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| 主人公碇シンジを育成することで,エヴァ世界のさまざまなストーリー展開の可能性と各種イベントを楽しむ「新世紀エヴァンゲリオン 碇シンジ育成計画」。戦闘シーンは3D描画だ |
今回取り上げるのは,ガイナックスの「新世紀エヴァンゲリオン 碇シンジ育成計画」。1995年10月から1996年3月にかけて放映されたテレビアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」の主人公である碇シンジを育成するゲームだ。つまり作品の核はギャルでなく男子中学生である。念のため。
プレイヤーはシンジが属する特務機関NERV(ネルフ)の作戦部長葛城ミサト一尉として,シンジの育成に当たる。育成の進展に応じてストーリーが変化し,原作に準じた流れのほかに,明るい未来やパラレルワールドでのハッピーエンドといった,別の物語が紡がれていく。
新世紀エヴァンゲリオンについては,今さら長々と説明する必要はない(人も多い)と思う。キリスト教グノーシス派の教義やフロイト/ユングの精神分析学などからガジェットを借りた,思わせぶりなストーリーはさておき,要は"キャラ萌えとストーリー展開は切り離し得る"ことを実証した,キャラクタービジネス界の"偉大な"マイルストーンである。
一応書き添えておくと,本作には物語の基本的な背景やキャラ設定についての説明がほとんどない。まあそもそも,原作を知らない人が今からこのゲームをプレイすることはまずないだろうが。
プレイヤーはシンジが属する特務機関NERV(ネルフ)の作戦部長葛城ミサト一尉として,シンジの育成に当たる。育成の進展に応じてストーリーが変化し,原作に準じた流れのほかに,明るい未来やパラレルワールドでのハッピーエンドといった,別の物語が紡がれていく。
新世紀エヴァンゲリオンについては,今さら長々と説明する必要はない(人も多い)と思う。キリスト教グノーシス派の教義やフロイト/ユングの精神分析学などからガジェットを借りた,思わせぶりなストーリーはさておき,要は"キャラ萌えとストーリー展開は切り離し得る"ことを実証した,キャラクタービジネス界の"偉大な"マイルストーンである。
一応書き添えておくと,本作には物語の基本的な背景やキャラ設定についての説明がほとんどない。まあそもそも,原作を知らない人が今からこのゲームをプレイすることはまずないだろうが。

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| 本作オリジナルキャラクターの3人娘。手前から大井サツキ,最上アオイ,阿賀野カエデ。キャラの命名法則もエヴァンゲリオンのお約束が忠実に守られており,今回は巡洋艦シリーズのようだ |
キャラクターデザインはまんが家の米倉けんご氏。原作と比べて葛城ミサトの雰囲気などがかなり変わっているほか,シンジ,アスカ,レイともやや面長になっており,絵柄の好みは分かれるかもしれない。主要キャラほど違いが際立つというのは,やはり意図的なアレンジだろうか? ちなみに霧島マナは,グラフィックスもパーソナリティも「鋼鉄のガールフレンド」のときとは別人のような設定だ。ただし,ボイスキャストはすべて原作どおりなので,その点は安心して楽しめる。
シンジの成長もさることながら,本作の楽しみはもちろん登場する女の子達と仲良くなることにある。プレイヤーの立場は一応葛城ミサトだが,まあそのあたりはあまり気にせずに。
葛城ミサト
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使徒と戦う特務機関NERV(ネルフ)の作戦部長で,ゲーム開始時点での階級は一尉,29歳。途中で三佐に昇進し,また30歳になる。シンジを預かって同居,教育係も務めており,プレイヤーは彼女の立場を借りてシンジの育成に当たる。3度の飯よりビールが好きで,男勝り。私生活はズボラで,家事が苦手。いつの間に顔が長くなってしまったかは不明。(CV:三石琴乃) |
綾波レイ
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エヴァンゲリオン零号機パイロットにして「ファースト・チルドレン」,シンジの同級生。寡黙で感情を表に出さず,会話を試みても取り付くシマのない短い答えを返すのみだ。本作ではシンジの育成が主題のため,レイの変化はほとんど描かれないが,タナトス編以外での変容ぶりはなかなか激しい。(CV:林原めぐみ) |
