RPG 4Gamer.net Review
 

Larianの呪縛? 前作ファンならスルーできないRPG

BEYOND DIVINITY 完全日本語版
Text by Gueed
15th Jun. 2004

"魂の結合"を比喩した鎖で縛られる,主人公とデスナイト
 この2004年度,編集部で"レビューだけは勘弁願いたい賞"を受賞しているような気がしないでもないシングルプレイ専用RPG「BEYOND DIVINITY 完全日本語版」(以下,BD)。本作は,"100時間は遊べる!"という原稿執筆者にとっては恐怖のキャッチをウリに,海外メディアのさまざまな賞を獲得した前作「DIVINE DIVINITY」(以下,DD。日本ではネットビレッジより「ディヴァイン・ディヴィニティ 完全日本語版」として発売中)の外伝的作品だ。forGamerは,前作をクリアした人間が筆者を含め3人いるという珍しい編集部だが,若さだけは一日の長があるという強引な理由から,筆者がレビューを担当することとなった。
 なお本作のバックグラウンドやシステムの概要については,DD大好きっ子のIwahamaが,副編集長という立場にありながらBDのα版をこっそりとプレイし続けて書き上げた「こちら」のプレビューに詳しいので,本記事と併せて読んでみてほしい。……というより,今作のメインフィーチャーはそちらでほぼ網羅してしまっているので,ここではプレビュー記事を補完しつつ,もう少し細かく重箱の隅をツツいてみることにする。

もう一人じゃない! パーティプレイも可能に

主人公&デスナイト&召喚モンスター。正直,捌き切れないんですが……

 BDのコアエンジンとベースシステムは,前作DDとほぼ同じだ。開発元のLarian Studiosによれば,過去の資産をうまく流用して,できるだけストーリーとシナリオの制作に注力したいという願いからとのこと。これで次回作も同じエンジンだったらどうしてやろうかと思案中だが,本作がDDの"2"ではなく前作+αの外伝扱いとなっているのも,その理由が一つの要因となっているらしい。
 さてそんなBDは,前作のプレイヤーの視点で見ると,プレイそのものは随分と様変わりした印象だ。本作の最も大きな特徴として"裏フィールド"(プレビューに使用したα版では"Battlefield"と表記されていた)の追加が挙げられがちだが,筆者がプレイしたところでは"複数キャラクターが操作できる"点が,プレイフィールの変化に最も大きく貢献していると感じた。

 BDでは,プレイヤーキャラクターがデスナイトと呼ばれる本来敵として存在しているはずの騎士と魂を結合されるという設定のもと,ゲーム開始時から常に二人以上のプレイヤーを操作することになる。"操作する"といっても,厳密には一方をリーダーに指定して,他方は移動こそ共にするものの,敵と遭遇したらアクティブになったAIが,自動で戦闘を行うという具合だ。ゲームの中盤以降は,ウィザードクラスの防御系魔法に,複数のメンバーに対して影響を与えるものがあるので,短所を補い合うパーティプレイも可能になる。

 前作DDは,ゲーム開始時にキャラクターのクラス(職業)を選択できたが,習得可能なスキルに制限はなく,遭遇する敵やボスモンスターの弱点に合わせてある程度臨機応変にスキルを覚えていくという感じであった。これを"自由"とする見かたもあるが,要するに肉弾戦専門や魔法専門といったスキル特化型のキャラクターを作りづらいシステムだったわけだ。また上記のようにキャラクターの育成方法を固定できないため,筋力や知力といったステータスの伸ばしかたは(悪い意味で)非常に頭を悩ます問題であった。

 今回BDは,複数のキャラクターを扱えるようにして上記の問題をじつに巧みに,そして強引に解決している。複数キャラクターを扱えるということは,すなわち,プレイヤーの好みでウォリアーとサバイバー,またサバイバーとウィザードといった具合にある程度偏ったプレイスタイルを組み合わせられるようになったのだ。

