「Master of Epic」発表会詳細:ハドソンとビー・ビー・サーブの業務提携について
2004/10/21 19:32
 本日10月21日,ハドソンビー・ビー・サーブは,東京都中央区にあるロイヤルパークホテルで発表会を行った。発表されたのは,これまで当サイトでも何度もお伝えしている「Master of Epic:The ResonanceAge Universe」(以下,MoE)における業務提携について。また本作のオープンβテストを,1週間後となる10月28日に開始することも明らかにされた。
 まぁ,MoEの今後の展開についてはすでに先ほどのNews「こちら」で紹介しているし,MoEそのものについては4Gamer内の記事一覧「こちら」を見てもらったほうが早いだろう。そこでここでは,今回の発表会で公開された,両社の業務提携の話を中心にお伝えしよう。

 ビー・ビー・サーブ(以下,BBサーブ)という会社名を聞いて,ピンと来る人も多いだろう。(4Gamerの運営会社だというのもあるが)先日の「真・三國無双BB」の発表会(記事は「こちら」)でも,コーエー,ソフトバンクBBと共に名前が出ていた会社である。
 身内なので紹介しづらいのだが,非常に簡単にいえば,オンラインゲーム事業を幅広く展開する会社だ。社長の孫泰蔵(そん たいぞう)曰く,"オンラインディストリビューションカンパニー",もしくは"ブロードバンドのライフスタイル・カンパニー"。その具体的な仕事が,この4Gamerだったり,真・三國無双BBやMoEといったオンラインゲーム事業だったりする。

 発表会では,まずハドソン代表取締役の工藤浩(くどう ひろし)氏が壇上に立ち,なぜ今回BBサーブと業務提携するに至ったかを説明した。
 ハドソンとしても来るべきオンラインゲームの世界に参入を目指しており,同社のPCゲーム作成のノウハウを結集して作ったのが,このMoEというタイトルだという(ちなみに工藤氏は,「モエ」と発音していた)。このタイトルでBBサーブと提携した理由の一つは,社長である孫泰蔵の存在だという。彼自身がオンラインゲーム好きだということ,またガンホー・オンライン・エンターテインメントを立ち上げ,「ラグナロクオンライン」をヒットさせたという実績があることが,理由として挙げられた。
 そこでハドソンとしては開発に専念し,それ以外の部分はBBサーブに任せるという体制にしたという。
 また工藤氏は,MoEが早くも,中国,台湾,そして韓国からもオファーが来ていることを明らかにしていた。中でも中国版はローカライズが始まっており,早ければ2005年の夏以降にもサービスを運営できるかもしれないという。将来的には日本を皮切りに,グローバルな展開を行っていきたいと締めくくっていた。

左から,ハドソン代表取締役工藤浩氏,ビー・ビー・サーブ代表取締役孫泰蔵,そしてハドソンのMoE担当チーフプランナー伊藤丈夫氏


 その工藤氏に紹介される形で,続いて孫泰蔵が壇上に登った。孫泰蔵が話したのは,具体的な業務提携の内容について。
 ご存じの通りソフトバンクは,元々ソフトの流通をメインの仕事としてきた会社である。BBサーブは,孫泰蔵の兄である孫正義が率いるソフトバンクグループの中で,ブロードバンド時代の新しい流通を担っていきたいという。泰蔵はまず,従来の流通がもっていた三つの機能を挙げた。

金融機能……"仕入れる"ことで,実際に商品が消費者の手に届く前にメーカーに資金を提供できる
流通/配荷機能……商品を保管する倉庫とトラックの輸送網で,実際に全国に商品を運ぶ
販売促進機能……小売店と協力し,その商品の魅力を消費者に伝える努力をする

 そしてこの三つの機能は,オンラインの時代でも必要だろうと話し,販売促進機能の例としてあげたのが,4GamerやBB Gamesといったゲームサイト,そして全国に1500店以上の加盟店をもつインターネットカフェを利用した販促だ。流通/配荷は,グループ企業の提供する「Yahoo! BB」などのネット網を使って行う。
 最後の金融機能も必要だろうということで作ったというのが,真・三國無双BBの発表会でも紹介されていた,"#8"(ナンバーエイト)というプロジェクトチームである。このチームはこれまでゲームのメディアに携わっていた人,開発に携わっていた人,運営に携わっていた人,そしてプロモーションに携わっていた人など,この道のプロパー達で構成されていて,金融的な機能を持つだけでなく投資/共同開発も行っていく。
 #8の投資実績としては真・三國無双BBが挙げられるが,こちらのサービスは2006年春と,ずいぶん先。MoEは,この#8がメーカー(今回の場合はハドソン)と一緒に,ゲーム内容,サービス内容,運営方法などさまざまな問題に対してディスカッションしながら作り上げた,初の公開タイトルとなるのだ。
 具体的な業務内容については,販売促進/プロモーションおよび課金/決済をBBサーブが行い,継続的な開発はハドソンと,それを支援する形で#8が行う。またGMなどゲーム運営はハドソンが行うとのこと。

