― レビュー ―
ギンギンに熱いジェットコースターが作れる"遊園地経営シム"最新作
ローラーコースタータイクーン 3 日本語版
Text by UHAUHA
2005年04月22日

 

■自宅にいながら遊園地の雰囲気をじっくり味わうべし

 

ローラーコースタータイクーンも待望のフル3D化。独自にレイアウトしたコースで,登る/落ちる/回るを存分に味わうべし。本当に乗っているかのような動きと音が素晴らしく,酔い止めが必要になるかも!?
 "ローラーコースタータイクーン(以下,RCT)シリーズ"は,世界で最も人気の高い箱庭系経営シミュレーションだ。アトラクションやショップを設置し,ピープ(お客)達の気持ちをリサーチしつつ,気持ちよくお金を使ってもらえるような遊園地を目指す。日本ではマイナーなイメージのRCTシリーズも,海外では"テーマパークシリーズ"や"ズータイクーンシリーズ"など,同種の箱庭系シムと比較してもトップクラスの人気ぶり。シリーズ全体のセールスは世界で740万本を記録しているという,モンスタータイトルである。
 そんなRCTシリーズ最新作が,「ローラーコースタータイクーン3 日本語版」だ。本作からフル3Dグラフィックスになり,自分で作り上げた遊園地をさまざまな角度から眺めたり,ローラーコースターやアトラクションに実際に乗っているかのような疑似体験ができるようになった。このへんはすでにほかの遊園地経営シムで実現されているだけに,目新しさの点でのパンチは弱いが,根っからのRCTファンは手放しで喜べるところだ。また,時間帯や天候の変化,水面に映る風景,ライトアップされた夜の遊園地など,見た目の美しさは,ほかの遊園地経営シムよりも一歩リードといった感じ。

 ゲームモードは"チュートリアル" "キャンペーン" "サンドボックス" "カスタムシナリオ"の4種類。まずは必要な操作方法など覚えられるチュートリアルを一通りプレイしておくのがベストだ。キャンペーンは18種類用意されたシナリオに挑戦しつつ,遊園地経営をしていくモードであり,各シナリオには「見習い」「起業家」「タイクーン」の3レベルがあって,それぞれに目標が用意されている。見習いレベルをクリアすると起業家レベルに挑戦できるという流れで,最終的にはタイクーンレベルへの挑戦を目指していくわけだ。最初からプレイできるシナリオは六つのみで,最後のシナリオ18に挑戦するには,タイクーンレベルでシナリオ17までクリアしておく必要があるなど,オールクリアまでの道のりはそうとう厳しい。
 また,経営面はまったく気にせず,全アイテムを使って自由気ままに遊園地建設を楽しみたい場合はサンドボックスモードを,「せめて資金制限は付けたい」という場合は独自にシナリオを作れるカスタムシナリオを,といった具合に,気分やプレイスタイルでゲームモードを選べるのが嬉しいところだ。

 

晴天の空に鳥が飛び交い,水面には風景が映り込む。波紋まで再現されているところに注目してほしい 時間帯や天候の変化まで再現され,ときに稲光が夜空を明るく照らす。うっすらと立ちこめる霧で街灯が淡く光る 雨の多い時期に「ちょっとばかり傘の値段を上げてやろう……」と思えたら,経営者の素質は十分にあり

 

シナリオに用意された目標は,見習いレベルなら簡単。VIPが訪れるまでに借金をしてでも準備したいところだ 単独のオブジェクトに見える城もパーツの組み合わせでできており,中にアトラクションなども設置可能 夜景をバックにショットを撮ろうと思ったら,相当ご機嫌らしい。ピープの表情変化まで再現しているのだ

 

 

