― プレビュー ―
D.W.Bradley氏の新作は,やはり"本格派RPG"だった
ダンジョンロード
Text by Iwahama
2005年03月28日

 

■あのD.W.Bradley氏の新作を遊べる日が来た!

 

 2004年7月,世界中のRPGファンを喜ばせたニュースがあった。あのD.W.Bradley氏の新作「Dungeon Lords」(邦題 ダンジョンロード)のデモ版が,近々リリースされるという一報である。翌8月には,デモ版は同年9月に出るという情報さえ流れた。ところが,9月になってもリリースされないばかりか,いつの間にやら,デモ版自体のことさえ話題にならなくなっていた。
 しかし,北米での発売日(2005年4月20日)を目前に控え,ようやくデモ版がリリースされた(紹介記事は「こちら」)。
 これがなかなか魅力的な内容で,デモ版紹介ページの枠では言いたいことの半分も伝えられなかったので,ここにプレビュー記事として,その拡大版をお届けしよう(そのため,デモ版紹介記事とかぶっている部分もあるが,ご了承いただきたい)。

 先ほど"あの"と書いたものの,Bradley氏のことを知らない人のために,軽く紹介しておこう。ひと言でいえば,後期Wizardry(ウィザードリィ)シリーズの実質的な開発者である
 正直なところ,(とくに日本において)後期ウィザードリィシリーズは正当な評価を得ていない。これは我々メディアに関わる人々の責任も大きいのだろうが,それはさておき,少なくとも筆者は,第6作「ベイン・オブ・ザ・コズミックフォージ」以降のウィザードリィも,初期作と変わらないほど面白いゲームだと思っている。
 ただ,第6作以降を否定しながらも,第5作は名作だとする人は,かなり多い。いや,日本では,第1作は別格として(本家シリーズの中では)その次に面白いのは第5作という人が一番多いのではないだろうか。意外と知られていないが,この第5作を作ったのが,第6作,第7作と同じく,Bradley氏なのである。
 同氏は,「ウィザードリィ8」を開発中にSir-Tech Canadaを離れ,Heuristic Parkで"Wizards&Warriorsシリーズ"などを手がける。これまたウィザードリィの流れを汲む重厚なRPGで,氏のファン達を熱狂させた(日本で正式に発売されなかったのが,実に残念である)。
 そのBradley氏の最新作にして意欲作が,このダンジョンロードである。

 

 

 

 

■じっくり遊べる,何度も遊べる,ボリューム満点のデモ版


 ダンジョンロードは,Bradley氏お得意のガチガチ硬派なRPGではなく,アクション要素の強いゲームとなっている。プレイヤーはファンタジー世界を舞台に,一人のキャラクターのみを操作し,剣や魔法を(キーボードやマウスで)駆使して冒険を進めていく。「アークス・ファタリス」の第三人称視点版,という表現が分かりやすいだろうか。
 2005年の新作ではあるが,アクションゲームとしてのデキやグラフィックスのクオリティは,すでに過去の作品となってしまったアークス・ファタリスよりも,さらに下といった印象。しかしそこはBradley氏,RPGとしての面白さは,こちらのほうが上になりそうだ。
 種族やクラス,パラメータ配分をはじめ,スキル配分を決めるキャラクターメイキングから"楽しめる"のは彼の従来作どおりで,ウィザードリィシリーズを思わせる緊張感あるトラップ解除や,魅力的なNPCとの会話,奥深いスペルシステムなど,ゲームとしての"深さ"が感じられる作品に仕上がっている

 登場したばかりのデモ版は,312MBというファイル容量から分かるとおり,かなりボリュームがある。シングルプレイだけでも遊び応えがあるうえ,8人までのマルチプレイも試せるのだ。また,三つの種族だけ,顔グラフィックスは変更できないなど多少の制限はあるものの,キャラクターメイキングから楽しめるのも,本作の魅力を知るうえで嬉しいポイントである。
 シングルプレイでは,プレイヤーキャラクターが「SIMON」というNPCと出会うところから,巨大モンスター「WAR TROLL」などが待ちかまえる,"Theater"付近までプレイできる。先ほど遊び応えがあると書いたが,デモ版で実際に行ける場所の範囲は,決して広くない。ただ,次々と現れる(しかも結構イヤらしい攻撃をしてくる)モンスターと,たっぷりとある宝箱に時間を取られるので,シングルプレイのクリアまでに3時間程度は余裕で遊べるはずだ。
 キャラクターの育成方法をいろいろ試したり,またモンスターが復活するため,クリア後もそのままキャラクターを鍛え続けたりしながら,セーブデータが引き継げるかもしれない製品版を待つのもいいだろう(※2005年4月19日追記:Typhoon Gamesに確認したところ,「現在の予定では,デモのセーブデータは製品版では使用不可となっております」との返事をもらった。残念だが,キャラクターではなくプレイヤーのスキルを上げて製品版を待つこととしよう)。

