アクション 4Gamer.net Review
 
ゲーマーの期待に応えた,FPS超大作
ハーフライフ2 (原題 Half-Life2)
Text by 奥谷海人
19th Nov. 2004

 おそらく2004年一番の期待作といっても間違いではないであろうFPS新作「Half-Life 2」(邦題 ハーフライフ2)が,11月16日についにリリースされた(サイバーフロントの日本発売版は11月17日発売)。制作が発表されてから3年間。α版の流出やビデオカードのサポート問題,さらには発売延期や販売元との訴訟など,ゲーム以上の激しい展開を,我々ファンの多くが見守ってきたことだろう。
 信じ難いことだが,Half-Life 2を開発したValve Entertainment社にとって,本作はまだ(完全新作という意味では)2作めでしかない。前作は,DOOM III以来の「敵を撃ちまくる」というFPSゲームの黄金律を打破し,スクリプティングを多用したリアルタイムのイベントを活用することで,このジャンルに新たな息吹を注いだ名作といえる"Half-Life"。Half-Life 2は,大きな期待とプレッシャーに挟まれて開発されたのだ

City 17にようこそ!

東欧風の街が再現されたCity 17。後方の巨大な建造物が,シタデルと呼ばれるブリーン博士の本拠地である。淀んだ空が,強烈な圧迫感を表現している

 Half-Life 2のストーリーは,前作でブラックメサでの秘密実験が失敗してから15年以上経った時代を描く。主人公は,もちろんゴードン・フリーマンだ。前作では28歳と紹介されていたので,今回は少なくとも40代前半だと思われるが,実際のところどうなっているのかは分からない。というのも,本作ではXen(前作に登場した異世界)の空間移動技術ばかりでなく,時空を超越することも大きなテーマであるからだ。
 ともあれ,この15年の間に世界の様子はすっかりと変化してしまった。舞台となるCity 17は,ウォーレス・ブリーン博士とコンバインと呼ばれる軍隊を頂点とした強権政治によって統治されている。モチーフとなっているのは第二次世界大戦下のユダヤ人居住区のようなところで,そこにフランスのレジスタンス運動を絡めた雰囲気を連想させる。

 ゲーム開始当初,プレイヤーはゴードンと同じように何が起こっているのか,どうして自分がそこにいるのか分からないまま列車で到着する。前作でも地下モノレールが導入部分だったので,ニヤリとするファンも多いだろう。最初に写し出されるのは,前作でゴードンの行動を監視していたG-Man。まるで映画「マトリックス」の1シーンのような背景映像とオーバーラップしながら,彼は「Rise and shine, Mr. Freeman. Wake up and smell the ashes」(日本語テキストでは「目覚めのときが来ました。フリーマンさん。さあ,目を覚ますのです」)とプレイヤーに告げる。前作でゴードンはニヒランスを破って勝利したが,地球は戦いに敗れてしまったのである。
 列車のドアが開いた後,のっけから飛行型監視カメラで撮影され,ブリーンのプロパガンダ映像を見せられ,さらにはコンバインの兵士に背中を押されながら歩いていくうちに,このCity 17は普通の街ではないと感じるようになる。わけも分からず知り合いの到着を待っている人,ベンチに無造作に座り込む人,列車のダイヤを見ながら怪訝そうにつぶやいている人……。誰もが死んだような目でプレイヤーを見つめるのが異様で,広大な駅構内にブリーンの声とコンバインの通信音だけがこだましている。この時点で,重苦しい圧迫感に包まれたHalf-Life 2の世界観にグイグイと引き込まれるのである

Havokエンジンのラグドール効果は,グネグネし過ぎていて好みが分かれるところ。こんな死に方しないだろと思うときもある 情況次第では,燃料タンクなどを利用して複数の敵を瞬殺可能。デモムービーのようにうまくいかないことが多いが,成功したときの達成感は格別 後半の戦闘は激しく厳しいが,仲間もよく戦ってくれる。筆者のマシンでは,カクカクして一番プレイしづらかった場面でもある

