■ベタベタな展開とイベントで安心して遊べる
ストラテジーというと地味っぽいイメージがあるが,本作では敵も味方も派手な攻撃エフェクト出しまくりだ。画面はカニのバブル攻撃 |
ギャルゲーっぽい絵柄と雰囲気が本作の特徴であり,ポニーテールで勝気な幼馴染み,気弱で天然ボケの入ったネコミミ娘,大和撫子で年上お姉さん的な女剣士といったさまざまなタイプの女の子達が活躍する。ローポリゴンで3D描画されたキャラクターたちが動きまくり喋りまくる賑やかな外見だが,ゲームシステム自体は昔ながらのターン制ストラテジーとなっている。
西方の小国,ベルーナ王国の若き女王エリーゼとその配下達は,戦乱で逼迫した財政を立て直すべく,美しい静養地エフェメール島を売却すべく現地へ視察にやってくる。ところが,そこで正体不明の人工生命体に襲われ,エリーゼが誘拐されてしまう。そんなストーリーから本作は始まり,やがて島に隠された過去の遺産"最強の人工生命体"をめぐって陰謀やドラマが展開していく。
こう書くとなにやらシリアスっぽく見えるが,登場人物は全員かなりの能天気系で,会話もギャグっぽい掛け合いが大半,軽い感じでテンポよく進んでいく。プレイした印象では,キャラクターのちょっとクサいセリフやベタベタかつコテコテのストーリーは,懐かしの1980年代ビデオアニメのような印象だった。王道というかお約束というか,筆者の場合こういうベタベタなノリは嫌いじゃなかったので,ある意味昭和の香り漂う内容に安心してプレイできた。
前述したように,本作はシリーズ3作目に当たるが,前作を知らずに始めた筆者でも序盤のキャラクター達の会話で,おおよその性格やストーリー背景を理解できた。シリーズを初めてプレイする人でも,30分ほど遊べば十分に入り込めるだろう。
フルボイスで喋りまくる女の子達。フキダシや汗マークなど,マンガ的表現で表情豊かに進行していく | 晩のおかずをめぐり,文化の違いから対立するふたり。凶悪モンスターそっちのけで掛け合い漫才が進行する | ストラテジーらしく地形を利用した戦略が有効だ。狭い橋に配下を置いて敵を足止めし,遠距離から攻撃 |
■オーソドックなターン制だが試行錯誤が楽しい
いきなり巨大なドラゴンが多数襲いかかってくるシーン。最初は驚いたが,なんとかクリアすると配下にドラゴンが得られる。強力だ |
まず,各ユニット(キャラクター)が動く順番には,それぞれのAGL(agility。敏捷性)ステータスが大きく影響する。AGLが高ければ,次に行動可能になるためのゲージが早く貯まるため,行動回数も増えていくわけだ。
攻撃には剣や杖,銃といった手持ちの武器のほかに,魔法や特殊な必殺技も使える。魔法は,MP(魔法力)のチャージが5段階しかなく,毎ターン回復していくというシンプルさなので,どんなに威力の大きな魔法でも最長5ターン待てば発動可能になる。特殊技には魔法よりも威力や効果範囲の大きいものが多く,MPではなく敵を倒すと溜まる"スピリットゲージ"を消費するため,ある程度ザコ敵を倒してからでないと使えない。
面白いのは一斉攻撃というコマンドで,これは同じ敵を囲む味方ユニットが,攻撃時に一斉に加勢するというもの。ユニットの配置次第で敵を一気にたたみかけることが可能だ。
キャラクターや一部の装備品には火・水・風・土・光・闇の属性が設定され,それぞれの相性によってダメージが2倍になったり,まったく無効化されたりする。戦闘では各ユニットの攻撃/防御力数値よりも,属性どうしの相性を考えながら動かすのが重要である。もっとも,攻撃する直前に,予想ダメージや命中率,付属効果なども表示されるし,それを見てからキャンセルして別の攻撃(戦闘中に武器も持ち変えられる)も繰り出せるので,ある程度アバウトに戦っても大丈夫だ。
もともと敵ユニットに比べて,味方ユニットが最初から強力に設定されているため,至極テキトーに動かして大ピンチになってみたり,慌てて前面のユニットを後退させてみたり,そんないい加減なプレーでもけっこう戦えるし,楽しめるのだ。
戦闘に出せるリーダーユニット(主要人物)は多いときで6人まで。それぞれ1ユニットだけ配下(仲間にした敵ユニットが中心)を連れて行けるので,中盤くらいからは1マップで味方が12ユニットと,なかなかの大所帯になる。ゲーム後半になると出撃メンバーも余ってくるので,誰を育てるかが悩みどころなのだが,このあたりはプレーヤーの好みで決めてかまわない。誰をどう育てても行き詰まるようなことはなく,それなりに戦える。
