アクション 4Gamer.net Review
 
天かけるドラゴンが地上の妖魔を蹂躙する3Dアクション
The I of The Dragon
Text by サワノフ
21st Sep. 2004


ドラゴン様にかかればチンケな怪物どもは一網打尽だ

個人的には,「ドラゴンに乗った人間」ではなく「ドラゴン自身」が主人公だというのが,非常にポイントが高い。この二つは全然違うのである

  百獣の王がライオンなら,百モンスターの王はドラゴンである。巨大な体と高い知能,圧倒的な攻撃力を持つドラゴンは,有史以来ファンタジー世界における絶対的な強者として君臨してきた。強くてカッコいいものに憧れるのは人として当然のことで,それゆえにドラゴンは小説やゲームなど,さまざまな作品に無数に登場してきたのである。もっとも,その強さのせいか,作品におけるドラゴンの役割は敵ボスだったり脇役だったりして,主役であることは滅多にない。
 というわけで,今回レビューする「The I of The Dragon」みたいなゲームは,筆者のようなドラゴン好きにはかなり貴重な作品だ。本作は空飛ぶドラゴンを自在に操って敵を駆逐していく3Dアクションシューティングなのだが,正直「ドラゴンが主人公のアクションゲーム」というだけで飛びついてしまったのである。ところが実際にプレイしてみると,これがなかなかゲームとしての完成度も高いうえ,ドラゴン好きの魂をも充足させうる出来になっていたのだ。

 ゲームの舞台となるニモアンと呼ばれる土地には,かつて妖魔とドラゴンと人間という三つの種族がいた。ドラゴンと人間は,悪しき存在をニモアンの地から駆逐するために手を結び,妖魔に立ち向かった。戦いは長く続き,犠牲は大きかったが,ついにドラゴンと人間は妖魔の将・スカルボルを封印することに成功した。
 しかし,今度は人間の中に「ドラゴンは脅威だ」とする,狂信的な一団が現われる。"ゼロット"と呼ばれる彼らはどんどん勢力を伸ばしていき,ドラゴンに味方する人間はほんのわずかになってしまった。勢いを増したゼロットは,ついにはドラゴンの卵をことごとく焼き払うという暴挙に出た。
 崇高な精神を持つドラゴンは,人間に復讐することをよしとせず,黙ってニモアンを立ち去った。その中の1体,ウンク・アゴールというドラゴンは,いずれスカルボルが復活し,この地に再び災厄をもたらすことを予見していた。ウンク・アゴールは,ドラゴンの崇拝者たちに,ただ一つだけ残った卵を託して去っていった。
 それから数百年後,スカルボルは復活し,力を取り戻した妖魔達は人間を襲い始めた。人間達は立ち向かったが,妖魔の大群の前ではむなしい抵抗だった。滅亡の危機を前に,最後のドラゴンの卵を代々守ってきた僧侶は,魔法でこれを孵化させた。かくして,人間たちの最後の希望を背負う1体のドラゴンが誕生したのである……。

 と,ちょっと長くなってしまったが,これがオープニングで語られるバックストーリーの要約だ。筆者はムービーを見てる途中(卵が焼かれるあたり)ですっかりドラゴンに感情移入してしまい,邪悪な人間どもを殲滅する気マンマンになっていたのだが,とりあえずそっち方面にはいかないようで多少がっかりした。まあそれは余談だが。

オープニングムービー。ドラゴンと人間,2種族の間には暗い歴史があった。だが今,滅亡の危機に瀕した人類の目の前に,救世主たるドラゴンが姿を現したのである。過去を乗り越えて,飛べ,ドラゴン! 3Dグラフィックスで描かれた雄大な地形を,自由に飛び回るドラゴン。視点も自在に動かすことができる。


ドラゴンを自由に操り,成長させていこう

 「The I of The Dragon」の基本システムは,先にも書いたとおり3Dアクションシューティングである。ドラゴンで大空を飛び回り,ドラゴンブレスや多彩な魔法を使って,地上に蠢く妖魔とその拠点を駆逐していくのだ。ちなみにドラゴンには三つのタイプがあり,ゲームスタート時に好きなのを選択できる。1体1体かなり使い勝手が違うので,極めるには都合3回通してプレイしなくてはならない。もちろん,その分たっぷり遊べるわけでお得感は高い。それぞれの特徴は以下の通り。

・"灼熱の破壊者"アルゴス
 赤き火竜。生命力が高く,ブレス攻撃の威力は随一。それ以外の能力は,3匹の中で平均的だ。初心者でも扱いやすいスタンダードなドラゴンなので,最初にプレイするときはこれを選ぶといいだろう。

・"天空の魔術師"バロス
 青い体を持つドラゴン。その異名のとおり,魔法攻撃を得意とする。また移動速度が最も速い。氷のブレスには,相手にダメージを与えると同時に,凍らせて動きを封じる効果もある。生命力は低いので注意。

・"闇を統べる黒帝"モルゴス
 怪しい緑色のブレスを吐く漆黒のドラゴン。死の魔法を得意とし,ドラゴンなのにゾンビを召喚したり敵の死体を操ったりする。スピードは若干遅めだが,トリッキーな戦い方で補っていこう。