「寡黙な男」ゴードン・フリーマンとその仲間達

ゲーム後半になれば,整然としていた街の様子が一変し,あちこちで壁が崩れ,弾痕や破壊の跡が目立つようになる

 そんなCity 17にも希望はある。それが,ゴードン・フリーマンことプレイヤーの存在である。駅から居住区までの道のりは,比較的自由に散策できる。プレイヤーの姿はゲーム中一度も写し出されることはないが,少なくともこの時点では,ほかの居住者と同じ,番号のついた青い服を着ているのだろう。コンバインに近付いたりすれば殴られるが,受話器の上に飛び乗ってもポスターを一枚一枚見回っても誰も気に止めない。しかしある地点から,NPC達がゴードンの到着を待っていましたとばかりに言葉を投げかけ始め,誘導されながらもゲームは急なテンポで進展していく。
 実際,ゲームで出会うNPC達のゴードンに対する期待は,プレイヤーがゲームを続けていくうえで大きなモチベーションになっているはずだ。ゴードンと同じく,City 17と自分の身の回りに何が起こっているのかはプレイヤーにもよく分からない。ゲームを進めながら,少しずつ世界の在り様と自分の立場を理解していくのである。
 前作同様主人公は一切話さず,ゲームはイベントやNPC達のセリフによってストーリーが進行していく。これは主人公の感情表現を優先させる映画やテレビドラマのような既存の映像メディアとはまったく異なる性質のもので,インタラクティブ・ドラマとしてはユニークな試みだ。まぁ日本産RPGでは古くからある手法ではあるが,とくに本作の場合,プレイヤー自身が冒険物語の主人公になったような気分にさせられるのは,NPCとのインタラクティビティをうまく利用しているからだろう。

 Half-Life 2のキャラクターは,ノーマルマッピングによって衣服の生地からアクセサリ,ベルト穴や靴ひもまでが丹念に描かれている。登場人物は多彩で,ブラックメサの惨事で生き残った当代随一の物理学者であるイーライ・ヴァンス博士,前作ではチョイ役なのに人気のあったバーニー,そしてブラックメサ・イーストでイーライの片腕として研究に勤しむモスマン博士やクレイマー博士などなど。忘れてならないのは,ブラックメサ時代は事務局長だったブリーン博士と,当時はまだ乳児だったイーライの一人娘のアレックスだ。アレックスは,ゲーム中ではゴードンと行動することはほとんどないものの,各所でストーリーを引っ張る重要なメインキャラクターである。
 ほかにも,ゾンビで溢れるレーベンホルムを守護するグレゴリー司祭,ニューリトル・オデッサでレジスタンスを指揮するクーバッジ軍曹,さらには時折登場する黒人系の兵士レオンや犬型ロボットのドッグなど,ファンやMODクリエーターが飛びつきそうな個性派キャラクターが多い。

眼球,まばたき,筋肉……。もはや食傷気味のこの顔だが,細かい部分の動作が確認できる良いデモなのは変わりない 夢も希望もなくなったカップル。自由の戦士として,彼らのためにも戦わなければならないのだ ゲームでは,時折コンバイン兵が設置したマシンガンを使用する局面がある。木っ端微塵に吹き飛ぶ板が凄まじい


前作とは似ているようで微妙に違う

Half-Life 2の怖さは,そこらのホラー映画を超越している。血だらけ肉片だらけで,背筋が寒くなってくるのだ

 Half-Life 2は,ハラハラさせる戦闘シーンの中に,適度に謎解きの要素が加えられているという点で,前作とさして変わらない。前作では,突然ヘッドクラブが暗がりから飛び出してくるのに驚かされたが,今作ではそれ以上にホラー要素の高いレーベンホルムの街がある。かと思えば,後半には仲間を引き連れて戦うシーンもある。比較的乗り物を利用している場面の比重が高いので,十分に満足できる内容と感じた。
 本作には計14チャプターが用意されており,15〜20時間のプレイ時間でエンディングに到達できそうだ。マップは,市街地,田舎の村,浜辺,海岸沿いの高速道路,運河,刑務所などボリュームは満タン。相変わらずレベルデザインは秀逸で,広大な都市の風景から薄暗い地下の通路まで,高低のあるものが多い。そのためか,ストーリーの進行は非常に直線的なのに,一本道を進んでいるという感覚にはならない
 難をいえば,エアボードとバギーのチャプターが,少し間延びしていたと感じたくらいか。乗り物に乗れるのは本作で追加された要素の一つで,波や砂浜の物理効果がほどよく効いた素晴らしいシーンとなっていたが,ポイントごとに乗り物から降りてパズルを解いたり戦ったりという,基本的な部分で短調になっていた感は否めない。