■「また来た〜い」そんな遊園地にできるかは経営者の腕次第


人気アトラクションには大勢のピープが並ぶ。これだけの人がいるにも関わらず,同じ容姿をしたピープがいないところに注目。園内で同じ人を探すのが難しいほどバリエーション豊富なのだ
 基本的なゲームシステムは,過去のRCTシリーズやほかの遊園地経営シムと同様で,歩道を敷設し,アトラクションやショップ,施設(トイレなど),景観アイテム(ベンチや写真スポットなど)を設置し,訪れるピープ達に楽しんでもらえる(お金を使ってもらえる)遊園地にすることがプレイのキモだ。
 ピープ達には年齢や性格によるアトラクションの好み(ハマり度)や,さまざまな欲求パラメータがあるため,それぞれのピープのチェックは当然のこと,アトラクションやショップを利用した感想や,遊園地の現状を把握してアドバイスをくれる査察官の意見を参考に,価格設定の見直しや各種の改善などを行っていく。ほかにも園内のメンテナンスを行う技術員や清掃員,ピープを楽しませるエンターティナー,警備員の雇用など,経営者としてやるべきことは多い。
 本作は,財政画面と睨めっこしなくても比較的簡単に経営を軌道に乗せられるので,初心者でもプレイしやすい部類に入る。とはいえ,キャンペーンを進めていくと骨のある目標が続々と登場するため,それなりのノウハウやテクニックは必要になってくる。単純に難しいというよりは,楽しみながら奥の深さを味わえる,そんなバランスになっている。

 遊園地の顔であるアトラクションなどを見ていくと,メインであるローラーコースターは51種類もある。前作同様コースレイアウトが可能で,そのまま使えるプリセットデータも用意されている。ほかにもキッズ向け,スリルライドといった遊園地で見かけるアトラクションが約80種類用意されており,これだけあると,どれを使ってよいのか迷ってしまうほどだ。また食べ物,飲み物,売店,施設などのショップは50種類,照明,ベンチ,オブジェなど景観アイテムは壁などのパーツを含めると200種類以上。これだけ使用可能なアイテムが多い箱庭シムは過去に例を見ないのではないか。
 見た目の派手さから,どうしても過激なアトラクションを設置しがちだが,訪れるピープ全員がド派手なアトラクションを求めているわけではない。アトラクションには興奮度,強烈度,ゲロ度というパラメータがあり,それにより楽しめるピープもいれば楽しめないピープもいる。マジメに遊園地を経営するなら,過激度が低いものから高いものまでバランスよく設置する必要があるのだ。とはいえ,強烈なアトラクションばかりの遊園地を作ってピープ達を恐怖のどん底に叩き落とす遊び方も,もちろんアリだ。

 

アトラクションはカメラアングルを切り替えて眺められる。疑似体験もできるが,酔わないように注意 ローラーコースターには高さが必要なものも多い。入り口と出口から地上に降ろす歩道設計は悩みどころ 隣接するローラーコースターに別のローラーコースターを絡ませる場合にはゲーム中で直接設計するとよい

 

"USJ"のように,ローラーコースター通過時にアクションを起こす"乗物イベント"も多数用意されている 高さを変えてアトラクションの上に別のアトラクションを置けるので,スペースを有効に利用できる スタッフの雇用をサボると,アトラクションは故障したままで歩道も汚れまくり。こんな遊園地に来たい?

 


■豊富なカスタマイズ機能は本編を遊ぶよりもハマるかも!?


続々と来園してくるピープ達。経営者としては嬉しい限りなのだが,来園者が増えれば苦労も増えるのが悲しいところ。とはいえ,こんな光景を見れば「すべてのピープを満足させてやろう」と思うはず
 RCTシリーズの人気を牽引しているのが,ローラーコースターを独自に設計できる点だ。独自レイアウトを作成して保存しておけば,同じコースを何度も使えるほか,RCT1,RCT2のデータも読み込めるので,過去に作ったコースを流用しつつ,さらに手を加えるのもいいだろう。
 通常のプレイ中にも作成はできるのだが,じっくり取り組むなら"コースターデザイナー"がオススメ。これは,コントロールパネルにあるパーツボタンを押して,組み合わせていくだけでコースができるモードで,直線,傾斜,カーブなどのレール,ライドを坂の上まで持ち上げるリフトヒル,カーブでGを押さえるためのバンク,写真撮影ポイント,S字カーブやコークスクリューなどのパーツを組み合わせていく。
 レイアウト次第でローラーコースターの興奮度,過激度,ゲロ度が決まるため,速度が高すぎたらブレーキポイントを設置し,Gが強すぎたら傾斜を緩め,バンク角を多くとったりするなど,何度も試運転しては修正し……を繰り返す。最後の仕上げが一番難しいかも知れない。またゴーカートやミニゴルフなどのコースも同様に作成できるので,いろいろなオリジナルアトラクションを作り,ゲーム中で使用してほしい。

