ストラテジー 4Gamer.net Review
 
王道をいくファンタジーRPGに,Warcraft風のRTSを見事に融合
スペルフォース 日本語版
Text by Sluta
22ndt Sep. 2004


正統派ファンタジーRPGの要素をベースに,
RTS要素をミックスした意欲作

テキストデータはすべて日本語化されている。ナレーションのみ英語のまま

 PCゲーム市場における"RPG"とは,もはやMMORPGのことを指すのではないかというくらい,MMORPGは人気で新作の数も多い。だがその一方で,シングルプレイ向けRPGは極めてレアな存在になって久しい。さらにその中で日本語化された海外の良質タイトルとなると,数えるほどしかなくなってしまう。
 今回紹介する「スペルフォース 日本語版」は,そのうちの一本といえる。ジャンル的にはストラテジーに入れるべきだろうが,根幹部分は本格的なRPGそのもの。「ウルティマIX アセンション」「バルダーズ・ゲート」「マイクロソフト ダンジョンシージ」など,往年の名作RPGの雰囲気をところどころで感じさせる,シングル向けRPGとして大いにプッシュしたい作品だ

 ゲームの主人公は,アバターと呼ばれる一人のキャラクター。彼(彼女)は,世界の平和を取り戻すために魔術師によって召喚された"ルーンウォーリアー"という設定で,世界各地を冒険するうちに,その目的と世界の全貌が徐々に明らかになっていく。
 この主人公は,男女の別はもちろん,外見,スキル,能力値を自由に設定できる。しかし,プレイヤーがゲームを通して操作して成長させていくキャラクターはこの一人だけで,それ以外の仲間はすべて,マップ上に点在する「モニュメント」という施設で召喚することになる。

 モニュメントの種類は,大きく二つに分けられる。まず「勇者のモニュメント」では,主人公のパーティメンバーにあたる「勇者」を最大で5人召喚できる。彼らはルーンというアイテムを入手することで呼び出せ,主人公同様にアイテムを装備したりスキルや呪文を使って戦ったりできるが,成長することはない。そのため,新たなルーンを入手して,勇者のメンバーをどんどん入れ替えていくことになる。
 もう一つは,「人間のモニュメント」「エルフのモニュメント」といった,各種族のモニュメントである。
 さて,本作のRTSの要素は,次のセクションで詳しく見ていこう。

主人公となるアバターを作成する画面。戦士系も魔法使い系も自由に選べる アバターと勇者は,アイテムを装備できる。インベントリの容量に制限はないので,アイテムはいくらでも持てる 成長するのはアバターだけ。味方全体の経験が全部アバターの経験値として入る
勇者のルーンを入手し,このタブレットにはめ込むことで勇者を召喚できるようになる 建物やユニットを作るためには,計画書というアイテムが必要。宝箱の中にあったり,商人が売ってくれたりする 受けたクエストは自動的に整理されて記録される。今何をすればいいかは,ひと目で分かるようになっている


RPGならではのアイテム収集が,
RTS部分に直接影響する面白さ

ユニットは基本的にすべてモニュメントから生産される。RTSとしてのシステムは,ごくシンプルだ

 本作に登場する種族は,人間,エルフ,ドワーフ,トロール,オーク,ダークエルフの6種類。各マップにはこれらの種族のモニュメントが点在しており,それを稼動させることで各ユニットを召喚(生産)できる。
 基本システムは労働者ユニットに資源を集めさせ,軍事ユニットを生産して戦うというオーソドックスなRTSスタイル。ただし,ユニットの生産や建物の建設には,それぞれの「計画書」と呼ばれるアイテムを持っていることが必要条件となる。
 人間を例にとると,建物は「小規模指令所」「木こり小屋」「鉱山」「弓兵訓練所」,ユニットは「リクルート」「スカウト」「パラディン」「メンタリスト」などがあるが,これらはすべて個別の「計画書」を持っていないと建設/生産できない。ゲームを開始してすぐに使えるユニットは「リクルート」と「スカウト」の2種類だけで,ゲームを進めていくにつれて新しい計画書が入手でき,新しい建物やより強力なユニットが生産できるようになるわけだ。
 計画書はメインクエストをこなしていく中で入手できるものがほとんどだが,いくつかのレアな建物などは,サブクエストの報酬や,商人から購入することで入手できる。例えば「穀物畑」という建物は平地さえあれば食料を生産できるので有用な施設だが,この計画書は,あるサブクエストの途中で入手できるのだ。こうしたRPG的なアイテム収集要素がRTS部分に直接影響してくることにより,ゲームの進行とともにRTS部分も成長していくかのような感覚があり,それが本作のRPGとRTSの融合の醍醐味だといえる