建物に映るシルエットが,自分の役目はゾンビと化した住人達を天国へと送ることだと自認するグレゴリー司祭。ガスで焼かれたゾンビの悲鳴が痛々しい

 インタフェースや操作感はHalf-Lifeを踏襲しており,前作をプレイしたことあるならほとんど同じ感覚でプレイできる。武器も前作からの引き継ぎが多く,新しいものはコンバインが携帯している"パルスライフル",アントライオンをコントロールできる"フェロポッド",そして重力操作で物を持ち上げたり放射したりすることが可能な"グラビティガン"(重力銃)の3種類。クロスボウはスナイパーライフルの代用として使うが,同じ場所に止まっている敵はほとんどいないため,活用する場面はなさそうに感じた。ピストルの威力は前作同様に非常に高く,中距離までなら十分に対処できる。
 武器の選択はピストル系,ライフル系,爆破系に分かれており,1系統に二つずつ用意されている。そのため,例えば2キーを押してもハンドガンかマグナムをマウスホイールで再度指定しなければならないのが少々面倒くさい。デフォルトのQキーで2種までの武器を瞬時に変換できるが,激しい戦闘中で弾丸がなくなったときなどの使い勝手はよくなかった。
 マップ上に用意された補給用銃弾の数は,かなりシビアに計算されている。とくにノヴァ・プロスペクトやフォロー・フリーマンのチャプターでは,武器の特性を考えてプレイする必要があるだろう。レーベンホルムでも,燃料ドラムやレーザーブレードなどをうまく利用して戦うのが得策だ。ただし,ロケットのようなガンシップやストライダーとの戦闘に欠かせない武器は,あらかじめ戦闘が始まる前に補給できるようになっているので,補給ポイントを見逃さないように心掛けよう。

グラビティガンをうまく利用して,砂地を踏まないように進む。物理効果をうまく利用したパズルが,本作の要でもある
青いレーザー光は,コンバインのスナイパー兵。グレネードやロケットを撃ち込む必要があり,これが非常にやっかいだ 女性キャラクター同士のいがみ合い。アレックスとモスマン博士の仲の悪さは,来るべきドラマの複線にもなっている

キャラクター技術は歴史的な偉業

ノヴァ・プロスペクトの刑務所では,アレックスが到着するまで波のように押し寄せる敵を粉砕する。銃弾のマネージメントには注意

 Half-Life 2を起動させてまず気づくのが,Valve社が5年をかけて開発していたSourceエンジンのグラフィックス描画能力の高さである。前評判の高い本作だけに,これまでの記事や画像で予習していたファンも多いはずだが,改めて自分のPC上で動いているのを見ると,「ゲームもここまで来たのか」と感嘆せずにはいられない。
 駅に降り立ってから広場へと出るまでの,広大な屋内外のグラフィックスも見ものだが,Half-Life 2の真髄はキャラクターアニメーション技術だ。そもそも,冒頭にG-Manのクロースアップを持ってきたのも,長い年月をかけて開発したキャラクター技術を見せつけるためだろう。このクロースアップは,皮膚のシェーダから筋肉の動きに至るまでが綿密で,プリレンダリングで生成されるCG映画を見ているかのよう。とくにValve社では人物の目の表現に多大な労力を注ぎ込んでいるようで,環境光を反映させた光沢感のある眼球は,さらに顔全体とは異なる動作をする。
 例えば,G-Manは小刻みに顔を揺らしているのに,目だけはじっとモニターの向こうに想定されるプレイヤーを見つめている。このような仕草は,プレイヤーに対して無言で意思表示ができるということで,筋肉の動きやまばたき,リップシンク,そして身振り手振りまでを加えて,非常にライフライクなキャラクターを作り出すのに成功している。ゲーム中でも,クレイナー博士のとぼけたセリフに対してアレックスが眉を吊り上げながらプレイヤーに目配せするシーンや,敬愛するイーライ博士の横で表情を作るモスマン博士のシーンなど,ゲームの随処で効果を発揮する。フリーマンと出会ったときのNPC達の安心感,会話中の微笑みやいらだちといった豊かな感情が,プレイヤーに伝わってくるのだ。

 作り手側がセリフなどの説明に頼らず,キャラクターの表情だけで意思伝達を試み,プレイヤーが感受する心理効果を意図したように獲得できるというのは,PCゲームにおけるキャラクター技術の新たな区切りなのではないだろうか。顔テクスチャの着せ替えや文字など記号的で限られた従来の手法と比較しても,Half-Life 2で行われている試みの意義は大きい。この点だけでも,Half-Life 2が「歴史的なゲームソフトである」といっても過言ではないだろう。


