― レビュー ―
美しい海中を舞台にした潜水艇バトルシューティング
アクアノックス2 日本語版
AquaNox 2: Revelation
Text by 三須隆弘
2005年1月17日

 

■暗く美しい海中を舞台にした潜水艦アクション

 

水中の表現や雰囲気など,グラフィックスは素晴らしい。スクリーンショットを撮ると実際より暗くなるため,少々明るく加工してある

 「アクアノックス2 日本語版」は,戦争や自然環境の変化により地上を追われ,人類がその生活圏を完全に海底へと移した27世紀を舞台に,ハイテク潜水艇を操縦してさまざまなミッションをこなしていく3Dシューティングだ。潜水艇の操縦といっても,フライトシミュレータのような煩雑な操作は不要で,どちらかというとFPSに近くアクションゲーム感覚で動かせる。古参のPCゲーマーなら,メックウォーリアやウィングコマンダーで自機が潜水艇になったようなゲーム,といえば分かりやすいだろうか。
 英語版の「AquaNox 2: Revelation」は海外で約1年前に発売されており,これをキャラクターのボイス以外,ほぼ日本語化したのが本作である。ローカライズの出来については,メニュー画面やアイテム名,マップの地名に戦闘中のヘッドアップディスプレイ表示と,細かい部分までキチンと日本語化されており,かなり頑張っているなぁという印象。
 ただし会話パートについては,少々荒削りというか直訳っぽい感じで,唐突かつ意味不明な会話も多かったが,これは元々の内容が舞台役者のセリフのように芝居がかっていて,まわりくどい比喩や変なたとえを多用したり,謎めいた含みを持たせたりしているためだろうか。
 ちなみに1作めの「AquaNox」は2年以上前に出ているが,ストーリー的なつながりはないため,本作から遊んでもまったく問題ない。

 最初に心を捉えられたのは,何よりゲーム画面だ。海底の起伏に富んだ地形,そこに差し込む水面からの光や水の揺らぎ,迫力ある海底の巨大建築物や大型艦船など,"神秘的な水中"が持つ独特の雰囲気,美しさをうまく描画している。  実際,本作のグラフィックスエンジンはベンチマークやデモに使われたくらいで(※「AquaMarkシリーズ」),それもあって最初はPCに求められる性能もかなりキツイかなと思っていたが,実際は思っていたほど重くなく,最近のPCならほぼストレスなく動作するだろう。何せ筆者の場合,Pentium4/2.0GHzにRADEON9600XT,メモリ512MBという数世代前の環境だが,こんな古めの構成でも最高画質でスムーズに遊べて,ちょっと驚いた。このあたりが最高画質で遊ぶギリギリかとも思われる。

 

世界各国の海底シティや,自分達の大型輸送艦を拠点に話は進む。進行はアイコンをクリックしていくだけだ 洋ゲーらしくない,日本製ゲームのようなデザインの会話パート。ちょっとぎこちない印象で直訳っぽい ゲーム中の通信メッセージや刻々と変化する目標(ミッション)など,ほぼ完全に日本語化。英語は音声のみだ

 

パーツが買えるのは街のみ。修理キットなどを早めに買っておくと,その後の展開がかなりラクになる 襲ってきた敵を撃退したり,味方を護衛したりと,ミッション内容は多彩。仲間とのレースなんてミッションもある 自分より速い潜水艇に乗っている相手にEMP(電子系)攻撃を仕掛け,一時的にマヒさせて追い抜く

 

 

■カスタマイズ次第で潜水艦の性能は大きく変わる


潜水艇はゲームを進行させていくと最終的に4タイプ選択できる。それぞれ機動性や装甲,搭載オプションの数が違い,戦い方も変わる

 ゲーム(キャンペーン)の進行は,輸送艦ハーベスターや寄港した海底シティなど,拠点となる場所での情報収集から始まる。キャラクター達と会話を進めているうちに新ミッションが出現するので,それからシティで購入したり,以前のミッション遂行中に手に入れた装備品で自機をカスタマイズし,次のミッションに合った武装編成をして出撃。これを繰り返して進めていくわけだ。

 序盤ではそうでもないが,ゲームを進めていくと選択できる潜水艇や武装,オプションも増え,自機のカスタマイズが俄然楽しくなってくる。重装甲の船に守備系のオプションでガチガチに固めて正面バトルするか,高速艇にスナイパーライフルと強力魚雷を搭載してヒットアンドアウェイでいくか,といったプレイの自由度も高く,このあたりが本作で一番楽しい部分だ。

 プレイヤーが選べる潜水艇は最終的に4タイプだが,これに取り付ける武装や魚雷,オプションパーツの種類が多く,それらの組み合わせによってかなり好き勝手に俺流カスタマイズができる。
 武器にしても,連射できて命中率の高いマシンガン系,弾速とリロードは遅いが一撃必殺のキャノン砲系,物理ダメージや電子機器へダメージを与えるエネルギー兵器系,追尾弾系など,バリエーションは豊富。同じミッションでも潜水艇や武装,オプションパーツを変えれば攻略法や難度も変化するため,難しいミッションを何度も再挑戦するハメになっても,この試行錯誤に苦痛はなく,むしろ楽しかったりもする。