 アトラクション以外にも,遊園地の景観アイテムとなる建物の作成が可能で,これは壁や柱などのパーツを組み合わせて作っていく。テーマに合わせたパーツが豊富に用意されており,小さな小屋から大きな神殿まで作成できるところが素晴らしい。もちろん保存してゲームで使用できるので,実際に存在する遊園地を可能な限り忠実に再現,といったこともできるわけだ。ほかにも打ち上げ花火ショーを"花火ミックスマスター"を使って編集したり,オリジナルピープを作れる(写真スポットで勝手に写真を撮って保存する)など,プレイヤーがカスタマイズできる機能が豊富に用意されている。遊園地を稼働させている時間よりも,いろいろ作ってる時間のほうが長いなんて人も出てくるかもしれない。なお,作成したデータはほかのプレイヤーと交換できるので,いろいろデータを共有して楽しめば面白さも倍増するだろう。

 遊園地経営シムとしてのゲームバランスは,簡単すぎず難しすぎずといった感じでちょうどよく,カスタマイズして楽しめる自由度の高さは本作ならではのもの。自分で作り上げた遊園地の中を楽しそうに歩き回ったり,アトラクションにズラーっと並んでいるピープの姿を見たりしたときは,思わず顔がほころんでしまうはず。
 ただ,アトラクションやショップなどにははじめから日本語の名前が付いているにもかかわらず,日本語入力に不具合があるようで,文字化けを起こしてしまう。半角英数字では問題ないのだが,せっかく日本語が使えるのだから,修正してほしいところ。
 プレイした感想を正直に書いてみると「本気で面白い!」の一言。どうして日本ではマイナーな作品に留まっているのか不思議でならないが,一度プレイすれば欧米で高い評価を得ている理由はよく分かるだろう。ゲーム中のテキストはすべて日本語化されており,100ページ弱にも及ぶ良質な日本語マニュアルも付いているので,初心者にも安心してオススメできる。ぜひ挑戦して面白さを味わってみてはいかがだろうか?

 

コースターデザイナーを使い,独自レイアウトのコースを作成&保存してゲームで使うのが基本的パターン 人物デザイナーでピープを作成し,カップルや家族などグループ化しておくと,プレイ中の遊園地に遊びにくる 作成したグループは遊園地に設置した撮影ポイントで写真撮影。画像ファイルとして保存される

 

カスタムシナリオではさまざまな項目を設定できる。保存したデータを,ほかの人に渡したりもらったりも可能 花火ミックスマスターで花火ショーを演出。花火を選んでタイムラインに貼り付けるだけと,非常に分かりやすい 建物デザイナーでは壁や柱などのパーツを組み合わせて建物を作れる。それだけで夢中になってしまうことも

 

タイトル Best Selection of GAMES ローラーコースタータイクーン 3 完全日本語版
開発元 Frontier Developments, Ltd. 発売元 アタリジャパン
発売日 2006/03/24 価格 3990円(税込)
 
動作環境 Windows 98/Me/2000/XP,PentiumIII/733MHz以上(Pentium4/1.2GHz以上推奨),メモリ 128MB以上(256MB以上推奨,Windows XPは384MB以上推奨),HDD空き容量 600MB以上,32MB以上のVRAMを搭載したビデオカード,DirectX 9.0以降

(C)2004 Atari, Inc. All Rights Reserved. RollerCoaster Tycoon 3 game (C)2004 Chris Sawyer; programming (C)2004 Frontier Developments Ltd. All rights reserved. The ratings icon is a trademark of the Interactive Digital Software Association.