ストラテジー 4Gamer.net Review
 
精鋭部隊を率いてエイリアンどもを蹴散らせ!
ブリード 〜エイリアンvs地球防衛軍〜 日本語版
Text by 虎武須(Kobs)
30th Aug. 2004


ECTSのBest PC Game of the Show受賞作がついに発売

Breedの世界観をよく表現したメインイメージ。この絵にグッと来た人は,必プレイだ

 当初は2001年末に発売と発表され,2002年に行われたゲームショウECTS 2002ではBest PC Game of the Showを受賞しながら(関連記事は「こちら」),その後は延期の繰り返しでファンをやきもきさせた「Breed」が,ついに2004年3月に欧米で発売され,日本では「ブリード 〜エイリアンvs地球防衛軍〜 日本語版」としてこの8月20日にズーから発売された。
 BreedはイギリスのBrat Designsという小さなデベロッパの処女作となるタクティカルFPSで,同社オリジナルのMercuryエンジンによる初のゲームということもあり,期待される作品だ。

 現在から600年後。宇宙技術の発達により太陽系のはるか彼方にまで行けるようになった人類は,ベサリウス2星系の惑星に移住していた。しかしある日,平和だったコロニーが,突然"ブリード"と呼ばれるエイリアンの侵略を受ける。コロニーは壊滅的な打撃を受けるが,わずかな生き残りが地球に救難信号を送り,これに応じて地球防衛軍の精鋭部隊ユナイテッド・スペース・コア(USC)のクルーザー艦隊が派遣された。
 約20年をかけて戦いに辛勝したUSCは,ただ1隻残ったダーウィン号で地球に帰還するものの,そこで彼らを待っていたのは,ブリードに支配されて変わり果てた地球だった。コロニーへの侵略はブリードの陽動作戦であり,これに乗せられ精鋭部隊を派遣してしまった地球は,なすすべもなく制圧されてしまったのだ。こうして地球奪還の戦いが開始された……。
 以上がBreedのバックグラウンドで,ほかの多くのSF系FPSと同様に,映画「スターシップ・トゥルーパーズ」(もしくはロバート・A・ハインラインの小説「宇宙の戦士」)を基盤とする設定らしく,この手のゲームに慣れたプレイヤーならすんなりと世界に馴染めるだろう。

 さてタクティカルFPSという言葉に耳慣れない人も多いと思われるが,ではBreedのどのあたりがタクティカル(戦術的)かというと,これは複数のキャラクターを操作して戦っていくことを指している。ミッションにより若干異なるが,プレイヤーはチームを操作して,ブリードを掃討していくことになるのだ。
 基本的にチームは,万能歩兵のグラント,大口径武器を得意とするヘビーガンナー,装甲は薄いがメンバーの治療が可能なメディック,乗り物の修理やコンピュータの操作に長けたエンジニア,遠距離からの狙撃を得意とするスナイパーのうち数名で構成される。数の面では圧倒的に不利なので,陣形なども考慮しながら,適宜チーム員を選択して適切な攻撃を行う必要がある。
 実際のところ,チームを率いて敵と戦うFPSということで,「オペレーション フラッシュポイント」(以下,OFP)と似たような感覚がある。もっともOFPでは操作するのは一人だけだったが,ブリードではキャラクターを切り替えられるので,操作はより頻雑となるがそれぞれのチーム員を細かに操作できる利点がある。ただしプレイヤーに代わってチームの兵士を操作するAIには少しばかり問題点があって,それは後述することにしよう。

 Breedのミッションの多くは,USCの基地となるスペースクルーザー・ダーウィン号からドロップシップに乗り込み,地上へ送り込まれるという状況から始まる。このドロップシップという設定が面白く,地上に到達するまで中を動き回れるだけでなく,搭載された機銃を掃射して敵のレーダーを破壊したり,地上にわらわらと群がっているブリードをあらかじめ間引いてしまうことも可能だ。
 ミッションは連続性のあるストーリー展開で,全体的には「シリアス・サム」のように次々と現れる大量のブリードを撃ちまくるといった感じのものが多いが,スニークアクション風のものや戦闘機によるドッグファイトなどのミッションもあり,さまざまなシチュエーションでプレイヤーを飽きさせない。

USC軍の唯一の基地となるダーウィン号 チュートリアルに登場する,口の悪い鬼教官はお約束 頼もしいチームメンバー達。それぞれ特徴がある

ドロップシップ内部。左にある機銃はもちろん飾りではない こうしてドロップシップから地上を攻撃できるのだ 地上に降りればそこは地獄。撃ちまくれ!


