forGamer.net:
シングルプレイヤーRPGとオンラインRPGを融合するというお話ですが,クエストシステムの導入などで実践しようとしているゲームもすでに見受けられます。これらの中から,感銘を受けているようなものはありますか?
Garriott:
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| SFを大胆に取り入れたMMORPG "Anarchy Online" |
クエストシステム,という点だけにおいても,斬新なゲームシステムを構築しているものがあるかは疑わしいですね。UOにも見られるような,仲間とドラゴン退治に出かけるだけの初歩的なクエストシステムにしてもそうですが,既存のゲームの問題点は,プレイヤーの前に10人いようと1000人いようと,全く同じ内容のものですよね。アイテムを入手するためだけの冒険は,新しいゲームを構築するうえで私が興味を覚えるところではありません。クエストは,もっと意味のある形で,個人個人のプレイヤーの遊び方に噛み合っていかなければならないのではないでしょうか。
オンラインRPGが提供する共同体の中で,シングルプレイヤーRPGで楽しめるパーソナルな体験ができるゲームを目標にしています。さっきのテーマパークの比喩を使いますが,ローラーコースターに乗ってしまえば,前後の人に関係なく,自分だけが満喫しているような錯覚になりますよね。それに,みんなが同じライドに乗らなくても問題ないし,全く乗らずにショッピングや食べ歩きを楽しんでも個人の欲望が満たされることもあるわけじゃないですか。
Long:
Anarchy Onlineがやろうとしているクエストシステムとは,考えているところが共通しているかもしれません。あの作品が,どのような結果を生み出すかを見守りたいですね。
forGamer.net:
Tabula Rasaには,政治的な活動が考慮されていますか?
Garriott:
Lineageのゲームシステムの中で最大の特徴を一つ挙げろと質問されたなら,私は間違いなく"Blood Pledgeシステム"であると答えるでしょう。プレイヤーは一つの組織に参加し,その組織とって有益な行動を取ろうという意思を持つことができます。今後の新作にどのように反映されていくかは未定ですが,UOのような個人ベースやクラン戦争で所持品を取り合うだけのものにはならないでしょう。政治的,とは言い難いですが,プレイヤー間の社交性を高めるうえでは,何か仕掛けが必要になるのは確かですね。
forGamer.net:
Lineageをアメリカにも持っていくそうですが,ビジネスモデルや文化的な差異から障害はありませんか?
Garriott:
もちろんそういう障害はあるでしょうね。例えば,韓国では一般家庭にPCが浸透しているのかいないのかキチンと調べたわけではないので分かりませんが,ゲームルームで遊ぶことが盛んです。ゲームルームでは,ゲームへの質問が客から店員へとパーソナルに行われますから,アメリカ式の電話によるカスタマーサービスやゲーム中でのカウンセラーの配置といった面で考慮しなければなりません。我々の知る企業精神とは非常に異質なものと言えますね。
またUOにおいては,韓国や日本のプレイヤーのほうが,土地の買収に執着していたような傾向が見られました。ただ,こういう文化的な違いというものは,我々というより業界全体が抱える課題であると思います。ビジネスモデルでは,我々はアジアやヨーロッパへのローカリゼーション(翻訳や簡単な内容変更)ができる土壌は整っていると思います。
forGamer.net :
もう少しだけ,Tabula Rasaについてのお話を伺っていいでしょうか。"X"は,ウワサでは成人専用オンラインRPGになると聞いたことがあるのですが,新作でもこの仕様は生かされていきますか?
Garriott:
なんでそういうことが漏れちゃうのかな(笑)。でも,成人専用(Adult Only)ではないですよ。大人のプレイヤーが充分に楽しめる,成人テーマ(Adult Themed)だったというのが正しいです。これ以上お答えすることはできませんが,以前考えていたことも新作にいくつか反映されると良いですね。
forGamer.net :
実際のゲームを見られるのは,いつ頃になるのでしょうか?
Garriott:
今後1年以内に,このプロジェクトのプロトタイプと呼べるものを作り,2年半(注:2003年後半あたりか)を目途に完成させたいという希望です。
技術的に言って,もはや全てのゲームエンジンをイチから開発する必要などなくなったと私は考えています。今の時点では,レンダリングパイプラインなどいくつかの技術を金銭的に獲得しようと思っていますが,これは,どれだけ早くシステム面でのプロトタイプを完成させ,ゲームプレイの構築に専念できる土壌を作るかを優先させたいがためなのです。ゲームの面白さは,レンダリングパイプラインやサウンドエンジンの上に成り立っているもののハズですからね。まだ具体的に技術提携したわけではないですが,来年の今ごろには,また新しいお話もできるでしょう。
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