ストラテジー 4Gamer.net Preview
 
地球の植民惑星を舞台にした,最新SFストラテジー
Ground Control II:Operation Exodus
Text by 奥谷海人
15th May. 2004


 3D RTSゲームの先駆けといえるシリーズの最新作「Ground Control II:Operation Exodus」が,アメリカでは6月22日にもリリースされる予定だ。
 リソースのマネージメントを省略し,戦場での戦略性とアクションに重点を置いた本作は,ここしばらくのRTSではちょっとした異色作だ。グラフィックスやマルチプレイヤーモードも強化されており,このジャンルの複雑な操作に及び腰だったゲーマーにも十分受け入れられそうな予感がする。

時は28世紀,地球から遠く離れた星系を舞台に繰り広げられる未来戦争

 2000年5月にリリースされた「Ground Control」は,完全3DグラフィックスによるRTSゲームの先駆けともいえる作品だった。数か月早くリリースされた「Homeworld」よりもアクション性が高く,また資源確保や生産などの要素がなく「Myth」や「MechCommander 2」のように事前に与えられたユニットだけでミッションを攻略するシステムだ。それがウケて欧米の各メディアでも平均90%程度の高いレビュースコアを記録しており,3D化し始めたばかりのRTSジャンルに大きな影響を与えた。
 その続編となる「Ground Control II:Operation Exodus」(以下,Operation Exodus)は,前作と同じスウェーデンのMassive Entertainment社が開発を手がけている。同社はゲームソフトはPC用の本シリーズしか開発していないが,2002年にVivendi Universal Games社によって買収されている。Vivendiがアメリカ以外に保有する開発チームは2社しかないので,どれだけMassive Entertainment社の開発能力に期待がかけられているのかが分かるだろう。

 Ground Control IIのストーリーは,ハイファンタジー系のテーブルトークゲームとしてお馴染みの「Lone Wolf」シリーズの作家,ジョー・デンバー(Joe Denver)氏の協力を得て制作されており,第1作から数百年後の宇宙を舞台にしている。
 太陽系からはるか遠く離れた場所にある星系Morningstar Primeは,第三次世界大戦後に太陽系外へと進出し始めた地球人達の植民地の一つだった。24世紀頃には超大企業Crayven Corporationによって開発されていて,12の州に分かれていた自治区が連合軍NSA(Northern Star Alliance)を形成して地球人との戦争を行っていた。
 そんな折,第1作の下地ともなったOrder of the New DawnとCrayven Corporationの抗争が地球軍陣営で勃発し,Crayvenが崩壊したことによってNSAは星系外との交渉がなくなってしまう。やがて地球人勢力として新しく浮上したThe Imperialが28世紀初頭に再来したものの,NSAから予想外の抵抗を受けてしまう。
 しかし圧倒的な武力を誇るThe Imperialは,各惑星に散らばるNSAの砦を一つ一つ攻略していく。NSA軍の所有していた宇宙戦艦をほとんど破壊しながら,彼らの本拠地であるMorningstarへと着実に侵攻していった。
 ところがNSAの司令官であるT・パーカーは,宇宙から飛来した未知の物体を利用して首都に巨大な電気性ドームを構築しており,The Imperialの長期に及ぶ爆撃によっても攻略されることはなかった。パーカーの軍事的才能とカリスマに翻弄される中,やがてThe ImperialもMorningstarへの侵入に成功する。ここでパーカーによってThe Imperialへの追撃を任命されるのが,今回の主人公であるジャコブ・アンジェラス(Jacob Angelus)とその師団なのである。

 

少数のユニットを敵地へと侵攻させる「Myth」系のアクションストラテジー

 Operation Exodusの基本的なゲーム構造は,前作とほとんど変わっていない。ミッションが始まる前にはカットシーンを利用したブリーフィングが行われ,やがてヒーローユニットでもあるジャコブ・アンジェラスが,事前に設定された数/種類のユニットと共にマップ上のスタート地点となるベースへと降り立つ。ドロップシップは,今回からはゲームが進行するにつれてアップグレードできるようになっており,着陸時の攻撃に対処できるよう銃器を取り付けたり,より多くのユニットを運べるようにモディファイ可能となった。
 ベースはマップ中に複数あり,その場所にユニットを踏み入れるごとに自軍基地として認識されるようになる。これでドロップシップの着陸点をより前線へと近づけられるようになったので,わざわざ救援ユニットを後方から運び込まなくてもいいわけだ。またこのベースは「Battlefield 1942」でポピュラーなConquestモードのようにも使用でき,オンライン対戦ではチームごとにベースの争奪戦を行うようなシチュエーションも想定される。

 SF RTSでは,そのゲームを遊び始めた頃には"何をするためのものか"が分かりにくい特異な形状のユニットが多いが,Operation Exodusではその心配はなさそうだ。NSAやThe Imperialのユニットは兵士やタンクのようなステレオタイプで認識しやすくなっており,それでいて前作のように種類が少ないわけでもない。タンクは"Terradynes",NSAに用意されたヘリコプタ風のエアーユニットは"Helidynes",The Imperialのホーバークラフトは"Hoverdynes"と名付けられている。The Imperialには巨大な二足歩行型ロボットも登場するのだが,これがなかなか格好良い。ゲームの遊び始めは,NSAを使って慣れるといいだろう。
 シングルプレイヤーモードでは,NSAのほかにもVironsという敵対勢力でプレイするためのキャンペーンが用意されている。このエイリアン種族は,拡大政策を推し進めるThe Imperialの手先として前線に送り出される強暴な種族で,帝国の汗や血に塗れた部分を担っている。その外観は緑色のは虫類風で,皮膚が発色しているのか周囲のテクスチャも緑がかっていたりする。
 Vironsのユニットは,基本形として4タイプしかないのが奇妙だが,ユニット同士を合成させて新しいものを生み出すアップグレードが行えるのが特徴となっている。半透明の卵を作って生まれ変わる様子は,かなりグロテスクである。

