松本隆一の「幸せ家族計画」




どんどん普通になっていくマツモト家。いつしか彼が私を追い抜いてしまったのは間違いないところ。ドキドキしながら彼女に同棲を申し出たのが遠い昔のことのようだ。だが,人生,簡単に進むものじゃないみたい

 幸せ探して45年。毎週金曜日は「お掃除デー」の私がお届けする「ザ・シムズ2」プレイレポートである。学校から帰ったら風呂場を掃除して洗濯して夕食を作り,それからゲームを始め,マイキャラ"マツモト"に風呂場を掃除させ,夕食を作らせるのである。幸せって何だろう? と,超キレイになった部屋をむなしく見回す私だ。

 さて,老齢に達したマツモトの外見は,すっかりおじいちゃんになってしまった。頭は白く,姿勢はやや前屈み,赤い蝶ネクタイに青いカーディガン。ナイスミドル,というか,やっぱりおじいちゃんである。悲しい。
 しかも,このところ目の回る忙しさだ。なにしろ,子供一人と赤ん坊一人がいるのである。連中は,夜中だろうがなんだろうが,泣きわめき,腹を空かせ,おむつを汚す。妻であるソーシャルワーカーちゃんは外科医として働いているので,子供の世話はマツモトの仕事。あれしてこれしてそれしてなにしてと,ほとんど休む暇がない。請求書を払い忘れていたら,またしてもオンボロトラックに乗った回収業者がやってきて,ステレオを持っていってしまった。

 しかも,4人ともそれなりに願望を持っているので,それらも叶えてやらなければならず,これまたやっかいだ。長男のジョージはマツモトと会話したいが,マツモトは長女のヒラリーを「高い高い」してやりたく,そのヒラリーはソーシャルワーカーと遊びたいといった具合で,なかなか全員のタイミングが合わない。妻とダンスを踊りたいマツモトは,やっと時間ができたと思ったら,もう体力が限界,なんてこともしばしばだ。願望メーターはどん底。真っ赤っか。
 でも,なんちゅうか,律儀にやり過ぎているような気はするんですけどね,私。このゲームのゲームらしくないところは,プレイヤーがそれほど気合を入れてプレイしなくても,話がそれなりに興味深く進んでいくところである,というようなことを自分でレビュー(「こちら」)に書いたような気がするが,ついつい,彼らの日常に過剰に介入しているのかもしれない。もっともっと,彼らに適当にやらせといてもいいのかしら。
 とはいえ,「願望メーターが低いと,良い大人に成長しませんよ」みたいなウィンドウが出てくれば,やはり気になる。いつの間にか子煩悩になっているオレ様である。

どっから見ても,老人,という風情のマツモトだが,ウフフな事はちゃんとできる。日頃「エクザート製自己気合入れ障害物コース」で鍛えているおかげだ。とはいえ,子供が小さくて世話がかかり,疲労困憊の日々が続いた。請求書を処理し忘れて,変なのがステレオ持ってったし


 さて,月日は止めようもなく流れ,ちっちゃなヒラリーも子供になるときが来た。いつものようにパーティを開き,本人の代わりにマツモトがバースデーケーキのろうそくを吹き消すと,あっという間に成長して子供に。子供になれば,ある程度コントロールが利くので,今までよりは手がかからなくなる。何より有り難いのが,昼間,学校に行ってくれることである。これで,こないだ雇ったメイドさんのMelissa(なぜか英文字のまま)と二人っきりになって,そんで,えーと,うふふ,かも。
 Melissa(以下メリッサ)ちゃんには,来るたびにチップを渡し,会話をし,徐々に親密度を上げていたのだが,なにしろヒラリーがいて忙しく,なかなか思うようにはいかなかったのである。そう,マツモトは浮気をしようとしているのだ。愛人を作ろうという魂胆なのである。なんというインモラルなゲームだ! 自慢じゃないが結婚していない私に愛人は作れない(ただの恋人になってしまう),ってことはおいといても,なんて羨ましい奴なんだ。とはいえ,頭の白い,しかも結婚していて子供が二人もいるようなじいちゃんを好きになるような女の子がいるだろうか?

長女のヒラリーが幼児から子供になるので,いつものように誕生パーティを開催した。シム人は本当にパーティが好きである。お金がかかってしょうがない。とはいえ,なかなか利発そうなお子さまで,パパも一安心だ

 そんなある日,家の建て増しを考えて庭を調べていた私は,かつて大活躍した必殺最終兵器「愛のバスタブ」を発見したのである。今は雑草ぼうぼうで見る影もないが,かつては当たるを幸い,片っ端から女の子を水着にしてやったスーパーアイテムだ。誘ってみると,まあ,ある程度親密になっていたおかげであっさりオッケー。スパッと水着姿になって,ムードは高まる一方。ちくしょう,オレも1台欲しいなあ。

 そういえば,私の通う大学では若いお友達が多いので,どうしても話題は恋愛方面になってしまう。20歳前半といえば,まあ,普通の人はいろいろ体験する年頃。トライアングル・リレーションシップ(三角関係)だのラブ・アフェアー(不倫)だの,黙って聞いているぶんには「近頃は進んでるなあ」って感じなのだが,困るのは「松本さんも(年が年だから)そういう経験あるでしょ?」とふられることだ。「ない」と言下に否定するのもなんとなく大人げないような気がして,まあ,むにゃむにゃという雰囲気なのだが,もうこれからは大手を振って「あります」と答えられる。もちろん,聞こえないようにそっと「シムズで」と付け加えるのだが,なんて素晴らしいゲームなのだ。

