|
戦車,兵員輸送車両,四輪駆動車など多数の車両が登場し,壮絶な車両同士の戦闘も可能。敵陣が車両だらけのときは,屋内に潜んで,窓やドアから対戦車用の重火器を使って戦う |
本作は,広大なマップを舞台に,味方の兵士を率いて数々のミッションをこなしていくミリタリー系のFPS。シングルプレイでは,単独で,もしくは指揮官としてAIが操る味方兵士を指揮しつつ,重要施設の破壊や要人の救出,重要書類の奪取といった任務に挑むのだ。
また本作はマルチプレイも非常に意識した作りになっている。舞台がほぼ現代なので,元祖ミリタリーFPSの「オペレーション:フラッシュポイント」に似た雰囲気で楽しめる。
舞台背景は,西暦2010年という,あっという間に来てしまいそうな近未来。ロシアに続き,アメリカも自国の経済上の問題などから「世界の警察」的役割の継続が不可能となり,世界中から軍隊を撤退させているという状況である。その結果,軍事的な問題を抱える国々の多くは,少数精鋭の傭兵部隊に問題解決を依存するようになる。プレイヤーは"ゼルドナー"と呼ばれる傭兵部隊の一人となって,日本,アメリカ,ロシア,中国などの依頼を受け,今日も闘いに明け暮れるのだ。
時代がほぼ現代ということで,登場する武器や車両,ヘリなどは現実にあるものばかり。しかも,かなりの種類が用意されている。武器は60種類以上,乗り物は70種類以上が登場するのだ。
具体的には,ハンドガンなら最強の50口径Desert Eagleや特殊部隊御用達のH&K Mark23,ライフル系ならブルパック式のStaeyr AUGやM16の特殊部隊向けバージョンM4
Carbineなど。乗り物なら米軍最新戦車M1A2 Abramsや兵員輸送ヘリUH-60L Black Hawkなどが存在する。
敵の乗り物も無人なら奪取できるので,ロシア製のTシリーズ戦車にも搭乗可能。現代戦が好きな人にとっては,かなり"好み"の設定となっているのだ。
とても凝られていて面白いのが,プレイヤーキャラクターをかなり細かくデザインできる"ユニット・カスタマイズ・システム"。頭と顔,ジャケット,ズボン,手袋,ブーツなどを多数から選べ,6万パターン以上の兵士をデザインできるのだ。
赤外線ビジョンなどを装備した素顔の見えない特殊部隊風の格好から,どこにでもいる民間人風の格好までかなり幅広くデザイン可能。自分の好みの外見で戦えるというのは,嬉しい機能である。
要人救出に成功したところ。撃たれることもあるので,敵兵が残っているうちに連れ出すのは危険 | ターミナル画面。依頼は,中国,ロシア,北アメリカ(アメリカの後継国?)などから寄せられる | Base Camp内の武器ターミナルを利用することで,各種武器を装備。5種類の武器およびアイテムを所持できる |
奪取した戦車に乗り込み,敵の戦車や戦闘車両と肉弾戦。より精密な射撃を行える砲手画面もある | 味方が増えて大人数になってきたときは,UH-60L Black Hawkなど兵員輸送ヘリを使用すると楽 | 本文中で紹介した以外に,メガネやリュック,膝当てを選べるほか,迷彩パターンやチームロゴも設定可能 |
人質救出ミッションをクリアすると,その救出したうちの何名かが部下になることがある |
車両やヘリなどに乗れるということから,かなり広いマップであることは想像できるはず。事実そのとおりで,マップ全体だと実に6500×3200キロメートルという広大さ! その面積(2080万平方キロメートル)は,北アメリカ大陸(約2400万平方キロメートル)よりわずかに狭い程度なのだ。ヘリで飛べども飛べども,いつまで経っても端まで辿り着かないわけである。
ただし,個人的には「ここまで広いのはいくらなんでも……」と感じてしまった。確かにこれだけ広いと,マルチプレイで航空機を活用しやすかったり,目標を攻めるときに進行ルートをいくらでも設定できたりなどのメリットもある。だが,最大で32人という参加人数(将来的には増える可能性もあるらしい)では,あまりにも広すぎやしないだろうか?