惣流・アスカ・ラングレー
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エヴァンゲリオン弐号機とともにパイロットとしてドイツからやって来た「セカンド・チルドレン」。14歳にして大学を卒業した天才少女……のはずなのだが,あまりそうは見えない。勝ち気でプライドが高く,世界は自分を中心に回っているという前提の言動が特徴。このヒトもタナトス編以外でのキャラ変化が楽しみなところである。(CV:宮村優子) |
霧島マナ
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シンジの同級生で,本作においては明るく素直な音楽部部長。テレビ版および映画には登場せず,サイドストーリーをゲーム化した「新世紀エヴァンゲリオン 鋼鉄のガールフレンド」のヒロインとして登場しているが,その面影はまるでない様子。サイドストーリーの設定は受け継いでいない,ということだろうか。音楽部に所属すれば彼女と親しくなるのは割と容易なようである。(CV:林原めぐみ) |
| 渚カヲル | 碇シンジ |
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| ストーリーの終盤で登場する「フィフス・チルドレン」。独特な雰囲気を身にまとい,シンジに親しげに接近する男の子。タナトス編以外でのこのヒトの役回りは,まあご想像にお任せしたい。(CV:石田彰) | 「新世紀エヴァンゲリオン」の主人公にして,本作で育成対象となる14歳の中学生。エヴァンゲリオン初号機パイロット。やや後ろ向きな性格で,傷つきやすく内にこもりやすい。(CV:緒方恵美) |
最上アオイ
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本作で登場する新キャラクターの一人。MAGIシステムのうちMELCHIOR(メルキオール)担当のオペレータであり,シンジの知能強化プログラムも担当する。理知的で物腰が堅いが,マッドサイエンティストっぽい言動も垣間見える。ちなみにMAGIはNERVの頭脳というべきスーパーコンピュータで,MELCHIORには開発者である赤木ナオコ博士の「科学者として」の思考パターンがインプットされている。アオイのキャラクターもそうした設定を反映したものだろう。(CV:堀江由衣) |
阿賀野カエデ
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本作で登場する新キャラクターその2。BALTHASAR(バルタザール)担当のオペレータであり,シンジの精神強化プログラムを担当する。優しく,かつ料理上手という家庭的な一面を持つようだ。BALTHASARには赤木博士の「母として」の思考パターンがインプットされているので,カエデのこの設定もうなずける。もっとも精神強化が武道の修行である一方,カエデは絵的にも声質的にも"かわいい"路線だったりするあたり,ややちぐはぐな印象はあるが,そこがイイという人も多かろう。(CV:清水愛) |
大井サツキ
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新登場3人娘のもう一人。CASPER(カスパー)担当のオペレータであり,シンジの感性強化プログラムをも担当する。ロシア系ハーフという設定で,ウォッカをあおる酒豪らしい。CASPERは「女として」の思考パターンであるからして,オペレータのサツキも,そこはかとなく色っぽいお姉さまタイプ。ちなみに感性強化訓練では絵を描いているようなのだが,感受性と同時にシンジの色気も上がる。それはカリキュラムによってじゃなく,指導役の影響じゃないか,などと思ってしまうのは考え過ぎか。(CV:山本麻里安) |

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| 使徒との戦いでは,エヴァも使徒も3D描画でぐりぐり動く。カメラアングルもそれなりに凝ったものになっており,なかなか見応えがある |
ストーリーの途中には使徒との戦闘が入り込んでくる。装着する武器を決めて出撃するのだが,エヴァが3Dでぐりぐり動き,走り回るさまはなかなか壮観だ。
