― レビュー ―

 

映画では反乱同盟の活躍が描かれているが,現在銀河を手中に収めているのは帝国である。その体制に協力するか抵抗するかは,プレイヤーが自分で決められる
 「スター・ウォーズ ギャラクシーズ」(以下,SWG)ではプレイヤー同士の戦闘,いわゆるPvPが可能だ。PvPと聞くと,かつて多くのMMORPGにおいて盛んに交わされた議論のことが思い出される。「戦うつもりのない人間に襲いかかって殺すことが許されるはずがない」「いや,それでこそより本物らしい世界と呼べるのではないか?」といった議論である。

 プレイヤーキリングの是非や,その理想型に関する考え方は各人各様だと思うのでここでは触れないが,とりあえず,SWGではなるべく多くの人間が不快感を感じることなく,かつPvPをやりたい人にはその楽しみを提供できるような工夫が施されている。そのための枠組みとして,この作品では帝国vs.反乱同盟の対立構造をうまく利用している。簡単にいえば,帝国軍もしくは反乱同盟軍に対して参加を表明すればPvPが可能な状態になり,参加しなければプレイヤー間の戦闘とは無関係に生活していけるのだ。




 これまでに何度か触れてきたが,SWGの舞台となっているのは映画におけるエピソードIVとエピソードVの間の時代だ。現在,銀河は皇帝パルパティーンを頂点とする帝国の圧制下にある。そしてその対抗勢力として反乱同盟が存在し,懸命なレジスタンス活動を続けている。映画のエピソードIVのラストでは,ルーク・スカイウォーカーやレイア姫,ハン・ソロといった反乱同盟メンバーの活躍によって,帝国の巨大兵器デススターが破壊された。さらにエピソードVの冒頭では,帝国軍が反乱同盟の秘密基地を見つけるために探査機を飛ばすシーンが描かれている。つまり,ゲームで扱われているこの時代は,「デススターの破壊に成功したことによって反乱の気運が高まりつつあり,また帝国側は反乱同盟の撲滅に力を傾けている時期」である。換言すれば「帝国軍と反乱同盟軍の間の緊張状態が高まっている時期」ともいえる。

 この帝国と反乱同盟との戦いのことを,スター・ウォーズの世界では"銀河内乱"と呼ぶ。英語では"Galactic Civil War"。そのためしばしば"GCW"と略される。銀河全体がそのような状態なので,その中で生活することになるプレイヤーは,この"帝国vs.反乱同盟"の構図をまったく無視して生きることはできない。帝国と反乱同盟という二大ファクション(派閥,勢力の意)の存在を意識しつつ,その対立に積極的に荷担していくのか,それともニュートラルな立場を守るのか,自ら選択することになる。

 どちらかのファクションに参加することを決めた場合,二つのオプションが用意されている。それは"隠れメンバー"になるか"公開メンバー"になるかの選択である。この二つはある程度任意に切り替えることが可能だ。

 隠れメンバーはファクションに属してはいるが,そのことを周りに公開していない状態だ。そのため基本的には敵ファクションのプレイヤーにおそわれることはなく,逆にこちらから敵を攻撃できる機会も限定的である。身分がばれるような行動をとったり,危険な場所に近づいたりしない限りは安全なので,多くの人はPvP戦闘に赴くとき以外は自分をこの隠れメンバー状態にして生活している。

 公開メンバーは言ってみれば"ケンカ上等!"な状態である。敵ファクションの公開メンバーからは自由に攻撃され,もちろんこちらから敵公開メンバーへの攻撃にも制限はない。通常プレイヤー同士の戦いはこの公開メンバー同士で行われる。

ファクションへの参加やメンバー状態の切り替えは,町のリクルーターのところで行える。帝国のリクルーターはあちこちの町で見られる 帝国側と違い,反乱同盟のリクルーターは酒場の地下などでひっそりと活動を行っている。この時代の情勢を考えれば当然だ



