― 特集 ―

ウワサのMMOコミュニティゲームの実態が明らかに! 「ときめきメモリアルONLINE」制作者インタビュー

Text by MIDIはらふじ / Photo by 小林秀銀
 

 2005年2月に発表された,コナミのMMOコミュニティゲーム「ときめきメモリアルONLINE」。"ときめきメモリアルシリーズ"のファンのみならず,一度もプレイしたことのない人までをも巻き込んで,早くも大きな話題を呼んでいる本作品だが,具体的な内容はまだまだ謎のベールに包まれている。
 そこで,少しでも多くの情報を入手すべく,4Gamerでは今作のプロデューサーであるメタルユーキ氏,ディレクターの秋風 晶氏,キャラクターデザイナーの三野太郎氏の3人にインタビュー取材を行った。
 ときめきメモリアルONLINEが目指すもの,そしてその実態が,いま明らかに!

 

メタルユーキ氏
歴代ときめきシリーズに音楽スタッフ,プロデューサーとして参加。今作でもプロデューサーを務めている
秋風 晶氏
今作でディレクターを務める人物。制作チームの取りまとめ役で,メタルユーキ氏と共に本プロジェクトを立ち上げた
三野太郎氏
本作でキャラクターデザインを務める人物。素敵なキャラを作るため,今日もグラフィックス作りに励む人

 

4Gamer
 まず,なぜ「ときめきメモリアル」をオンラインゲームにしようと思ったのかというところから教えてください。

メタルユーキ氏(以下,メタル):
 ときめきメモリアル(以下,ときめき)のPCエンジン版が発売されてから,はや10年が経ったじゃない。で,この10年の間に「ときめき2」「同3」とやってきて,進化させてきたつもりなのね,自分の中では。それで「次の進化ってなんだろう?」と考えたときに,当然「ときめきメモリアル4」と謳って,さらなる進化系を作ることも考えたんだよ。

4Gamer
 うんうん。

メタル:
 で,ほかにもいろいろと考えたんだけど,その中の一つとして,いまムーブメントになってるオンラインっていう手法もあってね。選択肢をたくさん考えていったときに,「もともとの"ときめきメモリアル"って何だっただろう?」って振り返ることがあったんだよね。
 ときめきメモリアルってもともとは学園ゲームじゃない。学園生活をゲームで進めていくという部分の,ご褒美として女の子が登場して告白できる要素があったんだけど,だんだんそこがクローズアップされていって,ときめきが美少女ゲームの代表作のようになっていった。これは流れとしては必然的なことだったのだけれど,我々が当初予定していたものと,プレイヤー達が反応してくれた部分は,必ずしもすべてが一致していたわけではなかったんだよね。だから,次に作るときめきは,皆さんに本格的な学園生活を楽しんでもらえるものにしたかったんだよ。

4Gamer
 それで,「もともとの形に戻そうじゃないか」と考えたんですね。

メタル:
 そう。そこをクローズアップさせていくことで,いま流行のオンラインゲームに対して別のムーブメント,別のスタイルの面白いゲームが作れるんじゃないかなと。というのも,オンラインゲームっていま,ほとんどがMMORPGでしょ。あの形態って,ルールは基本的に一緒で,モンスターが出てきて狩りに出かけてみんなでタコ殴りにして,そんで金銭と品物を奪って自分のパラメータを上げる……。このゲーム性がメインになっているんだよ。

4Gamer
 あはは,まぁ,極端に言えばそうですね。

メタル:
 でも今回の「ときめきメモリアルONLINE」(以下,ときめきONLINE)は,そういうものと比べてゲーム性がまったく違うものなので,ビジネスとしても面白い展開が考えられるかなと。

 

 

4Gamer
 初のオンラインゲームということで,技術的に苦労している部分が多いと思うのですが,実際のところいかがでしょうか?

高校生になりきって学園生活を楽しむことが本作品の目的。素敵なスクールライフが送れるかどうかは,プレイヤーの気持ち次第
秋風 晶氏(以下,秋風)
 コナミとしても初めてのネットワークゲームで,初めてのことが大変なのは当たり前なのでしょうが,やはり大変でしたね(笑)。最初にメタルさんから「ときめきをネットワーク対応にしてみないか」と言われたとき,正直ビックリしたんですよ。でも,やっぱり何事もチャレンジしたほうがいいかなと思って,作り始めたんですよね。最初はこの3人だけで発足したプロジェクトだったんです。

4Gamer
 キャラデザインの三野太郎さんを含めて3人ですね。

秋風:
 ええ,そうです。プロジェクトが始まった直後,メタルさんには「まずはオンラインゲームについてしっかり研究させてほしい」とお願いしたんです。それでいろいろと研究して。それが一段落してからは,スタッフを集めてディスカッションの連続でしたね。「高校生のころはどうだった?」っていう。

4Gamer
 あー,実体験からサンプルを取り出そうとしたわけですね。

秋風:
 ええ。そこに学園生活の原点を見いだしながら,オンラインゲームの面白さというのはこういうものではないか? なんてことをすり合わせて企画を作っていったんです。当時は一日中三野としゃべっていたり,メタルさんから思い出話を聞いたり。みんなが持ってる共通項を探すことから始めたんですよね。

メタル:
 あと,いまどきの高校生の生活実態を調べたんだよ。

4Gamer
 あはははは,それ,きっと僕らの時代の高校生とは全然違いますよね。

メタル:
 そうなんだよ。いまどきの高校生は我々の頃とは違うよ。もう何から何まで違う。同じ人間とは思えないくらい(笑)。

4Gamer
 でも,元祖ときめきって'70年代とか'80年代の,古き良き時代の恋愛をモチーフにしている部分があるじゃないですか。今回のときめきONLINEって,いまと昔,どっち寄りになるんですか?

