リチャード王,かく語りき 4/5
−リチャード・ギャリオット氏のOrigin Systems解任から1年。遂に"ロード・ブリティッシュ"が復帰した!

2001/06/18

文/写真・奥谷海人

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Destination Gamesは,新しい流通を模索している
〜「今の時点では,未来に対する高揚した気持ちでいっぱいなんです」−S. Long

 NC Softは,日本や欧米のゲーマーにはあまり馴染みのない会社名だが,韓国では有数の大手開発会社として知られる。その代表作は,日本では公開βテストで遊んでいるユーザーも多数存在する大規模オンライン専用RPG「Lineage:The Blood Pledge」(以下Lineage)だ。韓国では昨年すでに公式サービスがスタートしており,ギャリオット氏が述べたようにゲームルームで人気のタイトルとなっている。つい最近までコンソール機の輸入が法的に難しい時代が続き,PCで遊ぶ人口が日本と比べて非常に大きい韓国において,オンラインゲームとしてのマーケットシェアが国全体で40%にも達しており,この1作の成功のみでKOSDAQに上場している急成長企業なのである。
 Destination Gamesは,NC Soft傘下の開発チームとして資金援助を受けて新作開発に取りかかるが,ここ当面はLineageの在米サポートセンターとして機能していくことになる。ちなみに日本では"リネージュ"と発音されることが多いが,"リニアッジ"と発音するほうが正しい。

forGamer.net:
 新作を販売するにあたって,販売元と契約する予定はあるのですか?

Garriott:
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韓国で絶大な人気を誇るMMORPG "Lineage"
 全くありません。OSIがEAに吸収された当時は,OSIは販売元として売上げを伸ばしていたにも関わらず,ごく少数の大手に流通経路を牛耳られていたのです。自社製品を客の目につく棚に置いてもらえるという特権を,たった数社の販売会社が支配しているという事実は,現在でもそれほど変わっていないのは確かでしょう。
 しかし,EAがまだ同じことを考えているのなら,それはバカげたことだとしか思えません。オンラインゲームの時代には,今までの流通やマーケティングがなんの役にも立たないというのは,皮肉にもUOが証明してしまったからです。特にLineageのアジアでの成功は,今までのようなパッケージ型の流通モデルが全く必要でない,ということを見せてくれました。これが,我々からプレイヤーに直接ゲームを提供できるという自信になっています。
 問題となるのは,今後何百という数になっていくであろうオンラインゲーム市場において,どうやって一般のユーザーにゲームを認知してもらうことなのですが,それは口コミで広がったりプレスに取り上げられるほど,興味深いソフトを製作していくしかありません。結局それが,開発者にとってもプレイヤーにとっても,有益となるはずですし。
 私はリサーチ会社などから様々な情報を収集していますが,ほとんどの専門家が,今後5年間でオンラインゲーム市場が2倍近くになると予想しています。この数値はアメリカだけの話ですが,インフラの整いつつある日本を含めるアジアやヨーロッパでは,さらに大きな市場になるのは間違いありません。

Long:
 Lineageのビジネスモデルを補足しておくと,販売を始めとするサービス全てがオンラインベースで行われており,パッケージは存在しません。経営面でいうと,我々Destination Gamesはこのビジネスモデルを応用することに専念し,販売会社とのパートナーシップは必要ないと考えているのです。Destination Gamesの作品は,プレイヤーにはクライアントソフトを無料で供給し,月額料金だけを徴収することになるでしょう。

forGamer.net:
 それについての勝算はありますか?

Garriott:
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MMORPGの偉大な先駆者 "Ultima Online"
 ええ。既存のオンラインゲーム開発チームは四つあります。UOのEA,"Everquest"のSony Online Entertainment(Verant Interactive),"Asheron's Call"のMicrosoft(Turbine Entertainment),そしてLineageのNC Softです。そして,UOを作ったチームとLineageのNC Softが手を取り合って"第2世代MMORPG"を製作しようというんですから,皆さんにも十分期待してもらってもいいでしょう。
 その他の開発チームは,我々がUOでやってきたことから学んで"第1世代"のゲームを製作しているに過ぎません。これらの中からも素晴らしいゲームが登場することを熱望しますが,彼らはどのようなゲームを作るかということだけでなく,どのようにサポートし,サービスを継続させていくかというノウハウも蓄積する必要があります。現状で私が認識しているほとんどのゲームが,この第1世代の枠組から抜け出せておらず,ゲームプレイやシステムの斬新さという観点で,私のレーダーから抜け落ちていってしまうのです。

forGamer.net:
 先ほどおっしゃったオンライン市場の成長に関してですが,今は無料サービス型のオンラインゲームが力をつけています。これについて,どうお考えですか?

Long:
 お金がどこから出てくるを考えれば,やはりWeb広告や投資家ではなく,プレイヤーの皆さんから徴収する,という最終点に達します。現在のところ,AOLやEA.comを始めとするオンラインサービスモデルは無料ゲームばかりが盛んで,プレミアゲームに十分なお金が回ってきているとはいえません。MYSTやThe Sims(注:邦題はシムピープル)のような大ヒットは5年に1作しか出てこないのですから,我々が爆発的なヒットを飛ばすほどのサービスを提供できるとは断言しませんが,面白いものに月額料金を払って楽しむという確実な意識を持ったコアゲーマー層にアピールできるようになりたいと思います。

Garriott:
 オンラインゲームビジネスを,ここまで理解している我々を投げ出す会社があるなんて,ちょっと信じられないでしょ(笑)。

forGamer.net:
 (笑)。スターさんには,過去何度かUO2を見せてもらっていましたが,あそこまで巨額が投資され,開発が進んでいたゲームを切る必要があったのでしょうかね?

Long:
 期待してくれてたようでありがとう。私も残念に思いますが,今の時点では未来に対する高揚した気持ちでいっぱいなんです。私は,OSIの品質管理部門(ゲームテスター)から業界のキャリアを始めましたが,私の可能性を見抜いてくれたのがリチャードでしたし,UO2を任されたときも,彼はいつも私の精神的な指導者でした。そのリチャードと再び仕事ができる機会に巡り合えたのですから,今は本当にワクワクしているんです。なぜEAはUO2を捨てる必要があったのか。それは業界のミステリーとして過去に置いておくことにしましょうよ。

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