― レビュー ―
DOOM3の恐怖が拡張パックで再来
DOOM3:Resurrection of Evil
日本語マニュアル付き英語版
Text by 松本隆一
2005年04月18日

 

※「DOOM 3 日本語マニュアル版」のレビュー記事は「こちら」


■終わったはずの事件はちっとも終わっていなかった

 

火星の基地を悪夢が再び襲う。期待の拡張パック「DOOM3:Resurrection of Evil」が登場だ。一度は閉じたはずの地獄の扉が開いてしまったのはなぜか? 火星で何が起こったのか? 本編であんなに苦労したのは水の泡なのか? すべての謎が,今,明らかにされる。だいたい察しはついていると思うけど
 2145年11月,火星に築かれたUAC(United Aerospace Corporation)の研究施設は,生存者わずか1名という未曾有の大災厄に見舞われて崩壊した。だが翌2146年,軌道上の衛星が,地表からの謎の電波をキャッチする。そして同年5月,UACはエリザベス・マクニール博士をリーダーとする調査班を火星に派遣することを決定した。……というのが,本編「DOOM3」の登場から一年を経ずして発売されることになった,期待の拡張パック「DOOM3:Resurrection of Evil」(以下,RE)のオープニングである。

 「また火星探査」と聞いて,「やめといたほうがいいんじゃないの」と思った読者も多いであろう。私もそう思った。しかし,科学の進歩とゲームの都合には多少の危険は付き物なのである。かくして冒頭1分も経たないうちに調査班は全滅し,調査班の一員で宇宙海兵隊に所属する主人公と,わずかの生存者を残して,地獄のゲートが再オープン。火星は再び悪夢の様相を呈することになってしまうのだ。いわんこっちゃない。

 以上のような経緯から,主人公は相変わらず無口で氏名不詳ではあるが,本編(DOOM3本体のことである)とは別人だ。また,敵の親玉となるのは,本編のラストで思わせぶりに姿を消した某人物(変身済み)で,これはもう彼以外だったら逆にビックリするというくらいの展開ではあるが,それ以外の登場人物は少なく,ストーリーは本編に比べて非常にシンプルになっている。まあ本編とて,そんなに複雑な話というわけでもなかったですけど。

 話の中心は,今回もまた火星の古代文明が残したアーティファクトだ。主人公はこれをゲームの最初の段階ですでにゲットしているのだが,こいつは人の心臓の形をした不気味なアイテムで,そこらへんに転がっている民間人の死体から謎めいたエネルギーをチャージし,さまざまな機能を発揮するのだ。開いてしまった地獄の扉を閉めるにも,そのアーティファクトが必要なのである。そんな重要なアイテムを取り戻すため,地獄から3体の強力なモンスターが送り込まれ,そいつらが中ボスとして要所で主人公と戦うというのがストーリーの骨子である。

 

「ここが怪しい場所だ」「よし,爆破」。単純すぎる気がしてならないが,主人公は謎のアイテムを手に入れる 「id Softwareに美女なし」という噂をなんとなく裏付けているような,調査団長マクニール博士。なんて,ごめんね ライト付きヘルメットを装着する主人公。わざわざムービーを入れるのはいいが,マップを抜けると脱いじゃう

 

今回もやたら頼りになるセントリーロボット。1000体ぐらい送り込めば,地獄の一つや二つ簡単に制圧できそう 火星古代文明のアーティファクトは,死体から謎のエネルギーを吸収して威力を発揮。主人公の手まで変化する アーティファクトを使うと,写真ではよく分からないが時間の経過が遅くなる。一発で吹き飛ぶモンスターの姿

 

 

■新兵器を使いこなせば,もう怖いものなんてない


アーティファクトの力を高めるためには,地獄から送られてくるモンスターを倒さなければならない。いずれも,個性的な技を使う手ごわい奴らで,倒すためには,ただ撃ち続けるだけではダメである。マップは本編同様,リニアな一本道(たまに近道あり)なので,イヤでもいずれ彼らと対面することになる。安心していただきたい
 アーティファクトの機能は,中ボスを一匹倒すたびに段階的に向上するのだが,基本的には時間を遅くする(のか,こちらの動きが速くなるのかわからないが)効果があり,しかも火器類の威力も高めるため,強い敵に囲まれたときなど,とても重宝する。もんどりうって倒れていくモンスターをスローモーションで見るのはたいへん気分が良い。だが効果時間が短く,また一度にチャージできるのは3回分まで。弾が切れると「新鮮な死体はどこだ?」とあちこちウロウロしなくてはならず,アーティファクトの造形の不気味さと相まって,こっちが悪役になったような雰囲気だ。普段からアーティファクトを選んで画面に表示していれば,いざというとき便利なのだが,とてもそんな気分になれないような代物である。

