アクション 4Gamer.net Review
 
スニークアクションのうまみをライトに味わえる作品
ゴーキーゼロ
Text by 星原 昭典
16th Apr. 2004


潜入とサイレントキルの面白さ

 「ゴーキーゼロ」は,ポーランドのMetropolis Softwareというデベロッパが開発した作品だ。主人公はNATOの特殊部隊のメンバーである"コール・サリバン"。プレイヤーはこのサリバンを操作して,洗脳に関する技術を開発しているらしい軍事施設に単身で乗り込み,任務の達成を目指すことになる。
 自分以外に頼れる者のない状況で生き延びるためには,できるだけ戦闘を避け,敵に見つからないように行動する必要がある。物影に隠れ,警報装置をかわし,奥へ奥へと進んでいくのだ。どうしても敵兵を倒す必要がある場合には,ほかの敵に感づかれないよう,静かに攻撃しけなければならない。
 このようなゲームの性質から分かるように,本作は近年"スニークアクション"という呼び名で定着しつつあるジャンルのゲームの一つである。先例としては「Thief」「スプリンターセル」「メタルギア」といった作品が挙げられる。
 スニークアクションの面白さは"上手に敵の目を逃れステージをくぐり抜けたときの快感"や"感づかれることなく敵兵を一人ずつ始末したときの達成感"を感じられるところにある。無論ゴーキーゼロにおいても,このようなスニークアクションならではの面白さはキチンとおさえられている。

 移動速度には"潜行" "歩行" "走行"の3種類が存在し,速く移動しようとすればするほど大きな足音が発生してしまう。当然,音を立てれば敵に発見される可能性は高くなる。ミッション完遂を目指してつい走り出してしまい敵に見つかっているようではスパイ失格だ。
 自制心を発揮してじりじりと移動し,とにかく音を立てないように,使うピストルの弾の選択にも細心の注意を払う。暴れ回って得られる快感ではなく,我慢した末の達成感。ゴーキーゼロで味わえるのはそういった気持ち良さだ。

プレイの方法を説明してくれるチュートリアルも完備。マニュアルを見なくてもゲームを始められるのは嬉しい 登場人物達がしゃべっているのはおそらくポーランド語。日本語字幕が入るので,ストーリーはきちんと把握できる 画面左上のレーダーで敵の位置を確認しつつ進む。速く移動しようとすると足音に感づかれてしまうので慎重に


二つの視点を使い分けて,難局を切り抜ける

 本作の画面は3Dグラフィックスで描かれている。しかし,プレイはいわゆる一人称視点もしくはそれに準じたスタイルではなく,通常時はほぼ真上から見下ろした視点でゲームを進めることになる。キャラクター自身の視線が通らない部分も見える仕様なので,プレイ感覚は2Dグラフィックスを使用したゲームに近いと感じた
 基本的には,上方から平面的に見たときに敵の視界に入っていると発見されるというルールなので,敵のかわし方や作戦の組み立て方は同じスニークアクションであるスプリンターセルなどよりも,やはり2Dグラフィックスを使用した「コマンドス」のような作品に近い。

 ゲーム中に精密な射撃をしたいときには,視点をキャラクターの後方に移動させて,細かく狙いをつけることが可能だ。もちろん見下ろし視点のままでも発砲でき,そのときは自動でエイミングしてくれるので楽だが,命中精度は後方視点時に比べて劣ってしまう。じっくり狙って一発で仕留めるのか,ある程度ラフに弾をばらまいて難局を乗り切るのか,状況に合わせて画面モードと行動方針を素早く切り替えていかなければならないところが楽しい。
 また後方からの視点は,見下ろし視点では画面内に入らず確認できない遠くの様子を探るときにも多用することになる。