 

 

 


■歯応えも十分 手に汗握るゲームシステム


 さて,このたび公開されたこのデモ版だが,最初は何をどうしていいのか分からず,途方に暮れてしまうという人も多いのではないだろうか。この手のゲームは,ゲームの仕組みそのものを理解していく過程も面白かったりするのだが,何度プレイしてもすぐに死んでしまうというのでは,面白いと感じる前にプレイを断念してしまうだろう。
 そこでここでは,デモ版をプレイするときに戸惑わないように,覚えておくべきシステムを紹介しよう。

 デモ版でゲームが始まったときは,キャラクターは"DAGGER"など,最低限の装備を身につけているのみ。まずはEキーを押してインベントリを開き,手持ちのアイテムの中から,"Penalty"のない範囲で良いものを装備しよう。このPenaltyは,そのアイテムに対応するスキルがないときなどに発生するようだ。なお,スキル"LIGHT WEAPONS"が3になると"MEDIUM WEAPONS"を,この"MEDIUM WEAPONS"が3になると"HEAVY WEAPONS"を習得できるようになる。ARMORやSHIELDも同じである。早く良い装備を身につけたい人は,これらのスキルを優先して上げるといいだろう。
 FIGHTERにせよ,MAGEにせよ,スタート直後は非常に弱いので極力肉弾戦は避け,弓や魔法で戦うようにすべきだ。魔法は,武器と同様インベントリから選択できる。この魔法やポーションは,1〜8のナンバーキーにショートカットを割り当てられるので,HEAL POTIONとよく使う魔法は早めに登録しておこう(もたもたしていると,Goblin達にボコにされてしまう)。
 初期のウィザードリィと同様,魔法はそれぞれ使用回数に制限があり,使い切ったとしても時間の経過では回復しない。これは,宝箱や倒したモンスターなどからスペルブックを入手することで,回復する。

 先ほども少し触れたが,この宝箱などの解錠方法が緊張感溢れるものとなっていて,面白い。第6作以降のウィザードリィの鍵の開け方に近いのだが,運の要素が排除され,プレイヤーの腕次第ではキャラクターのスキル値に関係なく解錠できるのだ(もちろん,スキル値が高いほど楽に開けられる)。
 下の画像の1段目中央が鍵開けの場面である。この画像の,「GO!」の左側に並べられたパネルが,左から順にアクティブになっていく(スキル値が高いと,このスピードを遅くできる)。解錠するには,さらにその下にあるパネルを,同じパネルがアクティブなった瞬間にクリックするだけ……なのだが,これがそのうち三つに増えたり,スピードが非常に速くなったりして,なんとも大変。大変だが,手に汗握れて,楽しい(このデモ版ではあまりにも鍵のかかった箱が多く,ちょっとうんざりしたのも事実だが)。

 

 

 


■"アクションRPG"と侮るな 本格RPGファンも要チェック


 マルチプレイはLANおよびインターネット(IPアドレス指定)に対応しており,基本的にはシングルプレイを複数のプレイヤーで進めるものとなっている。Bradley氏の構築したゲーム世界をほかのプレイヤーと共に旅できるのは本作が初めてだと考えると,氏のファンには感慨深いものがあるだろう。

 このデモ版では,アイテムの売買が試せなかったのが残念だが(ウィザードリィ8のデモ版もそれが残念だったっけ……),きっと面白いゲームになるんだろうな,という感触はつかめた。
 ダンジョンロードは,本家ウィザードリィファンであればプレイ必須なのは当然として,"アクション性を持ったRPG"ファンすべてにお勧めできるゲームとなりそうである。

 

 

 

タイトル ダンジョンロード 日本語版
開発元 Heuristic Park 発売元 ライブドア
発売日 2005/12/16 価格 8379円(税込)
 
動作環境 OS:Windows 98/Me/2000/XP(+DirectX 9.0c以上),CPU:Pentium 4/1.5GHz以上[Pentium 4/2.4GHz以上推奨],メインメモリ:384MB以上[1GB以上推奨],HDD空き容量:2.2GB以上,グラフィックスチップ:DirectX 7以上に対応[DirectX 9.0c以上に対応が推奨],その他:オンラインプレイ時には1Mbps以上のインターネット接続環境必須

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