― プレビュー ―
生活感あふれる新感覚MMORPG
マビノギ
Text by キーオ林
2005年2月10日

 

■キャラが文字通り"成長"していくRPG

 

キャラの容姿は髪型,目や口などの形,髪や瞳の色などを選択することで決定する。まだ使えないパーツもあったが,かなり細かく作り込める
  1月27日からクローズドβテストが開始された,ネクソンジャパンの「マビノギ」。3000名という,MMORPGのテスターとしては少人数の募集であったことも手伝って,クローズドβ参加の競争率はなんと15倍にも上ったという。
 もとより注目度が高かったこの作品,実際プレイしてみてどういった感じだったのか,感想などを交えながら紹介していくことにしよう。

 マビノギは3DタイプのMMORPGで,古代ケルト人の神話などをベースにした"エリン"と呼ばれるファンタジー世界が舞台。キャラクターはトゥーンレンダリングによって描画されており,3Dでありながらコミック,アニメ調の柔らかい絵柄だ。表情もデフォルメが効いていて,感情豊かである。

 プレイヤーは最初に自分のキャラを作成するが,現状では選択できる種族が人間しかないようだ。これはクローズドβだからといった制限ではなく,正式サービスが開始されている韓国でも変わらない。どういった特性を持つ種族が増えていくのかはまだ不明で,開発が進んでいくのを心待ちにするしかない状態だ。

 まず最初に名前や容姿,男女の別などをチョイスしていくのは,ほかのMMORPGでも当たり前のことだが,マビノギではさらに10〜17歳の間でキャラの年齢も決められる。
 そうして作成されたキャラクターは,接続時間の長短に関係なく,リアル時間での1週間ごとに1歳ずつ年をとっていく。年をとればキャラの体格も変わっていくのだが(22歳で体の成長は止まるらしいが),実際に10歳のキャラクターと成年に達したキャラクターを見比べると,かなり違うことがわかるだろう。
 こうして年をとるたびに,キャラにはスキルをレベルアップさせたり身につけたりするためのAP(アビリティポイント)が与えられる。このAPは年を取るとき以外にも,ゲーム内のさまざまな場面で得られる。
 ゲーム内での1日は,リアルタイムの35分に相当する。ゲーム内では週の概念もあり,曜日によってポーションの効きめが大きくなる,施設を利用するときの手数料が安くなるなど,多様な影響がある。

 敵との戦闘は,単純に敵を叩いていればOKというものではなく,アクション要素が強い。敵は戦闘中も激しく動き回り,キャラと同様にスキルを使用してきたりもする。戦闘中でも視点によっては敵が画面外に飛び出ていくこともあり,プレイヤー側にもフレキシブルな戦い方が求められる。
 戦闘にはコンボ攻撃や必殺技の要素もあり,敵を攻撃するタイミングや方法によって,結果は大きく異なってくる。だが,そうした戦闘が苦手なプレイヤーのために自動戦闘も選択できる。
 もちろん自動戦闘では,手動戦闘で本当に上手く戦ったときほど効果は高くない場合が多いものの,うまく自動と手動を切り替えていけば,かなり効率良く戦闘を進められる。

 敵を倒すと得られるお金やアイテムは,少なくともレベルの低いうちは,さほど良いものは出ないと思っていい。そもそも敵からお金やアイテムを得られること自体あまり多くはなく,戦いが終わっても経験値しか得られなかったということも珍しくはない。
 だが,このあたりの事情はNPCからクエストを"購入"することで大きく変わってくる。クエストは個人で行うものとパーティクエストがあるが,これらをクリアすることで個々の戦闘とは別にお金や経験値が得られるのだ。
 個人クエストにはモンスターのドロップアイテムを集めるもので,さほどの旨味はない感じを受けたが,パーティクエストは対象モンスターをパーティハントで一定量狩ることによって報酬が得られるといった内容で,これを達成することで得られるお金や経験値はかなり大きい。そういったことから,ゲーム内では知らない人同士でもパーティが組まれることが多く,仲間も作りやすいといった印象だ。

