ストラテジー 4Gamer.net Review
 
異色なスタンスでも"がっつり"遊べるナイスゲーム
ナイトシフト 日本語版
Text by 岩尾ゴワス
23th July. 2004


話題の会社がリリースする異色タイトル

ゲームの根幹となるストーリーは,プリンス・ジョンが敵役のヴァルタマンやドラゴンなどを相手に戦うという,かなりファンタジーの王道ノリ

 ここで紹介する「ナイトシフト 日本語版」(以下,「ナイトシフト」)は,すでに旬を逸した感はあるものの,近鉄バッファローズ球団の買収騒動で一躍脚光を浴びたライブドアが,プロジーグループを窓口に発売するゲームである,
 プロジーグループのソフトのひそかな愛用者である筆者のもとには,同社からリリースニュースがよく届くが,最近届いたメールには「ナイトシフト」の案内が書かれていた。軽く要点をまとめると,「RTSとRPGの要素がほどよくブレンドされたナイスゲーム」「牛様が絶対! つか牛様がすべて!」「うひょひょな要素が多い!」など,まさに「なんじゃこのゲームは?」の世界。
 もちろんゲームの詳細も載っていて,シングルプレイでは純粋な戦術戦が楽しめる「RTSモード」があったり,キャラクターを成長させつつミッションに挑む「RPGモード」があったり,さらにはRTSモードをベースにしたクエスト攻略型の「キャンペーンモード」が楽しめたりするとのこと。どうやらまともなゲームらしい(「RTSとRPGの共存が可能なのか?」という疑問を含みつつではあるが)。とはいえ,「牛様がすべて」という言葉のインパクトはあまりに強く,実際にゲームに触れるまでは,「俺は騙されないぞ」という不安があったのも確かだ。もっとも,いざ遊ぶとそれが杞憂だったのが,良い意味で拍子抜けしたのも事実ではあるのだが……。

敵役なのにとぼけた顔のヴァルタマン。「ナイトシフト」の登場人物はこんなのばっかりなのである キャンペーンモードがチュートリアルを兼ねている。最初はキャンペーンモードで遊ぶと良いだろう 「エディタ」機能では,オリジナルのマップが作成できる。作ったマップはRPGモードで実際に遊べるのだ

RTSモードやRPGモードのネット対戦が楽しめる「マルチプレイ」。写真はメインサーバの「EARTHNET」 シングルプレイと同じシナリオを使って対戦を行う,RTSモード。やはりRTSといったら対人戦が一番だ マルチのRPGモードでは,プレイヤー同士が協力してシナリオに挑戦。プレイヤーは「なし」に設定すること


三つのモードを"がっつり"楽しみたい!

写真はキャンペーンモードから。複数のユニットに指示を与えて移動や戦闘を行いながら,同時に村の施設で新たなユニットの生産指示を行うなど,なかなか本格的なRTSゲームとなっている

 では,「ナイトシフト」の全貌について触れてみよう。まずはRTSモードについてだが,これは"ウォークラフトシリーズ"などと同じように,資源を集めて施設を建て,そこからユニットを作って拠点と勢力範囲を拡張していく,とても"馴染み深い"システムである。
 デフォルトでシナリオは14本あり,プレイヤーはその中から好きなものを選んで遊ぶ(それぞれのシナリオに関連性はない)。ただし「牛様がすべて」と冠してあるように(?),資源が牛様の生産する「ミルク」となっているのが大きな特徴。プレイヤーは牛飼いの少年や戦闘ユニットを使って,牛様のお乳の出と安全を考えながら,ミルクによる全戦域の維持を画策しなければならないところが,非常にユニークなところ……というかぶっちゃけ「ヘン」なところである。
 ちなみに登場するユニットの名前も,「ウォリヤン」(戦士)や「アーチャン」(弓兵),「ババーン」(読んで字のごとくおばちゃんキャラで,敵の施設を図々しく占領するという特殊なユニット)など,ちょっと腰の力が抜けるものとなっている。

 一方RPGモードは,「ハンター」や「ナイト」などデフォルトの7人のキャラクターのうちから一人を選び,戦闘で経験値を稼ぎながらミッションをクリアしてストーリーを追う,これまた"馴染み深い"システムだ。ちなみにシナリオは関連性のあるものやないものを含めて,全部で18本用意されている。RPGモードは登場する7人のキャラクターの解説がいちいち皮肉なところが面白く,とくにセクシーな「アマゾンメイジ」は,「この露出度の高い魅力的な女性は,大切なターゲット層である若い男性をとくに意識してデザインされたキャラクターである……」と,冗談とも本気ともつかない解説がされており,まさに冒頭に書いた「うひょ」好きなゲーマーにはたまらない部分なのだ。

