松本隆一




ついに結婚した! してしまった。これで世間公認で,あーんなことやこーんなことができるのである。まあ,それだけじゃないんだろうけど,今のところそれしか思いつかない私である。なんとなくマツモトがうらやましい

 幸せ探して45年。幸せ探しのベテラン,といえば聞こえはいいが,禁煙のベテランなどと一緒で,要するに何度も失敗しているわけなんですね,でお馴染みの私がお送りする「ザ・シムズ2」のプレイレポートである。
 なんか世界中でもの凄い勢いで売れちゃったらしいこの「ザ・シムズ2」。それを聞いた途端,例えようもない責任感を肩にずっしり感じちゃって,オレって小心者。とはいえ,前回なんとかソーシャルワーカーちゃん(人の名前)と婚約に持ち込んで,幸せ家庭に一歩近づいたマイキャラ,マツモト。いよいよ結婚生活というテラ・インコグニタ(ラテン語で,「未知の領域」という意味)に突入するのだ。ちくしょう,長かったぞ! 予想外に長かったぞ。いや,私がやってる以上,予想の範囲内というべきなのだろうか。

 ところがまあ,賢明な読者ならお察しの通り,婚約したからって,夜の生活に変化はないのである。婚約直後,私は編集部の厳しい命令通り,ビデオキャプチャの準備をし,カメラアングルを整え,ウフフな瞬間を待った。なんちゅうか,「覗き」をやっているようないけない気持ちというより,なまじ準備期間が長かっただけに,動物の生態を追って決定的瞬間を待つカメラマンのようである。
 ところがあんた,婚約ぐらいじゃやはり何も起きないのだ。結婚を誓った男女がダブルベッドに一緒に横になっているというのに,どうなってんだ,と私はまた机をバンバン叩いたが,ダメなものはダメである。おいおい,いつまで引っぱるんだ,と私は思うが,編集部と読者も私にほとんど同じ気持ちを抱いているだろうと思い直して,プレイ再開。

 警察に転職したマツモトはトントン拍子に出世し,とうとうSWATチームのリーダーになってしまった。こ,こんなやつがSWATのチームリーダー? 虫見て泣いちゃうのに? おもらしして,それがトラウマになっているのに? ベロナービルの治安と彼の部下の生命を案じてならない私である。
 また,婚約者のソーシャルワーカーちゃんも一般開業医から専門医になり,お給料がかなり増え,勤務時間は減少した。そのため,やりかけだった家の建て増しもなんとか終わらせることができ,これで屋根のある生活を再び送ることができる。よかった。

またしても願望の報酬として謎めいた機械を手に入れたり,火事を出したり,出世してSWATの隊長になったり,男友達を連れてきたりと,いろいろ忙しいマツモト。家の建て増しも終わった。それにしても何もない家だな



 ちなみにマツモトの基本的願望はロマンス,彼女は財産願望。ほかのキャラをいろいろ作って試してみたが,一番簡単なのが財産願望で,一番面倒なのがロマンス願望という印象だ。財産願望は,あれが欲しいこれが欲しいと望むだけなので,お金を出して買えばよいだけの話。ところがマツモトの奴,我が身も省みず「3人のシムとウフフな事をしたい」とか「3人のシムといちゃいちゃしたい」とか,やたら時間のかかりそうな無茶なことばかり妄想する。前回までお伝えした通り,やつぁ相手が男だってぜんぜんお構いなしだ。転職した警察でもイケメンの同僚を家に連れてきて,ダンスしたりキスしたがったりで,彼の将来がたいそう心配なのだ。

 さて,現実世界でもゲームでも結婚にはそれなりのお金がかかる。ただ「提案する」から「結婚」を選んで相手が了解すればそれで結婚成立なのだが,それではつまらないじゃないですか。やはりここは「結婚パーティ」を開催したいのである。
 私も20歳台から30歳台前半にかけて,友人の結婚式に数多く出席し,そのつどお祝いとして幾ばくかのお金を置いてきた。一般にこれは「いつか自分のところに戻ってくるお金」として知られているが,その"いつか"が待てど暮らせど来ないまま,学生時代の友人ともいつしか疎遠になってしまった現在,その恨みをぜひゲームにぶつけたいのである。長い割につまらない理由で申し訳ないとは思っているんですよ。

