アクション 4Gamer.net Review
 

古き良きFPSの香り漂うホラーシューティング

ペインキラー
Text by 三須隆弘
16th Jun. 2004

ホラーは地味めというイメージを覆したド派手ゲーム

デモ版にも収録された中世風の町ステージ。首吊り街道にて,自慢のペインキラーを振り回す主人公。回転刃がゾンビを肉隗に! マウスに肉を切るような嫌な手応えを感じる瞬間

 「ペインキラー」はポーランドのPeopleCanFlyという新鋭会社が開発,ほとんど無名(それもそのはず,この作品が一作めらしい)の会社だったにも関わらず,E3 2003でデモが初公開されると,瞬く間に大評判となったホラーFPSである。Havok2.0という物理エンジンを搭載し,爆風で飛び散る肉片,砕け飛ぶ瓦礫の軌道一つ一つまでリアルに計算。さらに最新グラフィックス技術てんこもりでグロ描写に注力されており,まさしく現在世界最先端のホラー&スプラッタアクションであるといえる。
 ストーリーはいたってシンプル。交通事故によりこの世を去った主人公が,妻と同じ天国に行くために神と悪魔の戦争へ身を投じるというもの。節目ごとにムービーが流れ話は進行していくが,英語が分からなくても,おおよその流れは理解できる。要するに昔からある,ストーリーは二の次,撃ちまくるのがキモ! なFPSなのである
 系統はまさに"古き良き時代のFPS"を彷彿とさせる,撃って撃って撃ちまくるタイプ。マップはほぼ一本道で,あるポイントまで来ると背後の扉が閉まり,退路が断たれて周囲から敵がバンバン湧いて出てくる。弾薬は豊富に手に入るので,ひたすら撃ちまくって敵を全滅。すると次に進むべき扉が開く,という流れだ。
 ステージのシチュエーションは実に豊富で楽しいが,ストーリーと厳密にリンクしているわけではなく,「ここはどこで,何をすべきなんだ?」ということを深く考える必要はない。とにかく笑っちゃうほど敵が襲ってくるゲーム性は「シリアスサム」に似ているが,雰囲気はもっとダークで,初代「DOOM」や「QUAKE」に近いか。
 とくにゲーム序盤から中盤までは,そういった"怖さ"を強調したステージが多く,夜の墓場や崩れた洋館,首吊り死体だらけの村など,怖い怖いポイント盛りだくさん。例えば洋館ステージでは,薄暗い室内で頭上を照らすと無数のゾンビが天井にへばりつき,逆さに這いずり回って,しかもそれがボトボト落ちてきたり。そんな中,背後から拘束具に拷問ヘッドギアを付けたゾンビがガクガク震えながら接近してきた日にゃ,本気でこのゲームやめようかと思ったほど(小心者)。夜中にヘッドホンで遊んでいたら失禁するかと思いました。
 ただ,そんなホラー要素もゲーム中盤からは薄まり,明るく広い場所で大群と戦うパターンが増え,よりシリアスサムっぽくなる。まぁ遠くから敵の大群が一直線に向かってくるのも,これはこれでかなり怖いのだが。

天井を見上げるとゾンビが這いずり回り,真下に来るとボトリと落ちて襲ってくる。精神的にキツイ攻撃だ 拘束具を着て電気を流されている死刑囚ゾンビ。「んぉーんぉー」と叫びつつ接近。しかも自爆。すごく恐い Tabキーを押すか,ステージクリアするとスコアが表示される。タロットカードを入手する方法もここで分かる

鉄橋のてっぺんからワイヤーをつたって下へ降りる。高所恐怖症の男性なら股間の紳士がキューンとなる瞬間 腰巻の"巣"の字が素敵なゾンビ忍者は,不思議な言葉を喋りながら襲ってくる。日本語のような不思議な言葉を ペインキラーでゾンビの頭をカチ割る。頭の中身が見えてます。序盤は昔っぽい雰囲気のステージが多い