戦闘での指示は「攻撃」「防御」「待機」などシンプルなもので,正直なところ戦闘自体のゲーム性は薄い。やはりゲームとしては育成部分が重要なのだといえよう。なお,ストーリーに応じて零号機や弐号機が一緒に出撃することがあり,これらにも同様の指示を与えられるが,実際のところ戦いは自機の活躍如何で決まる。
戦闘で損害率が上がってくると,初号機はしばしば暴走して勝手に使徒を倒すので,使徒に負けてゲームオーバーになることはない。それなら戦闘に何の意味があるのかということになるが,つまり"勝敗"が問題ではない,ということだ。
能力値の状態によっては,損害率がさほど高くなくても暴走する。エヴァの世界観をある程度知っていれば,どういう状態だと暴走しやすいか,それがストーリーをどっちへ引っ張っていくかはおぼろげながら想像がつくことだろう。
「シンジが変われば世界が変わる」というキャッチフレーズを受け,本作には大別して三種類のストーリー展開がある。その一つは原作に準拠した「タナトス編」だ。原作とまったく同じではないが,基本的な流れや主要なエピソードは踏襲される。
二つめは「パトス編」。タナトス編の話数表記が第拾参話などといったおなじみの書き方であるのに対して,パトス編は第XIII話などというローマ数字での表記になる。原作のストーリー的課題を引き受けつつも,コミカルなエピソードが挟み込まれる。
最後が「キャンパス編」で,第23話といった算用数字で表記される。原作で各キャラが背負っていた宿命がまるっきり放棄され,"学園モノ"になりおおせたパラレルワールド的展開であり,"セルフパロディ"的性格が最も濃厚に出てくる。
ただ,こうしたストーリー分岐が何で決まるか明示されない点は,いささか不親切な気もする。公式サイトに書かれているとおり,NERVの訓練を重視した育成では暗いストーリーになっていくわけだが,そこから先を試す基本的な指針のようなものが,本作にはあまり示されていないように思う。
育成の進展が戦闘結果を左右し,その戦闘結果をも受ける形でストーリーが展開する本作,小難しい理屈をこねるなら"ビルドゥングスロマン(若者の成長物語)の結末が日常への回収ってのは,今日的作品としてどうなのよ"とか,"エヴァンゲリオンってのは結局,大仰な「ライナスの毛布」(移行対象論とかでググってください)なのね"というあたりも,確かに気になりはする。
だが,エヴァ世界に入り込んでキャラ達と戯れるという楽しみは十分に実現されており,それこそが作品としての眼目なのは間違いないところだろう。
二つめは「パトス編」。タナトス編の話数表記が第拾参話などといったおなじみの書き方であるのに対して,パトス編は第XIII話などというローマ数字での表記になる。原作のストーリー的課題を引き受けつつも,コミカルなエピソードが挟み込まれる。
最後が「キャンパス編」で,第23話といった算用数字で表記される。原作で各キャラが背負っていた宿命がまるっきり放棄され,"学園モノ"になりおおせたパラレルワールド的展開であり,"セルフパロディ"的性格が最も濃厚に出てくる。
ただ,こうしたストーリー分岐が何で決まるか明示されない点は,いささか不親切な気もする。公式サイトに書かれているとおり,NERVの訓練を重視した育成では暗いストーリーになっていくわけだが,そこから先を試す基本的な指針のようなものが,本作にはあまり示されていないように思う。
育成の進展が戦闘結果を左右し,その戦闘結果をも受ける形でストーリーが展開する本作,小難しい理屈をこねるなら"ビルドゥングスロマン(若者の成長物語)の結末が日常への回収ってのは,今日的作品としてどうなのよ"とか,"エヴァンゲリオンってのは結局,大仰な「ライナスの毛布」(移行対象論とかでググってください)なのね"というあたりも,確かに気になりはする。
だが,エヴァ世界に入り込んでキャラ達と戯れるという楽しみは十分に実現されており,それこそが作品としての眼目なのは間違いないところだろう。
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| ゲーム中で出遭えるかもしれない,ひな祭りパーティの光景。すっかりドタバタ喜劇のような場面である | ルートによってだいぶ違うヒトになる,シンジの父ゲンドウ。シリアスキャラだけにパロディには格好のエサだ | テレビシリーズでおなじみ,市川崑風に極太明朝で書かれる各話タイトルは,本作にも踏襲されている |


























