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| 本作に登場するセリフは,どれもずっしり重い。この魅力,お子様には分かるまい | ||
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| これまでプレビュー記事などで何度か紹介してきたように,「空間探知」の威力は絶大だ |
ダイナソアRでは,この手のRPGにありがちな煩わしさが,ことごとく排除されている。
例えば「空間探知」という魔法を使うことで,いわゆるマッピングという作業が必要なくなる。登場する"謎"はどれも一筋縄ではいかないが,必ずといっていいほど仲間がヒントを出してくれる。普通にダンジョン内を探索していれば,単調なレベルアップという作業も必要ないだろう。そしてモンスターのエンカウント率はオリジナルのダイナソアほど多すぎないし,魔法の「守護方陣」を使うことで,まったく敵を出さないようにもできる。
このように,「楽しい」と感じる以外の作業でゲームの進行が妨げられることが少なく,まるで小説を読むように「スラスラ」とゲームが進行していくのである。これは,ストーリーに重きを置いた本作では,非常に重要な部分。このへんのバランスは,さすが日本人の作品だなぁと感じるはずだ。
またインタフェースの良さが「スラスラ」感を増幅していることも付け加えておこう。マウスのみで操作可能なのは当然として,キーボードだけでも(もっというならテンキーだけでも!)操作できるのが実に快適だ。またよく使う魔法/アイテムにショートカットが設定されているのもいい感じ。プレイヤーが,ゲーム世界に没頭できるよう,非常によく配慮されている。
ただインタフェースに関しては,2点ほど不満もある。一つは,直前に使った「技術」(キャラクターごとに持つ特殊技能。魔法など)の情報がセーブデータに保存されないこと。ロードするたびに,よく使う技術を選択し直さなければいけない。オリジナルのダイナソアでは覚えていただけに,ちょっと残念(もっとも,先述のインタフェースの向上で十分にカバーされる程度の不満だが)。
もう一つの不満は,せっかくEnterキーの連打で半自動的にモンスターと戦闘を繰り返してレベルアップ可能だというのに,"キーの押しっぱなし"では同じことができないこと。オリジナルや同じ原作者によるほかのRPGではEnterキーもしくはSpaceバーを押しっぱなしにすることで容易に戦闘が行えたことを考えると,これも対応してほしかったところ。まぁこんな手抜きレベルアップなんかしなくても,先述のようにスラスラ進めるのだから,まぁ大した不満ではないかもしれないが。
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| いいヤツばかりじゃないかもしれないが,それでも仲間は頼りになる | 戦闘は決して煩わしくない。攻撃するたびにハデなエフェクトが出て,なんとも痛快だ |
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| 裏シナリオに登場するランディ。かなりの女好きのようで,セリフの大半は女がらみ |
しかし,このレビュー記事のために表/裏の両シナリオをクリアしてみたのだが,これがもう,かなり長時間楽しむことができた。しばしばダイナソアRを起動したまま別作業をしていたため正確な数字は分からないが,セーブスロットに表示される累計プレイ時間から推察するに,この2回のクリアのために40時間は費やしていると思われる。おかげで,夢の中でも魔物に「雷鳴の刃」を使っちゃう毎日だ。
念のために書いておくが,この40時間は決してダラダラとした40時間ではない。細かいイベントは数え切れないほどあるし,戦闘には緊張感がある。画面右上のミニマップを見ると,すでに通った場所かどうかが一目瞭然なので,迷って同じ場所を行ったり来たりすることもない。スラスラストーリーが進んで,それでも40時間楽しめたのである。
"裏シナリオ"についても軽く触れておこう。オリジナルのダイナソアでは,町を出てすぐのある場所をウロチョロすることで,裏シナリオに入った。しかしダイナソアRでは,一度クリアしたあとならば,自由に裏シナリオをプレイできるようになっている(問い合わせが多いため,付記。筆者が確認したところ,未クリア時でもPC-88版と同じ方法で裏シナリオに入れた。ネタバレになるため詳しくは書かないが,ある場所をウロチョロしながら戦闘していると,レベル3から4の間にとあるメッセージが表示されたのだ。そして城に行くと……。興味のある人は,Webで検索するといろいろと見つかるだろう)。逆に考えれば,ダイナソアRで裏シナリオを遊ぶ人は,基本的に表シナリオをすでにクリアしていることになる。それでも,楽しめるのだろうか?