現状ではプレイヤー密度がかなり低く,敵軍プレイヤーを探すことすら困難という状況がしばしば生じる。これはマルチプレイの楽しさの根幹に関わることなので,早急に参加人数を増やすなどの対策を講じてほしい。
またシングルプレイで,依頼主の国家が同じだと,ミッション内容が異なってもマップが同じというのも奇妙に感じた部分。
ミッション内容と敵の戦力は異なるものの,同じマップでほぼ同じ建物を目標にして行動し,しかも天候まで一緒というのでは,すぐさま新鮮さがなくなってしまう。もう少しバラエティを用意すべきだったのではないだろうか。
その一方で,これらのマイナス要因を吹き飛ばすほどの非常に面白いシステムも搭載されている。マップのあらゆるオブジェクトを壊せる,アドバンスト・デストラクションシステムだ。
戦車砲を発射したり,C4爆薬などを炸裂させたりすれば,立木はバタバタと倒れるし,建物はどんどん壊れていく。地面さえもが陥没して爆発痕が残るほどで,かなり破壊欲を満たしてくれるのだ。
建物に隠れている敵もまとめて吹っ飛ばせるので,攻めるにしても守るにしても,これまでとは異なる戦術が必要というわけである。
目的地までのルートはこのマップモードで確認。倍率は数段階から選べ,味方への移動や攻撃の指示も出せる | 中国の依頼で,施設および建物の破壊を行うミッション。奪取した敵戦車か,Bombing-Kitで吹っ飛ばす | 写真8と同様に中国の依頼。こちらは機密書類の奪取が任務内容。戦場がまるっきり同じで,天候まで同じ…… |
Bombing-Kitを選ぶと,爆薬の設置が可能に。画面のリモート式のほか,タイマー式,センサー式なども | 戦車砲や重火器,爆弾を使用すると,あっという間に立木が倒れていく。敵の車両の足を止めるのにも使える | 戦車砲やPanzerfaust 3などの銃火器,爆薬は,建物の破壊も行える。ガレキの山を築くことも可能だ |
マルチプレイでは,敵に拠点に侵入されてしまうと,かなり不利となってしまう。戦車で突撃されて荒らされることもあれば,周囲の高所から狙撃しまくられることも。ここらへんは,ややバランスの悪さを感じる |
先述したように,マルチプレイでは閑散としてしまうことがしばしばあるが,役割的には面白いものがいくつかある。
その一つが,衛生兵だ。Mdi-Kitを装備することで,ほかのキャラクターを治療したり,(死亡して20秒以内なら)蘇生したりできる。また救急処置所も設営できるのだ。衛生兵は地味だが,味方の損失を減らす非常に重要な役割なので,裏方でがんばりたいという人は要注目である。
乗り物の補修を行うための工兵も選べる。Engineer-Toolkitを使うことで,各種乗り物の減少した耐久力を元に戻せるのだ。また小型の武器や弾薬などを味方のプレイヤーに供給することも可能。さらには,弾薬集積所の設営や,仕掛けられた爆弾の解体も行える。
しかも,外見もそれらしく見えるようちゃんとツナギが用意されているので,雰囲気もバッチリというわけ。
マルチプレイ用のゲームモードは8種類用意されている。人質救出作戦を展開するHostage Rescueや,攻撃側が爆弾を設置し防御側が解体するBomb Run,相手軍の車両を奪い合うCapture the Vehicleなど,ミリタリー系のモードが多数あるのが特徴だ。
なお,処理速度はかなり重い部類に入るだろう。筆者のメインマシン(Pentium4/2.66GHz+RADEON 9600XT)では,解像度1024×768ドット&32ビットカラーで,Shadow LOD level以外のすべての描画設定を最高にした場合,フレームレートは20〜30。サブマシン(PentiumIII/1GHz+GeForce 4 Ti4200)では,800×600ドット&32ビットカラー,デフォルト標準の描画設定でも10〜20であった。
処理速度の重さやマップが広さなどの問題点はあるが,それでも見るべき部分のある作品だと思う。作戦の自由度も高く,また建物ごと吹っ飛ばすといった斬新な攻撃も可能。現代戦が好きな人,またより現実に近い戦闘を体感したい人には注目してほしい1本である。
Mdi-Kitを装備するだけで衛生兵に。なおEngineer-Toolkitや銃火器などとの同時携帯は不可能 | このアイテムを装備すると乗り物を修理できるうえ,補給担当にもなれる。八面六臂の活躍が可能に | Engineer-Toolkitを使えば,爆弾の解体も可能。「赤いコードから切断して次は……」なんて気分を味わえる |
工兵というか,エンジニア風のツナギも用意。もちろん普通に戦え,キャラクターの能力差はない | 敵の戦車砲を受け,どんどん破壊されていく建物。永久に隠れられるわけではないので,危なくなったら別棟へ | 一国に値するほど広大なマップ。事実上,戦闘が行われるのはほんの一部なので,ムダに広すぎるきらいも…… |
■メーカー:メディアクエスト (C)2004 by Wings Simulations GmbH. Published by JoWooD Productions Software AG, Technologiepark 4a,A-8786 Rottenmann, Austria. All rights reserved. |