MoEの展開スケジュール(予定)


 また最後に,なぜ今回,Yahoo! BB会員限定(実際にはネットカフェもあるし,オープンβ時にプレイしておけばほかのISP利用者でもプレイ可能だが)という枠組みを作ったかについても説明していた。
 現在日本では黎明期といえるMMORPGのマーケットでは,すべての人にニュートラルに,つまり浅く広くサービスしていくのは難しい。しかしグループの提供するYahoo! BBの会員を対象とすれば,ユーザーのインフラについては申し分なく,またソフトバンクグループを挙げてプロモーション活動ができる。まだ発展途上の分野であるオンラインゲームだからこそ,グループ全体でバックアップできるこの枠組みのほうが,マーケットを切り開けるというわけだ。
 孫泰蔵は最後に,今後も次々と,新しいBBサーブの取り組み,そしてMoEでも衝撃的な情報をお伝えできるだろうと話し,スピーチを締めくくった。

 最後に壇上に立ったのは,ハドソンでMoEの企画を担当している伊藤丈夫(いとう たけお)氏。伊藤氏はMoEのゲームシステムについて詳しく解説してくれていたが,当サイトでは既報のことばかりなので,ここでは配布された資料を掲載するだけに止めておく。

会場で配布された,MoEの説明資料


 その後に行われた質疑応答から,いくつかQ&Aを掲載しよう。

Q:課金はどのようになるのか?
A(孫泰蔵):いろんなプランがあるが,現時点では公表できない。
A(工藤氏):値段は,ある意味いくらでもいい。というのはオンラインゲームは,そのときの状況を判断して,そのとき一番適切な金額を設定するべきだからだ。サービス開始時に合わせて,"入りやすい"金額を設定したい。

Q:どのくらいの有料会員数で損益分岐点を超えるのか
A:海外での展開も視野に入れているので,日本だけで何人とはいえない。ただしビッグタイトルとして位置づけているので,数千,数万という単位ではなく,かなりの大人数をプレイヤーを目標としているし,そのために準備している。

Q:一度BB Games先行オープンβに参加すれば,途中で一度プレイを止めても,ISPをYahoo! BBに変更することなく復帰できるのか?
A:データは長期間保管するので,いつでも戻ってプレイできる。

Q:Yahoo! BBユーザーでなくてもプレイできるような,コンテンツ会員といったシステムはないのか?
A:現段階では,そういう概念はない。ただし視野には入れており,プランニングしている。しかし何も確定しておらず,検討しているところだということで理解してほしい。

Q:正直,Yahoo! BB会員限定というのは,雑誌で紹介しづらい。それはネックになるのでは?
A:MMORPGのファンの多くは,興味のあるゲームならオープンβテストのうちから参加するだろう。オープンβテストに参加した人ならISPに関係なく継続してプレイできるし,現段階ではさほど気にする必要はないのではないか。

Q:#8が携わるゲームは,今後すべてYahoo! BB専用になるのか?
A:自動的にそういうことになるわけではないが,現状はこれが理想的なスキームだと思うし,よりよい形が見つかるまでは同じだろう。例えばプレイステーション用のソフトについて,いちいち「プレステ限定」とか「ソニー専用」とか言わない。ISPを限定したほうがビジネス的なモチベーションも高く,成功しやすいのではないか。

Q:開発費および開発期間はどれくらい?
A:開発費は,数億円。少し上のほうという感じ。開発期間は約3年で,今では管理やGMなどの人員も入れて約40人のスタッフがいる。

 この質疑応答の中で垣間見えたのは,ハドソンの工藤氏の,MoEは成功するだろうという確信である。当然記者陣からは特定のISPと組むという体制を疑問視する声も多かったのだが,工藤氏は,インターネットというオープンな環境だからこそ,ターゲットを絞ることでちゃんとサポートすることが重要だと熱く語っていた。
 例えば「ボンバーマンオンライン」「ZEROCUP」といった同社のオンラインゲームで50万人ものプレイヤーを集めているが,その理由は無料だというのが大きいと話し,有料化したときに多くのプレイヤーを残すには,クオリティの高いサービス,サポートが重要だと述べた。そういうことを踏まえて,成功を確信しての提携というわけだ。

 実際に,こういったコンテンツとISPの関係がビジネスとして成功していくかどうかは,切り開かれたばかりの分野だけに未知数だらけだ。わずか半年を持たずにサービス終了した例もある。果たしてMoEは成功するのか,日本のオンラインゲーム業界の未来を占ううえで,実に興味深い。(Iwahama)

「Master of Epic:The ResonanceAge Universe」の公式サイトは,「こちら」
「Master of Epic:The ResonanceAge Universe」の記事一覧は,「こちら」

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