― レビュー ―
白銀の極北の地にて再び潜入工作
オーロラウォッチング:サリバンリターンズ
日本語版
Text by デイビー日高
2005年3月29日

 

■力押しもOKなスニーク系アクション

 

ポーランド生まれのスニークアクション「オーロラウォッチング:サリバンリターズ」。画面は,背後から忍び寄って殺害,兵士の使っていたコンピュータをハッキングして情報を収集しようとしているところ
 ライブドアから発売された「オーロラウォッチング 日本語版」は,ポーランドのMetropolis Softwareが開発したアクションゲーム。"ポーランド" "Metropolis"と聞けばピンとくる人もいると思うが,本作はメディアクエストから発売中の「ゴーキー ゼロ」の続編である。
 オーロラウォッチングは米国での発売日が未定で,ヨーロッパ各国での発売もドイツ(3月17日),イタリア(3月18日)と,3月11日に発売を迎えた日本よりも遅い。実は日本が最初の発売国となっているという,ちょっぴり珍しい海外タイトルでもあるのだ。
 本作の特徴は,「スニークアクションのスリル」と「FPSのハデさ」を併せ持っている点だ。マゾヒスティックなまでに耐え忍ぶほどでもないが,正面切って突撃ばかりしていてもダメ。スニークアクションに興味はあるけど,既存のタイトルは難度が高すぎて……という人に,もってこいの内容だ。

 プレイヤーが操作する主人公は,前作と同じNATO情報局特殊部隊員のコール・サリバン中佐。今回はロシアが開発したという不沈潜水艦と,それが引き起こした事故の調査,そして潜水艦を開発した科学者の抹殺のため,極寒の地へと単独で赴くのである。ちなみに続編物とはいっても,ストーリー的に直接の繋がりはない。前作でもロシアの軍事基地に潜入したのね,ぐらい認識しておけばいいだろう。
 このサリバン中佐という人は,少しヒールっぽさが入った人物。二日酔いで極秘任務に出動し,上官に対する口の利き方はかなり横柄という男だ。今どきマジメなヒーローなんて流行らないわけで,珍しくないといえば珍しくないけど。

 また,物語の時代設定は現在より少々先のようで,近未来的な要素がいくつか登場する。なかには不気味な兵器も登場するのだが,ここらへんはネタバレになってしまうのであまり詳しくは書かないことにしよう。舞台となる軍事施設で何が行われているのかは,ぜひとも自分の目で確かめてみてほしい。

 

主人公のコール・サリバン中佐。ゲームの時代設定は少し先なので,近未来のハイテク装備で身を固めている 通常のゲーム画面は三人称視点。左上は,敵の所在とその向きを確認できるレーダー画面だ スノーモービルに乗って走る,アクション要素の強い場面も。制限時間があるので少々焦る

どうやら,この施設では怪しい実験が行われているらしい。チューブ内の人型の生き物はいったい…… お色気とは無縁と思っていたら,中盤にヒロインが登場。敵の一人として登場し,主人公を捕えるが…… プレイヤーキャラクターがヒロインに交代する場面も。物語に大きく関わるので,彼女が何者かは秘密だ

 

 

■敵地で隠密活動するためのアクション


 システム面での大きな特徴は,通常の三人称視点に加え,斜め上方からの見下ろし型の視点も選べるという点。三人称視点はいたって普通だが,見下ろし型の視点は物陰や建物の中も狭い範囲ながら確認できて便利だ。さらに,敵兵の位置や向き,生死などを確認できるレーダーも用意されている。これと上方視点を組み合わせると,かなり敵の動静をつかみやすくなる。

 ここらへんは,硬派なスニークアクションを欲している人にとっては,物足りなく感じるかもしれない。しかし難度をハードにしてみると,レーダー画面に敵兵の姿がいっさい映らなくなり,敵兵がこちらの気配を察知する能力も格段に高くなる。さらに敵兵のタフさも格段にアップし,何か異常があればすぐさま警報が鳴って仲間が駆けつけてくるなど,別のゲームのようになる。ギリギリの緊張感もたんまりと味える,決して甘くないゲームになるのだ。

 ステージも,バラエティに富んだ構成になっている。一般的なステージは,敵兵から隠れつつ,もしくは殺害しつつ敵地に潜入し,目的の情報を入手したり目標地点へ移動したりといった内容だ。
 この流れに緩急をつける形で,趣の異なるステージが挟み込まれる。時間制限があるもの,乗り物を操縦するアクション性が高いもの,主人公に代わってヒロインを操作するもの,トラップだらけで反射神経と判断力を必要とするもの,といった具合だ。
 スニーク一辺倒ではなく,アクション要素の強いステージがあるあたりも,個人的にはメリハリがあっていいと思う。

 

上方からの視点。正面の部屋の間取りが分かる。右上に見える換気ダクトへの入口は,隠密行動に重要だ 換気ダクトのトビラをクリックすると,中へ入れる。敵を避けて移動できるので便利だし,安全地帯でもある 敵を欺いたり,ブービートラップを仕掛けるためのアイテムが多数ある。それらを活用するのもまた楽しい

写真は,音を出して敵を引きつけるリモート式の信号装置を使ったところ。敵兵を釣り出すのに成功した ハードレベルでプレイする場合は,銃器の使用は極力控えたい。背後から忍び寄ってナイフでザックリ 移動するときは,速度を犠牲にしてでも屈んだ姿勢の抜き足で。ちなみに,画面はトレーニングモード

 


■ハンドガンが一番? ヘッドショットで一撃必殺!


