なお本作のバックグラウンドやシステムの概要については,DD大好きっ子のIwahamaが,副編集長という立場にありながらBDのα版をこっそりとプレイし続けて書き上げた「こちら」のプレビューに詳しいので,本記事と併せて読んでみてほしい。……というより,今作のメインフィーチャーはそちらでほぼ網羅してしまっているので,ここではプレビュー記事を補完しつつ,もう少し細かく重箱の隅をツツいてみることにする。 もう一人じゃない! パーティプレイも可能に
BDのコアエンジンとベースシステムは,前作DDとほぼ同じだ。開発元のLarian Studiosによれば,過去の資産をうまく流用して,できるだけストーリーとシナリオの制作に注力したいという願いからとのこと。これで次回作も同じエンジンだったらどうしてやろうかと思案中だが,本作がDDの"2"ではなく前作+αの外伝扱いとなっているのも,その理由が一つの要因となっているらしい。 BDでは,プレイヤーキャラクターがデスナイトと呼ばれる本来敵として存在しているはずの騎士と魂を結合されるという設定のもと,ゲーム開始時から常に二人以上のプレイヤーを操作することになる。"操作する"といっても,厳密には一方をリーダーに指定して,他方は移動こそ共にするものの,敵と遭遇したらアクティブになったAIが,自動で戦闘を行うという具合だ。ゲームの中盤以降は,ウィザードクラスの防御系魔法に,複数のメンバーに対して影響を与えるものがあるので,短所を補い合うパーティプレイも可能になる。 前作DDは,ゲーム開始時にキャラクターのクラス(職業)を選択できたが,習得可能なスキルに制限はなく,遭遇する敵やボスモンスターの弱点に合わせてある程度臨機応変にスキルを覚えていくという感じであった。これを"自由"とする見かたもあるが,要するに肉弾戦専門や魔法専門といったスキル特化型のキャラクターを作りづらいシステムだったわけだ。また上記のようにキャラクターの育成方法を固定できないため,筋力や知力といったステータスの伸ばしかたは(悪い意味で)非常に頭を悩ます問題であった。 今回BDは,複数のキャラクターを扱えるようにして上記の問題をじつに巧みに,そして強引に解決している。複数キャラクターを扱えるということは,すなわち,プレイヤーの好みでウォリアーとサバイバー,またサバイバーとウィザードといった具合にある程度偏ったプレイスタイルを組み合わせられるようになったのだ。 しかも,である。本作で扱えるキャラクターは二人ではなく,"召喚人形"というアイテムを入手することで3人にも4人にも増えるのだ。 上記に加え,BDでは一定額の金額を払うことでスキルの振り直しが可能(!)になったため,キャラクター育成要素が桁違いに向上した。DDでこの手の記事を書くときは,いつも「Diabloを期待している人は拍子抜けするかも」的な表現で戦闘システムに関する残尿感を示す必要があったが,本作では無用だ。ああ書きやすい。
シリアスなストーリー+狙ったマヌケさ+狙わないマヌケさ
さてそんなシステム面もさることながら,本作を本作たらしめているのは,その独特に独特をまぶしたようなセンスにある。ゲーム中に出てくる文章のセンスについては,Iwahamaがプレビューで"決して苦笑いではない"という具合に表現しているが,やはり今作にも「また好き勝手やってますな」とLarianスタッフに言いたくなるような会話が満載。今回は割とインプの登場回数が多いため(女インプもいました),早口でたたみかけるキーキー声がうるさいと同居人からも苦情が出ている(ついでにいうと,本作のローカライズチームがDDと同じという点もかなり本作の感情移入度に貢献しているといえる。ちなみにインプは相変わらず「〜アルよ。〜よろし。」という聞く人が聞けば怒りだしそうな語尾を継承)。 だだセンスの面でいうなら,筆者はアメリカンジョークライク(注:開発元はベルギーです)な会話よりも,システムへの突っ込みドコロの多さに笑いのツボを押される。 本作のストーリーは一応シリアスタッチだ。ただ登場人物と会話の内容はひょっとすると6割方ぐらいなんらかのユーモアを含んだもので,明らかに"狙って"いる。さらに前述の"システムの寛容さ"部分を含め,微妙にズレたLarianスタッフの発想(?)が"狙っていない"面白さがある。これはDDシリーズの伝統といっても過言ではなく(シリーズというほど作品多くないけど),ただのシングルプレイRPGではない! と本作を偏愛してしまう理由かもしれない。
皆さんご安心を。物理的に長く遊べるシステムになっております
前作DDは,とても面白いゲームであった。――面白かったが,とりあえずクリアしてしまったおそらくすべての人が感じたのは,その「リプレイ性の低さ」。狂ったように広いマップのクセにモンスターが有限という,ドラクエやFFで育った世代には考えれらないシステムのため,クライマックスに近づくとストーリー上通過してきたマップへ戻れなかったり,クリアしたら「ハイ,終わり」と突き放されたりする点に,「ああやっぱりストーリー重視の作品なのね……」と,分かっていながらもガックリきた人が多いだろう。 だがBDに関しては,その心配はない。スキルポイントの再振り分けも可能になったし,ゲーム中,自由に行き来できる裏フィールド(※)も追加されて,一周めそのものも実に長期間遊べるものとなった。しかも新たなNPCに会うたびに雪だるま式に増えていくクエスト,広大なマップ,膨大極まりないアイテム――頑張れば頑張るほどストーリーが進まないという本シリーズならではの停滞感は健在なのだ。元々ストーリーを追うだけが楽しい作品じゃないし,一文字漏らさず本を読むように,すべてのNPCに話しかけ,インタラクト可能なオブジェクトにすべて手を出していけば,冗談抜きでMMORPG顔負けのプレイ時間になるのではないだろうか。 欲を言えば,これだけやり込み要素があるのだから,病的に強まったキャラクターのステータスやとっておきのアイテムを公開できるオンライン上の"場"(もちろん公式)がほしいなぁなんて個人的に思ったりして。だって折角苦労して手に入れたあれもこれも……みんなに自慢したいじゃないですか。 ※裏フィールド……裏フィールドとは,BDで追加された"ストーリーに関係しない"フィールドおよびダンジョンの総称。場所によっては一般のRPGでいう"町"に当たる使いかたができ,戦利品の売却やアイテム保管場所として利用できる(ただし,裏フィールドは各Actごとに別なので,Actをまたぐ場合は保管したアイテムを忘れないよう注意する必要がある)。
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