ただ,戦闘に関しては,敵を全滅させる単純な殲滅戦が多いのが,少々気になった。欲を言えば,砦で味方の増援が来るまで耐えろ,とか画面の奥にいるキャラクターを救出せよ,みたいな特殊なマップがもう少し欲しかったところだ。
以上,システムの概要を説明したわけだが,本作の根っこはシンプルなターンベースのストラテジーゲームである。ただ,そこにRPG要素が付加されることで,プレイの幅は広がっている。例えば,一度クリアしたマップには何度でも再挑戦できて,経験値やお金を稼ぐのに使える。また,各キャラが所持する"秘石"によってステータス成長が変わるし,SHOPで買った本や魔法書で,特殊なスキルや魔法を覚えたりもできる。基本はシンプルながら,やり込む人にはそれなりに試行錯誤できる内容になっているわけだ。
デモシーンでは合間,合間にこんな感じの絵が入ったりする。ええい,もっとネコミミを出さぬか! | これが各ユニットの能力。装備する秘石によって成長内容が変わるが,筆者は最後まで初期設定どおりだった | 赤いポイントへ移動するとイベント(戦闘)発生。このマップシーンで買い物をしたりセーブしたりする |
一度に出撃できる指揮官ユニットは6人までで,ゲーム後半になると,誰を育てるか迷う。無論筆者はネコミミ優先だ | 出撃する指揮官ユニットには,配下(味方になった敵ユニットなど)を一人だけ付けられる。つまり味方は最大で12ユニットになる | 配下にしたドラゴンはメチャ強いが,図体がでかいので結構ジャマだったり。狭い屋内戦闘では出せなかったりもする |
■ボリュームはやや少なめで,早く終わるのが残念
戦場は屋内,野外とさまざまなマップがある。戦闘画面は拡大,縮小や左右回転など任意に動かせるので,グリグリ動かして見やすい位置で観戦しよう |
筆者の環境では不具合もなく,スムースにラストまで遊べたが,発売後に大きめのバグが見つかったらしいので,心配なら公式サイトをチェックしておくとよいだろう。不具合の発表や修正パッチ,サポート掲示板等もマメに更新されており,頑張ってる感じが伝わってきて,ちょっと好感触だった。こういった安心感も国産ゲームの強みだ。
ラストまで遊んでみて,筆者が楽しいと感じたのはユニットの育成及び編成(装備品・魔法・スキルの選定)と敵の捕獲だ。強敵だったドラゴン系が配下になったときは思わずガッツポーズが出たし,弱かったネコミミキャラがスキルや装備品で最強状態になったときは,我が娘の成長のように嬉しかった。また,とくに強調しておきたいのだが,このゲーム,なにげにBGMが良いのである。アコースティックギター調の神秘的な曲,オーケストラ調の華やかな曲,ポップでノリの良い曲など,さまざまなBGMが用意されているが,どれも大いにプレイを盛り上げてくれた。
なんだかんだで普段は"PCゲームといえば洋ゲー"と思っている筆者ゆえ,正直なところ,その外見から「うーん,ギャルゲーなのかー,中身はどうなの?」みたいな偏見の混じった目で本作を見ていた。まことに申し訳ない次第である。しかし実際に遊んでみると,PCゲームとしてなかなかよく出来た作品であり,十分に楽しめた。というかもっと端的に言うと,ハマったあげく数日でクリアして,物足りないからと前作もやりたくなる始末であった。
そういえば,「ファイアーエムブレム」も,第一印象から期待しないで遊んだら大ハマリした覚えが……。やはりゲームは遊んでみるまで分からないことを再認識した次第である。
スキルや魔法はお店で本を購入して覚える。中にはかなり強力なスキルも。お金を貯めてユニット強化しよう | 攻撃前に命中率や予想ダメージが画面右上に表示される。一斉攻撃を選べば,味方ユニットが援護してくれる | 進行ルートには本編と関係ないわき道なんかもある。強力なアイテムやお金を稼ぐために,寄り道も悪くない |
大半が真正面から戦うマップだが,中にはお姫様と女レンジャーを出口へ逃がせ,みたいなマップもある | シナリオは途中で順番を選べるが,どちらから始めてもよい。後でプレイするほうが配下が増えているぶん有利 | ゲームをクリアすると出現する闘技場。巨大カニやクラゲなど結構強く,ナメてかかるとこっぴどくやられる |