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架空の中世ヨーロッパを舞台にした本格派RPG
ライオンハートサーガ 〜十字軍の遺産〜
Text by K.サワノフ
11th Nov. 2004

 カプコンから日本語版が発売される「ライオンハートサーガ 〜十字軍の遺産〜」(原題「Lionheart:Legacy of The Crusader」)は,今は亡きBlack Isle Studios社の作品。"Baldur's Gateシリーズ"や"Neverwinter Nightsシリーズ"など,多くの本格派RPGを発売したブランドだが,母体のInterplayの倒産により,残念ながら解散してしまった。もっとも,同社のスタッフはのちに新会社を設立し,「Neverwinter Nights」の新作の制作発表をしている。
 本作のゲームのエンジンには,「Fallout 2」で採用されたVelocityエンジンを改良した,Reflexive Velocityエンジンを使用。シングルプレイRPGのエンジンとして定評があるシリーズだけあって,ライオンハートサーガも非常に完成度が高いゲームに仕上がっている。

虚構と現実が入り交じる魅力的なゲーム世界

 ゲームの舞台となるのは,実際の歴史をベースとしながら,ファンタジー要素を織り交ぜた中世ヨーロッパ。タイトルにある"ライオンハート"とは,12世紀後半に実在したイングランド王,"獅子心王"リチャード一世のことだ。ゲーム中では,彼が第3次十字軍遠征のときに側近の裏切りにあい,異界から多くの魔物を呼び込んでしまったという設定になっている。ちなみにこの事件は,"大変異"と呼ばれている。

 物語が始まるのは,"大変異"からおよそ400年後のこと。世界には魔法が蔓延し,野には怪物が跋扈していた。しかし人間社会では,魔法を使う者や魔法の力を受けた人種が差別の対象となり,場合によってはあからさまな迫害を受けることもあった。
 そういった世界で,プレイヤーはリチャード一世の血を引く若者となり,体に宿った霊の助けを借りながら冒険を繰り広げていく。最初は自分の目的すらも定かではないが,多くの人と会話し,さまざまなクエストをクリアしていくうちに,やがて強大な敵の存在が明らかになってくる。
 ゲーム世界のヨーロッパには,審問会やテンプル騎士団,術者の会,サラディン騎士団という四つの大きな勢力が存在する。このいずれかに所属し,組織の利益のために行動することが,とりあえずの主人公の目的となるのだ。組織同士は互いに牽制し合っており,時にはあからさまに敵対もする。どの組織に属するかによって,ゲームの展開は大きく分岐していくことになる。

 しっかりと読ませる密度の濃いストーリーは,さすがBlack Isle Studiosといったところ。「Baldur's Gate」同様,NPCとの会話は豊富かつ軽妙で,非常に魅力的な要素である。街中や荒野でさまざまな人物と話しているうちに,自然と物語世界に引き込まれてしまうはずだ。
 なお,会話中には頻繁に選択肢が登場するが,どういう受け答えを選ぶかによってもストーリーは細かく変化していく。プレイヤーの種族(後述)やスキルによっても,出現する選択肢の種類は微妙に変わっていくので,物語の展開は無数のバリエーションを見せることになる。実際のところ,2,3回程度のプレイではゲームの全貌を見ることは難しいだろう。
 さらには,メインのストーリーとは別に,サブクエストも山ほど散りばめられている。内容的にも,サブクエスト同士が影響しあったり,同じクエストでも複数の側面があったりと,「サブ」とはいえ手応え十分な冒険が待ち構えている。

 冒頭で主人公を助けてくれるレオナルド・ダ・ヴィンチを始め,シェイクスピアやガリレオ,ミゲル・セルバンテスやマキャベリなど,実在の歴史上の人物が多数登場するのも面白いエッセンスだ。これらの人々は,史実に近い性格を持ちながら,この魔法的世界に適応して存在している。彼らはそれぞれの立場からメインストーリーやクエストに絡んでくるわけだが,会話の内容や言動には,世界史の知識を持っているとニヤリとさせられるようなユーモアが含まれている。こういった部分を観察するのも,この作品の楽しみの一つだ。

自由なプレイスタイルで練り込まれた作品を堪能すべし

 ライオンハートサーガは,キャラクター作成部分がかなり凝っているのが特徴的だ。本作では基本システムとして,"Falloutシリーズ"でも評価の高かった"SPECIALシステム"を採用している。ちなみにこの名称は,キャラクターの七つの能力値の頭文字を取ると「SPECIAL」となるところからつけられたものだ。職業という概念を失くし,ステータスを自由に割り振ることで主人公の長所や短所を決定するという,リアルで柔軟なキャラクター作成を実現するシステムである。
 といっても,ステータスだけがすべてではない。"人間族" "魔人族" "獣人族" "精霊人族"という四つの種族から一つを選び,精霊,魔霊,獣霊の3種類から体に宿す霊を選択し,さらに特性や主要スキルを選んで,初めてキャラクターができあがるのだ。簡単に説明すると,種族はキャラクターの基本能力に,霊は得意な魔法に,特性や主要スキルは成長の方向性に影響を与える,ということになる。

 つまり,望むプレイスタイルに応じて,いかようにもキャラクターを調整できるのだ。力押しの戦闘で進むか,魔法中心でいくか,はたまた戦闘はなるべく避ける方向で,交渉能力に重きを置くか。いずれもプレイヤーのお好み次第だ。
 もっとも,慣れないうちはキャラクター作成がかなり手間であることも事実。最初はあらかじめ用意されている8人のキャラクターから,一人を選んでプレイするといいだろう。

 ひとたびキャラクターを作り上げてしまえば,あとは簡単だ。基本的にはマウス一つで直感的に操作できるし,いくつかのショートカットキーを覚えれば,より快適にプレイできる。クエストログやオートマップを活用しながらゲームを進めていけば,それほど詰まることもなく物語を堪能できるはずだ。
 その他,ランダムに生み出される数千種類ものアイテム,レベルアップで得られるスキルポイントを割り振ることで効果が変化する魔法など,冒険を彩る要素を数え上げればキリがない。ストーリーだけでなく,システム部分でもプレイヤーを楽しませてくれる仕掛けが満載されているのだ。
 ちなみにマルチプレイモードも用意されているが,これはシングルプレイと同じストーリーを最大4人で同時に遊べるというもので,どちらかというとおまけに近い。

 長々と解説してきたが,要するに本格派シングルRPGファンには無条件でお勧めできる作品であることは間違いない。じっくりと遊べるゲームを求めているなら,ぜひともこの作品を記憶にとどめておくべきだろう。

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