■ミサイルやレーザーが飛び交う派手な戦闘シーンが魅力
戦車の質感や背景の美しさなど,ぱっと見ただけではRTSとは思えないほど完成度の高いグラフィックスだ。ひょっとすると,一昔前のFPSよりも画面のクオリティが高いかもしれない |
本作は美麗なグラフィックスがウリのSF RTSとして,当サイトでもたびたび紹介してきた。しかし,今まで紹介してきたのは英語版なので,興味はあるが躊躇していたという人も多いのではないだろうか。
今回紹介するのは日本語版で,今まで英語がネックで遊べなかった人でも,ゲームの世界を存分に堪能できるようになっている。ここでは日本語版の発売に併せて,改めてゲームの魅力に迫っていくことにしよう。
グランドコントロールIIの最大の特徴は,何といっても美しいグラフィックスだ。水面の反射や砂ぼこり,戦車兵の顔にいたるまで「RTSでここまでやる必要があるのか」と思わせるほど詳細に描かれている。
最大ズームで表示すると,普通のFPSと変わらないほどのディテールで,建物の看板や道路標識など,普通ならほとんど気づかない部分までリアルに再現している。画面を回転させれば,さまざまな角度から戦闘の様子をチェックしたり,戦術を練ったりできる。
通常,これほどのグラフィックスだと,PCもそれなりのスペックが要求されるが,本作品では意外なことに最低動作環境がPentiumIIIまたはAMD Athlonの800MHz,ビデオメモリ32MB以上と控えめである。当然,美しい3Dグラフィックスを維持したままゲームを楽しむにはそれ相当のマシン環境が必要になるが,グラフィックスにこだわらなければ間口は広いといえるだろう。
ゲームモードは,ストーリーを進めていく「キャンペーン」を始め,コンピュータやほかのプレイヤーと対戦できる「共同戦線」「小戦闘」などが用意されている。ネットワーク対戦は最大8人で,専用ロビー(Massgate)にアクセスすれば相手はいつでも見つけられる。
また,RTSとしては珍しくマルチプレイに「ドロッピング・マルチプレイヤー・システム」という方式を採用しているのが特徴で,対戦に途中から参加したり,逆に気軽に途中で抜けたりできる。
RTSで「途中参加OK」と聞くと違和感を感じるかもしれないが,人数が集まらなくてもゲームが始められ,初心者でも気兼ねなく参加できるのは大きなメリットだ。実際,筆者もゲームに慣れるまでは途中参加がメインで,その間にマルチプレイにおける軍隊の動かし方や,効果的な部隊編成などをマスターできた。
敵に遭遇すると自動的に攻撃を行う。誘導ミサイルが発射されると,弧を描きながら敵ユニットに飛んでいく | 背景に描かれた天体も美しいが,ユニットが砂漠を走行しているときに巻き上がる砂ぼこりもまた見事だ | ヴァイロン軍の攻撃シーンは独特の弾道が美しい。だが,倒されると緑色の液体を吹き出すのが何とも不気味 |
戦車兵の顔もきちんと描かれている。腕を動かしたり,周りを見回したり,細かいところまで作り込まれている | マップには市街地も用意されている。市街戦では身を隠す建物が多くなるため,歩兵がかなり有効になる | マルチプレイの対戦相手は「Massgate」で見つけられる。途中参加できるゲームに参加すれば即対戦が可能 |
■ユニットの特性を活かして拠点を次々と確保せよ
ユニットの増援はすべてこのドロップシップを使って行う。ただし,ユニットの増援には「AP」が必要なので,これをいかにして効率よく稼ぐかがポイントだ。APは拠点を制圧するか,敵ユニットを破壊すると獲得できる |
基本的な流れとしては,持っているAPの範囲内でユニットを増強して,拠点を制圧してより多くのAPを獲得していく。拠点を維持すればAPは自動的に増加するので,そこをなるべく相手に奪われないようにしつつ次の拠点を攻略すればよい。
ベースとなる部分は一般的なRTSと変わらないが,このゲームでは地形効果や天候が戦闘に与える影響,側面攻撃やフレンドリーファイアなど「戦術を楽しむための要素」に重点が置かれている。内政作業によるレベル差が生じない分,ユニットをいかに巧みに動かすかが勝敗のカギとなるのだ。