 それぞれのキャラには生命力(HP),マナ(MP)のほかにスタミナの値がある。スタミナは戦闘やスキル使用などのたびに減少し,0になったら攻撃できなくなるなど,行動に大きく制限がかかる。スタミナは自然回復するが,最大値が減っていく仕組みで,減った最大値をもとに戻すには食べ物を摂取しなければならない。HPだけに気を取られていると,戦闘のときにスタミナが足りなくなって,致命的な事態にもなりかねないので注意が必要だ。

 

ご覧の通り,年齢によってキャラの体格は大きく異なってくる。ゲーム内では年齢だけでなく,食べたものによって太ったり痩せたりすることもあり,本当にキャラの見た目はさまざま。見た目を気にして,ゲーム内でダイエットを敢行するプレイヤーなんかもいたりするのは,このゲームならでは

 

敵がディフェンスを選択していると見たら,それを無効にする"スマッシュ"で応戦。戦いの場では臨機応変さが求められるのである パーティクエストはキャラを大きく成長させるチャンス。条件が合う募集があったらぜひ参加しておこう。もちろん自分で募集するのもアリ アクションゲーム的要素が強く,敵からの攻撃を受けても怯んでいる暇はない。すぐさま次の行動を選択しないと一方的にやられてしまう

 

 

■随所で得られる"生活感"


戦闘も重要だが,そればかりを繰り返していてはマビノギを真に楽しんでいるとはいえない。"生活"に重きが置かれたRPGなのだ
 さまざまな部分でオリジナリティ溢れるマビノギだが,多くのMMORPGと異なる特徴として,生活感が随所に感じられる点が大きい。

 マビノギには多くのスキルが用意されており,NPCとの会話やアイテムの使用,学校で学ぶなど,さまざまな習得方法がある。スキルは"戦闘系スキル" "魔法系スキル" "生活系スキル"の三つに大別され,戦闘系と魔法系は敵とのバトルに使うものが主となっているが,生活系はほかと若干要素が異なっている。
 生活系スキルは主に生産に使用され,これらはアイテムを作り出すといった利用法のほかに,後述する"アルバイト"に必要な物もあり,HPやスタミナの回復が早くなる"キャンプファイア"を作るためのもの,楽器を演奏するために必要なものもある。

 通常,MMORPGのNPCはアイテムを売ってくれたり,クエストをキャラに与えたりといった役割を負うことになる。もちろんマビノギでもそういった面は変わらないが,それぞれのNPCがキャラに対する好感度を持っており,何度も話しかけたり,プレゼントを贈ったりすることで好感度を上げられる。
 また,NPCとの会話は一方通行ではなく,いくつかの話題を選択できる。NPCと会話を積み重ねることによって,話しかけるキーワードが増えていくこともある。NPCとの会話は,クエストを受けたり新しいスキルを覚えたりするのに欠かせないので,ほかのMMORPGよりも重要度が高いといってもいいだろう。
 また,特定のNPCからはアルバイトを受けられる。アルバイトの内容は,アイテムの配達や採集,生産など多岐に渡り,報酬もさまざまだ。
 アルバイトはそれぞれで開始時間と期限が定められており,モノによっては受けられる人数にも制限がある。(ゲーム内での)一日が経つと,また募集が開始されるのだが,人気のあるアルバイトには開始時間前から希望者が集まっているようだ。

 筆者がプレイしたチャンネルでは,夜になると先述したキャンプファイアが広場で焚かれ,そこに多くのプレイヤーキャラが集まるといった光景が日常的であった。
 キャンプファイアで何かを食べるときには,"キャンプシェアリング"が可能になる。これは食物の効果は50%になるが,その代わりにキャンプファイアに参加しているほかのキャラにも食べ物を分けられる機能で,そこから知らないプレイヤー同士で会話が交わされることも珍しくない。また,音楽のスキルを持ったキャラが楽器を演奏して,独特の雰囲気が出来上がる場所でもある。
 キャンプファイアでパーティクエストのメンバー募集が行われることも多いが,そのとき「明日はバイトした後,学校に行って戦闘について学ぶつもりだったけど,どうしようかなぁ……」といった迷いが生じたりすることもある。これはゲームのシステムが戦闘だけでなく,生活方面で充実しているといった証といえるのではなかろうか。