あくまで筆者の感想だが,十分楽しむことができた。ぶっちゃけ,表シナリオと明確に違うのはアッシュとヒース以外の3人のメンバーくらいで,当然ながらダンジョンの構造はまったく同じだし,登場するモンスターも同じ。数々の謎だって,ヒントを出すメンバーが違うだけで,やはり同じだ。しかし,である。続けて2回プレイしても,やっぱり楽しめたのである。
その理由は,何度も繰り返し述べてきたように,ゲームが"スラスラ"進むため,ストーリーにのみ集中できることだろう。いや,この表現では誤解されかねない。ダイナソアRは,ストーリー以外の部分も十分楽しめるからだ。そもそもモンスターとの戦闘は苦痛でなく,むしろ楽しいし,裏シナリオでは表シナリオとメンバーが違うため,自然と戦術も変わってくる。例えるならば,ストラテジーゲームで"遊ぶ勢力"を変えたようなものだ。戦国ゲームで織田信長となり全国を統一したあと,すぐ上杉謙信でプレイを再開する人は大勢いるだろう。
裏シナリオでストーリーがどうなるかは,ここでは触れない。しかし,当然ながら大まかな流れはほぼ同じである。とはいえ女盗賊ヒルダ,女たらしの魔法使いランディ,そしてファルコムゲーム史上類を見ないほど口が悪いルオンの3人のキャラクターは,表シナリオのみに登場する3人がかすんでしまうほど強烈だ。極論をいうと,ゲームの合間合間に交わされる彼らの言葉に触れるのが,裏シナリオ最大の醍醐味である(もっとも,ルオンのあまりの口の悪さに嫌悪感を抱く人もいるかもしれないが……)。
さて,ダイナソアの公式サイト内の「こちら」を見ると,何やら意味深なことが書いてある。"さらなる第三の結末"と……。筆者は未確認(少なくとも,裏シナリオのようにゲーム開始時に選択できるということはなさそうだ)だが,ゲーム中の選択肢次第では,また別の物語が描かれるということだろうか? 明確に「結末」とあるため,エンディングだけが違うのかもしれないが,しかしダイナソアファンにとっては未見のエンディングが一つ収録されているだけで,オオゴトである。
もしかしたら,ダイナソアRのボリュームは,"通常のRPG2本分"どころではないかもしれない。
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| 裏シナリオに登場するヒルダ。手癖が悪いが,盗賊だから仕方がない? | とにかく口汚いルオン。性格は相当悪いが,これでも僧侶である。口癖は,「くくく」(笑い声) |
とまぁ,ここまでダイナソアRを新作ゲームとして見てきたわけだが,パッと見とシステムは,どこかしら「古い」部分を感じるのは否めない。しかし,それでもいいではないか。小説も映画も,名作はいつまでも廃れない。200年以上前に作られたモーツァルトの名曲の数々は,1000年後の人類も聞いていることだろう。……って,ちょっと大げさすぎるか。まぁともかく,いいものは,いいってことだ。
筆者のような仕事をしていると,むしろ,数々の名作ゲームが歴史に埋もれていってしまうことのほうが悲しい。だから,ダイナソアRのような"前向き"なリメイク(つまり,"エターナル化"ということか)は,大歓迎である。今後も過去の名作が,最新のテクノロジーを満載して(←ここ重要)蘇ることを期待したい。もちろん,それに負けない最新ゲームも遊びきれないほど出ていただきたいものなのだが(←これも重要)。
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