 また本作では,一度に複数の種族を操れる点も面白い。例えばあるマップに人間のモニュメントとエルフのモニュメントの二つがあったとしたら,どちらも稼動させることで人間とエルフ両方のユニットを生産できるのだ。
 ただし軍事ユニットの総人口の制限と資源は,共有となっているのがポイント。各種族はそれぞれ得手/不得手があり,それを種族同士のコンビネーションで補っていける。例えばエルフに「プロテクター」というユニットがいるが,このユニットを生産するには鉄が必要となる。ところがエルフは鉄を収集できない。そこで人間が鉄を収集してやれば,プロテクターを生産できるのである。また逆に,エルフには植林の技術や優秀な弓兵など,人間にない利点もある。エルフのモニュメントしかないマップと,人間とエルフの両方のモニュメントがあるマップでは,かなり違ったプレイになることが分かるだろう。
 ストーリーを進めていくにつれて,扱える種族も増えてきて,より多くの計画書も入手できるので,戦略の幅が広がっていく。

種族によって集められる資源が異なる。資源は木材,石,鉄,ムーンシルバー,アリア,レーニャ,食料の7種類 拠点をつぶさない限り,敵は無限に湧いてくる。時間が経つにつれて敵は増殖するので,早めに仕掛けていこう 各種族はタイタンという独自のユニットを1体だけ生産できる 画面は人間のタイタンであるグリフォン
クリック&ファイトとは,スペルフォース独自のインタフェース。要するに,行為の対象者を先に選択し,それに対して何を行うかをワンクリックで選ぶ。慣れるとこれが非常に便利



やり込み要素たっぷり,ボリュームもたっぷり

今まで行ったことのある地点には,時空石を通じて一瞬でワープできる。時空石はプレイヤーが死んだ場合の復活ポイントにもなる

 キャンペーンは章ごとのマップに分かれている。マップ間はポータルというゲートを使って行き来するほか,時空石というワープポイントを使っての移動も可能だ。基本的にはストーリーに沿ってどんどん先のマップへと進んでいくことになるが,クエストによっては前のマップにまたがるものもあるし,ゲームが進んでから前のマップに戻ってみると新たなNPCが出現していたり,新たなクエストが発生していることもあったりしてなかなかやり込み要素は高い。敵の拠点を残したままにしておけば,あとで戻って繰り返しRTSモードをプレイしたり,レベル上げをしたりといったことまでできてしまう。
 本作は,メインクエストをひと通りクリアしていくだけなら難度は比較的低めで,行き詰まることも少ないだろう。ただし,ゲームが進むにつれてRTS部分の難度は上がってくる。RPG部分をメインとして考えているプレイヤーには,ストーリーのところどころで取り組まなければいけないRTS部分が鬼門になる可能性はある。

 ゲームモードは,これまで説明してきたようなシングルプレイのキャンペーンと,マルチプレイの2種類。マルチプレイはシングルにおけるRTS部分だけを切り取って持ってきたようなもので,正直,これでは平凡なRTSと見られても仕方がないだろう。単純にRTS部分だけ比較すると,本作はほかの作品と比べてとくに際立った部分はないので,マルチプレイの出来はイマイチだ。
 ちなみにマルチプレイのアバターは,用意されている中から選ぶことしかできない。せめてシングルプレイで育成したプレイヤーキャラクターが使えればよかったのだが。

 やはり本作は,重厚長大なストーリーと,アイテム,サブクエスト,スキルなどが充実したシングルプレイRPGとしてみた場合に,非常に魅力的な作品だと思う。海外ではすでに拡張パックが発売されていて,続編も開発中とのこと。今後のシリーズとしての発展も楽しみだ。

ゲーム内にも時間の流れがあり,昼夜の区別がある。夜は視界が狭くなるので注意
キャラクターの装備はそのまま外見に反映される。ついルックスで装備を選んでしまうが,それもロールプレイングか

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■メーカー名:メディアクエスト
■問い合せ先:ユーザーサポート TEL 0570-040-401(祝祭日を除く月〜金 10時〜17時30分)
■発売日:2004年9月23日
■価格:7980円(税込)
■動作環境:Windows 98/Me/2000/XP,PentiumIII/1GHz以上(Pentium4/1.8GHz以上推奨),メモリ 256MB以上(Windows 2000/XPは512MB以上),HDD空き容量 2GB以上,VRAM32MB以上のビデオカード(64MB以上推奨),DirectX 9.0a以降
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