 Operation Exodusが前作と大きく異なるのは,ゲーム中に新しいユニットを補充できるようになったことだ。ミッションを攻略したりマップ中の拠点を占拠したりしていくことでAP(Acquisition Point)と呼ばれる得点が加算されるようになっており,それを使って新しいユニットを"購入"できる。
 ユニットの製造には一定の時間がかかるようで,施設を建築したりアップグレードしたりしてユニットを自由に増やせる一般的なRTSのシステムとは感覚がまったく違っている。そのため,やはり「いかにユニットを失わないように戦うか」というのが本作の重要な要素になっていて,救急ユニットの帯同は不可欠なのである。
 プレイヤーが同時に操作できるのは多くても20ユニット程度であるものの,そのマップを攻略するためにどのようなユニットが必要なのか,どのようにして戦うのかに重点を置いたプレイフィールなりそうだ。もちろん,生き残ったユニットは次のマップでも使用でき,戦場での功績によって経験値が与えられて序々に強くなっていく。

 

ユニットを廃墟のビルに配備して,高所から戦う戦略的プレイ

 Operation Exodusに用意されたマップは,森林や砂漠,湿地帯などMorningstarのさまざまな風土が描かれているが,長年惑星外からのThe Imperialによる爆撃にさらされてきたという設定であるため,街も廃墟と化した無人地帯になってしまっている。
 Operation Exodusで面白いのは,ここまでやるかと思うほど,地形の戦術的利用が試みられていることだ。高い地点にユニットを配置することで,攻撃や防御へのボーナスが加えられるのはもちろん,兵士ユニットは森林へと侵入でき,タンクの砲撃を避けたり急襲したりすることも可能だ。さらにマップ中にある街の建物内にも兵士ユニットを配備でき,ガリソン化させて防御効果を高められる。とはいえ,基本的なミッションの形式は,自分の軍隊を敵に占領された地域に侵攻させていくというパターンがほとんどなので,守備ではなく,1回ごとの戦闘で優位に立つためのユニット配備としての利用となる。

 また,ほとんどのユニットには二つの戦闘モードが用意されていて,Light Inantryであれば通常はマシンガン風の攻撃,セカンドとして対タンク用のロケットランチャー,というように分かれている。戦闘モードによって移動速度などが異なる場合もあり,確認できた敵ユニットのタイプや距離を考慮して,戦闘前に逐一変更させる必要があるだろう。
 エアーユニットは前作では非常に強力だったが,移動速度が速いために作動中は常にグルグルと巡回させておく必要があった。Operation ExodusのAerodynesは,そのあたりの操作性がうまく改善されており,ヘリやホバークラフトのように静止させておくことも可能。特定の戦術では大いに活用できそうだが,対空攻撃にさらされるとあっけなく大破するので注意が必要だ。

 Operation Exodusでは,画面写真を見ても分かるように,ゲームエンジンが一新されている。解像度の高いテクスチャで地形が美しく表現され,水も透明度が高すぎるものの,波打ったり景色が映り込んだりしている。カメラは完全にフリーな状態で移動可能で,ズームインは歩兵ユニットの顔を大写しにできるほどだ。戦闘中での利用度は少ないかもしれないが,ユニット表示数も少ない分だけディテールにこだわったモデリングは,ほかのRTSには見られないクオリティの高さだ。
 ズームインした状態では,遠方からの敵の砲撃で砂塵が舞ったり,ユニットの爆破で煙が立ちこめたりして視界が遮られることもあるが,その臨場感は格別である。背景の天体画も異世界にいるようなビジュアルを演出しており,ほかのゲームとは異なる独特の雰囲気を生み出すのに成功している。
 なお推奨システムはPentiumIII/700MHz以上と発表されているが,1.5GHz程度のマシンパワーがほしいところ。ビデオカードは,32MB以上でDirectX 8.1以降に対応したのものが必要だ。画面写真で判断する限り,相当数のパーティクル効果が重なる場面もあるようなので,できるだけ高性能のビデオカードを使ったほうがいいのは言うまでもない。

 シングルプレイヤーモードと同じく,マルチプレイヤーモードではNSAとVironsで最大8人での対戦を楽しめる。チーム戦でキル数やスコアを競うばかりでなく,協力してシングル用キャンペーンを仲間と遊べるのは,このジャンルのゲームモードとしては非常に珍しい。
 The Imperialで遊べないのは単に制作時間が足りなかったための選択ということで,もし拡張パックがリリースされるようなことがあれば,十分に期待できるだろう。



 Operation Exodusはすでにマスターが完成していて,ヨーロッパ諸国やアメリカへの出荷を待つばかり。多少遅れたとしても,今月中には欧米の店頭に並んでいるだろう。資源開発や施設の建設などのない,一般的なRTSとはスタイルの違う形式(ミリタリーRTSタイプというか)のゲームではあるが,その分このジャンルに不慣れな人でも取っ付きやすいかもしれない。
 すでにシングルプレイヤーモードやマルチプレイヤーモードのデモも出まわっており(ダウンロードは「こちら」),一度遊んで見るといいだろう。かなり興味深いストーリーなので,もっと先に進んでみたいと思わせてくれるはずだ。

 

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