 続いては,武器について触れていこう。使用可能な武器は,ナイフに始まって,ハンドガン,サブマシンガン,ショットガン,スナイパーライフルの5種類がある。ちなみに,とくに実在する武器がモデルというわけではないようだ。
 使い勝手はというと,個人的にはハンドガンが一番だった。ゲームの性格上,敵兵を排除するには,背後などから頭部を撃ち抜いて即死させるのが最も安全な方法である。それを行うためには,静穏性に優れて正確な射撃を行える,本作独特のハンドガンが一番というわけ。なので,敵の背後など死角へ抜き足差し足で回り込んでは,バスッと一発。これを繰り返していると,徐々に気持ち良くなってくる。コッソリ殺害していく楽しさ,こんな楽しみ方は,スニーク・アクション本来のものとは違うかもしれないが……。

 それ以外の武器はどうかというと,それぞれ短所があって,どうも使い勝手が悪い。まずサブマシンガンだが,装弾数が18発と少ないうえに威力がイマイチ。強い反動で照準がブレるので胴を狙うことになるため,なかなか敵を倒せないのだ。一発で倒せないから撃ち合いとなり,こちらもダメージを受けてしまうのである。
 そのほかの二つは威力こそ十分だが,やはり欠点がある。ショットガンは次弾発射までに少し間が開くので,初弾を外すとかなり痛い。スナイパーライフルは,弾丸があまり手に入らないので,そうそう使えない。よって,ハンドガンが一番使いやすいとなるのだ。ここらへんは,おそらくFPSのような乱射乱撃による力押しをやりにくくするためなのだろう。
 ちなみにナイフはというと,スニーク的に遊びやすくするための狙いと思われるが,かなり強力。敵兵の背後をとれれば,首を掻き切って最も音を立てずに殺害できる。ナイフ1本で,ぜひ敵を全滅させてみたいものである。

 また直接的な武器ではないが,敵を誘い出すのに使うものとブービートラップ系,2系統のアイテムが多数用意されている。前者はリモート式信号装置や回転式(転がす)信号装置などで,音を発して敵の見張りを誘い出し,その背後を突いて殺害するか,監視の網をくぐり抜けて潜入するのに使う。後者は,モーションセンサー付き爆弾やリモート式神経ガスなどで,敵をまとめて吹っ飛ばしたり,眠らせたりできる。こうしたアイテムが見事決まると,かなり気持ちいい。

 最後に全体的な感想を述べると,ハンドガンの使い勝手が良すぎるのがどうかという点を除けば,個人的にはなかなか楽しめた。あまりハードなスニークアクションは苦手なので,このぐらいが一番遊びやすいというのが個人的な本音だ。なので,筆者と同じようにスニークアクションを敬遠している人は,ぜひ検討してもらいたい。

 

部屋を覗き込んで,敵兵めがけてヘッドショット! 攻撃するときは頭部を狙おう 角を曲がった先に敵兵がいる場合は,Shift+A/Dキーで覗き込んでみよう 覗き込んで敵の様子をうかがった後,実際に体をさらして射撃。すぐ隠れよう

殺害した敵兵をボディチェック。貴重な弾薬や回復用アイテムを確保できる ハードレベルで,敵を殺害したときは,死体を隠すことを忘れないように 使用場所は限られるが,スナイパーライフルもある。ここぞというときを選んで使おう

 

タイトル オーロラウォッチング:サリバンリターンズ 日本語版
開発元 Metropolis Software 発売元 ライブドア
発売日 2005/03/11 価格 7329円(税込)
 
動作環境 OS:Windows Me/2000/XP,CPU:Pentium III/1GHz以上[Pentium 4/1.70GHz以上推奨],メインメモリ:128MB以上[512MB以上推奨],グラフィックスメモリ:32MB以上[64MB以上推奨],HDD空き容量:800MB以上

Aurora Watching (c) Metropolis Software 2004-2005. Karma is registered trademark of Criterion Software Limited. Portions of this software are copyright 1998-2003 Criterion Software Ltd. And it’s Licensors. Distributed in Japan by livedoor Co., Ltd. All rights reserved.