ミニスケープ 4Gamer.net Review
 
さらなる進化を遂げた鉄道経営シムの最高峰
レイルロードタイクーンIII 日本語版
Text by Sluta
14th Jul. 2004


5年もの歳月を経て,シリーズ最新作が登場

固有名詞を除いて,ほぼ完全に日本語化されているのはやはりプレイしやすさが違う

 前作「レイルロードタイクーンII」から待つこと5年,ついに「レイルロードタイクーンIII」(以下,RT3)が日本に上陸する。「II」は私も夢中でプレイした一人で,多種多様な貨物を運ぶパズル的な面白さと,需要/供給の仕組みや株式市場にみられる高度な経済シミュレーションとしての面白さに魅せられたものだった(ただ,一番印象深いのは,富田耕生氏のナレーションと,キャンペーン選択画面で背景のガラスを割って富田氏に「こら,やめろ!」と言わせる裏仕掛けだったりする)。

 RT3は,19〜20世紀が舞台の鉄道会社経営シミュレーションだ。前作の魅力や雰囲気をそのまま残したうえで,グレードアップが図られているのが嬉しい。プレイヤーは鉄道会社の経営者となり,線路の敷設,列車の運行はもちろん,子会社の建設/買収などを行って利益をあげていく。
 目的はミッションごとにさまざまなものが用意されていて,会社の利益や資本を一定の額までもっていくもの,個人資産を蓄積するもの,一定時間内に決まった貨物を目的地まで運搬するもの,などがある。マップは,キャンペーンと個別のシナリオを合わせて28個用意されており,マップに設定された目的を達成することを目指してプレイする通常のゲームモードに加えて,経済的な要素をすべて排除し,自由に線路を引き列車を走らせて遊ぶことのできる「サンドボックス」モードの2種類のモードでプレイすることが可能だ。ほかに,マップエディタとシナリオエディタが付属している。これらは直感的なインタフェースになっており,とても使いやすい。

 GameSpyを利用した公式ロビーで最大4人でのマルチプレイも可能。だがマルチプレイは線路の引きなおしや建物の撤去がいっさいできないという制約がある。現状ではロビーのプレイヤー数も少ないので,おまけ程度に考えておいたほうがいいだろう。

クリアしたシナリオのショーケースにメダルが掛けられていく仕掛けは,粋で心憎い 単発のシナリオは,どれも時代や経済状況が独特で,バラエティに富んでいる フル3Dグラフィックスは迫力満点。「世界の車窓から」に近い視点が楽しめる
会社経営要素にも力を入れているのがこのシリーズの特徴。報告書は毎年チェックして自社の経営に生かそう 細かいことではあるが,ウィンドウモードでプレイ可能というのは,嬉しい人も多いのではないだろうか ゲームの基本を学べるチュートリアルもきちんと用意されている。この手のゲームの初心者でも安心だ


前作の良い点を継承しつつも,「自動輸送」でプレイ感は一新

すべての物資の動きを視覚的に表示してみたもの。黒い長方形が物資を示す。かなりの物資が河川に沿って移動しているのが確認できる
 RT3が他の輸送系のシミュレーションゲームと一線を画しているのが,「物資の自動輸送」のシステムだ。これは前作にも無かったもので,物資は鉄道以外の輸送手段によって(見た目は)自動で移動していくというもの。これによってプレイ感覚が完全に一新されている。
 それぞれの物資は,"供給された地点から需要されている地点へと移動したい"という欲求を持っているというアルゴリズムのもとに,マップ上の見えない商人によって,ある程度の距離までは勝手に移動するのだ。例えば,綿花農場のすぐ近くに紡績工場があれば,綿花は紡績工場まで移動していく。紡績工場で生産された衣服は,近くに都市があればそこへ輸送される。
 また,多少距離が離れていても川があれば物資は移動していくし,港があれば海をも渡っていく。こうして,鉄道以外の輸送手段でも簡単に代替できてしまうルートは,自動で物資が輸送されるというシステムになった。プレイフィール的には,鉄道輸送に"より鉄道らしい"ルートや役割を割り当てることが求められるようになったといえる。それは主に長距離輸送だといっていいだろう。
 もう一つ斬新なのは,乗客(と郵便)はすべて目的地を持つという点。目的地に向かわない列車には乗客は乗ってくれない。大きい都市と大きい都市を結べばドル箱列車の完成,なんて簡単な話ではなくなった。ただし乗客は乗り換えもしてくれるので,直接目的地に向かう列車でなくても,最終的に目的地に向かうルートが確立されていれば,乗ってくれるのだ。だから,ハブ駅(ターミナル駅)のようなものを作って大都市間をつなぐのは,効果的であるといえる。
 これだけ説明しただけでも,RT3の奥深さを想像してもらえると思う。