Havok物理エンジンを利用したプレイ感

本作の主要キャラクターの面々は,基本的にブラックメサ時代の仲間達だ。表情や身振りを加えて,非常に豊かな感情表現を達成している

 キャラクター技術と同じくらいHalf-Life 2のコアになっているのが,物理効果を利用したプレイ感である。Valve社は,このゲームのためにHavok社の「Havok 2物理エンジン」を採用している。
 このエンジンでは,お馴染みのラグドール効果を始めとして,ほとんどのオブジェクトに重量や材質などの要素を含めるという入念さ。木箱を水中に落とすと半分くらいが浮くが,人体やタイヤなら海面に浮き,金属やブロックは完全に沈んでしまうといった感じだ。とにかくインタラクティブなオブジェクトが多く,敵のいない場所でグラビティガンを装備し,何気にマウスのライトクリック("吸い"のデフォルト)を押していれば,フライパンなど思いも寄らぬものが飛び込んでくる。
 ゲームの流れは,コンバインやゾンビなどの敵との戦闘の合間に散りばめられたパズルと解いて進んでいくという前作と同じものだ。しかし,前作で不評だった難しすぎるジャンプパズルは今作では少なくなり,代わりに木箱を浮かせて水面を渡り切るとか,シーソーの片方にブロックなどを置いて高い場所に飛び移れるようにするという物理効果を利用したパズルが増えている。パズルの解法に困ったときには,周りを見渡すと状況が分かりやすくなっていて,比較的容易ながらも知的なパズルが楽しめるのだ。筆者のお勧めは,Northern Petrolのサインがある船着場でクレーンを使って行うパズル。このゲームならではの醍醐味が味わえる場面の一つといえるだろう。
 このパズルという点での主役は,グラビティガンで間違いない。板をフェンスに立て掛けたり電源プラグを引き抜いたりと,活用度が高くて非常に重宝する。ダクトの進入口の破壊やアイテムが隠されていそうな木箱の破壊までグラビティガンで対処できるので,トレードマークの金テコはほとんど隅に追いやられてしまっているようだ。

 本作での物理効果は,戦闘時にも威力を発揮する。燃料タンクが並んでいるような場所では,うまく爆破させると連鎖して大爆破を起こすし,押し寄せる敵を一網打尽にすることが可能だ。また,車の残骸を燃料タンクの爆風で吹き飛ばしたり,木柱を破壊して上のコンテナやドラム缶を崩したりなど,普通のゲームでは考え付かないような仕掛けが満載されている。中々思い通りには行かないが,これを見るためにチャプターをやり直す甲斐もあるというものだろう。

ジュゴンのような形状のガンシップを撃ち落したときほど気持ちの良いものはない。このほかにも,次々とコンバイン兵を下ろすドロップシップもある こうして見ると犬に見えないが,アレックスのペットとして活躍するドッグ。キャッチボールもしてくれるイカしたロボットだ

Half-Life 2の骨まで楽しむために

このゲームのクレーン操作は,何か子供の頃の記憶が蘇ってくる。コンテナを吊り上げて敵を押し潰すのが,妙に非現実的で面白い

 また,本作の中で地味に重要な仕事をしているのが環境音だ。街の雑踏や鳥のさえずり,銃声や人々の叫び声など,チャプターによってさまざまな環境音が,絶えずバックグラウンドから聞こえてくる。実際BGMはほとんどなく,重要な戦闘シーンで場を盛り上げるだけの役割となっているのが意外だ。
 オブジェクトの物理効果と同じく,それぞれの材質によって異なる効果音が用意されている。木版,鉄板,アスファルト,タイル,砂などを歩いたり銃撃したりすると,それぞれの効果音がまったく違うのである。この環境音やオブジェクトの効果音が,リアリティある世界観を生み出す要因の一つだ。
 また5.1chのサラウンドサウンドにも対応しており,音響効果はゲームの重要な一要素になっている。とくに,コンバイン兵は一定間隔でマスクから通信音を発するので,狭いビルの屋内迷路を進行しているときには,5.1chのサウンド効果は非常に役立つ。筆者は5.1chスピーカの環境こそないが,「こちら」(「奥谷海人のAccess Accepted」の第9回)で紹介した5.1ch対応ヘッドホンを利用している。最近では数社から5.1chをサポートしたヘッドホンが出ているようなので,Half-Life2をプレイするのであれば,ぜひ試してみていただきたい。

