リチャード王,かく語りき 5/5
−リチャード・ギャリオット氏のOrigin Systems解任から1年。遂に"ロード・ブリティッシュ"が復帰した!

2001/06/18

文/写真・奥谷海人

本番はこれからだ!
〜「オンラインゲーム界のオールスターのような集団になってきてます」−R. Garriott

 ギャリオット氏が設立したOSIは,業界では"オリジン大学"とも呼ばれ,ここを通過していった有名な開発者は数知れない。「Wing Commander」のChris Roberts(クリス・ロバーツ)氏,「Quake」「Daikatana」のJohn Romero(ジョン・ロメロ)氏,さらには「Deus Ex」のWarren Spector(ウォーレンス・スペクター)氏などがそうだ。実際,ギャリオット氏はどんな人間に対しても親切で,非常に丁寧な受け答えをする。ファンや開発者からの人望が高いのにもうなずけるというものだ。ニックネームの"ロード・ブリティッシュ"は,彼の丁寧な言葉使いに感動したファンが付けたものだという。もちろん,この呼び名は今後も使用していくらしい。

forGamer.net:
 ジェイク・ソンさんは,どのような人物だと考えておられますか?

Garriott:
 先ほども話しましたが,オンラインゲームの主流としては,特にアメリカではUO,EQ,ACの3作が挙げられます。しかし世界的なプレイヤー規模で見た場合,これらの3作は,Lineageを前に膝を屈するしかありません。本質的にジェイク1人で作り上げたゲームが,我々アメリカ人の知り得るオンラインゲームビジネスを,まるで小びとのように思わせるほどの成功を得ているのです。UOは,私とスター2人の作品のように言われますが,Lineageのような成功を見せつけられると,我々がどれだけの時間とお金を浪費してしまったかを考えさせられます(笑)。無口な人ですが,やる時は確実に成し遂げてしましまうようですね。

forGamer.net:
 Destination Gamesに参加している,ほかのメンバーについてはどうでしょう?

Garriott:
 そうですね。OSIがあった建物には,「Air Warrior」などオンラインゲームのごく未熟だったころからこの分野で有名だったKesmai Corporation社が移動し,EA.comを形成していました。もちろん能力によって様々な部署に人員は移動していましたから,UO2製作チームには,多くの人材が流れてきていました。
 また,Turbine Entertainmentの創設者の1人で,ACのプログラマーだったJeremy Gaffney(ジェレミー・ガフニー)らもUO2の開発に携わっていましたが,このチームのほとんどのメンバー(注:40人程度だ)が,3月にEAから解雇されています。その多くのメンバーがDestination Gamesに移籍していると思っていただいて結構でしょう。
 また,Carly Staelin(カーリー・スターリン)などUO Liveチームから飛び出してくる人たちも多く,実際オンラインゲーム界のオールスターのような集団になってきてますね。EQ以外のほとんどのオンラインゲーム開発者が集まっているんですから。残りはSony(Verant Interactive)だけですが,近い将来に何が起こるかは誰にも予測できませんよね(笑)。

forGamer.net:
クリックすると拡大します
Star WarsのMMORPG "Star Wars Galaxies"
 UOに携わっていた主要メンバーという意味では,もう「Star Wars:Galaxies」の2人組(Raph Coster氏とRick Vogel氏)しかいないみたいですけど?(笑) 実際に彼らだって,Destination Gamesでいっしょにやりたがってたりするんじゃないですか?

Long:
 どうでしょうかね。でも2人とも大好物のスター・ウォーズをエサにつながれちゃってますから,お金積んでも難しいでしょうね(笑)。

Garriott:
 ここだけの話,NC Softとの交渉が始まるのに前後して,Sony Online Entertainmentとも頻繁に意見交換していたこともあったんです。"Galaxies"のチームの面々ともゲームデザインについて語り合ったりしましたし,幹部連中とビジネスの話をしたこともあります。我々Destination GamesにとってSony Online Entertainmentは,尊敬すべきライバルになることを望んでいます。方向性は違っても,オンラインゲームビジネスについて明確な戦略を持っているのは,ウチとあそこしかないですから。今日は,我々の話を聞いてくれてありがとう。It's nice to be back!

 ロード・ブリティッシュの復帰がこんなに早いことを,いったい誰が予想していただろうか。この原稿を書き終えるにあたって,UO2のオフィシャルサイトに,プロローグとして紹介されていた小説の最終章を思い出す。それを読めば,驚くほど現在の状況と似ているのに気付くはずだ。以下,要約してみよう。

 ブリティッシュは肘を乗り出して言った。「私が大激変で死んだというのかね?」
 ジプシーの声が彼に答える。彼女の微笑みは,いたずらっぽくも見えた。
 「残された者たちには,そのように見えるのですね。あなたは死んだりしないのですよ。旅を続けるのです。ブリタニアは,あなたの最終目標(ultimate destination)ではなかったのですから」
 彼は,虚空の中に吐息した。「終わったとは……。信じられぬ」
 「終わったのではありません。あなたの足跡は,ブリタニアから消え去ることなどないのです。あなたは,この世界を豊富な財宝と徳深い人間たちで満たしました。あなたを尊敬する子供たちが成長し,あなたの歩いた道を彼らが歩み始めるのです。それが,あなたの遺産なのですよ,ロード・ブリティッシュ。なんて素晴らしいことなんでしょう」
彼女はそう言って,ブリティッシュの手をテーブル越しに取った。
 「あなたは,牡蠣の中の砂粒一つなのです。そこから,どれだけ美しいものが生まれることでしょう」
 ブリティッシュは,穏やかで悲しい笑い声を漏らした。「ならば今,私は別の世界に旅立とう。そして,私の偉業をまた始めからやり直すのだ」

 リチャード・ギャリオット氏は今,新たなる偉業を成し遂げようとしている。

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