ロールプレイング 4Gamer.net Review
 
丁寧に作り込まれた本格派マルチストーリーRPG

ライオンハートサーガ 〜十字軍の遺産〜

Text by K.サワノフ
25th Nov. 2004


舞台は"魔法"が存在する中世ヨーロッパ

奴隷商人に捕まって,いきなりピンチな場面からゲームはスタートする。まずはここから脱出し,バルセロナへと向かおう

 日本語版がカプコンから発売された「ライオンハートサーガ 〜十字軍の遺産〜」(原題 LIONHEART:Legacy of The Crusader)は,「Baldur's Gate」や「Neverwinter Nights」など,名作RPGの数々を世に送り出したBlack Isle Studios(現在は解散)の作品である。

 ゲームの舞台となるのは16世紀のヨーロッパだが,そもそもの発端は12世紀にまでさかのぼる。当時のイングランド王"獅子心王"リチャード一世は,第三次十字軍遠征に赴き,イスラムの軍勢と激しい戦闘を繰り広げていた。ところがその最中に,悪い側近の企みによって空間に亀裂を生じさせてしまい,そこから魔物や霊といった魔法的存在が現世に流れ込んできたのだ。
 のちに"大変異"と呼ばれることになるこの事態に,昨日までは敵味方同士だった人間達は力を合わせて魔物に立ち向かった。結果,必死の戦闘により最悪の事態こそ免れたものの,魔法や魔物が世界中に広まってしまったのである。
 そして4世紀の時が流れた。魔法はすっかり一般的な存在になり,人間の中には魔物や霊と交わる者も現われた。しかし人間社会では,魔法を使う者や魔物の血が混ざった者は差別され,迫害を受けるようになっていた。

 ゲームは,主人公が奴隷商人に捕まり,魔法を使う者=異端者として審問会に引き渡されそうになるところから始まる。自身の体に宿った霊と,レオナルド・ダ・ヴィンチの助けを借りて脱出に成功した主人公は,とりあえずスペインのバルセロナに辿り着き,ここから冒険を繰り広げていくことになる。

 史実をベースにしながらファンタジー要素を加味している本作の世界観は,非常に魅力的だ。ストーリーには当時の社会情勢が色濃く反映されており,NPCとしてレオナルド・ダ・ヴィンチやシェイクスピア,ノストラダムスといった歴史上の人物も多数登場する。
 とくにこういった著名人達の性格や立場は,史実を踏まえながらも本作なりにアレンジされていて,これがまた面白い。レオナルド・ダ・ヴィンチは精霊の力を借りて発明に勤しんでいるし,ミゲル・セルバンテスは自身がドン・キホーテそのままの性格だし,シェイクスピアは大変貧乏で,シャイロックという悪徳高利貸しから借金して困ってるし……なんてのを見つけると,ついつい嬉しくなってしまう。このあたり,中世ヨーロッパ史に興味のある人なら,本作を3割増しで楽しめるんじゃないだろうか。

プレイヤーは無数のマップを行き来し,NPCと会話したり,魔物を倒したりしながら,冒険を進めていく リチャード一世の血を引く主人公の体には霊が宿っており,ゲーム中しばしば助言を与えてくれる 冒頭で助けてくれるレオナルド・ダ・ヴィンチを始め,多くの歴史上の人物が登場し,物語に関わってくる
ところどころで発見できる青い光球を取ると,マナが増える。同様に赤い光球では体力が回復する マップ上にはクリスタルが点在し,色によってさまざまな役割を持っている。青はワープ用のクリスタルだ 最初はバルセロナ周辺しか移動できないが,物語が進むにつれて,主人公の行動範囲は広がっていく


プレイするたびに違った展開を見せるストーリー

NPCとの会話は実に豊富に用意されている。出てくる人は,誰も彼もとにかくよくしゃべるのだ

 実際に開発を担当したのはReflexive Entertainment社ではあるが,ストーリー作りに定評のあるBlack Isle Studiosの作風は,本作でも十分感じられる。公式サイト「こちら」でも「究極のマルチストーリーRPG」と謳われているだけあって,物語の分岐具合が生半可ではないのだ

 この地には,四つの大きな組織が存在する。リチャード王の志を継ぐ「テンプル騎士団」,魔法を悪としこれを排除しようとする「審問会」,テンプル騎士団と協定を結んだ「サラディン聖兵団」,魔法を使う者達の地下組織「術者の会」だ。
 これらの組織は,それぞれの思惑で独自に活動しており,時には協力もすれば真っ向から対立することもある。この組織の動きは物語の根幹に大きく関わってくるのだが,とりあえず主人公は,四つの組織のうちいずれか一つに属さなくてはならない。
 どの組織に所属したかによって,まず物語の大きな流れが決定される。さらに,プレイヤーのスキルや会話中の選択肢によって,ストーリーは幾重にも分岐していく。物語の全貌を見るのは,一度のプレイでは絶対に不可能だ。
 また,メインストーリー以外にも数え切れないほどのサブクエストが用意されており,これまた途中でいろいろと分岐する。サブクエスト同士が複雑に絡み合ったり,相反するクエストがあったりと,なかなか侮れない。場合によっては,あるNPCから依頼された「○○を倒してくれ」というサブクエストの途中で,敵対する相手の話を聞いて心を変え,最初の依頼者の敵側に回る,という展開もあり得るのだ。