古城で十字軍のような鎧を着たゾンビ達と戦うステージ。両手に斧の死刑執行人モンスターは相当タフで強い 武器は2種類の使い方ができる。ショットガンは通常弾のほかに液体窒素弾を撃てて,凍った敵は一発で砕ける 敵のAIは基本的に単純だが,別の敵の弾が自分に当たると怒って,撃ったヤツを攻撃。同士撃ちを始めたりする

怖くて派手でハチャメチャなシングルプレイ

四方の像からビームを受けて,体力を回復してしまうボス。このままでは倒せないので,まずは回復をやめさせるには……。ボス戦は攻略を考えながら戦うのが楽しかったり

 特徴的なのが,種類は少ないものの2パターンの攻撃方法を備えた各種武器だ。タイトルにもなっている"ペインキラー"は,刃を回転させて敵をミンチにしたり,すっ飛ばした刃からレーザーを出して敵を焼き切ったりできるトンデモウェポン。FPSで,回転刃をグリグリ押しつけて(嫌な感触と共に)敵を粉々のミンチにする武器なんて,そうそうお目にかかれない。まさに大笑いで接近戦しまくりである。
 ステッキガンは木の杭を高速で打ち出す武器で,ヒットした箇所に応じて敵がもんどりうって吹き飛ぶシーンは,物理エンジンの真骨頂。液体窒素で敵を氷漬けにしてショットガンでバラバラに砕いたり,ロケットランチャーで大群をまとめてグチョグチョにふっ飛ばしたりと,特徴的な武器が揃っている。
 本作で一番の見どころといえば,なんといっても超巨大なボスモンスターと戦うステージだろう。中でもチャプター1の巨大骸骨や,デモ版でも有名なチャプター3のハンマー巨人は必見で,画面に入りきらないビッグボディと周囲を粉砕する圧倒的迫力には,ただただ呆然。ほかのチャプターボスもクセモノ揃いで,どれも頭を使って戦わないと勝てない。脳みそ空っぽで大群を相手に撃ちまくる通常ステージとは対照的で,このあたりゲームとしてメリハリがしっかりしているな,と関心できた。
 五つのチャプターにトータルステージ数は20以上。デモ版だけプレイした人からは単調なんじゃないかという意見もあるようだが,製品版は良くいえばバラエティに富んだ多彩なステージ構成(悪くいえば統一感がないかも)で,プレイヤーを飽きさせない。
 普通にプレイしてもたっぷり10時間以上は楽しめるが,本作は繰り返し遊ぶための"やり込み要素"もかなり充実している。Daydream(最低難度)以外の各ステージで入手できる"タロットカード"は,攻撃力倍増やリロード速度アップなどの効果を持った収集品。これはゲーム中に直接拾って使うアイテムではなく,ステージクリア後に入手判定が行われ,使用などの管理はステージの合間に行う。
 カードの入手条件はステージによって異なり,"全部の敵を倒せ"だったり"特定の武器だけで戦え"と,さまざま。かなり厳しい条件のステージもあり,加えて最高難度のTraumaはほかのすべてのタロットを揃えないとプレイできない。なお,このTraumaをクリアすると,通常とは別の(真の?)エンディングが……なんて要素も。財宝などが眠る隠し部屋も多数あるが,高度なジャンプテクニックをマスターしないと行けないような場所ばかりで,真剣にやり込もうとしたらかなり長期間遊べる。

ロケットランチャーはチェインガンとセットになっているので,かなり使い勝手が良い。狭い通路は血みどろだ 中盤からはホラーというよりスプラッタ色が濃厚。スティックガンの杭は攻撃力が高く,敵を肉隗にすることも 手裏剣を連射する武器。メインの手裏剣は地味だが,サブで撃てる電撃が強力。シビレて痙攣する敵が哀れだ

