Dungeon Siege日本語β版

●Preview#39
The Sum of All Fears β版

Text by Gueed

 「The Sum of All Fears」(以下,SoAF)は,ミリタリーアクションと呼ばれるジャンルにおいて,次々とヒット作を世に送り続けるRed Storm Entertainment(以下,RSE)の最新作。FPSに近い操作体系を持ちながらも,グラフィックス,兵器デザイン,そして限りなく現実に近いシナリオにおいて他作品の追随を許さないのは,ほかでもなく,同社を設立した総責任者にして世界的に有名な軍事小説作家トム・クランシーに負うところが大きいだろう。トム・クランシーの詳細なプロフィールについては割愛するが,「レッドオクトーバーを追え」「今そこにある危機」の原作者だといえば,誰しも一度は耳にしたことがあるだろうし,彼がいかに偉大な人物か想像がつくハズだ。
 同氏の原作小説を元にゲーム化された作品は,「レインボーシックス」「ローグスピア」(レインボーシックスシリーズ。以下,RS)「ゴーストリコン」(トム・クランシーシリーズ。以下,GR)などが有名。任務遂行のための計画立案部の"プランニングフェーズ"を重要視するRSに対して,プランニングフェーズを簡略化し,任務遂行部分にあたる"アクションフェーズ"に重きを置いているのが,GRといったカンジだ(RSEが次々と新作をリリースするため,新参のプレイヤーだと少し混乱するかもしれないが,とりあえずこの辺は押さえておきたい)。ゲーム性の違いからか,両作のプレイヤー層は若干異なり,どちらかというとRSは玄人向けに,GRは,ライトゲーマーにも"とっつき易さ"を提供する作品として住み分けているようだ。
 また,ゲーム性だけでなく,両者は使用しているグラフィックスエンジンはまったく別モノ。RSより後にリリースされたGRは,メインフィールドを屋外に移したこともあってか,より写実的な描画能力を持ったグラフィックスエンジンが採用されている。両者の細かい差異を知るには,それぞれのデモ版をプレイしてみるのが手っ取り早いだろう(RSは「こちら」,GRは「こちら」から体験してみてほしい。GRのレビューは「こちら」だ)。

 なお,この両作は,いずれもユービーアイソフト(米Ubi Softの日本法人)から日本国内向けに販売されており,日本語マニュアル付英語版の発売を経て,現在ではローカライズ処理を施した完全日本語版のプレイが可能になっている。


■新シリーズの登場か?

 と,凄まじく長い前置きになったが,SoAFのハナシをば。
 「The Sum of All Fears」は,やはりトム・クランシーの原作小説を元にゲーム化されたタイトル。このSoAF,実は米国で映画化が決定しており2002年5月31日から全米で上映される予定とのことだ(余談だが,主演は,ご存知「アルマゲドン」や「パールハーバー」で,一躍ハリウッドのスターダムにのし上がったベン・アフレックである)。
 ゲームにおいて,プレイヤーはFBIのエリート人質救出員に扮し,アメリカ政府の転覆を計る陰謀を追うミッションに配置される。そして,ウェストバージニア州や中東,南アフリカなどの各地で,人質救出や機密情報の入手などの任務を遂行することになる――というのが,"ゲーム版"SoAFのストーリーラインだ(原作,映画とは微妙に異なる部分もあると思うが)。

 今回,SoAFのβロムの入手に成功。まだまだ新作が後に控えるRSEのゲームラインアップで,本作がどういった位置付けになるのか,また,RSやGRと比べて,ゲーム性にどのような違いがあるのかなどを念頭におきつつ,プレイしてみた。


■GRからの変更点(1)プランニングフェーズ編

 さて,冒頭のうっとうしいほど長い前置きにはワケがある。というのもこの作品,グラフィックスエンジンからシステムまでが,すべてゴーストリコンをベースに構築されているのだ。

 メインメニューやオプション設定画面などインタフェースは,ほぼGRのソレと同様。アクションフェーズへ移る前に大きく変更された点は,"BRIEFING"にあたる画面だ。GRやRSにおいて,プランニングフェーズは以下のように進行する。

RS(6ステップ):ブリーフィング→情報収集→隊員の選出→各隊員の装備品の選択→チーム編成→プランニング
GR(3ステップ):ブリーフィング→隊員の選出(同時にチーム編成)→各隊員の装備品の選択


 ところが,SoAFでは,BRIEFINGやOBJECTIVEも一画面にまとめられ,隊員選択もチーム編成画面も省略されているのだ。
 キャンペーンモードやクイックミッションモードでは,あらかじめ用意されたメンバーから3人が1チームとして自動的に選出され,プレイヤーは,その中の一人をメインに,チームを操作して(チーム内での切り替えは可能),アクションフェーズに臨むことになる。したがって,個々の隊員には個性付けがなされておらず,名前だけが異なるといった具合だ(ちなみに,GRやRSでは,個々の隊員がステルス性や特殊技能などを持ち合わせており,ミッションに適した人員を選出するという概念があった)。
 ただ,隊員が装備するキットだけは選択できるようになっており(これも簡素化されているのだが),スナイパー用,攻撃用,偵察用などの武器セットを,3人に分配するといった方法が採用されている。そしてこの装備キットは,ミッションをクリアしていくことで,"CQB用(Close Quater Battle,近接戦戦闘用の意)のXXが使用可能になる"といった具合に,徐々に追加されていくのだ。
 RSと比べてプランニングフェーズをかなり簡略化されたGRだが,SoAFではさらに輪をかけた大胆な簡略化がなされているといえよう。