 もう一つの新兵器は,"グラバー"と呼ばれる期待の逸品。「ハーフライフ2」に出てきたグラビティガンの親戚筋にあたり,オブジェクトを手元に引きつけたり,吹き飛ばしたりできる。モンスターの投げてくる火の玉を投げ返して倒したり,軽い相手なら引きつけるだけで殲滅できる。もっとも,HL2のグラビティガンが板塀を破って道を作ったり,パズルを解いたりにも使われるのに対し,こちらは純粋に兵器としての使用がメイン。使っても弾が減らないので,序盤,武器類が揃わないときに便利だ。
 とはいえ,至近距離の戦闘が多いため,高速で飛んでくる火の玉に照準するのは至難の業で,はっきりいって使いにくい。きー。もっと距離をくれ! なので,「DOOM2」以来,久々にリバイバルしたダブルバレルショットガンをボッカンぼっかん当てていたほうが爽快かも。しかし後半,強力なモンスターが出始めた頃にはやっぱり重要になってくるので,ご安心を。

 戦いの舞台となるのは本編と同様,火星地下の採掘場,研究施設,そして地獄などだ。例によって戦場の多くは狭く,ごちゃごちゃしている。そしてもちろん,暗い。「DOOM2」の「撃ちまくりアクション」から「スペースサバイバルホラー」に変身した「DOOM3」だったが,REでもそのテーマは変わっていない。暗いところを,懐中電灯を頼りに進んでいく「お化け屋敷」の感覚だ。
 出てくるモンスターの数は多くはないが,いつ,どこへテレポートしてくるか分からないし,扉を開いたら突然襲いかかってくる,などという驚かし演出も健在で,「そうでもない」という人も多いようだが,個人的にビクビクしやすいタチの私は,やっぱりおっかない。どこからともなく「あー」なんて声がしたら,どこどこどこ? とマウスは机の上を駆け回るのである。てへへ。

 とはいえ,本編に比べ(一部のボス戦を除き)戦闘はやや簡単になった印象。もともと,たいして特殊な戦術は必要ないゲームだ。傾き撃ちもないし,遮蔽物に隠れてもあまり効果はないため,正面きって撃ち合うしかないのだが,前述のダブルバレルショットガンの威力が十分あり,弾薬やメディパックはかなり豊富に落ちている。敵の行動は俊敏で,あっという間に距離を詰められてタコ殴りにされたりもするが,見た目の派手さや,主人公のうめき声ほどにはダメージは大きくない。敵の火の玉を1ドット差でよけるのも,慣れれば可能だ。
 したがって,ノーマルモードであれば,通常の戦闘で死ぬようなことはまずなさそう。それに加えて,アーティファクトを連発すれば大抵の局面は切り抜けられるはずだ。本編ほどには暗い場所が多くないのも,ビギナーにはありがたいと思う。

 

新モンスター。強力な火球を連発する恐ろしい奴ではあるが,アーティファクトを使えばショットガン一発だ グラバーを使って敵の攻撃を跳ね返したところ。このくらいの距離がないと,火の玉に照準を合わせられない これも中ボスの1匹。周囲にあるエネルギーコアから力を得ているので,まずはそれを……ネタバレかしら

 

本編でもおなじみの(通称)ミサイルマン。グラバーを使ってミサイルをはじき返し,日頃の恨みを晴らしてやろう 扉を開けるとモンスターが,といった演出はすっかりおなじみのものだが,その割に律儀に毎回驚く自分が憎い 新登場,インプの強力版。青緑色の火の玉が特徴だ。すさまじい跳躍力で飛び掛ってくるところが厄介千万

 

 