 場面場面で提示される選択肢の数がとにかく多彩で,しかも選択肢によってちゃんとストーリーが変化するわけで,普通のRPGのつもりで遊んでいると,「この自由度の高さはどういうこと?」と瞠目させられてしまう。
 実際,プレイ中に「ここで別の選択をしていたらどうなっていただろう?」と気になって仕方がない部分がいくつも出てきた。こんな場合は,クリア後に別のキャラクターを作って再プレイに挑むしかないのだが,ゲームのほうもちゃんとそれに耐えうる作りになっている。
 じっくりと重厚な物語を楽しむタイプのRPGなのに,繰り返しプレイ可能。このボリューム感とストーリー構成の妙には感心するしかない。

会話中には,頻繁に選択肢が現われる。ここでの選択によって,ストーリーは分岐していく 「クエストログ」メニューでは,現在進行中のクエストや,すでに完了したクエストを確認できる
とりあえずの目標は,四つの組織のうちのいずれかに所属すること。街を歩き回り,手がかりを探そう 組織は,それぞれ違う目的や活動理念を持っている。どの組織に所属するかで,その後の展開は大きく変化する 最初は目的も定かではないが,ストーリーが進むにつれて,大いなる悪の存在が明らかになってくる



個性的なキャラクターを生み出すシステム

多種多様なパラメータを調整することで,自分の好み通りのキャラクターを作り,プレイできる

 本作のグラフィックスは,キャラクター以外は2Dベース。最近のゲームの中では,取り立てて目立つほどの美しさではないが,作品世界にマッチした良い雰囲気を醸し出している。このあたり,パッと見の派手さではなく,「あくまで中身で勝負!」という気概が感じ取れる。
 ユーザーインタフェースには多少不満もある(パーティメンバーを誤クリックしやすくなっている点など)が,基本的にはシンプルで,直感的に遊べる操作体系と言える。
 全体的に見て堅実な印象があるシステム周りだが,その中で特筆しておきたいのは,キャラクターパラメータ部分だ。
 プレイヤーキャラクターは,以下の要素から構成される。

  • 種族……基本的な能力に影響する。4種族の中から一つ
  • 持ち霊……得意な魔法系統に影響する。3種類の中から一つ
  • ステータス……長所,短所を表わす能力値。7種類
  • スキル……大別して5系統,67種類
  • 特技……レベルアップにより獲得していく。40種類以上の中から選択
 これらの要素の組み合わせにより,プレイヤーキャラクターの性格はガラリと変わる。直接戦闘で進むのか,弓を使った間接攻撃をメインにするのか。魔法主体でいくのか,それとも戦闘はできるだけ避け,交渉で世の中を渡っていくのか。プレイヤーの好みで,いろんなスタイルのキャラクターを作成できるのである。
 キャラクターによって,想像以上にプレイスタイルが変化するので,まるで違うゲームをプレイしているような錯覚すら覚える

 さらには,レベルアップ時にスキルポイントを好きなスキルに割り振ったり,新たに取得する特技を選んだりと,キャラクターの成長の方向性もコントロールできる。特定の魔法の能力だけを高めたり,毒や病気に対する耐性をつけたりという具合に,さまざまなチューンも可能だ。
 交渉スキルを上げると有利な選択肢が出現するようになったり,Findスキルを強化すると隠されていた財宝を発見できたりと,成長のさせ方がゲーム展開に影響を及ぼすこともある。
 ここで重要なのは,どんなスタイルのプレイでも,ちゃんとゲームとストーリーを楽しめ,エンディングにまで到達できるということ。よほどゲームの枠組みをしっかり作っていないと,こうはいかない。一度クリアしたあと再チャレンジするときは,ぜひとも違うプレイスタイルで遊んでみてほしい。

 総合的に見て,「本格派シングルプレイRPG」というキーワードに反応する人なら,間違いなく買いの1本と言える。1回のプレイでも十分なボリュームを誇っているが,複数回遊べることを考えると,かなーり長くつき合える作品だ。練り込まれた世界観,ストーリー,システムとじっくり向き合って,濃密なゲームを楽しんでほしい。

レベルアップ時に得られるスキルポイントを各スキルに割り振ることで,成長の方向も自由に調節できる 交渉スキルが十分に高ければ,あまり戦闘をせずにゲームをクリアしてしまうことも不可能ではない 自動生成される3000種以上のアイテム。能力値やスキルをアップさせる魔法がかかったものも登場する


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■発売元:カプコン
■問い合わせ先:052-760-0335(平日13:00〜21:00)
■価格:9240円(税込)
■動作環境:Windows 98SE/Me/2000/XP,PentiumIII/700MHz以上(PentiumIII/1GHz以上推奨),メモリ 128MB以上(256MB以上推奨),HDD空き容量 1.6GB以上,VRAM16MB以上搭載したビデオカード(32MB以上推奨),DirectX 8.1以降
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