 おかげさまで,二人の子供も順調に育っている。ヒラリーは利口だが,ジョージはバカである。宿題なんか全然やらない,というか,宿題をやらないとどうなるかを私が知らなかっただけだが,時間がなくてほっといたら,成績はD。このままだと,社会福祉員が連れていくかもしれない,とまで言われてしまった。
 とはいえ,やはりジョージよりヒラリーのほうが可愛い。ジョージには,成人になると同時に「転出」させて,ぜひ自分の運命は自分で切り開いていただきたいが,ヒラリーは成人になっても一緒に住もうと考えている。十代になった頃が非常にいいだろうなあ。とは思うものの,二人とも十代になれば今までみたいに同じ部屋に住ませておくわけにもいかないだろう。また建て増しか? だが建て増しには結構お金がかかる。妻の稼ぎだけでは,やってやれないことはないだろうが,その後しばらく耐乏生活を余儀なくされる可能性大だ。子供が年頃になってくれば,いろいろ物入りだろうし。
 というわけで,マツモトはまたしても仕事探しをするが,「水汲み」とか「故買屋」とか相変わらずロクなものがありゃしない。スキルは高いんだから,就職すればすぐに出世して高給取りになれるような気はするが,うーん,今しばらくこのままでいようと決める。なにしろ,昼間はメリッサちゃんと二人きりになれるし。

やはり幸せの基本は,一家揃った食卓にあり。子供がやや大きくなったので仕事を探してみるが,あんまり気の進むものがない。腹が出てきたので,運動も一所懸命やってみる。まだ若い者には負けないぞ。トイレは近いけど



 そうこうしている間に,ジョージが十代になる日がやってきた。月日の経つのは早いものである。ちょっと前まで,アブアブ言ってる赤ん坊だったのに。
 というわけで,またしてもパーティだ。友達を招待し,バースデーケーキを用意する。例によってバーカーバージニアも招待するが,マツモトがこんなになったのに,彼女だけはいつまでも年を取る気配がなく,ちょっと悔しい。早く大人になってほしいが,それともNPCの場合,ずーっと同じなのだろうか? じゃ,私の苦労はなんだったのだろう。なんてね。今はそれなりに幸せだからいいのである。いつまでも友達だぜバージニア。
 もうすっかり慣れたもので,ろうそくを吹き消すと,ムービーシーンに引き続き,十代になったジョージが出現した。親の目から見ても,えーと,どうしてこんなに変な顔なの? こないだクビにした男メイドよりまだ変だ。うーん……。彼の願望を決めなければならないので「出世願望」を選んだ。いずれ大統領にでもなってほしい。

マツモト家の一人息子,ジョージは頭の悪い子供になってしまった。やはりぞんざいに育てたのがいけなかったのであろうか。遊び疲れて庭先で寝たり,ゲームに打ち込む姿が,なんだか父親を思い出さずにはいれらない

そんな彼もついに十代になるときが来た。ロウソクの火が消えると共に……。なんだこいつ,変な顔。夫婦の遺伝子が入り交じると,こんな顔になるのだろうか? 性格はどんな感じだろう? まあ,頑張って生きてほしい

今週のテーマは「老いらくの恋」である,なんていうとマツモトにぶっ飛ばされそうだが,ともかく,新しいメイドさんのメリッサといい仲になりつつあるマツモト。それにしても,雇った人と仲良くなりやすい奴である
 さて,私は迷っているのである。「愛のバスタブ」のおかげで,メリッサはマツモトに惚れてしまった。このまま順調にいけば,ウフフな事は可能であろう。場合によっては,子供を作ることだって。
 だが正直,今の幸せも大切だ。妻は変な名前だが,仕方なく結婚した割には,最近,なんともいえず愛着が湧いてきた。毛がないところもまたいい。妙な顔のジョージも利口なヒラリーも可愛いではないか。よそに彼女なんか作っていいのだろうか? 連載的には,ここで一波乱あるほうが望ましいし,マツモトのバカ助もそれを望みやがっている。どうにもこうにも迷いどころだ。
 ああ,幸せって何だろう? 彼の幸せはどこにあるのだろう? 波乱の次号を待て! 待たなくてもいいけど。

こんなに順調にいくとは思わなかったので,どんどん前進させてしまった。チューなんかしちゃっているではないか。若い時分は結構女の子に振られていたのに,もしかして,シム人の女の子達は年上好みなのかもしれない

■■松本隆一(ライター/学生)■■
勘違いしている人もいるかもしれないが,本来ミリタリーものを得意とするライター。しかし最近は「大航海時代 Online」にも興味があるという。そういえば昔,氏が職場で「大航海時代 II」をプレイしていたところ,現4GamerスタッフのMurayamaによってゲームデータを書き換えられ,例えば「聖なる香油」が「聖なる黄金水」になっていたらしい。しかし氏は少しばかり変だと思いつつも使用したら,ちゃんと嵐が鎮まったという。いいのか,嵐。そんな松本氏は,Murayamaのせいで未だに同作の主人公の一人の名前がオットー・スピノーラだかオットー・スピラーノだか分からないらしい。


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