシャルな続報はまったく何もない状態だった。そうした中,2004年7月あたりからβテスターに当選したという人物がチラホラ現れ始め,ファンの間に大きな衝撃が走った。しかし相変わらず公式発表はなされず,本当にやっているのか,いつからやっているのか,日本語版の開発は進んでいるのか,誰も分からないという状況が続いていた。
 これについても,Mythicや日本の代理店であるカプコンは口を閉ざしたまま。こうした一連の流れは,DAoC日本語版を楽しみに待っていたファンにとっては,なんとも肩透かしを食らったような状態で,テンションが下がってしまった人もいるかもしれない。
 4Gamerも,画面を載せたいとか記事を出したいとか飽くなきアプローチを続けていたのだが,Mythicもカプコンも,どうにもこうにも煮え切らない返事。そのまま時間だけが過ぎ去っていった。

 しかし先日,Mythicが日本運営について色々と決めるべく来日するという情報を入手し,早速直接交渉を行った当サイト。すると「せっかくなのでいろいろと話がしたい」とのオファーがあったので,イチもにもなく飛びついた次第だ。彼らも日本到着の翌日(オマケに日曜日)にも関わらず時間を調整してくれて,無事にマーケティングディレクターのEugene Evans氏,インターナショナルラインプロデューサーのYvette Nash氏に話を聞くことができた。
 DAoC日本語版はどうなってしまったのか,今後どうなってしまうのか。急な話にも関わらずわざわざこちらのオフィスにまで来てくれた彼らに,それらをすべてぶつけてみた5時間に及ぶロングインタビュー。そのすべてを,以下に掲載しよう。また,正式な公開は初となる「日本語版の画面写真」も10点ほど公開してあるので,そちらも併せてじっくりと見てほしい。

→「Dark Age of Camelot」の情報一覧は「こちら」

DAoC日本語版は,Mythicが独自に制作/運営する
 〜DAoC日本語版にあたってカプコンは一切絡まず,Mythicが独自に行うことになったということです

 RvR(国家vs国家)の面白さで名高い,Mythic EntertainmentのMMORPG「Dark Age of Camelot」(DAoC)。今となってはやや地味なグラフィックスになってしまったが(「こちら」のNewsにあるように,それも次の拡張パックで改善される),18種類の種族と39種類ものクラス,それぞれに特徴のある3国と,その3国間での戦争(RvR),家,豊富なクエストなど,いま遊んでも十二分に面白い。EverQuestを追いかけるように登場した欧米の3D MMORPGの中で唯一商業的成功を収めて,いまだに拡張パックが出続けて遊ばれているのも,大いに頷ける作品だ。
 しかし,北米で運営が始まってから丸3年が過ぎようとしている状況で日本語版が登場するのは,やや"遅すぎかな"という印象は否めない。しかも,開発中止になったのかと思うくらいの情報の少なさ。それには一体どのような理由があったのか。

4Gamer(以下,4G)
 昨日着いたばっかりだっていうのにありがとうございます。

Eugune Evans氏(以下,Evans)
 昨日は日本食食べて即寝ました(笑)。だから今日はちょっと元気。ここに来るために予定は一日空けておいたし,いくらでもOKですよ。

4G
 うわ,ありがとうございます。Evansさんは初めまして。Yvetteさんは,E3以来ですよね?

Yvette Nash氏(以下,Nash)
 そうね。あなた(編集部Murayamaを指差して),あなたがE3でMythicブースに来た人よね?

4G
 ええ,そうです。よく覚えてますね(笑)。さてDAoC日本語版なんですけど,我々もプレイこそさせてもらっていますが,公式発表もなく情報も出せず,待っているプレイヤーから見た場合,DAoC日本語版はどうなっちゃったんだろう? と心配していると思うのですが。もしかしたらもう開発中止なのかな,とか。

Evans
 そうですね。そこに関しては本当に色んな人に申し訳ないと思っています。しかし一つだけ分かっていただきたいのは,あの日本語版開発のNewsを流したあとに「DAoC日本語版」は大きな転換期を迎えていて,それらがすべて確定するまでは何も情報が出せなかったのです。

4G
 薄々噂としては聞こえていたのですが,その大きな転換期とは?

Evans
 最大のものは,DAoC日本語版にあたってカプコンは一切絡まず,Mythicが独自に行うことになったということです。カプコンとはずいぶんと話し合ったのですが,最終的にはこういう結果になりました。このあたりのことがずいぶん時間を食ってしまったので,なかなか情報も出せずじまいだったというわけです。

4G
 あぁ,結局そうなったのですね……。かなりの決断ですよね。日本語化,日本サーバー,日本人GM,パッケージ流通,サポート体制などを考えると,相当な苦労が予想されますが。

Evans
 そうですね。なので時間がかかってしまったのです。我々だってイバラの道をわざわざ歩きたくはないですからね!(笑) DAoC日本語版について最終的にカプコンと合意に達することができなかったのは残念ですが,いまとなってはこれでよかったんじゃないかと思っています。

4G
 カプコンとの関係解消をしたにも関わらず日本市場に参入しようとする理由とは,一体なんですか? そんな苦労をしてまで参入しようというのは,我々プレイヤーからすればありがたい限りではありますが,正直なところ「ものすごくおいしい市場」ではないと思うのですが。

Evans
 ずいぶん以前から日本への参入は考えていましたが,フリーエクスパンション(※)の「New Frontiers」の開発が一段落して,体制的に望ましい形になったことが大きな要因です。現在日本には,US版の「DAoC」プレイヤーが2500人程度います。ご承知のように北米市場もヨーロッパ市場も,ややMMORPGに厳しくなってきましたし,次にやはり目がいくのは,ゲームリテラシーが高い日本市場なのです。そんなわけで,ローカライズすることで,より多くの日本人プレイヤーを獲得できるのでは? ということが一番の理由です。

※無料でプレイヤーに配布される,一種の拡張パック。大型MMORPGにはよく存在するもので,パッチという形でゾーン数個分のデータや新職業などが追加される。

4G
 といっても,おそらく日本という国はやたらに多くのMMORPGがひしめいている状況です。そうした中で,決して新しいゲームとは呼べないDAoCが大きな成功を収めるのは,なかなか難しいと思います。そのあたりはどういうアプローチでいこうと考えてます?

Evans
 そうですね,逆にどう思いますか?

4G
 あら,逆質問ですか。うーん,そうですね……数多く存在するライトユーザーと呼ばれる人が好むのは,ポップな絵柄であったり,手軽に遊びやすいシステムだったりするわけで,さすがにそういうターゲット層にいきなりDAoCをリーチさせるのは非常に難しいと思います。キャラクターのグラフィック一つ取ってみても,DAoCのそれはもはや"古い部類"ですからライトユーザーにはとっつきにくいように思えますし,ゲームシステムにしても単なるハック&スラッシュじゃありません。やっぱりゲーム初心者にはちょっとツラいですかね……。
 システム部分に関しては数年間練られたものがあるだけに,コア層へのアプローチであれば,比較的すんなりいくと思いますが。

Evans
 うん,そのへんは同じですね。我々も,DAoCはコアゲーマー向けだと認識しているので,日本のすべてのゲームプレイヤーを取り込んで……などとは考えていません。まあ,プレイヤーが多いに越したことはないんですけどね。

4G
 ただ,コア層へのアプローチだけで押さえられる人数は比較的少ないので,その上を狙うのか,その人数でペイできる運営体制にするのか,そのあたりはMythicさん次第ですかね。

Evans
 ええ,いままさにそこの見極めをやっているところです。

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