発表会で語られた,PC版「真・三國無双」のコンセプトとは
2004/09/13 20:55
 先ほど「こちら」で第一報としてお伝えした,ホテルオークラで行われた「真・三國無双BB」(仮称)におけるコーエーとソフトバンクBB,ビー・ビー・サーブの3社の業務提携の発表会。そこでは,同作における各社のスキームや,同作がオンラインゲーム市場の今後のビジネスモデルの新たな可能性を生み出せること,その目的などが語られた。

 記者会見は,まずコーエーの襟川恵子会長の挨拶から始まった。そこでは同社が古くからオンラインゲーム市場を見ていた(信長の野望Internetなど)ことや,本提携の経緯が語られた。印象的だったのは,"世界初となるオンラインアクションゲーム"の開発という部分を強調し,「本作が三国志という優れた素材と融合することで全世界で通用するコンテンツとしていきたい」としたところ。Diabloに始まる"MO"アクションRPGはいくつかのタイトルがあるが,世界初という部分を強調するならば,本作が"MMO"アクションになると見ていいだろう。
 次は,ソフトバンクグループ代表の孫 正義氏が,本提携の裏側には技術的な部分が大きいこと,本作のアクション性,爽快感を実現するための方法論を語った。アクションゲームの爽快感は,プレイヤーが思ったとおり(操作したとおり)にゲーム内キャラクターが動作することが大前提とし,そのためには画一された通信環境(待ち時間が約50ms以下)が必要となる。この通信環境を実現するには,基幹回線に子ISP,孫ISPの接続があってはならず(ディレイ予測が不可能),回線会社とISP会社は同一でさらに単独であることが望ましいと孫氏は語った。つまり,450万人のユーザを抱えるYahoo! BBが適しているため,今回の業務提携と独占配信という形態になったということだ。
 最後に,ビー・ビー・サーブの孫 泰蔵が,オンラインゲーム開発投資事業についての戦略を語った。基本的な部分は,投資を行ってコンテンツ開発を行うと同時に参画し,その投資リターンを得るという分かりやすい(かつリスクもある)ものだが,独占的な配信,特典の付与などこのような形態ならではのメリットもあるとのことだ。また,この戦略を実現するために,"#8"(ナンバー8:ラグビー用語とのことだ)というプロジェクトチームを発足させ,ディレクションやアドバイス,コミュニティマネジメントなど,ゲーム開発だけでなく運営面までトータルに関わっていく予定であることも発表した。本チームの第一弾が,今回発表の「真・三國無双BB」(仮称)というわけだ。

今回の提携を行った3社の代表。コーエー襟川会長(画像左上),ソフトバンクグループ代表孫 正義氏(画像中央),ビー・ビー・サーブ社長孫 泰蔵(画像右上)。各社がそれぞれの役割を担い,最高のコンテンツ配信を目指すとのことだ


 さて,ここからは本誌読者が気になっているであろう本作のゲームシステムについての概要が発表された。これはコーエーの執行役員 松原健二氏が行った。
 そのコンセプトとは,シリーズを通しての「一騎当千の爽快感」で,それをそのままオンライン化するというものだ。基本的なゲームシステムはシリーズを踏襲しており,多数の武器やアイテム使用での能力アップは健在。しかし,オンライン対応ということで,武将はプレイヤーが初めに作成し,それを使っていくというものとなりそうだ。
 ゲームはプレイヤーたちが集まる"都市"でスタートし,オンラインで一人プレイも可能な"少人数戦闘",数十人から数百人で行う"多人数戦闘",軍団同士で都市の奪い合いも可能な"大人数戦闘"の3モードが用意される予定。
 まだ開発初期段階のゲームシステムなので今後の変更は大いにあるが,気になるのは大人数戦闘だ。このモードでは1000人規模のプレイヤーが入り乱れて戦えるということだが,現在のどのMMORPGでもサーバー許容量は同程度でも,30人程度が集まるとゲームに支障をきたすほどとなってしまうことを鑑みると,リリースが2年後とはいえ疑問を抱かずにはいられない。もしも実現すれば,MMOアクションゲームだけではなく,MMORPGにも大きな影響を与える技術となるだろう。ちなみに,プレイヤーは有名武将が率いる軍団の配下となるらしいので,キャラクター成長とプレイヤースキル向上がメイン要素となるのかもしれない。
 またイベント開催にも力をいれ,エンターテイナーGMが多彩なイベントを演出していくとのこと。イベントはその一例に過ぎないが,トータルサービスとしての"サポート"からサティスファクション(満足)へ昇華させることも目標としている。