 しかも,である。本作で扱えるキャラクターは二人ではなく,"召喚人形"というアイテムを入手することで3人にも4人にも増えるのだ。
 この召喚人形で呼び出したモンスターは,DDにも存在したように一時的にいっしょに戦ってくれる"いわゆる召喚獣"的な扱いではなく,プレイヤーが介入できるレベル,ステータス,スキル,さらにインベントリーまで完備している,まさに第三のキャラクターとして登場する。もちろんプレイヤーキャラクターから一定の距離を置いたり,バイタリティがゼロになったりするとシュワッと消えてしまう召喚モンスターであるが故の制限付きだが,戦闘要員として,また拡張インベントリー要員として非常に楽しめる。デスナイトなんかは正規のキャラクターのクセに,装備スロットが両手とアクセサリー関連だけと微妙に使えないヤツに成り下がっているので,筆者はむしろ召喚モンスターのスケルトンのほうを強化して,高価な装備品を買い与えているほどだ。

 上記に加え,BDでは一定額の金額を払うことでスキルの振り直しが可能(!)になったため,キャラクター育成要素が桁違いに向上した。DDでこの手の記事を書くときは,いつも「Diabloを期待している人は拍子抜けするかも」的な表現で戦闘システムに関する残尿感を示す必要があったが,本作では無用だ。ああ書きやすい。

召喚モンスターごとに形状の異なる"召喚人形"。入手漏れに注意したい 召喚モンスターは個々にインベントリーがあるので,荷物持ちとしても重宝する 操作キャラクターが増えたおかげで(?),こんなスイッチだらけの謎解きも

本作ならではのヴィヴィッドなパーティクルエフェクトは健在。戦闘シーンも随分派手になった

シリアスなストーリー+狙ったマヌケさ+狙わないマヌケさ

アルよアルよとうるさいインプ。今回は髪が長めの女(メス?)も登場

 さてそんなシステム面もさることながら,本作を本作たらしめているのは,その独特に独特をまぶしたようなセンスにある。ゲーム中に出てくる文章のセンスについては,Iwahamaがプレビューで"決して苦笑いではない"という具合に表現しているが,やはり今作にも「また好き勝手やってますな」とLarianスタッフに言いたくなるような会話が満載。今回は割とインプの登場回数が多いため(女インプもいました),早口でたたみかけるキーキー声がうるさいと同居人からも苦情が出ている(ついでにいうと,本作のローカライズチームがDDと同じという点もかなり本作の感情移入度に貢献しているといえる。ちなみにインプは相変わらず「〜アルよ。〜よろし。」という聞く人が聞けば怒りだしそうな語尾を継承)。

 だだセンスの面でいうなら,筆者はアメリカンジョークライク(注:開発元はベルギーです)な会話よりも,システムへの突っ込みドコロの多さに笑いのツボを押される。
 数え挙げればキリがないが,例えば敵との激しい戦闘中でもダッシュでベッドに潜り込めば就寝/回復が可能だったり(敵はその間なにしているのだろう?),恐ろしいダンジョンの奥深くにでんと構える宝箱の中身が「コップ」や「メロン」だったり(「ダンジョンマスター」の"トウモロコシ"に匹敵。ランダムにも程がある),息詰まる冒険の最中にスッと笑わせてくれるのがいい。筆者はこれを"システムの懐の深さ"と前向きに捉えているが,これをシステムのスキとして批難してしまう人には,おそらく本作は楽しめない。また会話の例でいえば,アメリカンジョークを"アメリカンジョークという理由だけで"面白いと思えない人は,意外につまらんと感じるのではないだろうか。

 本作のストーリーは一応シリアスタッチだ。ただ登場人物と会話の内容はひょっとすると6割方ぐらいなんらかのユーモアを含んだもので,明らかに"狙って"いる。さらに前述の"システムの寛容さ"部分を含め,微妙にズレたLarianスタッフの発想(?)が"狙っていない"面白さがある。これはDDシリーズの伝統といっても過言ではなく(シリーズというほど作品多くないけど),ただのシングルプレイRPGではない! と本作を偏愛してしまう理由かもしれない。