 Half-Life 2では,敵としてコンバイン兵,ゾンビ系統,アントライオンやバーナクルなどの生物系統,そしてマンハックと呼ばれる浮遊型の機械兵器が登場する。ガンシップやストライダーは生物にも見えるが,破壊した後の残骸を金テコで叩いてみると,どちらも金属音を発していた。
 これらNPCのAIは,これといって特筆するものでもない。コンバイン兵は,最近のFPSタイトルには必須の援護射撃や迂回などをしてくるが,攻撃してくる方向さえ分かっていれば,それほど難しい相手ではなかった。
 ゲームの終盤になると,最大4人の兵士がプレイヤーのサポートとして追随してくることもあるが,プレイヤーがリーダーとして指示できるのはCキーの「戦闘配備に付け」のみなので,ストライダーの背後をやり過ごしたくても勝手に発砲してしまう。コンバットアクションゲームでよく見られる援護や待機など複雑な指示を出せないのが残念だが,この地点での反乱軍兵は使い捨てと思って,死を恐れずにどんどんと仲間に加わるNPCを利用すべきだろう。


誰もがプレイすべき,ゲーム史に名を残すタイトル

フリーマンのCity 17到着は,レジスタンス達にとっては大ニュース。行く先々で,大きな期待をかけられる

 さて筆者の使っているマシンは,Pentium4/3.0GHzに1GBのメモリ,そしてGeForce 5900系チップ(DirectX 8.0までをサポート)である。Half-Life 2の現行バージョンでは,DirectX 9.0に特化した効果はDiffuseマッピングなど一部のものしかないため,筆者の環境でもほとんどフルにゲームを堪能できたと思える。
 Valve社では,高性能グラフィックスのためにプレイヤー層を限定したくないとして,かなり入念なチューンナップを行っていたようで,DirectX 7.0以上のビデオカードや2.0GHz前後のCPUでも十分に動かせるようにはなっているようだ。ただし,屋外マップでの膨大なテクスチャ量を考えれば,メモリは最低でも512MBは欲しいところ。前作同様にチェックポイントのセーブシステムを採用しているので,ローディングする度にHDDへのアクセスが頻繁に行われる。
 Half-Life 2では,Valve社が開発したSteamを使ってフルバージョンを購入してダウンロードできるようになっており,HDDの空き容量に余裕があれば,CD-ROM5枚組(DVD版はもちろん1枚)のインストールよりも手軽だ。デスクトップ上にHalf-Lifeのアイコンは存在せず,Steamを開いてゲームを選択するという方式も,同社のこれからの方向性がうかがい知れるだろう。ちなみに,すでに報告されているとおり,パッケージ版でもSteamの無料アカウントを獲得する必要があるが,これは海賊行為を駆逐するための処置であり,一旦Steamで認証を受ければ,インターネットに繋げていない状態でもシングル版はプレイできる。

フェロポッドと呼ばれる新兵器は,単なるメス型アントライオンのフェロモン。これを敵に投げ込めば,欲望の塊と化したオス型が特攻してくれる

 余談となるが,現行バージョンは完全にバグフリーな状態ではなく,筆者がプレイしたときにもついて来るはずのバーニーを見失ったり,終盤で突然ジャンプして進めなくなったりというような異常症状が見られた。インターネット上で同じような問題報告がやり取りされているが,これはクリティカルなものではなく,以前のセーブポイントからやり直せば正常に動作する。

 総括として,Half-Life 2はFPSファンでなくてもぜひプレイしてほしいタイトルだ。キャラクター技術や物理効果など遊んで価値のあるものが多く,一万円で体験できる最新エンターテイメントとして考えれば高くはない。
 逆に問題点としては,先に挙げたようにストーリーで間延びした部分。これはちょっと筆者的には期待外れで,世界観を理解するうえで解決した問題よりも,疑問点が増えてしまったのにも不満が残る。同社の次回作の発表はなされていないので,映画「スター・ウォーズ」や「マトリックス」などの続編モノにある,"ミドルチャプター症候群"なだけかもしれないが。
 パズルを解いた後に「さてここからどうしたものか」とウロウロした場面もあったものの,ゲーム全体のペースは素晴らしく,奇妙なHalf-Lifeシリーズの世界観を第一人称で堪能できた。キャラクター達が,笑ったり肩をすくめたりして感情をプレイヤーと共有しているうちに,空想世界へと引き込まれている自分に気づくに違いない。
 最後にもう一度言っておきたい。このソフトは,ゲーム史に名を残すタイトルだ。ぜひともプレイしておいてほしい。



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■国内販売元:サイバーフロント
■問い合わせ先:ユーザーサポートセンター TEL 052-779-6549
■発売日:2004年11月17日
■価格:6825円(税込),コレクターズエディション 9240円(税込)
■動作環境:Windows 98SE/Me/2000/XP,CPU 1.2GHz以上(2.4GHz以上推奨),メモリ 256MB(512MB以上推奨),HDD空き容量 4.5GB以上(コレクターズエディションは5.5GB以上),DirectX 7レベル以上のビデオカード(DirectX 9レベル以上推奨)
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