 その後は質疑応答が行われ,突っ込んだ質問が3社の代表に投げかけられた。まず動作スペックは,2年後の平均的なものを想定して開発するとのことで,現状では高く設定されるとのこと。
 アナリストからの質問では,会員目標数や売り上げなどがあり,会員数は初年度30万人,売り上げは40億を目標とする回答がなされた。また,ビー・ビー・サーブの投資金額については,具体的な数字はでず(かなりの金額という発言に留まった),オンラインゲームの開発には周辺コスト(運営やインフラなど)を合わせて10億以上がかかるだろうという回答にとどまった。この額を一般的なものとしてしまうことには非常に疑問があるが(しかも無双シリーズはある程度蓄積されたものがあるだろうし),このような大物タイトルの開発では,今後のバージョンアップ時のことも含めて,のべ人数で1000人/月以上が必要らしく,それをすべて計上してからとなるようだ。
 さらにコーエーが運営するポータルサイトGamecityとの今回の提携の関連についての質問では,個々の会社の体制やアライアンス形態によって展開が異なるので,とくに影響するというものではなく,新しい価値を見出せたときに今回のような提携をしていくとだけの回答となった。


ゲームシステムの概要説明は,コーエーの松原氏が行った(画像左上)。基本的なコンセプトはシリーズを踏襲したものとなりそうだが,いかんせん大枠(というかオンライン化するという情報のみ)しか発表されなかったので,どのようになるのか期待させられる


 最後に,コーエーのCEO 小松清志氏がまとめの挨拶を行った。そこでは,日本を始めとするアジアにおけるコピー問題に触れ,「その解決策としてのオンラインゲームは非常に魅力的である」という発言があった。パッケージゲームのコピーを根本的に防止する策がない現在はまだしも,その神話がいつまで効果を持つのか微妙なところはある。パッケージゲームメーカーの雄"コーエー"として,しっかりとした体制で進出してほしいところだ。
 ほかにも氏は,「今回の提携により技術的な問題はクリアとなった。完成した暁にはオンラインアクションゲームの一つの解決が見えてくるのではないだろうか」と今回の提携の意義を強調し,また,「インフラ,サービス,コンテンツが揃ったことで,最高のクオリティに仕上げないと,とても言い訳ができない」と語った。

 今回の提携は,キャリア(回線業者)と一体となってコンテンツの開発を進めるという主旨で,独占的なサービス提供を目指したものだ。現在のインターネットにおけるコンテンツ市場は発展途上で,多様さと分散化が同時に進んでいる一面があるだろう。このような市場の今後は,優れたコンテンツが数社によって集中的に配信される可能性があり,今回の提携は,その先手を打ったと考えることもできる。国内でのオンラインゲーム市場もまた発展途上だが,今後の市場拡大にはインターネット上でのコンテンツ配信の安定化が必要となるかもしれない。今回の一件が,吉と出るか凶と出るかはまだ未知数だが,各種ISPが数年前から目指している「コンテンツによってキャリアを選ぶ」という図式に,ゲームという側面から大いなる一手を打ったことだけは確実なようだ。
 会員限定という大きなデメリットこそあるが,同シリーズの爽快感,クリアしたときの達成感がオンラインで友人たちと同時に味わえるのは手放しに喜びたいところ。サービス開始は2006年と少し先だが,楽しみに待ってみよう。(Seal)

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