 ニュートラルな立場で居続ければ,他プレイヤーから攻撃を受けることはない。プレイヤー対プレイヤーの戦闘に興味がなければ,その立場のままこの世界での生活を楽しめばOKだ。とはいえ,「PvPには興味はないが,せっかくスター・ウォーズの世界にいるのだから帝国/反乱同盟のメンバーとしての生活も体験したい」という人もいるだろう。その場合は隠れメンバーとしてファクションに所属すると良い。そうすれば帝国・反乱同盟に関連したミッションを受けられたり,そのミッションで得られる"ファクションポイント"を使って,特別なアイテム(帝国であればストームトルーパーのアーマーなど)の入手も可能になる。

 ただし隠れメンバーでも100%安全なわけではないことは,十分に注意する必要がある。たとえ隠れメンバーでも,公開メンバーをヒールするなどサポートしたり,敵ファクションのNPC(反乱同盟プレイヤーから見ればストームトルーパーなど)を攻撃したりと,ファクションに関連した行動をとるとテンポラリー・エネミー・フラグ(Temporary Enemy Flag=TEF)という一時的な敵対者判定を受け,敵公開メンバーから攻撃可能な状態になってしまう。つまりこの点においては,SWGではPvPをするつもりがなくても,他プレイヤーから攻撃を受ける可能性があるのだ。

 PvPに興味がないプレイヤーからすれば,この仕組みはむしろあってほしくないものだろう。単にファクションアイテムが欲しくてファクションのミッションをしているだけなのに,いきなり攻撃されてクローンファクトリー送りになれば,憤りを感じることもあるかもしれない。しかし先述のように,この緊張状態にあるSWGの世界においては,ファクションに関連する行動をとるということは,すなわち命を狙われるということなのだ。

 どうしてもPvPと無関係でいたければ,帝国/反乱同盟に属さなければよい。そのようにプレイしてもSWGは十分に楽しいゲームである。ただ筆者個人としては,ファクションに所属するのを怖がることはないと考える。TEFを受ける/受けないは常に注意を払っていれば,ある程度は自分でコントロールできるし,危険があるからこそ帝国vs.反乱同盟の関係を強く意識でき,ひいては自分がスター・ウォーズの世界で生活しているという実感を持てるのだ。

ファクションに属すると,敵対勢力のNPCを攻撃できるようになる。ただしこれを行った場合はただちにTEFを受けることになるので注意 TEFはHAMバーの横に旗のマークで表示される。TEF状態はその後ファクションに関わる行動を取らなければ15分程度で解除される



 SWGにおけるプレイヤーvs.プレイヤーの戦いは,プレイヤーvs.敵NPC/クリーチャーとの戦闘とは,まったく違ったものだ。必要とされる武器防具からスキル,そして戦術まで大きく異なっている。何かとSWGと共通点の多いUOでも「対人戦と対NPC戦は別モノだ」とよく言われるようだが,SWGのPvPにも同じような趣がある。

 なにしろ相手は,自分と同じプレイヤーである。負けるためにPvPをする人間はいないので,仕掛けてくるということはすでに勝算があるのだ。それに対抗するには,こちらも全力で挑まなければならない。目的にあった武器と防具,優良なBuffにフード,ドリンク,スパイス,薬品,ゲームシステムに対する理解とスキルに関する知識,操作の腕前,そしてともに戦ったり情報を交換したりする仲間,などなど……。PvPに必要なものは,数え上げればきりがない。

 プレイヤー同士の戦闘は,そう頻繁に発生するわけではない。たった一戦に向けて入念に準備を整え,戦いにはすべてを出し尽くす。この死力を尽くして戦う真剣勝負には,NPC相手では決して味わえない興奮があるのだと,多くのPvPerが考えているようだ。



■■星原昭典(ライター)■■
今回で最終回となる本連載,ここらで一発カッコいいエピソードをお願いしますよ星原さん! 「こないだ電気使いすぎたら,ブレーカーが落ちまして」。ええっ,電子レンジもないのに!? 「そのあとゲーム用のメインPCが起動しなくなって,何度試してもダメなのでフテ寝して」。大事なお仕事道具じゃないですか! 「次の日つけてみたら起動しました」。カ,カッコいいなぁ。


→「スター・ウォーズ ギャラクシーズ完全日本語版」紹介記事は,「こちら」


※スター・ウォーズ ギャラクシーズ完全日本語版βテストの模様は,エレクトロニック・アーツ株式会社の承認を得て掲載しています


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