 このRTSモードとRPGモードは基本的なゲームシステムこそ異なるものの,マップの構成や登場するアイテム&モンスターの設定,操作方法などが共通となっている。これを生かしてRTSモードにキャラクターの成長やアイテムの保有といった要素を絡めたのが,ある意味最強のいいトコ取り狙いのキャンペーンモードとなる。
 基本的なシステムはRTSモードやRPGモードそのままだが,物語の軸となるプリンス・ジョン(バカ殿様ではないが,ちょっとマヌケ)と,彼を取り巻く多くの仲間や敵,さらにせっぱ詰まってるクセにノンキな愚民どもが織り成すストーリーは,RPGモードのキャラクター紹介以上に毒があったり皮肉だったりで面白い。このあたりは好きな人と受け付けない人がいるかもしれないが,「モンティ・パイソン」シリーズのようなコメディノリがOKであれば,まず間違いなく楽しめるだろう。

キャンペーンモードには,三つのシナリオが用意されている。「激しく難しい」という設定にニヤリとさせられる それぞれのシナリオには,ミッションが設定されている。ミッションを攻略しつつ,ストーリーを追う形だ ストーリーのキーポイントでは,写真のように対話シーンとなる。対話の可能な相手には「!」マークがつく

RTSモードには,対戦相手の数やマップの異なる14本のシナリオがある。難度などは任意に変更可能だ 施設を建てて拠点を拡張し,新たなユニットを作っていく。かなりしっかりとしたシステムのRTSゲームである 施設では,装備のグレードアップができる。装備の強化には,牛様の「ミルク」が大量に必要となるのだ

RPGモードでは,デフォルトの7人の中からプレイキャラクターを選ぶ。写真は開き直りがイカス「アマゾンメイジ」 遭遇したモンスターを倒して経験値を稼ぎ,レベルアップを目指す。拾ったアイテムで装備の強化もできる 「!」マークのついたキャラクターと会話すれば,ミッションが追加されてストーリーが進んでいく


さらなる練りこみとぶっ飛び要素が欲しかった!

キャンペーンやRPGモードでは地下の概念もあり,なかなか遊び心のあるシステムとなっている。マップ上のオブジェクトの中には破壊できるものもあり,壊すとアイテムやモンスターが出るといった要素も

  以上のように,一本のタイトルでRTSもRPGも楽しめる「ナイトシフト」は,かなりお買い得感の高いゲームだ。ただ,やはりいくつか気になる部分はある。
 例えばRTSモードの場合,随時違う部隊に指示を与える必要があるため,おおまかな指示でユニットが移動や戦闘をこなしてくれる部分は良い。ところが,RPGモードでも同じようにラフな指示になるため,ユニットが思うように動いてくれず,しかも移動速度もスローなので,これがかなりのストレスになるのだ。普通は慣れれば慣れるほどテンポ良くゲームが進められるものだが,逆に慣れれば慣れるほどストレスが溜まるというのは,根本的な問題があるといっていいだろう。
 また,RTSモードでは違和感のないユニットのサイズが,RPGモードでは小さすぎて主人公が引き立たないところも問題アリと感じた。一応ゲームでは視点の変更ができるようになってはいるが,そこまでプレイヤーに苦労を強いるのは,やはり酷というものだ。
 このほかにも……これはあくまでも個人的な感想なのだが,RTSモードとRPGモードをうまくまとめすぎている点に不満がある。よく言えば「優等生的」というか,今回の説明でRTSモードとRPGモードを"馴染み深い"と説明したように,システム的にはムリがなく遊べる半面,システム部分の毒要素がどうにもこうにもモノ足りない。「牛様がすべて」や「うひょひょ」を売り文句にする以上,システム的にも,もっとプレイヤーのド肝を抜くぶっ飛び要素が欲しかったというのが,正直な感想だ。

 とまぁ,最後に酷評めいたことを書いたが,異端を標榜しても実はがっつり楽しめるナイトシフトは,「せっかく買うゲームだからハズレは引きたくない」という人には,まじめにオススメできるタイトルといえる。
 個人的にはもっともっとはっちゃけてほしい気もしたが,逆にRTSにハードルの高さを感じる人には,これくらいがとっつきやすくていいのかもしれないし。ただ,RTSの世界を初心者に楽しませるには,キャンペーンモードのチュートリアルがややそっけなさすぎる気がしないでもない。できればこういう点はマニュアルだけに頼らず,公式サイトでシステムのイロハを解説したページを設けるなどして,プレイヤーへの優しい対応を望みたいところだ。


登場するユニットの名前などは,基本的に腰の力が抜けるものとなっている。ここが異端な部分なのだ とくに異色な「ババーン」。相手の施設に居座ったりウッドンのケツを叩いたりと,すっかりおばちゃんノリ RPGモードでは,操作性に疑問を感じた。このモードだけは,もう少しユニットを動かしやすい操作にしてほしかった

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■メーカー名:プロジー
■価格:8379円(税込)
■動作環境:Windows Me/2000/XP,PentiumIII/800MHz以上(Pentium4/1.8GHz以上推奨),メモリ 128MB以上(512MB以上推奨),空きHDD容量 700MB以上(1.5GB以上推奨),ハードウェアT&Lに対応したVRAM32MB以上のビデオカード(128MB以上推奨) ,DirectX 9.0以降
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