メタル:
 それは人それぞれでいいと思うんだよね。自分らの時代は,駅前に斜に構えて座り込んでて「ハコスカがやってきたぞ!」みたいな……。

4Gamer
 ハコスカ!(笑)

メタル:
 まぁそんなパターンだったじゃない。でも,いまの人達は違う。つまりは,ジェネレーションによっていろいろなスタイルがあるわけ。で,それはこちら側で規定するものではないかなと思うんだよね。コミュニケーションをとったり,コミュニティを作るうえではいろんな世代の人達が混じりあって,盛り上がってくれたほうがいいから。

 

 

通常のチャット画面のほかに,このように二人になってお互いのキャラを見ながらチャットできるツーショットチャットも実装 ツーショットチャットで実際に会話している画面。この二人が話しているのって,もしかしてときめき1の伝説の樹のことでは……?

 

 

4Gamer
 では,服装の話になったので,その流れでお聞きしたいんですが。キャラ作成画面の中に,従来のときめきファンやアニメファンが喜ぶような服装がすごく多かったように僕は思えたのですが……あれは狙ってるんですか?

三野:
 ええ,それはもちろんです。

4Gamer
 やっぱり!

三野:
 僕はときめきの全作品をプレイしたんですけど,このプロジェクトの中で考えたのが,キャラクターが二人画面内に立っている"ツーショット画面"なんですよ。プレイヤーには藤崎詩織ちゃん(ときめき第一作のメインヒロイン)みたいなキャラになりきってもらって,そのキャラでコミュニケーションをとってもらう……,そんな形にしたいと思ったんです。
 そうすると,キャラの絵はリアルなものよりアニメ絵のほうがいいなってことになって。それで,アニメ調のイラストでいくなら,アニメが好きそうな人もゲームが好きな人も"何々ゴッコ"みたいなノリで楽しめるものにしたかったんですよ。

これが実際のキャラ作成画面。制服だけでもかなりのパターンが存在することが,この写真から見て取れる
4Gamer
 ふむふむ。

三野:
 賛否両論はあると思うんですよ。触角とかうさみみとか受けるわけねーじゃんって(笑)。

4Gamer
 いやいや,需要はあると思いますよ(笑)。

三野:
 そういうのも含めて,楽しんでもらえたらなって。そのために僕達はたくさんのネタを提供していきたいんです。

4Gamer
 サービスが続いていったときに,アップデートで新しいパーツが入るなんて可能性もあったりするわけですよね。

メタル:
 そうだねぇ,やりたいねぇ。

秋風:
 入っているものに関しては,自信作ばかりです。楽しみにしててくださいね。

メタル:
 そうなんだよ,秋風が強いんだ。こういう部分は(笑)。

ほほに大きな傷を付ける,なんてことも可能。ワイルドな体育会系のキャラも作成できる
女子の場合はこんな感じ。かなり細かくパーツ分けされていて,しかもそれぞれに種類が多いのが分かる
4Gamer
 当たり前のようにツインテールとかアホ毛(まとめた髪の毛からちょっとハネた毛)が入ってるってのがすごいですよね。

秋風:
 プレイヤーに喜んでもらえるであろう要素ですからね。ツインテールなんて,普段そんなに見ないですけど……。

4Gamer
 普段からツインテールの女子って,田村ゆかりさん(ときめき2で伊集院メイ役を演じた声優)くらいしか見たことがないんですけど。

一同:  (笑)。

秋風:
 アニメやコミックで当たり前になっている方程式があると思うんですよ。やっぱりそれはデフォルトとして重要だろうな,と。

三野:
 まずは自分で愛情を持てなくちゃいけないですからね。プレイヤーに「こういうキャラを作りたい」とか「こういうキャラになりきりたい」と思ってもらって,それを実現できるパーツの存在が,アバター作りには大事ですから。

4Gamer
 実際,詩織ちゃんみたいなキャラも作れますもんね。画面を見たとき「すごいなぁ,ある意味割り切っていて面白いなぁ」と思ったんですよ。

メタル:
 ゲーム中でいろんな人が集まって何かを楽しむ場合って,そのキャラ,アバターになりきれるかどうかが重要だと思うんだよね。俺,たまにディズニーランドに行くんだけども,"スペースマウンテン"は単純にスカッと爽快で楽しめるじゃない。一方で,ピーターパンと一緒にトロッコに乗って進むのが素のままで楽しいかっていったら「?」だったりするわけよ。

4Gamer
 うわ,言っちゃった。

メタル:
 でもさ,女の子はキャーキャー言うわけよ。「いま,ピーターパンと一緒に空を飛んでるの!」って(笑)。要するに,ピーターパンに登場する人物の一人になりきれるから楽しいわけだよね。今回のときめきONLINEも,それと同じ側面を持っているんだよ。

秋風:
 「詩織ちゃんになりきりたい人はトコトンなりきってください。きらめき高校の生徒っぽく振る舞いたい人もトコトンやってください」と。プレイヤーの皆さんには,キャラになりきって楽しんでもらって,「今度はこういうのが欲しい!」という意見をもらいつつ,我々もそれにできるだけ応えていく。この作り手側とプレイヤー側のキャッチボールこそが,オンラインゲームのだいご味じゃないかなって思っているんです。
 もちろん,プレイヤー参加型だから,プレイヤーの手で世界を作り上げていってほしいという気持ちもありますし。「自分達がときめきONLINEを作ってるんだ」って思えるような世界にしたいですから。

 

清純派タイプから,こういったお嬢様タイプまで,いろんなタイプの女の子が作成 髪型だけでもかなりの種類が用意されている。しかも,前髪,後ろ髪に分かれて設定できるというのが凄い

 

 

(C)2005 KONAMI