■ゲーム性はそのままに,そつのない作りの拡張パック


高速で飛び交うオブジェクトに触れると即死。タイミングを計って走り抜けなければならない。マップ数は減ったが,こうしたアクションパズルのシーンがいくつか登場し,トータルのプレイ時間は結構ある。とはいえ,これは個人差の大きいところか。アクションが得意な人なら問題なく処理できるはず。私は何度も何度も死んだけど
 さて,何かと話題の「暗さ」について。「次回作ではライト付きのヘルメットが配給される」との噂もあり,REでどうなるか興味深いところであった。確かにワンシーンにそうしたライト付きの装備が登場するものの,そこを抜けると主人公はすぐにそれを脱いでしまい,それ以降は以前と同じ懐中電灯一筋に戻る。「なーんだ」と思った人も多いと思うが,これについては,私は根っからのDOOMERということもあり,id Softwareの肩を持つものだ。暗くて狭くておっかないのがDOOM3のゲーム性だし,懐中電灯を持ちながら発砲できないもどかしさも,急に背後にモンスターが現れるズルさも,またそういうことだと思うのだ。やっぱりDOOM3は暗くなくちゃ。

 ゲーム全体の長さは"本編の半分程度"といったところだが,本編が非常に長いゲームだったので,私としてはこのぐらいがちょうどいい。ま,ほんというとちょっと物足りない感じはあるのだが,今後,何度も繰り返して遊ぶ予定なので,あまり長いのも困り物ではある。また,グラフィックスは相変わらず美しい。オブジェクトはさすがに本編の使いまわしが多いような気はするが,なんといってもモンスターの質感がよく出来ていて好きで,こんなのが本当にいたらかなりイヤだ。
 それにしても,発売から半年以上を経てなお「最新のグラフィックス」と呼んでかまわないのだから,大したものだと思う。まあ,それだけに,それなりのスペックのPCを要求されてしまうのは仕方ないだろう。
 あとマルチプレイについて少し。REでは,最大参加人数が8人に増え,ゲームモードも本編の4種類に加えてキャプチャー・ザ・フラッグが初お目見え。本編は一度に参加できる人数も少なく,マップも単純であまり人気がなかったようだが,これで少しは失地回復してもらいたいところ。

 というわけでRE,ゲーム内容に変化はなく,新ストーリーと新モンスター,新武器を追加した,いたってオーソドックスな作りの拡張パックとなっている。斬新さにはやや欠けるが,相変わらず面白く,本編のファンなら試してみる価値は十分にあるだろう。個人的には,これで終わりにせず,もっといろいろな拡張パックが欲しいところだ。さて,それでは今夜もちょっくら地獄へ行ってモンスターどもを痛めつけ,日頃のいろんな鬱憤を晴らすことにするので,さようなら。

 

たぶん後半のメインウェポンとなるプラズマライフル。マップには弾薬,救急箱ともかなり豊富に用意されている 物語が進むにつれ,周囲の状況はどんどん不気味に。暗い場所が増え,奇怪なモンスターが次々に登場する 地獄の造形は,悪夢そのもの。でかい敵も増えるが,個人的になにより苦手なのがこいつら。夢に出てきそうだ

 

ゾンビ連中の困ったところは,もっぱら暗いところに住んでいることと,うっかりやられると非常に悔しいこと 22世紀なので,もはや骨董品だろうか,「DOOM2」で人気だったダブルバレルショットガンが復活する モンスターの造形はすばらしい。暗いところが多くて見にくいが,高度なグラフィックス技術も楽しもう

タイトル DOOM 3:Resurrection of Evil 日本語マニュアル付き英語版
開発元 id Software / Nerve Software 発売元 サイバーフロント
発売日 2005/04/05 価格 5040円(税込)
 
動作環境 OS:Windows 2000/XP(+DirectX 9.0c以上),CPU:Pentium 4/1.50GHz以上,メモリ:384MB以上,グラフィックスチップ:GeForce3/4/FX/6もしくはRadeon 8500/9/X700/X800,グラフィックスメモリ:64MB以上,HDD空き容量:630MB以上

DOOM 3: Resurrection of Evil(C)2005 Id Software, Inc. All rights reserved. Distributed by Activision Publishing, Inc. under license. DOOM and ID are registered trademarks of Id Software, Inc. in the U.S. Patent and Trademark Office and/or some other countries. Activision is a registered trademark of Activision, Inc. All other trademarks and trade names are the properties of their respective owners.