■GRからの変更点(2)アクションフェーズ編

 アクションフェーズにおいても,SoAFではGRのベースシステムにかなりの変更が加わっている。
 まずはパッと見,画面内で目を引くのは,画面の下段中央に位置するミニマップだ。RSではお馴染みミニマップだが,画面のレイアウトをシンプルにまとめるためか,GRでは省略されていた。代わりに,Shiftキーを押すことで全体マップを見られたが……,これが結構クセ者だった。マップを見ている間,キャラクターの動作が止まってしまうのだ(リアルといえばリアルだが,かなりストレスが溜まるのは想像がつくだろう)。SoAFで復活した(?)ミニマップによって,キャラクターの移動や偵察動作がスムーズに進行するため,ゲーム全体のテンポがグッと速くなった(軽くなった?)印象を受けた。
 拡大/縮小が可能なミニマップには,自陣営/敵陣営(Heartbeat Sensor使用時のみ)の兵士,そして各ミッション毎に四つ用意してあるオブジェクティブ達成のための最短経路が表示される。RSでは,プランニングフェーズにてあらかじめ各チームの進入経路を設定しておく必要があったが,SoAFではデフォルトで経路が表示されているのだ。もちろんゲームオプションによって達成経路表示のOn/Offが切り替え可能だが,このあたり,初心者にやさしいというかなんというか……。
 なお,画面上に表示される情報は,そのミニマップを含めて,合計三つのパネルにすっきりとまとめられている。左側には,隊員の状態や隊員への指示を表示するパネル,中央にミニマップ,そして右側に装備品と射撃レート,残り弾数の表示パネルといった配置だ。

 舞台となる戦場は主に屋内で,GRでは少ないシチュエーションであるCQBが存分に楽しめるようになっている(この辺は,RSライク)。また,高速で移動しつつの速やかな任務遂行が求められる対テロリスト作戦を主題にしているためか,SoAFではホフク動作も省略されており,立ち状態としゃがみ状態のみがサポートされているようだ。

 気になるグラフィックスだが,そこはGRから流用したグラフィックスエンジンのこと,美しさは保証付きといったカンジ。室内灯や,マズルフラッシュなどのパーティクル処理は相変わらず美しく,室内を装飾する絵画や花瓶,家具などのオブジェクトも興を損なわない程度に再現しているといえるだろう。


 ところで,シングルプレイのキャンペーンモードを進めていくうちに気になったのが,敵兵士のAIについて。広々とした屋外での戦闘をメインに据えるGRのAIを流用しているためか,プレイヤーの行動に対する敵兵士の初期反応がやや"ニブい"と感じた。CQBがメインとなるSoAFでは,常に敵兵士とドア越し,または壁越しになるシュチュエーションが多く,Heartbeat Sensorなどで敵の位置を補足しながら歩を進めることになる。敵の位置を確認しつつ,ドアを開けて中へ! ……そのような状況でも,敵兵士は仲間と閑談していたり,ソッポを向いてあたりを警戒していたりするのだ(その間0.x秒の世界ではあるが……)。そのAIのニブさが,このゲーム全体の難度を下げてしまっているような気がしないでもない。
 ただ,CQBならではの緊張感はバツグンで,ドア越しに銃撃戦を繰り広げている間に,反対側のドアから別動隊が突入して挟み撃ち! なんていうシチュエーションもあり,すべてAIで処理される自陣営兵士との偶発的な(?)コンビプレイは,なかなか面白い。RS並のスピードでサクサクとミッションがこなせるので,アクションフェーズワンプレイあたりの時間が短くて済むのも好感が持てる。

 キャンペーンモードを中心に紹介してきたが,SoAFのクイックミッションモードには,「ローグスピア:ブラックソーン」で追加された新モード"LONE WOLF"(1対nでの戦闘モード)も用意されていた。マルチプレイモードでは,「ゴーストリコン:デザートシージ」で新たに加わった"Domination"(ドミネーション)までがサポートされており,Heartbeat SensorやFlashbangを使用した,GR以上に充実したチームベースのマルチプレイが楽しめそうだ。


■さて,どういった路線で進むのか――

 プランニング/アクションフェーズに分けてザッとお伝えしてみたが,いかがだっただろうか。
 RSEは,この後レインボーシックスシリーズの最新作「Rainbow Six:Raven Shield」(以下,R6RS)の発売を控えている。正直「SoAFはR6RSまでのつなぎなんじゃないの?」などと勘ぐってしまうのはいた仕方ないところだろう。また,RSやGRでは,それぞれ「Rainbow Six」「The Ghost」なるエリート特殊部隊の活躍を描いたもの。具体的なタイトル名を持つSoAFには続編は出しにくいのではないかとまで思う。

 SoAFをプレイした感覚を一言で表すのであれば「GRとRSのイイとこ取り」である。GRからは優れたグラフィックスエンジンを,RSからはCQBの緊張感と対テロリスト任務の臨場感を持ち寄って作られた本作は,RSユーザー,GRユーザーのどちらからも支持を得る可能性を秘めている(言い方を変えれば,逆の可能性も秘めているわけだが……)。また,プレイ自体の難度を考えると,GRよりもさらに初心者に間口を広げた作品ともいえるだろう。

 このタイトルが新シリーズとして,RSEの2枚看板に加わることになるのか――,はたまた,単発のタイトルとなるのか――。とりあえず,製品版のリリースを待とう。





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