フィールドが赤→緑の順に価格が高くなっていく。物資を安く買えるところで積み,高く売れるところで降ろすというのが基本的な戦略となる 乗客は目的地へ向かう列車にしか乗らない。この画面を使えば,乗客をどこにどれだけ輸送できるのかが一目で分かる こうして見ると,いかにロッキー山脈が難物かというのがよく分かる。この手強い山脈をどうやって越えるかは,プレイヤー次第だ

ライバル会社の動向にも注意。株式市場では熾烈な競争が繰り広げられる。隙あらば吸収合併もできる 1865年に登場するコンソリデーション2-8-0。さまざまな用途に幅広く使える,実に頼れる機関車だ 1962年登場の0系新幹線。日本の列車で唯一登場するので,こればかり使いたくなってしまう


今夏は本作で「鉄道王」を目指そう!

マップエディタはとても使いやすく,思いのままにオリジナルのマップを作ることができるだろう

 グラフィックスは完全3Dになり,視覚的な楽しみは増した。マップを真上からも水平からも自由に眺められるし,ズームイン/アウトも自由でなめらかだ。指定した列車をカメラが追いかける視点があるのもいい。グラフィックスのクオリティは必ずしも最高レベルとはいえず,テクスチャも若干粗めだが,その代わりにゲームの動作は(フル3Dにしては)軽めで,操作感は快適なので個人的にはむしろ良しとしたい。

 RT3を全体としてみると,完成度の高かった前作を基本として,グラフィックスを一新し,新要素をいくつか追加した作品という印象だ。新要素はすでに挙げたもののほかに,トンネルや立体交差が敷設可能になったことや,工場をプレイヤーが建設できるようになったこと,駅で列車に載せる貨物を自動で選ぶ(一番儲けが大きいものが選ばれる)機能が追加されたことなどがある。これらは無条件に素晴らしい。
 気になる点を挙げるとすれば,物資をプレイヤーの思い通りに扱いづらい,という点。これは自動輸送システムによって物資が勝手に移動してしまうからというのがまず一つ。また,自動輸送のルートは,新しい駅や工場,都市の発展によりリアルタイムで変化していくので,よく観察していないと効果的な輸送は難しい。また,前作にあった貨物を駅で単に降ろすか/売却するかの区別がなくなってしまっているし,利益を生めない貨物は載せることができなくなってしまった。
 ただし,これはゲームの力点が,輸送自体から経済シム的な観点へとシフトしている結果といえる。前作を知っている筆者としては歯がゆい思いもある一方,評価もしたい。
 タイクーンと名のつくシミュレーションゲームの中で,レイルロードタイクーンシリーズは元祖であると同時に最高峰の地位にある。IIIがリリースされてもその地位にいささかの揺るぎはないと感じた。経営シムファンなら絶対にプレイすべき作品だ。


シナリオエディタも秀逸。複雑なマップ環境やイベントの設定が簡単にできてしまう 突発するイベントをうまく生かし,乗り越えていくことが金メダル獲得への必須条件だ 地上のオブジェクトの描画にはやや物足りないところも。水面の描写は非常に綺麗だ
ひたすら一本の列車を走らせて特定の貨物を時間内に輸送するといった,パズル的なシナリオもある マップビルダーには世界地図があらかじめ入っている。ここからマップエディタ用の地形データを生成できる マップビルダーで生成した,日本近辺の地形データをマップエディタに呼び出してみたものがこれ

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