マルチプレイにおいてプレイヤーが選べるのは,惑星連合の「ノーザン・スター・アライアンス(NSA)」と,エイリアンである「ヴァイロン」の二勢力で,シングルプレイで登場する「テラ」帝国は選べない。勢力が二つしかないのは少し寂しい気もするが,それは今後の拡張パックに期待しよう。
NSAもヴァイロンも基本的なユニットのカテゴリは同じで,"歩兵" "支援車両" "戦車" "ヘリ" "固定砲"の5分野。各カテゴリそれぞれに最大4種類のユニットが存在する。
また,ほとんどのユニットには「セカンダリモード」と呼ばれるスペシャル形態があり,この使い分けが重要になる。例えばNSAの軽歩兵はライフルで武装しているが,ライフルで装甲車両を倒すのは難しい。しかし,セカンダリモードにすると武器がミサイルランチャーに切り替わり,面白いように装甲車両を破壊できるユニットと化すのだ。
ただしセカンダリモードにすると移動ができなくなったり,特定の兵器に攻撃をしなくなったりするので,プライマリ/セカンダリモードは状況に応じて切り替えが必要である。
また,ヴァイロン側はセカンダリモードに加えて,ユニットの「融合」や「分離」が使える。これらを行うとカテゴリ内の違うタイプのユニットに変化するので,セカンダリモードと同じように戦況に応じて武装の切り替えが可能だ。
ヴァイロン側は攻撃パターンが多いぶん,マルチプレイでは若干有利となるが,その分操作量も多くなるので一定のバランスは保たれている。
NSAには,歩兵や戦車,ヘリコプターや支援車両が用意されている。現代の軍隊と同じ兵器体系で扱いやすい | ヴァイロンは奇妙な形を持つユニットばかりだが,歩兵や戦車など,基本的なカテゴリーはNSAと同じだ | テラ帝国軍はホバー系やロボット系が充実しているが,対戦などでプレイヤーが選んで操作することはできない |
NSAの中で強力なのがこのスナイパーだ。市街地では建物の中に身を潜めて,高い位置から攻撃できる | ヴァイロンのユニットは「融合」と「分裂」によって,まったく違う種類のユニットにチェンジできる | 自走砲は遠距離から攻撃が可能だが,着弾に時間がかかるので,タイミングを誤ると同士討ちの恐れがある |
■分かりやすいゲーム内容でRTS入門用としてお勧め
キャンペーンゲームでは,キャラクターが登場してストーリーが展開していく。主人公は"ジェイコブ・アンジェラス"NSA軍大尉で,部下のロー軍曹と共に,テラ帝国軍を相手にさまざまな戦いを繰り広げる |
難度は3段階用意されており,後半になるにつれて一つのマップを攻略するのに時間を要するようになる。キャンペーンだけでもたっぷり遊べるだろう。
なお,キャンペーンのストーリーは前作の続編なので,過去にプレイしたことのある人はすぐに順応できるはずだ。もちろん,初めてでも十分に楽しめるので何の心配もない。ちなみに前作の製品版(英語版)は当サイトの「こちら」から無料でダウンロードできるので,興味のある人は一度試してみてはいかがだろうか。
最後に全体を通しての感想だが,映像の美しさもさることながら,キャンペーンの完成度やゲーム性も素晴らしく,クオリティは非常に高い作品といえる。とくにマルチプレイでゲームに途中参加/退場できるシステムは,とても画期的に感じた。チマチマとした内政作業もないので,RTS初心者にも馴染みやすい。
しかし一方で,ヘビーなRTSファンにとっては,大味感が否めない。序盤からの緻密な戦略の組み立てがないので,マルチプレイで負けてもさほど悔しくないのである。また,画面ビューもマップの視点と実際の視点がうまくリンクせず,操作面で混乱することも多かった。この点が改善されれば,より一層ゲーマーを魅了できるゲームになるだろう。
キャンペーンにはムービーカットも用意されている。字幕表示すればストーリーは完璧に理解できるはずだ | チュートリアルでは,ユニットの基本的な動かし方から攻撃の仕方まで,必要な操作が一通り覚えられる | 対戦の練習に最適なのが「小戦闘」だ。コンピュータを相手にさまざまなマップで戦闘をプレイできる |
戦闘が終わると,対戦結果が表示される。「リプレイを保存」すれば,後で対戦の様子を確認できる | 戦術を競うゲームなので,ユニットは作れるだけ作って楽しみたい。戦闘も派手なのでぜひ一度体験すべし | フォーメーションを組んだり,地形や天候をうまく利用したりしつつ戦えば,勝利は必ず見えてくるだろう |