 キャンペーンに難度選択みたいなものはなく,各ミッションの難度は総じてやや高めという感じ。ミッション内容は多岐に渡り,偵察,護衛,強襲,捕獲,狙撃,レースにボス戦と,さまざまなシチュエーションが用意されていた。FPSやフライトシム系に自信がある人でも,ところどころのミッションに手こずるだろう。
 例えば,一度に3機のエリートパイロットを相手にしつつ,自分の母艦に向けて四方から撃たれた巨大魚雷を迎撃するミッションや,爆撃艦の攻撃から施設を守りながら,多数の戦闘艦と戦わなければならないミッションなど,キツいシーンはそれこそ何度も再挑戦させられることになる。途中セーブはできないので,敵の配置,出現パターンや効果的な武装,戦い方を見つけるまで試行錯誤が必要で,「難しいけど繰り返し挑戦すると光明が見えてくる」という難度調整。このあたりのバランスは筆者好みで,とても満足できた。
 ちなみに一度クリアしたミッションは,タイトル画面から"インスタント"を選べば何度でも遊べる。総ミッション数は50以上あり,シングルプレイしかない本作ではあるが,遊び応えは十分といえるだろう。

 

遅い火炎弾を発射するドゥームモーターという武器。破壊力は高いが弾速の遅さゆえ接近しないと当てにくい このスティングレイという武器は,地表に着弾するとものすごい威力の火炎が広がる。対地攻撃用の兵器だ スナイパーライフルでズームしたシーン。威力は弱いが,装甲の薄いコックピットに当たれば一撃で沈められる

 

EMP砲は電子ダメージ専門で,物理的なダメージは与えられない。装甲の厚い爆撃艇などに効果的な武器だ 敵の爆撃艇を拿捕するミッション。EMP砲である程度ダメージを与えるとミッション完了。爆撃艇が自分のモノに クロウラーと呼ばれる敵陣営の基地へ侵入する。敵の高速偵察艇に搭乗しており,よく見るとコックピットも違う

 


■シングルプレイは充実しているがマルチはなし


大艦隊の護衛ミッション。実はこの艦隊,乗っているのが一般人で戦闘力は皆無だ。戦闘になったら敵を引き付けないといけない

 シングルのみのゲームとなると,システム面以外で気になるのはストーリー展開。ここでざっと紹介しておくと,ゲームの冒頭で謎の集団に自分の船を拿捕された主人公は,その集団と共に地表時代の伝説の財宝探しに巻き込まれる。世界各国の水域を旅して,さまざまな陣営の揉め事に首を突っ込みつつ,依頼された仕事をこなし金を稼ぎながら,伝説の財宝へと近づいていく。
 ゲーム中盤あたりになると,裏切りやら男女関係やら過去の因縁やらでお話的にも大盛り上がり。あまり書くとネタバレになるので避けるが,ヒロインがいきなり大変なことになったり,裏切りそうだなぁとか思ってた親父が実はアレしたりと,結構アツイ展開になってくる。ゲーム性のみならずストーリーにも序盤,中盤,終盤でメリハリがあり,このおかげで飽きずに最後までプレイできた。

 このゲームで唯一残念だったのが,やはりマルチプレイをサポートしていない点だ。これはネットマルチ標準搭載が当たり前となっている今のどきのPCゲームとしては,ちょっと寂しい。
 マルチを付け加えるなら,プレイヤーが選択できる潜水艇が現状の4種類では少ないので,シングルプレイに登場する大型艦等も選択できるようにしたり,COOPなんかも欲しいところだ。もっとも,簡単なデスマッチやチーム戦を搭載していただけでは飽きるのも早そうなので,ばっさりマルチを切った判断は正解なのかもしれないが。

 やや突き放しぎみな難度や各ミッションのプレイ自由度など,ひさびさに洋ゲーらしいというかPCゲームの王道という感じで,Windows95時代に死ぬほどハマって遊びまくっていた名作,「MECHWARRIOR2」を思い出させてくれた。最初のとっつきこそイマイチだったものの,遊んでみるとなかなかハマる良作であった。

 

自分たちの母艦,ハーベスターが敵集団に襲われた。複数の味方潜水艇も出撃し,激しい戦闘状態となる ヒットマンは破壊力と連射性のバランスの良い武器。戦闘はポジションも考えて撃たないと味方に弾が当たる 潜水艇の耐久力は正面,側面,後方で装甲が設定されているが,コックピットに当たれば一撃で撃沈されることも

 

コックピット視点のほか,三人称視点もある。写真はレーザートラップを抜けるため後方へ視点を調整したところ 男が女言葉だったり,ゲーム中は妙な文章も多い。原文が変なのか,翻訳をあわててしまったのか…… この手のゲームは操縦桿型のジョイスティックで遊ぶと,雰囲気が盛り上がる。かなり細かい操作設定も可能だ

 

タイトル アクアノックス2 日本語版
開発元 Massive Development 発売元 ライブドア
発売日 2004/12/17 価格 6279円(税込)
 
動作環境 Windows Me/2000/XP(XP推奨),CPU PentiumまたはAthlon/750MHz以上(PentiumまたはAthlon/1GHz以上推奨),メモリ 256MB以上(512MB以上推奨),空きHDD容量 2GB以上,VRAM 32MB以上(128MB以上推奨),DirectX 9.0以降

Copyright 2003 Massive Development GmbH. Published by JoWooD Productions Software AG. Technologiepark 4a, 8786 Rottenmann, Austria. Distributed by livedoor Co., Ltd. All rights reserved.