NVIDIAの新グラフィックチップ「GeForce 6600シリーズ」が登場
2004/08/23 21:45
GeForce 6600を紹介する,NVIDIAデスクトップ担当プロダクトマネージャー ジェイソン・ポール氏
 NVIDIAは本日,PCI Express対応の普及価格帯ビデオチップGeForce 6600シリーズを国内発表した。GeForce6600シリーズは,基本的にはNV40(GeForce 6800)と同じテクノロジを用い,同じフィーチャを受け継いでいるGPU。大きな違いとしてはPCI Expressインタフェースをネイティブで組み込んでいることが挙げられる。また,ピクセルパイプライン数を8本に縮小したことでコストダウンも図られたようだ。これまでのGeForce 6800シリーズでは,ピクセルパイプライン数の少ない製品もピクセルパイプライン16本仕様のチップと同じものから作っていたのだが,単一ラインでコストダウンするにはちょっと回路規模が大きすぎだったのか,今回,低価格帯向けのラインアップを揃えた形となる。今後は同じチップから4パイプラインの製品展開も検討されているようだ。
 今回はGeForce 6600シリーズとして,GeForce 6600 GTとGeForce 6600の2種類の製品が発表された。どちらもGeForce 6800製品と比べるとシンプルな基板で,クーリングも簡素化,消費電力も低めとメーカー製PCなどで採用されやすいように配慮されている。上位製品がGTで下位製品が無印となり,製品価格は,GT製品で200ドル以下を予定しているという。搭載製品の出荷時期は9月末の予定だ。


GeForce 6600シリーズのリファレンスカード。右は6600GTの拡大図。上部にあるカードエッジにSLI用コネクタを取り付ける。GTと無印で使用されるビデオメモリも異なる模様


 GTと無印の基本的な違いはクロックスピードのみで,両者とも8パイプラインでGTは500MHz,無印は300MHzのコアクロックで駆動される(メモリクロックは不明)。
 また,GTにはSLI用のコネクタが用意されている。SLIについては,GeForce6シリーズすべてでサポートされているものなので,理論的には無印のGeForce 6600シリーズでも可能なものであるが,価格と性能のバランスなどからSLIサポートは見送られているようだ。もっとも,カードにコネクタを用意するかどうかだけの問題と思われるので(ドライバで禁止してない限り),カードベンダーによっては低価格SLI対応カードを出してくるところもあるかもしれない。

■DOOM3 GPU

 今回GeForce 6600シリーズは,「DOOM3 GPU」という触れ込みで売り出されている。GeForce 6800シリーズと比べるとピクセルパイプラインの削減で明らかにスペックダウンしているのだが,グラフィックヘビーで知られる最新ゲームのDOOM3を動作させた場合に,1024×768モードで80fpsハイクオリティモードでも42fpsを実現できるという。直接のライバルとなるATI X600 XTやNVIDIAの従来製品(GeForce FX 5700)と比較すると,DOOM3を約3倍のパフォーマンスで実行できる。少なくともDOOM3を遊ぶなら,コストパフォーマンス面で最適な製品というわけだ。


GeForce 6600 GTのパフォーマンスを示すスライド。DOOM3でATI製品の3倍のパフォーマンスを出している。右はShaderModel 3.0対応ゲームの予定表


GeForce 6800 Ultraを使ったSLIについて解説する,
NVIDIAアジア・パシフィックテクニカルマーケティングマネージャー オング・ツェーリン氏

■期待のSLIソリューション

 すでにGeForce 6800 Ultraを使ったSLI(ビデオカード2枚を使った高速化ソリューション)は紹介されていたわけだが,今回はその低価格版としてGeForce 6600 GT版が発表された。ベンダー依存の部分もあるだろうが,基本的にはすべてのGeForce 6600 GTには標準でSLI用のコネクタが用意されることになる。とりあえず,6600 GTを買ったユーザーが,その性能にもの足りなくなったときに,もう1枚カードを追加することで,約1.8倍の性能にアップグレードできる。GT製品は200ドル程度なので,アップグレードパスとしては十分に魅力的だ。



NV40のチップダイに見られるSLI用の回路とマルチI/Oポート
 NVIDIAのSLIソリューションは,かつての3dfxでのSLIに対する,数々の改善点が見られる。その結果として,

・PCIバスでは2枚のカードに十分な帯域が確保できなかったのだが,P2P接続のPCI Expressであれば,個別のカードに安定した帯域を確保できる。
・デジタル接続なので,2枚のカードでのRANDAC特性の違いによる色ムラなどが発生しない。