 武器にはナイフ,ピストル,マシンガン,ショットガンといったものが用意されている。「レインボーシックス」や「ソルジャー オブ フォーチュン」のように実名の武器が登場し,ピストル一つ選ぶのにも実銃の知識を必要とするというわけではないのでご安心を。
 面白いと思ったのは,スナイパーライフルの使い心地だ。狙撃時にスコープを覗いている画面に移るゲームが多いが,ゴーキーゼロでは違う。本作にはスコープの画面というのものはなく,スナイパーライフルもピストルと同じような感覚で使用できる。単純に,ピストルよりも連射性能が低く,命中精度が高いのだ。
 懸命にスコープを覗いて狙撃するゲームも面白いが,このようなスッキリとした形でスナイパーライフルの持つうまみを表現するというアイデアもまた興味深い。

 潜入ゲームに欠かせない各種スパイ風ガジェットも,もちろん登場する。警備の注意をそちらに引きつける"発信器"や"フラッシュライト",敵を一定時間無力化する"パラライザー" "ガストラップ"といった装置類だ。これらを使ってスキなく配置された敵をうまく誘い出し,無力化し,始末していくプレイには,パズルを解くような楽しさがある。
 パズル的な要素としては,マップ各所に隠された"シークレット"の存在や,パスワードロックされた扉なども見逃せない。シークレットは数年前のFPSによく見られたアイデアで,隠された通路やダクトなどを発見すると,その先に嬉しいアイテムがあるというもの。本作の場合は,難所をショートカットできたり,敵の背後に回り込めたりする換気口が多い。コンピュータからストーリーに関する有益な情報を引き出せたりした場合にもカウントされるようだ。
 これらはステージクリア後の成績画面に反映されるので,怪しい端末や薄暗い壁面などを見つけるとついつい探りたくなってしまう。筆者の場合,うまくシュートカットを発見しても,敵の所持するアイテムが欲しくてわざわざ戻り,やっぱり見つかって戦闘になるというパターンが多かった。
 モノに釣られない禁欲的な態度もスパイには必要なのだ。結局熱くなって,何度もクイックロードして成功するまで繰り返す自分が悲しい。クールなトップエージェントへの道のりはなかなかに険しいようだ。

フラッシュライトを地面に置き,敵の注意を引きつける。あとは狙いを定めて頭部を一発で撃ち抜くだけだ 見下ろし画面のときでも攻撃を行うことは可能。敵を正面に捉えるとその上に照準が現れる

それぞれに特徴のある武器/ガジェット類。基本は現地調達なので敵の死体やロッカーを漁るのを忘れないように

過剰に悩まずに進められる遊びやすいタイトル

 見下ろし視点の2D風感覚を生かしたゲームデザインは,本作にコンシューマゲームのような遊びやすさを与えている。三次元的な思考と空間把握能力をプレイヤーに要求しないので,「よし,やるぞ!」と構えなくてもゲームにのめり込んでいける。ここは評価したいポイントだ。
 半面,高さを生かした仕掛けやアクション,攻略要素はないが,これは足りないというよりも,遊びやすさなどを考慮してそのようにゲームがデザインされていると見るべきだろう。

 要はゴーキーゼロは,やるべき要素がコンパクトにまとめられた,比較的ライトな作品なのだ。多すぎる武器や複雑すぎるマップに困惑させられることはなく,ゲームの仕組みを把握しやすい。加えて,操作周りにストレスを感じるような部分もない。本作は過剰に悩むことなくプレイを進められる,遊びやすいタイトルであるといえる。スニークアクションのエッセンスを手軽に味わいたいけど,コマンドスはちょっと……という人にお勧めできる作品だ。

背後から忍び寄ってナイフでひと突き。うまく敵の死角や抜け道を見つけられたときは嬉しい "こっそり"が基本のゲームだが,場合によっては多少強引に立ち回ったほうがいいケースも。残弾数と相談しよう

暗証番号を探し出すような謎解きの要素もある。コンピュータをクラッキングして引き出した情報から推理するのだ

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