 結婚には「ウェディングアーチ」が必要だ。知り合いを呼び集め,その下で「結婚する」をクリックすると,素晴らしいムービーシーンが流れ,そのあとパーティが始まる。ところが,恋仲のサミュエル(男)なんか呼んじゃったから大変。再び怒ってマツモトを殴りつけるサミュエル。そんな変なのヤだから再ロード。次は,電話するのが早すぎて,ソーシャルワーカーちゃんが寝ている間にパーティが始まってしまった。マツモトも寝起きなので下着のままだ。パーティの評価は当然「退屈」。うう,再ロード。なかなかタイミングが難しいのである。
 三度めの正直で,やっとパーティがつつがなく始まり,熱烈なキッス,拍手,乾杯,オレ様ガッツポーズ,となった。だが,こんなのはしょせんセレモニーなのである。

いよいよ結婚パーティ。必要なものは基本的にウェディングアーチだけなのだが,それだけじゃ寂しいので,いろいろ用意した。乾杯の音頭を取るのは,よりにもよってバージニアちゃん。ホントだったら,キミとこんな事をしていたはずなのに……。パーティは夜まで続き,結果は成功。おもらしおじさんまで出現だ。誰この人?



 夜になり,お客が三々五々帰っていくと,二人の時間が始まる。まさに新婚初夜と言っても過言ではないくらい正確にその通りなのだが,今回こそ何かが起きないわけがないのだ。
 ベッドに二人でリラックスさせてみると,待望の「ウフフな事をする」コマンドが出た。出た出た! それを選ぶと,再びムービーシーン。そして布団の中なのでよく分からないが,どったんばったん。締めくくりに花火が上がって,ついにウフフな事ができちゃったのである。まあ,おとなしいっちゃおとなしいものだが,モニターの前で私は大きな息をつき,矢吹ジョーのように自分が真っ白に燃え尽きていくのを感じた。「我が事なせり……」と私はつぶやく。人生の最大目標を達成した深い満足感と心地良い疲労感が私を包んでいくのであった。バカですか私?

当然の帰結として,妊娠して出産したソーシャルワーカーちゃん。こうして,幸せ家族がやっとスタートしたのである。お父さんも親バカぶりを発揮。きっと年賀状とかに子供の写真を印刷して送ってくるんだぜ。けっ

 ウフフな事ができるようになれば,いよいよ次はお子様制作だ。もうこのへんになると完全に未知の領域だが,マツモトと私は果敢に進んでいくのだ……って,ところがですね,期待した結婚生活って,従前とそんなに大きく変わるものではなく,ちょっと拍子抜けではある。結婚したって,お腹が空けばご飯を作らなくちゃならないし,仕事にも行くし,シャワー浴びたり便所行ったりと,人間の日常なんてそんなに急に変化するものでもない。そんなもんなのかねえ。45歳にして初めて知る真実だ。
 そんなある日,ソーシャルワーカーちゃんの体に異変が発生した。食事中に,いきなりトイレに駆け込んで吐きだしたのだ。これはたぶん"つわり"であろう。ということは,"おめでた"なのだ。それにしても妙に細かいゲームである。というわけで,次回は家族3人の幸せの肖像をお目にかけられると思うが,そんなに順調にいってくれるのだろうか? 次号に続こう。

ゆうべは大ハッスルだったのに,翌日もまた組んずほぐれつ。まあ,お盛ん。とはいえ,目を覚ませばそこにあるのは日常生活。どうやらサミュエルとは切れたが,マツモトの浮気の虫は治まらないのだ。うらやましい奴め

 そんなわけで,待望の結婚式シーンおよびウフフシーンのムービーを掲載しよう。経験者も未経験者も,とくとご覧いただきたい。18禁じゃないから,若者達も大いに見るべし。
 なおこのムービーを再生するには,On2社のVP6というコーデックが必要だ。ザ・シムズ2プレイヤーならインストール時に自動的にこのコーデックが入るが,それ以外の人は「こちら」のサイトで「download it now」をクリックして,vp6_vfw_codec.exeというファイルを手に入れよう。あとはこのファイルをダブルクリックしてコーデックをインストールすれば,メディアプレイヤーなどでムービーを再生できる。

 ■結婚式ムービーは, 「こちら」(4.79MB:47秒)

 ■ウフフムービーは, 「こちら」(8.19MB:1分0秒)


■■松本隆一(ライター/学生)■■
未来への希望に満ち溢れた20歳前後の学生達と毎日顔を合わせているため,たまに帰国すると知人達から"不幸せ"な話を聞くことが最大の楽しみだという,(不)幸せハンター。ゲーム内のマツモトは幸せを見つけたようだが,松本氏自身の幸せについて聞いてみると,「秋葉原に行きたいなぁ。何が欲しいってわけじゃないけど,ジャンク屋が恋しい。使いもしない半導体やコンデンサを買いたくてたまらない。九州じゃんがらで全部入りを食べて,ドトールでコーヒーが飲みたいなぁ」。些細なことばかりだが,氏は米国在住。マツモトのロマンスよりも,難しい。


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