などのメリットが出ている。
 NVIDIA SLIでは,
  16レーンのPCI Expressスロット
と,
  8レーンまたは4レーンのPCI Expressスロット
のそれぞれにビデオカードを差し,2枚のカードを専用コネクタで接続して動作させる。映像出力は片方のカードからだけである。最低4レーンのPCI Expressということなのだが,大容量のテクスチャアクセスには力不足かもしれない。そういった場合,専用コネクタを通してデータがやり取りされることが考えられる。また,片方のビデオカードでの出力もなんからの方法でもう片方に渡されるわけだが,このときにも専用コネクタを介すると見るのが自然だろう。ただ,両カード間のやり取りでは,PCI Expressと専用コネクタの両者を適宜利用してデータ転送される模様で,接続されるPCI Expressのレーン数が不定なことなどもあわせて,現在どのような割り当てで使うのがよいかチューニング中。専用インタフェースの仕様なども,まだ固まっていないとのこと。現状では1枚のカードの1.87倍のパフォーマンスといわれているが,最終的なパフォーマンスもドライバの仕様が固まるまで保留状態だ。
 現状では,SLIに適した普及価格帯のマザーボード自体がないわけだが,NVIDIAでは各マザーボードベンダーにSLI可能な製品開発を働きかけている。
 専用コネクタは今後のGeForce 6600 GTなどに同梱されてくる模様。コネクタは1スロット幅の小さなPCB基板だ。現状のところ「8レーンのスロットはほかの機器で使いたいから,1個飛ばして4レーンのスロットと16レーンのスロットをつなぎたい」といった要望は考慮されていないようだ。



左:GeForce 6800 Ultraを2枚使用したSLI例。奥側が16レーンのPCI Expressコネクタに接続されたカードで手前は8レーン接続。手前側がマスターコントローラの設定になっているが,このあたりの設定もフレキシブルなようだ。ビデオ出力は手前側のカードから出ている
右:カード間を接続する専用コネクタ基板


■ダイナミックロードバランシングのシンメトリックマルチレンダリング

 NVIDIA SLIソリューションでは,基本的に2枚のカードで画面の上下をレンダリングする方式が取られている(1枚ごとに分担する設定も可能な模様。「こちら」参照)。その際,上部と下部で描画負荷の異なる場合は,適宜担当領域を変化させてレンダリングを行っていく,ダイナミックロードバランシングが実装されている。そもそも,128MBのビデオカード2枚をSLI設定した場合,システム側からは128MBのビデオカード1枚として認識される。その後の描画などはドライバが適宜2枚のカードに割り当てるのだが,このとき,画面の上下の複雑さなどによって負荷を動的に変えていくのが,このダイナミックロードバランシングだ。これにより常に最適なパフォーマンスを引き出している。
 もちろん,画面の上部で描いた木が下部の水面に映り込んでいるなど,シーンによってはデータ転送が多くなって単純にいかない場合もあるだろうが,ドライバ内でそれなりに処理される模様。それとも,反射を多用するようなゲームのために,フレーム交互レンダリングモードが残されているのだろうか? このあたり,どの程度のパフォーマンスに落ち着くのかなどは,ドライバの完成と評価版を待って判断したい点だ。

 ゲーマーにとって,今後主流になるPCI Expressシステムでの最大のアドバンテージとなるかもしれないSLIソリューション。まだ動作環境も整っていない状況だが,発表会での注目度も高く,「4枚以上での並列化は可能なのか」とか,「なぜ最初から1枚のカードにGPU2個載せないんだ」とかいった質問も飛び交っていた。いずれも技術的にはとくに問題はないという。ハイエンド向けとして発表されていたもの以外に,今回普及機用のソリューションとしても発表された意義は大きいだろう。対応製品など,今後の動向にも注目したい。 (aueki)

→SLIの動作映像は「こちら」

・GeForce 6600シリーズ製品発売予定カードベンダー一覧
・Albatron Technology, Co. Ltd
・Anextek
・AOpen
・ASUS Computer International
・Biostar
・Chaintech Computer Co. Ltd.
・株式会社エルザジャパン
・Gainward Co., Ltd.
・Galaxy
・Gigabyte Technology, Co., Ltd.
・Inno3D
・Leadtek Research, Inc.
・MSI Computer Corporation
・Palit Microsystems, Inc.
・XFX(Pineの一事業部門)
・Prolink Computer Inc
・Sparkle






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http://www.4gamer.net/news/history/2004.08/20040823214546detail.html