= forGamer.netインタビュー =
「Dungeon Siege」
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2002/1/29
文/Kazuhisa

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発表会でのウップンを晴らすかのように,話たてるTaylor氏。かなり突っ込んだ内容にも快く答えてくれた
 さて,2002年1月29日マイクロソフト合同記者発表会をきっかけに,いままで

・全貌が分かる,2001年夏のロングインタビュー
・マイクロソフト発表会でのScreenshots編
・同,合同発表会編
・同,ムービー編

などと立て続けに大きめの記事を掲載してきたマイクロソフト期待のRPG「Dungeon Siege」(見過ごされがちだが,Asheron's Callを手放した今となっては,マイクロソフト唯一のRPG製品だ)。今回のインタビューでは何を聞こうかいろいろ悩んだのだが,ちょっと細かい話に終始することにした。前回のインタビューでは出てこなかったネタを洗い出したつもりなので,期待している人はぜひ読んでみてもらいたい。

■「とにかくプレイヤーにストレスを与えたくないんだ」

forGamer.net:
 当サイトも昨年の夏にお伺いしてロングインタビュー(注:「こちら」参照)をしましたが,美しいグラフィックスやシームレスなステージ間移動など,世界のあらゆるプレスに書かれていることは今回聞かないことにします。そのぶん,細かいシステム面についてお聞きしようと思っているのですが……。

Chris Taylor(以下Taylor):
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Taylor氏が言うとおり,"ショボくない"本作のグラフィックス。多くの3Dオブジェクトもストレスなく描画されており,さすがご自慢のSiege Engineといったところ
 あぁ,いいね。さっき(合同発表会)はいろいろと話し足りなかったし(笑)。

forGamer.net:
 とはいえ,まずはあなたのことから……。いままで4D BOXINGHardballIIなどのスポーツゲームで名を馳せて,そこからいきなりSF RTSの「Total Annihilation」。そして今回は「Dungeon Siege」ですよね。なぜ今,もっとも競争の激しいジャンルとも呼べるRPGなんでしょうか?

Taylor:
 うーん……RPGを作ろうと思った5年前,世界のRPGはまだまだ2D描画が主流でショボイ(*1)グラフィックスだったんだ。この業界の人ならよく知ってるよね? 僕は,その状況を変えたかった。もっと美しいグラフィックスで,プレイヤーがのめりこめて,みんなが満足するようなRPGが作りたかったんだ。まぁ結果としてすごく長い時間がかかっちゃったんだけどね(笑)。

(*1)
not richと表現していた

forGamer.net:
 ほとんどがあなたの作り出したイマジネーションの世界なんですか?

Taylor:
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ザコ級/ボス級問わず,このような巨大なモンスターも登場。自由な視点切り替えでシゲシゲ眺めてみたくなるぞ
 遡ること20年前……16歳のころ。僕はWorld of Ehb(*2)という物語を想像していたんだけど,それをゲームの形にしたのが「Dungeon Siege」だといってもいいかもしれない。でももちろん僕一人だけの力ではなくて,ストーリー担当のNeil Hallford(*3)やGas Powered Gamesスタッフ全員のイマジネーションが集まってできたものだよ。2000年にも及ぶEhbの歴史まであるんだから,絶対に楽しめると思うよ。

(*2)
彼は「アーブ」と発音していた
(*3)
ニール・ホールフォード。ボードゲーム界では非常に有名な人物。PCゲーム界でも,Dynamixの「Krondorシリーズ」などを手がけている

forGamer.net:
 でもアクションRPGには,当時すでにDiabloという大作がありましたよね。また個人的には,個性を出すのが最も難しいジャンルではないかと思うのですが,あなたの考える「Dungeon Siege」の一番のウリはどこだと思いますか?

Taylor:
 うん,確かに言うとおりかもしれないね。でも「Dungeon Siege」のウリは,ズバリひとことで言って「FREEDOM」だ。嘘偽りなくすべてが自由になる世界,それがDungeon Siegeだと思ってくれていい。コアゲーマーでも初心者ゲーマーでも,あらゆる層のプレイヤーが自由に束縛なく,そしてストレスもなく楽しめることを目指して作ってるというわけさ。

forGamer.net:
 例えばどんな部分がそれにあたりますか?

Taylor:
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基本コンセプトである"プレイヤーに負担をかけないこと"を,口をすっぱくして語るTaylor氏。そこに発生するであろうジレンマについても丁寧に説明してくれた

 そうだねぇ……まず最初に言っておきたいのは,基本的に「プレイヤーにまったく負担をかけないこと」を念頭に設計されているということなんだ。あらゆる層のプレイヤーが自由に"FREEDOM"で遊べるのは,それの副産物に過ぎない。世の中のRPGは,プレイヤーに面倒を強いることが多すぎると思うんだよね。
 まずプレイヤーは,ゲームの導入部分で無駄にNPCなどで時間を費やさなくていい。なぜならすべてはムービーシーンで説明されているから。これで,街の人をひとり一人回って話を聞いたりしなくて済むよね。
 次に,普通のRPGでは同じ街に何度も戻らなくてはいけなかったりするけど,これも排除した。だっていい加減同じシーンばっかりで飽きてくるだろうし。プレイヤーが順当にゲームを進めれば,二度と同じ街やダンジョンに戻ってくる必要はないよ。最初の読み込み以外に一切読み込みを必要としないのも,ユーザーの気分を削ぎたくないからだ。ダンジョンなどに入ったりシーンを移動するたびに,数十秒ものロード画面なんか見たくないでしょ?
 ジャーナルと呼ばれるものに,いま何をすればよいのかがすべて書き込まれるのも,プレイヤー補助の一環。誰だって,「自分は何してるんだっけ?」といって戸惑ったり,もう一度すべてのNPCに話を聞き回って無駄な時間を費やしたくないだろうしね。
 ゲームの難易度をゲームの途中で何度でも変更できるのも,一つのキーを押すだけで地面のアイテムをすべて拾えるのも,お店で買ったアイテムを売ると100%の金額で買い戻してくれるのも,すべてプレイヤーのため。少しでもゲームの世界から離れて現実世界に引き戻されてしまう要素をなくして,ドップリと集中してほしいんだ。

forGamer.net:
 かなり徹底した思想ですね……PCゲームには珍しいかもしれません(*4)。ところで今一例として挙げられていましたが,キャラクターは同じ場所には二度と戻らない,というのが昔からよく言われている有名な話ですよね。シングルプレイ全編を通して,街は一体いくつあるんでしょうか?
(*4)
さまざまインタフェースをいじくり回しているムービーを「こちら」(24.75MB)にUpしておいたので,ぜひ見てみてほしい。激しく変化する,かつ便利そうなインタフェースを目の当たりにできるだろう。途中デバッグモードが発動しているのはご愛嬌ということで

Taylor:
(顔をしかめて頭を抱えるように)ええと……うーん……(指折り数えて)"街"と呼べるぐらい整った大きい街は三つかな? うん,そうだな。たぶん(笑)。ほかに,ジプシーの村みたいなアイテム売買ができる場所なんかが10数個という感じかな。ちなみにマルチプレイでは八つの街があるよ。

forGamer.net:
 あぁ,結構あるんですね。じゃあUnconsciousになったメンバーをそこに置き去りにしてポーションを買いに行くのも,そう苦痛じゃなさそうですね。

Taylor:
 そうそう。パーティメンバーがすべて並行して別行動を取れるのもこの作品の大きな特徴だからね。仲間が倒れたら,ダッシュで街にポーションを買いに行ってあげてほしいな(笑)。

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