現代的な工場で戦うステージ。下に落ちているボンベを撃てば,大爆発して周囲のモンスターを一掃できる 後半の軍事基地ステージではゾンビ兵士が大量発生。真の地獄は戦争なのかも。とかいってみたり あまりの大きさに笑っちゃったチャプター1のボス,超巨大骸骨。この大きさで目の前で動きまくって大迫力

チャプター2のボス,沼地のモンスターはいくら撃ってもダメージを与えられない。最初は本当に戸惑うかも チャプター4のボスは巨大なガーゴイルっぽい悪魔。倒しても倒しても復活する。しぶといったらありゃしない 見えるのに取れない! というシークレットが多い。信じられないようなジャンプを駆使しないと行けない場所も

プレイ人口が少なめ? マルチプレイはやや寂し

全員が敵のデスマッチ対戦であるフリーフォーオールのサーバーが多い。PINGが悪いと弾速が遅いペインキラーやステッキガンなんてほとんど当たらない。勝ちたければロケットランチャーを探せ

 マルチプレイはオーソドックスなデスマッチ,チームデスマッチ形式のほか,全員が同じ武器で戦う"ヴーシュ",4倍ダメージアイテムを入手したプレイヤーのみがスコア加算される鬼ごっこ形式の"ライトベアラー",一風変わったところでは,全員ロケットランチャーを装備して空中の敵だけにダメージを与えられる"ピープル・キャン・フライ"なんてモードもある。
 ネットエンジン自体は普通,というかそれほど優秀ではないのか,PING100〜200前後だとラグがひどくゴムひもに引っ張られているようで,快適というにはほど遠い感じ。最大の難点は,快適に遊べるサーバーがほとんど見つからず,しかもプレイヤー人口も思ったより少ないという点だ。筆者の場合,検索してもPING100後半〜200オーバーのサーバーばかりで,しかも全世界で30人くらいしかプレイしてないの? と思っちゃう日がほとんどだった。しかし日本で正式に本作が発売されると,日本サーバー&プレイヤーもボチボチ見かけるようになり,このへんの問題もずいぶん改善されてきたようだ。
 マルチプレイは,破壊力があって扱いやすいロケットランチャーさえ入手できれば,初心者でもそこそこ戦えてなかなか楽しい。悪くいえば大ざっぱ,良くいえば一発逆転が狙える爽快なゲームバランスは「QUAKE」や「UNREAL」の初代を遊んでいるようなプレイ感覚で,個人的にちょっと懐かしなぁと感じた。本作のマルチプレイはCPL(Cyberathlete Professional League)やESWC(Electronic Sports World Cup)といった,世界規模で行われる海外有名ゲーム大会で採用されたため,今後もうちょっとブレイクしてくれるかなぁ,なんて密かに期待してたりするのだが……。

 最後にマイナス点にも触れておくと,本作の場合プロテクトがキツイのか,筆者のマシンとの相性が悪いのか,起動前のCDチェックやパッチ導入後の動作が,かなり不安定だった。インストール終了直後にブルーバックで落ちたり,パッチを導入したら起動できなくなったり。こういった点は,時間が経てば対策パッチが出て改良されるだろうが,まだまだPCゲームはハードルが高いというか,ゲーム機並に簡単には遊べないものだなぁと少々残念だった。とはいえ,シングルプレイは完成度が高く,一昔前なら信じられないグラフィックスと演出の迫力には大満足。「Half-life2」が出る頃が次のPCの買い換えどきかなとかノンビリ考えていたわけだが,久々に「ああ,ゲームのためにPCなんとかせにゃならん!」と考えさせられる作品と出会えたのだった。

マルチプレイではデーモンとかエンジェルなどを選べるが,性能に違いはない。見た目で好きなのを選べばいい 攻撃力アップアイテムを入手! だけど弾がほとんどありませんというマヌケな状態。このあたりがまさにマルチ PING60くらいでも,なんかゴムに引っ張られているような不思議なラグり感。今後のパッチに期待ってことで

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