オリジナルのMercuryエンジンを搭載,その出来はいかに?

空対空のドッグファイトも楽しめる。雰囲気抜群
 Mercuryエンジンによるグラフィックスは,さすがに「ファークライ」「DOOM 3」といった次世代FPSと比べると色あせてしまうものの,及第点は十分に超えているといった印象を受ける。また1画面に描画されるキャラクター数がかなり多い場合でも,フレームレートがさほど低下しない点は評価すべきだろう。
 飛行ビークルも登場する関係からか,扱えるマップはかなり広い。あえて不満点を挙げると,太陽や雲といった空の描写はやや物足りないといった感じだろうか。しかし宇宙から大気圏に突入するときの描写は,ほかであまり見る機会がないせいか「おぉっ!」と関心したし,戦闘機で雲の中に突入してしまうと視界や上下感覚が奪われる点も,リアリスティックな感じを受ける。

 敵AIに関しては,障害物での待ち伏せやヒット&アウェイといった行動をとるので,なかなか侮れない。向かってくる敵も直線的な突撃だけでなく,時折くるっと横方向へ回ってターゲットからそれるといった行動をとったりもする。なかなか良くできた敵AIといえるだろう。
 その半面,先述したとおり味方(つまりチームメイト)のAIには若干の問題点がある。プレイヤーからの指示は密集/散開や隊形といったおおざっぱな指定しかできず,ほぼAIの考えで行動することになるのだが,AIの操作する兵士は,移動するときに谷に落ちたり,障害物に引っかかって動けなくなったりで,プレイヤーの操作するキャラクターとはぐれてしまうことがよくあるのだ。また弾薬や薬品の"節約"という概念がないため,それらをあっという間に使い果たしてしまうし,敵に遭遇すると勇猛果敢にも死ぬまで戦ってしまう。
 さらにチームの中でも特殊な攻撃をすべきスナイパーも,グラントとまったく同じ敵を攻撃をするため,役割を果たすことがほとんどない。Breedはチームを率いてプレイするという独特なスタイルのFPSであり,この点が醍醐味でありウリであるはずなので,今後のパッチ等による改善を強く期待したい。

戦闘機のデザインがなかなか凝っている。ムービーの演出も上々 スナイパーライフルで長距離の攻撃を。弾は放物線を描かない Breedにはさまざまなビークルが登場する。戦車の派手さも見逃せない


キャラクターを切り替えながらガンガン撃ちまくれ!

敵味方の弾丸が飛び交う戦場。これこそFPSの醍醐味だ!

  ほかのジャンルと同様にFPSジャンル全体が細分化されていくなか,やはり単純に撃ちまくれるFPSに対する需要も多いはずだ。そうしたFPS本来の爽快感を提供するだけでなく,さまざまなシチュエーションのミッションを用意して多くのプレイヤーにアピールする作品に仕上げた点は評価したい。実際のところ,Breedのミッションは設定やシナリオも含めてよく練られているうえに,難度も適度なもので,程良い緊迫感と濃密なプレイを満喫できることだろう。
 また武器や乗り物の種類も多種多様で,なおかつ独創的である点も評価できる。とくに筆者のお気に入りは兵士用装甲兵器のボディスーツで,これに乗り込んでブリードを一掃するのが快感だ。また戦闘機に乗り込んでのドッグファイトも見逃せない要素の一つだ。

 少しばかり未完成な部分も残るといった印象を受けたものの,全体的に見れば,独創的なアイデアを盛り込みプレイヤーを楽しませてくれるゲームといえる。またすでにいくつかのMODのプロジェクトも立ち上がっているようなので,そちらも楽しみにしたいところ。SF FPS好きのゲーマーにはもちろん,次世代FPSもいいけど自分のPCではちょっとキツそうだな……と思っている人にもお勧めしたい作品だ。


ドアを開けるとそこには敵が待ち構えている。常に油断は禁物だ 誘導ミサイルでうるさい敵の戦闘機を撃破! 自らドロップシップで地球に向かうミッションも。大気圏突入は見ものだ

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■メーカー名:ズー
■問い合せ先:TEL 0268-38-1561
■価格:8379円(税込)
■動作環境:Windows 98/Me/2000/XP,PentiumIII/1GHz以上(Pentium4/1.5GHz以上推奨),メモリ 256MB以上(512MB以上推奨),HDD空き容量 1.2GB以上(1.5GB以上推奨),VRAM32MB以上搭載したビデオカード(64MB以上推奨),DirectX 9.0以降
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