毒などの追加ダメージでバイタリティがゼロになると,こんな下品な有様に ついにロバ耳が登場。……ネ○耳とか○サ耳とかはあるんですか隊長!? もちろんお馴染みスケルトン同士のボケ合戦も健在


皆さんご安心を。物理的に長く遊べるシステムになっております

全然裏な感じのしない裏フィールド。NPCがいて,クエストも普通に受けられます

 前作DDは,とても面白いゲームであった。――面白かったが,とりあえずクリアしてしまったおそらくすべての人が感じたのは,その「リプレイ性の低さ」。狂ったように広いマップのクセにモンスターが有限という,ドラクエやFFで育った世代には考えれらないシステムのため,クライマックスに近づくとストーリー上通過してきたマップへ戻れなかったり,クリアしたら「ハイ,終わり」と突き放されたりする点に,「ああやっぱりストーリー重視の作品なのね……」と,分かっていながらもガックリきた人が多いだろう。

 だがBDに関しては,その心配はない。スキルポイントの再振り分けも可能になったし,ゲーム中,自由に行き来できる裏フィールド(※)も追加されて,一周めそのものも実に長期間遊べるものとなった。しかも新たなNPCに会うたびに雪だるま式に増えていくクエスト,広大なマップ,膨大極まりないアイテム――頑張れば頑張るほどストーリーが進まないという本シリーズならではの停滞感は健在なのだ。元々ストーリーを追うだけが楽しい作品じゃないし,一文字漏らさず本を読むように,すべてのNPCに話しかけ,インタラクト可能なオブジェクトにすべて手を出していけば,冗談抜きでMMORPG顔負けのプレイ時間になるのではないだろうか。

 欲を言えば,これだけやり込み要素があるのだから,病的に強まったキャラクターのステータスやとっておきのアイテムを公開できるオンライン上の"場"(もちろん公式)がほしいなぁなんて個人的に思ったりして。だって折角苦労して手に入れたあれもこれも……みんなに自慢したいじゃないですか。

※裏フィールド……裏フィールドとは,BDで追加された"ストーリーに関係しない"フィールドおよびダンジョンの総称。場所によっては一般のRPGでいう"町"に当たる使いかたができ,戦利品の売却やアイテム保管場所として利用できる(ただし,裏フィールドは各Actごとに別なので,Actをまたぐ場合は保管したアイテムを忘れないよう注意する必要がある)。
 気になったのは,裏フィールドですら敵の数が有限であったという点。最初のActで無限に戦闘を繰り返して,キャラクターを強化し続けるなんてことはできない。"クリア後も楽しめる"という謳い文句は,ズバリ"クリアしてから"遊び続けられるシステム,というそのままの意味だったようだ。

今回も広大極まりないMAPだが,キャラクターの移動速度が速いので苦にならない 分類方法が微妙に謎なインベントリー。そろそろマウスホイールに対応してほしい こんな文章までローカライズされているとは……。DDに続いてご苦労様です

デスナイトもついつい敬語になるサムエル様。大物にあらざる気性の激しさをみせる 装備はキチンとグラフィックスに反映される。写真はダサいコーディネイトの例だ Altキーを押せば,神経質に配置されたアイテムが顕わに。"根"ってなんですか?

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■メーカー:MYSTIX STUDIOS
■問い合わせ先:support@mystixstudios.com
■発売日:2004年6月11日
■価格:1万290円(税込)
■動作環境:Windows 98/2000/XP,PentiumIII/800MHz以上(Pentium4/1.7GHz以上推奨),メモリ 256MB以上(512MB以上推奨),空きHDD容量 2GB以上,VRAM 64MB以上(128MB以上推奨),DirectX 9.0以降
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