 ドラゴンは敵を倒して経験値を獲得し,レベルアップしていく。最初はザコ敵の攻撃にもヒイヒイ言ってしまうくらいのひ弱さなのだが,戦いを経ることで強力なドラゴンに育っていくわけだ。なお,1レベル上がるごとにボーナスポイントが与えられ,それを使って新しい魔法を覚えたり,体力や飛行速度,火力や魔法回復速度などのパラメータを強化できる。パラメータの振り分けはプレイヤーの自由にできるので,やたら飛行速度を速くするとか,ブレスだけ猛烈な強さにするとか,自分の好みに応じて育てられるというのも楽しい。

 ただ,客観的に見て,ゲーム序盤は多少ツラいところがある。ドラゴンが弱いうちは,プレイしていてどうしてもストレスを感じてしまうのだ。また,インタフェースもいまいち洗練されているとは言い難いため,最初ゲームになかなか馴染めないというのも一因だろう。
 だが,ドラゴンのレベルが上がり,プレイヤー自身も操作に慣れてくると,途端に面白くなってくる。ほかのシューティングやアクションRPGと比べて,攻撃方法の選択肢が幅広いのはとくに優れている点だ。妖魔の猛攻をかわしつつ,状況に応じて魔法やブレスを使い分けていくのは実にエキサイティングである。飛行テクニック,ブレス,魔法などを組み合わせて,自分なりの戦法を確立するレベルにまで達すれば,一人前のドラゴンといえるだろう。

最初に,3タイプのドラゴンから1体を選ぶ。それぞれ能力が違っており,使い勝手も大きく異なる ニモアンは12エリアに分かれており,ドラゴンはこれを行き来しながら,クエストをクリアしていく クエスト開始時には,魔法の絨毯に乗った人間がドラゴンの目の前に現われて,案内をしてくれる
地上からの攻撃をかわしながら,妖魔を殲滅していくドラゴン。その雄姿には見とれるばかりだ 敵拠点を破壊したあとに出てくる3色の"魔石"は重要なアイテム。集めると能力がアップする レベルアップ時のボーナスポイントは,好きなパラメータに振り分けられる。自分色のドラゴンを育てよう



躍動感溢れるドラゴンの魅力を完全再現

 ゲーム性もさることながら,やはりこのゲームのキモは,ドラゴン独特の飛行感覚を楽しめることにある。加速はゆっくりだが,トップスピードはかなりの高速になる直線飛行。頭から尻尾の先までをまっすぐに伸ばしての滑空。巨体であるがための,ゆったりとした旋回。背中を丸めてのホバリング。言葉で説明しようとしてもなかなかうまくいかないのだが,飛行機でもヘリコプターでもない,そうかといって鳥でもない,紛れもないドラゴンを操作している気分になれるのだ。確かにドラゴンは空想上の生き物に過ぎないが,そのパブリックイメージは人々の中に確固として存在するわけで,それを裏切らない出来栄えであることは高く評価したい。これはもう,ドラゴンのフライトシミュレータといってもいいだろう。
 さらに,飛行を攻撃と組み合わせると,より楽しくなる。急降下しながら火の玉状のプレスを敵に浴びせたり,ホバリング中に高度だけ上下させながら敵拠点にブレス放射したりしていると,気持ちいいことこのうえない。さらには,捕食シーンがまたたまらない。地上の敵に襲い掛かり,爪でつかんで空高くさらい上げ,おもむろにムシャムシャ食うのである。食物連鎖においてあからさまに上位にいることを実感できる瞬間だ。この優越感は実際クセになる。

 要するに,ドラゴンになるのがすごく楽しいゲームなのだ。個人的には「ドラゴンはもっとべらぼうに強くてもいいんじゃない?」とか「どうせなら魔法じゃなくてブレスで地上を火の海にしたいなあ」とか,そういう感想はあるが,ゲームに対する不満というよりはドラゴン像に対するこだわりなので,読者諸氏は気にしなくてもいいだろう。総合的には,たっぷりとドラゴンを堪能させていただき,大変満足した。

 ドラゴン好きの諸兄には問答無用におすすめできるゲームだが,そんな限定的におすすめしても仕方がないので悩ましいところだ。プレイしたらきっと誰でもドラゴンが好きになると思うので,一風変わったアクションゲーム,シューティングゲームを求めている人は,ぜひ一度遊んでみていただきたい。

大空を悠々と飛行するドラゴン。戦闘なんかせずに,ただ飛んでるだけでもわりと楽しい 火の玉タイプ,火炎放射タイプ,誘導ミサイルタイプの,3種類のドラゴンブレスを使い分けて戦おう 敵ドラゴン(みたいな妖魔)との空中戦もアリ。対地戦闘とはまた違う緊張感が味わえる
ドラゴンの捕食シーン。抱え上げた敵をむさぼり食うと,激しく血が飛び散る。攻撃して倒すよりもいい気持ち 魔法によって街を作ることも可能。回復拠点になるうえ,人間と共闘することもできる クエストが進むと,当然敵も強力になっていく。ブレスや魔法,飛行テクニックを存分に駆使して戦い抜こう

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■メーカー名:ライブドア
■価格:8379円(税込)
■動作環境:Windows Me/2000/XP,PentiumIII/600MHz以上(PentiumIII/1GHz以上推奨),メモリ 128MB以上(256MB以上推奨),空きHDD容量 1.2GB以上(1.5GB以上推奨),VRAM32MB以上のビデオカード(ハードウェアT&L,128MB以上推奨),DirectX 8.1以降
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