 

NPCとの会話はスキップしないで,ちゃんと読んでおこう。スキルを得るための重要なヒントが隠されていることもあるのだ "ヒーラーの家"でのバイトは人気があり,競争率が高い。気の早い人だと夜明け前から押し掛け,待っていたりするほどだ NPCによって,それぞれ好みのプレゼントが違う。うまく見極めてステキなプレゼントを贈れば,そのぶん好感度も高く上昇するのである

 

夜毎に焚かれるキャンプファイアに多くのプレイヤーが集う。心暖まるのは,決して炎のためだけじゃないはず。ここから交流が生まれるのだ 製粉を行って小麦粉などを作るにはNPCのアリサに風車を動かしてもらう必要がある。風車は誰かが動かせば,ほかの人も利用可能 強くなるためには,ただ戦うだけではなく,学校で授業を受けることも必要になる。授業を受けるためにはお金を払うのだ

 


■マビノギのみの画期的なシステム


前に入った人と同じアイテムを捧げると,同じダンジョンに入ることになってしまうので注意
 マビノギにはほかにも,特徴的なシステムが数多く搭載されている。

 ダンジョンに入るには,入り口にある女神の祭壇にアイテムを捧げなければならない。このときどのアイテムを捧げるかによって,ダンジョンの構成が変わってくる。まだ一番小さいダンジョンに何度か入っただけだが,奥にいるボスモンスターこそ同じなものの途中の敵は変わっており,マップ自体も変わっていた。これは"無限ダンジョンシステム"と名付けられたものだ。

 また,楽器で演奏する曲をプレイヤーが作曲できる"作曲システム"も,MMORPGで採用されるのは初だろう。発言しているキャラの方向にほかのキャラが顔を向ける"エモーショナルシステム"も,ゲーム内ではあまり目立つ印象はないが,画期的である。

 一方,キャラが戦闘に敗れたときには経験値が減少する,武器や防具の損傷に修理が必要といった点は,MMORPGとしては比較的オーソドックスといえるだろう。
 プレイヤーの目を引くため,何もかもを新しくするのではなく,新たなシステムをどこに導入するべきなのか,開発陣がきちんと見極めている印象がある。全体的に親しみやすい雰囲気作りがなされており,少しプレイを進めれば,すぐに溶け込めるだろう。

 以上,いろいろと急ぎ足で書き綴ってみたが,これから先もプレイを続ければ,まだまだ新しい魅力が発見できそうな,盛りだくさんのMMORPGなのだ。
 クロースドβテストは2月11日で終了してしまうが,3月中旬からはオープンβテストが開始される。ぜひ参加して,この新感覚のMMORPGを味わってみよう。

 

自キャラのタイトルは最初は選択肢が少ない。多くなってきたころに,キャラの特性に合ったタイトルを付けよう キャンプファイアスキルはダンジョン内でも役に立つ。APに余裕があったらぜひ覚えておきたい 雑貨屋で売られている洋服は,日によって色が異なっている。いい色が出るまで購入を控える人もいるらしい

 

アイテム採集のために,町の中の木や街灯を殴りまくる必要も出てきたり。このときも,もちろんスタミナが減るので,適度な休息が必要 楽器を購入して弾いてみる。ヘタで恥ずかしいから,練習場所に人のいない場所を探してみたりして……こういうところも妙に生活感が 薪を作ったり麦を刈ったり……戦闘以外でも何かと忙しく,まさに生活しているといった感じ。失敗することも多々あったりするしなぁ

 

タイトル マビノギ
開発元 Nexon devCAT studio 発売元 ネクソンジャパン
発売日 2005/04/26 価格 基本プレイ料金無料(アイテム課金)
 
動作環境 OS:Windows 98/Me/2000/XP,CPU:Pentium III/500MHz以上[Pentium 4/1.0GHz以上推奨],メインメモリ:128MB以上[512MB以上推奨],HDD空き容量:1GB以上

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