[CEDEC#05]「ミュー 〜奇蹟の大地〜」の開発者が語るオンラインゲームの現在:ハックサーバーが現実的な脅威に
2004/09/07 23:54
■「ミュー 〜奇蹟の大地〜」の成功要因は市場投入タイミング
 CEDEC 2004初日(2004年9月7日)の14時30分から行われたセッション「オンラインゲームのビジョン」に登壇したのは,MMORPG「ミュー 〜奇蹟の大地〜」のサーバー開発を担当したWebzenのSong,KilSup氏だ。「ミュー 〜奇蹟の大地〜」がグローバル展開する経緯を追い,市場で成功した理由の分析や開発の経験から,オンラインゲームに求められる条件を論じようというのがセッション全体の趣旨である。

 氏によれば,「ミュー 〜奇蹟の大地〜」の開発コンセプトは以下のとおりであったという。Webzenが設立された2000年5月の時点では,2D表示のMMORPG「風の王国」「Lineage」が市場を二分しつつあり,有り体にいえばこの2作を上回る魅力を持たせることが,最大の課題だったらしい。

 3D描画によるインパクトのある画面
 魔法やスキルに華麗な描画エフェクトを盛り込む
 強いアクション性と滑らかなアニメーション表現
 アイテムの組み合わせでキャラクター育成を楽しく

 そして,わずか3人(!)の開発者,10か月の短期間でクローズドβテストにまで漕ぎ着ける。

 完成した「ミュー 〜奇蹟の大地〜」は,日本国内でも多くのプレイヤーを獲得し,ワールドワイドで同時接続45万人を達成するヒット作となった。同作品が市場で評価された理由としては,

 3D表示のMMORPGというインパクト
 開発を短期間で行い,インパクトのあるタイミングでリリース
 韓国市場におけるオンラインゲームの隆盛に間に合わせたこと
 韓国市場の実情を考慮し,高いスペックを必要としないこと
 クローズドβで集まったプレイヤーの意見を重視したこと
 サーバーの安定性を十分に検証し,確保できたこと
 オフラインでの強力なプロモーションと早めのアップデート
 市場調査を重ねたうえでの各国版ローカライズ

これらの要因が組み合わさった結果と分析していた。

 ちなみに同作品は台湾,中国,日本,タイでローカライズ版のサービスが提供されており,そのほかの市場向けにはグローバルサーバーでまとめて対応している。



■オンラインゲームの世界展開を阻むハックサーバー問題
 正直なところ,PCゲーム市場に関する分析としては目新しい部分が少ない話だったが,これから本格的に立ち上がるコンシューマゲーム機のオンラインゲームのための戦訓としては有用であろう。また,日本製のゲームで育った世代であるSong,KilSup氏が日本に期待するのも,コンシューマタイトルのゲーム性と,PCゲームが切り拓いたネットワーク技術の融合であり,blogツールやメッセンジャー機能などをモジュール化して汎用的に使うことも重要という見解だった。
 まあ,氏が熱烈なレースゲームファンであることはセッション冒頭で自ら触れており,オンライン化を望むコンシューマタイトルの実例が「GRAN TURISUMO 4」である点には,いささかの茶目っ気を読み取るべきかもしれないが。

 さて,PCゲーマーから見てこのセッションで面白かったのは,「フリーサーバー」の脅威,つまりゲームサーバーとプロトコルがハッキング/解析され,勝手にサーバーが立てられてしまうという事態の話だ。
 従来コピー問題に煩わされないことがサーバー型オンラインゲームの利点とされてきたわけだが,この前提が揺らぎつつあり,セキュリティの技術と意識の低い国に進出する場合には現実的な問題になるとのことだった。
 また,オンラインゲーム開発における注意点として「クライアント(プログラム)から送られた情報は絶対信じないこと」と明言し,プロトコルの暗号化が課題であると結論づけていた。
 サーバー開発の専門家だけあって,セッション前半の概説と異なる生生しい話が聞けたのが,とりわけ印象的であった。(Guevarista)

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